• 2020.09.01
  • 国際紛争

国際的販売代理店契約の解除

販売代理店契約解除の事由

売上を拡大させるためには新規の商材を必要とする場合があります。日本国内や海外の展示会などで新しい商品の紹介を受け、これを日本向けにカスタマイズすることで、日本の顧客に販売することを考えられるかもしれません。このような場合に海外のメーカーとの販売代理店契約(Distribution Agreement)を締結されることが多いのではないかと思います。販売代理店契約は独占的な場合もあれば、非独占的な場合もあります。日本における総代理店の地位を獲得できれば、日本国内における他の代理店を通じて商品の販売を行うこともできますので、より市場への浸透を図ることができます。しかしながら、販売代理店契約を結んでいたにもかかわらず、国内市場での販売が思ったように伸びず、また会社の選択と集中などその他のさまざまな事情によって販売代理店契約を終了させる必要が生じてくることもあります。また、日本の販売代理店では今後も継続して契約を維持したいと考えていたにも関わらず、海外のメーカーサイドの都合によって代理店契約が終了せざるを得なくなることもあります。

販売代理店契約書における解除事由の記載

販売代理店契約の解除については、代理店契約書の中でその手続きについて書かれていることが多いと思われます。例えば契約の期間中であれば理由のない一方的な解除ができないとか、契約期間中でもいつでも解除の通知を行うことができるが、3か月前の事前通知を要するなどです。特に独占的な販売代理店契約の場合、日本国内での市場の獲得のために、販売代理店自体がかなりの設備投資を行っている可能性もあります。従って、判例上は継続的契約関係の解除の理論が適用になり、仮に契約書により理由のない解除ができるとされている場合であっても、合理的事由のない解除は無効と判断される可能性もあります。契約の解除を希望しない代理店としては、継続的契約関係の理論を主張して契約の更新を要求することになるかもしれません。

契約解除合意書

販売代理店契約の解除を行う場合には、通常当事者間で契約の解除について合意し、その内容を確認するための契約解除合意書(Termination Agreement)を締結することになります。Termination Agreementでは、例えば、The Parties hereby shall confirm that the Distribution Agreement between the parties has been terminated as of June 30, 2020.(本契約の当事者は、本合意書により、2020年6月30日をもって、当事者間の販売代理店契約が解除されたことを確認する)などと記載されます。

契約解除に伴う考慮事項

販売代理店契約は当事者間の継続的な契約関係ですので、単に契約が終了したことを確認するだけではなく、在庫の処理や、引継ぎ、競業避止、メンテナンス、商標の使用、ドメインの使用、著作権その他の工業所有権の帰属など、様々な事項について確認しておく必要があります。例えば、販売代理店が購入済みの在庫については、在庫がなくなるまでは市場で継続して販売するとか、メーカーが一定の割引価格により買い戻すことが定められるかもしれません。新しい代理店が継続して販売する場合には、新規の代理店に買い取ってもらうことになる可能性もあります。また、注文済みの商品がある場合、その商品について契約を履行し、日本に商品を引き渡すべきか、既に契約終了について合意されたのであるから、新規の注文でまだ履行が完了していないものについては、販売代理店契約の記載に拘わらず、当事者間の新規合意に基づき、解除できるとすることになるかもしれません。

暫定解除契約書(Interim Termination Agreement)

長期の契約の場合、契約の解除通知がなされてから実際に契約が終了するまでに3か月とか6か月の余裕があるのが多いと思われますが、この間の契約関係を明確にするために、暫定的な地位について取り決める場合も多くあります。例えば暫定解除契約書(Interim Termination Agreement)を締結し、契約の終了通知は6月末で、契約の終了は12月末とし、その間の6か月における双方の当事者の法的地位について取り決めるなどです。例えば、販売代理店はこの6か月の期間中に日本にある在庫を売り切れるよう誠実に努力するものとし、12月末の段階で売れ残った商品在庫については、メーカーが通常卸価格の8掛けで購入すると定めることなどです。

商標の扱い

上記の他、商標の扱いについて問題とされることも多くあります。メーカーが日本国内で商標の出願をし、商標を有している場合は、特に問題となりませんが、販売代理店が商標やドメインを有している場合には、販売代理店が有している商標やドメインをメーカーや新しい販売代理店にどのようにして引き継ぐかを定めておく必要もあります。もちろん無償で権利の移転がなされ、その手続きについて当事者の了解がある場合には、その手続のみを定めればいいわけですが、例えば株式の買取などその他の条件が決まっていない場合には、商標権の移転がこれらの条件と交換条件とされることもあります。結局メーカと販売代理店は、契約の終了に関して包括的な合意を行うほかなく、その中には、上記のような在庫の扱い、商標やドメインの扱い、競業避止、株式の買取、損害賠償など、当事者の契約関係を終了させるために必要な全ての事項について定められることになります。

