• 2024.02.07
  • 国際相続

アメリカ所在の遺産についてアメリカ連邦遺産税の申告手続きを行った事例

事案の概要

アメリカで組成された投資ファンドに対して数千万円の出資持分を有する日本人が亡くなりました。被相続人の遺言執行者からの依頼により、投資ファンドとの出資契約を解約し、投資資金の払い戻しを行うことになりました。

連邦遺産税申告のポイント

アメリカにおける投資ファンドの持ち分や株式の払い戻しを受ける際にはプロベイト手続きは必要とされません。投資ファンドの持ち分については、ファンドの無限責任組合員(LP)との契約に基づき払い戻しを受けることができます。同様に証券口座についても、証券会社から求められる各種書類を提出することで、プロベイト手続きなしに証券を処分し、処分代金の支払いを受けることが可能となります。但し、投資ファンドや証券会社は、投資資金を海外に払い戻す際には、投資家がアメリカ国内においてきちんと税金の申告を行っており、未納税金が存在しないことについてのIRS(内国歳入庁)からの証明書がない限り払い戻しに応じてくれません。そこで、投資ファンドや証券口座を解約し、資金を日本に送金してくるためには、アメリカでの連邦遺産税の申告を行い、未納税金がないことについてのIRSの証明書(連邦移転証明書)を取得することが必要となってきます。

栗林総合法律事務所による作業の結果

栗林総合法律事務所では、当事務所が委任したアメリカの弁護士事務所と協力しながらForm706-NAと呼ばれる連邦遺産税の申告書を作成し、IRSに提出しました。連邦遺産税の申告を行うに際しては、アメリカ国内の遺産だけでなく、被相続人の全世界における遺産についての申告を行う必要があります。そこで、遺言執行者から日本における相続税の申告書を入手し、翻訳を作成することで、日本における遺産の概要をアメリカの弁護士に伝え、Form706-NAの記載に反映してもらうことができました。また、IRSから発行される未納税金が存在しないことの証明書は、連邦移転証明書(Transfer Certificate)と呼ばれます。Form5173と呼ばれる書類をIRSに提出することで連邦移転証明書を取得することができました。連邦移転証明書の取得には、通常6か月から9か月の期間を要することになります。

栗林総合法律事務所のサービス内容

アメリカの市民権やアメリカにおける住所(ドミサイル)を有していない外国人がアメリカに相続財産を残して死亡した場合、死亡の日から9か月以内に、IRS(内国歳入庁)に対して、US Federal Estate Tax Return(連邦遺産税申告書)を提出することが必要となります。連邦遺産税の申告書は、 Form 706-NAというフォームに基づいて作成されることになります。なお、アメリカにおける申告期間については、Form4768という申請書を提出することで6か月間延長することができます。外国人がアメリカに財産を残して死亡した場合、6万ドルを超える財産に対しておよそ40%の連邦遺産税や州の遺産税が課せられることになります。但し、日本とアメリカには日米相続税条約がありますので、被相続人が日本人の場合はアメリカ市民と同様に多額の基礎控除(2024年度で1361万ドル)を受けることができます。6万ドル以上の遺産がアメリカ国内にある場合、日米相続税条約の適用があるかどうかで極めて大きな差が生じてくることになります。日米相続税条約の適用を受けるためには、申告期間内に連邦遺産税の申告を行うことが必要です。多くの日本人はこの申告手続きを怠っているため、多額の遺産税が課せられるリスクにさらされています。なお、日本の相続税法には二重課税回避の規定がありますが、これは海外で支払った税金について日本の納税額から控除できるというもので、海外での納付義務が自動的に免除されるわけではありません。栗林総合法律事務所では、連邦遺産税の申告や連邦移転証明書の取得手続をサポートしています。また、証券口座の解約に際して常に必要となる納税者番号(ITIN)の取得もサポートしております。アメリカにおける投資ファンドの解約や証券口座の解約手続きをお考えの方は是非栗林総合法律事務所にお問い合わせください。