• 2024.03.04
  • 個人の法律相談

認知症の相続人に成年後見人を選任し、 遺産分割協議を成立させた事例

事案の概要

当事務所の依頼者Xの兄弟 (A) が亡くなりました。 Aには、 奥様もお子様もいらっしゃらず、 ご両親も既に他界していることから、最も血縁の近い X (Aの兄弟) ともう一人の兄弟が法定相続人となりまし た。 相続財産は2億円近くあり、 相続税だけでも相当な金額の納付を しなければならない状況でした。ところが、兄弟Yについては、既に 認知症がかなりの程度進んでおり、完全に事理弁識能力がない状態で した。 このままでは、相続財産についての遺産分割協議はできず、相続税についても未納なままとなって延滞税や加算税がかかってくることになります。 そこで、 依頼者Xは、成年後見人の申し立ての可能性 を含め、今後の対応策について相談するため、 栗林総合法律事務所を訪問してこられることになりました。

成年後見人選任申立てのポイント

成年後見制度は、 認知症などで意思能力を欠くことになった人 (後見 を受ける人という意味で、 「被後見人」といいます。)について 関 係者からの申し立てにより、 裁判所が代理人 (成年後見人) を付ける 制度です。 成年後見人は法律の規定に基づき本人 (被後見人)の代理 人になりますので、 法定代理人とも言われます。 成年後見人は、 被後見人 (認知症の人) の代理人として、 遺産分割協議書にサインしたり、不動産の売却処分を行ったりすることができます。 裁判所による 選任決定を受けていないにもかかわらず、 親族が勝手に本人 (認知症 の方) の代理人としてサインすることはできません。 成年後見人につ いては、 裁判所に申し入れることで、 親族がなることもできます。 但 し、 遺産分割の事件においては、 親族間で利益相反の生じる可能性が あります。 そこで、 遺産分割を要する事案については、 裁判所は、 第 三者である弁護士や司法書士などを成年後見人に選任することが多い と思われます。 いったん成年後見人が選任された場合は、その後、被 後見人が亡くなるまで、 同じ人が成年後見人になるのが原則です。 遺 産分割協議が終了したので、 成年後見人の選任決定を取り消すということはできません。

栗林総合法律事務所における作業の結果

本件では、被相続人Aはすでに亡くなっていますので、 Aの財産を承継する手続き (遺産分割手続き) が必要となってきます。 本件のように相続人の一部の者が認知症になっており、 事理弁識能力を欠く状態 にある場合は、意思能力を欠く相続人について成年後見人をつけなけ ればなりません。 栗林総合法律事務所では、Yが入院している病院を 訪問し、 事情を説明の上、 病院の院長から認知症である旨の診断書を 書いてもらいました。 その後、 被相続人の居住していた地の裁判所に 対して成年後見人の選任申し立てを行い、現地の弁護士さんを成年後 見人に選んでもらうことになりました。 栗林総合法律事務所は、成年 後見人に選任された現地の弁護士と一緒に相続財産の調査を行い、 遺 産分割協議書への調印にこぎつけることができました。 不動産の売却や銀行預金の解約についても成年後見人と一緒に行っていくことにな ります。

栗林総合法律事務所のサービス内容

栗林総合法律事務所では、 識能力をなくしたときに、 成年後見人の選任申し立てを多く行っています。 成年後見制度が最も多く利用されるのは、 本件のような遺産分割協議を必要とする場面です。 相続人の一部について意思能力を欠く 場合は有効な遺産分割を行うことができなくなり、 他の相続人にも迷 惑をかけてしまうことになります。 相続人の中に意思能力を欠く者が いた場合であっても、 成年後見人制度を利用することで遺産分割手続 きを円滑に遂行することが可能となります。 成年後見人の制度の活用 される場面は遺産分割の場合に限られるわけではありません。 意思能 力を欠く人が所有する不動産や株式を処分する必要が生じた場合や、 親(被後見人)の介護に関して相続人間で意見の相違が生じた場合、 高齢者の財産が第三者によって侵害されようとしている場合などにも 活用可能です。 また、 認知症を発症しているような場合でも、 完全に 意思能力を欠くのではなく、 多少の弁識は可能な場合であっても、遺 産分割協議書にサインをしたり、不動産の処分を行ったりするような 複雑な法律行為をすることができない場合もあります。 このような場 合には、 成年後見人の申し立てに代えて保佐人の選任を行うことになります。 成年後見人や保佐人の選任申立てを検討される場合は、 栗林総合法律事務所にお問い合わせください。