包括的合意の必要性

販売代理店契約を解除する場合には、先方から上記のような取扱いの一部についてのみ提案がある場合であっても、それぞれの条件が互いに影響し合っていること、これらの関係を全部考慮した上で、調整的な趣旨で金銭の支払いが合意されることなどを考慮の上、起こり得る全ての問題点について包括的に合意する必要があります。海外のメーカーが契約の当事者であるような場合には、契約交渉自体がかなり負担にはなりますが、私どもが扱ってきた多くの事例では、調整金としての賠償額も数千万円から数億円になることも多くありますので、慎重かつ粘り強く交渉していくことが重要と思われます。

契約解除合意書(Termination Agreement)

販売代理店契約の解除を行う場合には、当事者間で契約の解除について合意し、その内容を確認するための契約解除合意書(Termination Agreement)を締結することがあります。当事者が継続的な契約関係にあった場合には、販売店が高額の先行投資を行っていたり、ブランドや販路を開拓していたような場合には、契約当事者は契約解消の条件について強い関心を有していることがあります。また契約解消にあたって、それまでの注文済みの商品や在庫についてどのように処理するかについてあらためて合意することが必要になるかもしれません。そのような事情から、契約期間の定めがある場合であっても、通常は、契約終了にあたり契約解除合意書を作成することになります。

The Parties hereby shall confirm that the Distribution Agreement between the parties has been terminated as of June 30, 2020.
本契約の当事者は、本合意書により、2020年6月30日をもって、当事者間の販売代理店契約が解除されたことを確認する。

解除する契約の特定、及び解除契約の発行日

契約を合意解除する場合には、締結日、契約当事者、修正契約・追加契約、関連文書などを明確にすることによって、解除対象となる契約を特定することが必要になります。また、いつから原契約が無効となるのかについて明確に規定することも必要です。

解除の条件、解除にともなう在庫処理、商標の使用など必要な事項についての規定

販売代理店契約は当事者間の継続的な契約ですので、単に契約が終了したことを確認するだけではなく、在庫の処理や、引継ぎ、競業避止、メンテナンス、商標の使用、ドメインの使用、著作権その他の工業所有権の帰属など、様々な事項について確認しておく必要があります。

在庫の処理

例えば、販売代理店が購入した在庫については、在庫が亡くなるまでは市場で継続して販売するとか、メーカーが一定の割引価格により買い戻すことが定められるかもしれません。新しい代理店が継続して販売する場合には、新規の代理店に買い取ってもらうことになる可能性もあります。また、注文済みの商品がある場合、その商品について契約を履行し、日本に商品を引き渡すべきか、既に契約終了について合意されたのであるから、新規の注文でまだ履行が完了していないものについては、販売代理店契約の記載に拘わらず、当事者間の新規合意に基づき、解除できるとすることになるかもしれません。

暫定解除契約書(Interim Termination Agreement)

長期の契約の場合、契約の解除通知がなされてから実際に契約が終了するまでに3か月とか6か月の余裕があることが多いと思われますが、この間の契約関係を明確にするために、暫定的な地位について取り決める場合も多くあります。例えば暫定解除契約書(Interim Termination Agreement)を締結し、契約の終了通知は6月末で、契約の終了は12月末とし、その間の6か月における双方の当事者の法的地位についての取り決めなどです。販売代理店はこの6か月の期間中に日本にある在庫を売り切れるよう誠実に努力するものとし、12月末の段階で売れ残った商品在庫については、メーカーが通常卸価格の8かげで購入すると定めるなどの例もあります。

商標の使用、販売代理店に対する補償

上記の他、商標の扱いについて問題とされることも多くあります。メーカーが、日本国内で商標の出願をし、商標を有している場合は特に問題となりませんが、販売代理店が商標やドメインを有している場合には、販売代理店が有している商標やドメインをメーカーや新しい販売代理店にどのようにして引き継ぐかについて定めておく必要もあります。販売代理店側は、自らの投資によって確立したブランド(Goodwill)などをメーカー側に引き渡す代わりに、その補償をするようにメーカーに求めることがあります。もちろん無償で権利の移転がなされ、その手続きについて当事者の了解がある場合には、その手続のみを定めればいいわけですが、例えば株式の買取などその他の条件が決まっていない場合には、商標権の移転がこれらの条件との交換条件とされることもあります。結局、メーカーと販売代理店は、契約の終了に関して包括的な合意を行う他なく、その中には、上記のような在庫の扱い、商標やドメインの扱い、競業避止、株式の買取、損害賠償など、当事者の契約関係を終了させるために必要な全ての事項について定められることになります。

その他の注意すべき点

販売代理店契約を解除する場合には、先方から上記のような取扱いの一部についてのみ提案がある場合であっても、それぞれの条件が互いに影響し合っていること、これらの関係を全部考慮した上で調整的な趣旨で金銭の支払いが合意されることなどを考慮の上、起こり得る全ての問題点について包括的に合意する必要があります。

解除通知(Termination Notice)

以上に述べたような解除の際の合意に基づく解除とは異なり、自動更新条項の規定に従い更新拒絶を通知する場合、契約違反を理由として解除を通知する場合には、例えば次のような解除通知(Termination Notice)を相手方に対して送付することになります。このような一方的な解除通知では、解除の根拠となる規定を明確に示すことが重要です。

Pursuant to the provisions of Article 20 (Term and Renewal) of the Franchise Agreement dated April 1, 2018 with you, we, ABC Corporation, hereby give you a notice that we do not have the intention to extend the Franchise Agreement with you after the expiry date set forth in the Franchise Agreement. Accordingly, you are kindly reminded that the Franchise Agreement will become null and void after the midnight of March 31, 20__.

(訳文)
貴社と締結した2018年4月1日付けフランチャイズ契約第20条(期間及び更新)の規定に従い、当社ABCコーポレーションはここに貴社に対し、フランチャイズ契約に定める満了日以後は両者間のフランチャイズ契約を更新する意思がないことを通知いたします。 従いまして、フランチャイズ契約は、2020年3月31日(深夜)午後12時以降は無効になることをご承知おきください。

継続的契約の解消の制限

契約当事者が販売店契約等の継続的な取引関係にある場合において、約定解約権又は更新拒絶ができることを定めていた場合においては、契約当事者が定めたところに従い契約関係の解消をなしうるものであることを前提としつつも、信義則等を理由として、契約の解消が制限されうる場合があります。この点に関しては、いくつもの裁判例が、契約の解消に際して「やむを得ない事由」等を要求すること、又は信義誠実の原則等の一般条項を理由として、継続的契約の解消に対して制限を加えようとしています。

東京高判平成6年9月14日(判時1507号43頁)

本件は、化粧品特約店契約に関する事案です。被告の特約店である原告が、特約店契約上の対面販売を行う義務に違反し、カタログ販売を始めました。被告の再三の是正勧告にも従わなかったため、被告は中途解約条項に従い特約店契約を解除し、出荷を停止した。そこで原告は商品引渡を受ける地位確認及び商品の引渡しを請求することになりました。

同判決は以下のとおり判示し、単に継続的契約であることのみを理由とするのではなく、個別事情を考慮したうえで、継続的供給契約上の信頼関係が著しく破壊されたことを理由として、本件契約の解約にはやむを得ない事由が認められるとしています。

「本件特約店契約はいわゆる継続的供給契約と解されるところ、このような契約についても約定によって解除権を留保できることはいうまでもない。しかし本件特約店契約は、一年という期限の定めのある契約であるとはいえ、自動更新条項があり、通常、相当の期間に渡って存続することが予定されているうえ(被控訴人との契約も二八年という長期間に達している。)、各小売店の側も、そのような長期間の継続的取引を前提に事業計画を立てていると考えられること、商品の供給を受ける側において、ある程度の資本投下と、取引態勢の整備が必要とされるものであり、短期間での取引打ち切りや、恣意的な契約の解消は、小売店の側に予期せぬ多大な損害を及ぼすおそれがあることなどからすれば約定解除権の行使が全く自由であるとは解しがたく、右解除権の行使には、取引関係を継続しがたいような不信行為の存在等やむを得ない事由が必要であると解するのが相当である。」「対面販売等の販売方法の不履行は、本件特約店契約上の債務不履行となる。」「その他、本件特約店契約の解除に至る経緯をみても、控訴人はまず、被控訴人の行っていた販売方法の改善勧告をし、その後、双方とも代理人である弁護士を通じて折衝を重ね、一旦は被控訴人も控訴人との本件特約店契約に沿う販売方法をとることを約束しながら、依然としてそれに反する販売方法を継続し、控訴人の再三にわたる右約束の実行の要求を拒否し、従前の販売方法を変える意思を持たなかったものであることからすれば、控訴人の本件特約店契約に定められた販売方法の不履行は決して軽微なものとはいえず、継続的供給契約上の信頼関係を著しく破壊するものであり、本件では、右契約を解除するにつきやむを得ない事由があるというべきである。」

東京地判平成23年3月15日(平成21年(ワ)第6917号、平成21年(ワ)第39399号)

本件は、被供給者の業績不振の場合には、供給者は本契約を終了することができるとの定めのある自動車特約販売契約の供給者が被供給者の業績不振を理由に新契約締結を拒絶した事件において、新契約締結拒絶の有効性が争われた事案である。

同判決は以下のとおり判示し、継続的契約関係であることや、販売店の契約への依存度が大きいこと等の事情から、何らの合理的理由なく新契約の締結を拒絶することは信義則に反するとしたうえで、本件における当事者間の個別事情に基づいて、新契約締結に応じなかったことには合理的理由があり、信義則には反しないとしている。

「原告と被告は、毎年契約期間を1年間とする特約販売契約を締結して取引を続けてきたものであり、本件契約…は、本件契約が平成19年12月31日に終了し、自動延長するものではない旨を明記している。しかしながら、他方、一般に、自動車ディーラーは、初期に多額の投資をして何年もかけて投下資本を回収していくもので、営業実績を積み重ねて固定客を獲得する側面もあり、そのことは被告においても当然に理解して原告との契約を締結していたと推認される上、契約の一方当事者が当事者間の合意の下に取引の継続を前提とした投資を行っているような場合には、他方当事者は、契約期間の定めにかかわらず、取引の継続に向けて協力すべき信義則上の注意義務を一定の限度で負うと解されることからすれば、何らの合理的理由もないのに被告が新たな契約の締結を拒絶して原告との特約販売契約関係を終了させることは信義則に反して許されないというべきである。」「原告の協定台数達成率の全国平均との差は、平成16年が約48%、平成17年が約30%、平成18年が約42%、平成19年が約40%であったというのであるから、原告の営業実績は看過し難いほどに不良であったといわざるを得ない。」

他方で、「①本件ショールームの設計プラン及び場所は原告側で選択・決定したものであり、その転用は可能であって、現実にも既に中古車センターとして転用されていること」、「②原告は、被告との取引の外、I車の正規ディーラー店及び××車の協力店を務め、それぞれ専用ショールームを有し、各ブランド車のほか、○×車や△△○車の販売、中古車販売や車検業務等を手掛けており、平成16年から平成18年までの原告の新車・中古車・整備・手数料・保険の売上合計のうち」被告の扱う「△△車関係の割合は20%前後にすぎなかったこと」、「③△△車の日本国内における市場シェアは高いものではないこと」、「④原告は、実際の契約関係の終了の数年前から再三にわたり書面等により業績不振と契約終了の可能性について警告されていたし、口頭による正式の申入れからでも終了までには半年程度の期間があったこと、「⑤被告においては平成20年もサービス・部品取引の契約の継続を申し入れており、原告の意向にかかわらずすべての取引を直ちに打ち切るというものではなかったこと」「等の事実を合わせて総合考慮すれば、本件において被告が平成20年以降の新契約の締結に応じなかったことには合理的な理由があり、これが信義則上許されないものとはいえないというべきである。」

裁判例上考慮されている個別事情

継続的契約の解消に関して上記のものを含めて裁判例上現れた事案においては、その判断の要素として様々な要素が考慮されています。具体的には、①自動更新条項の存在や、現実に自動更新が繰り返されていたなど、実際には契約が長期間継続することが期待されていたこと、②被解除者が当該取引のための設備投資や販売体制の整備などに多額の投資をしていたことや被解除者の相手方への経済的依存度などに基づいた契約関係の解消が被解除者に与える影響の度合い、③被解除者が固定客を獲得していたことなどの被解除者の取引への貢献、④被解除者の契約違反行為や背信行為、又は信用不安や財政状態の悪化、組織体制の変更などの事情の変更、⑤解約告知期間や損失補償の存在などの事情です。これらの検討要素から、契約解除がすべて自由にできるのではなく、一定の場合には契約書の文言にかかわらず、信義則上、契約解除が制約されることがあると考えることができます。