• 2020.09.01
  • 国際紛争

外国企業に対する訴訟提起

事案の概要

当事務所の顧問先T社は、商品代金(800万円)の前払いによりアメリカのメーカーに商品を作ってもらい、日本に送付してもらったところ、送られてきた商品は仕様書記載の商品とは全く異なるものでした。T社は、仕様書と全く異なる商品は販売できないので、前払代金全額を返還するよう求めたところ、アメリカのメーカーは返還するお金がないと言って代金の返還に応じてくれません。T社では長く協議を続けてきましたが、これ以上放置すると時効にかかってしまうということで当事務所に相談に来られました。

栗林総合法律事務所のサービス内容

栗林総合法律事務所では、時効の中断を行うには訴訟提起が必要との判断で、売買契約書などを基に訴訟の可能性について検討しました。商品の売買契約書には管轄に関する規定がなく、また履行地の定めがある場合は履行地を管轄する裁判所に管轄がある可能性もありますが履行地の定めも不明確でしたので、民事訴訟法の原則からは被告の所在地であるアメリカのX州の裁判所が管轄を有することになります。しかしながら、当該取引を代理したエージェントが日本にいる場合、エージェントとアメリカのメーカーを共同被告とすることで併合事件による管轄を取得することができます。当事務所では、この規定を適用することで、日本の裁判所に管轄を取得することができるとの判断のもと、日本の裁判所に訴訟提起をして時効を中断することができました。なお、この訴訟では、被告が裁判に応訴してこなかったものの、原告全部勝訴の判決が下されました。

被告の普通裁判籍

訴訟においては、被告の普通裁判籍は、被告の住所地(民事訴訟法3条の2)になりますので、外国の当事者の場合、その本国が管轄裁判所となることが原則です。この場合、日本の裁判所は管轄権を有しませんので、日本の裁判所に訴訟を提起しても却下されることになります。但し、応訴管轄の適用はありますので、外国の当事者が管轄の不存在を争わずに応訴してきたときは、日本の裁判所に管轄が生じることになります。従って、ダメもとでもとりあえず日本の裁判所に訴訟を提起してみようという判断はあり得ます。

合意管轄

応訴管轄(民事訴訟法3条の8)の他、当事者が合意した場合の合意管轄(民事訴訟法3条の7)、併合請求における管轄(民事訴訟法3条の6)、契約上の訴えによる義務履行地の管轄(民事訴訟法3条の3第1号)などにより管轄が認められることもあります。外国の当事者に対する管轄権については、民事訴訟法3条の2から3条の12までに定めがありますので、これらを確認する必要があります。

海外の被告への送達

海外の被告に対する送達を行う場合には、訴状や証拠については、現地の言葉に翻訳しておくことが必要になります。また、証拠については、弁護士の翻訳証明書を付けます。訴状に関する基本的な用語としては次のようなものがあります。なお、当事者目録については、カタカナ表記を付す必要がありますので、当事者の名称、住所などをどのように表記するかを決める必要があります。

Complaint    訴状
Plaintiff     原告
Defendant    被告
Parties      当事者
Object of Claim  請求の趣旨
Cause of Claim  請求の原因
Evidence     証拠

領事館送達

外国企業に対する送達は多くの場合領事館送達の方法が取られると思われます。訴訟の係属した裁判所から、現地の日本の領事館や大使館に対して送達を依頼(嘱託)します。嘱託は、「送達嘱託書」という書面を渡して依頼することになります。これを受けた大使館や領事館は、通訳人が翻訳した①第1回口頭弁論期日呼出状、②答弁書催告状、③送達場所の届出のお願い、とともに訴状及び証拠等が郵便などによって送付されることになります。送達の結果については、送達結果報告書により、外務省領事局を通じて最高裁判所事務総局に伝えられることになります。

送達条約に基づく送達と中央当局送達

送達条約とは、1968年の「民事又は商事に関する裁判上及び裁判外の文書の外国における送達及び告知に関する条約」を指します。日本は1970年に批准しています。送達条約を批准している場合は、送達条約が民訴条約(1954年「民事訴訟手続きに関する条約」)に優先適用されます。中央当局送達とは、最高裁判所事務局から外国の中央当局(外務省や司法省)に要請して行う送達です。

欠席判決と公示送達

送達がなされた場合は、外国企業の側で日本の管轄を争わない場合には、原告の請求の内容を認める欠席判決がなされることになります。一方、被告が送達された書面を受け取らなかったり、被告の所在場所が不明確で送達できなかった場合は、公示送達の方法により送達を行う必要があります。

外国企業に対する強制執行

外国企業に対する判決を取得した場合、外国企業の財産が日本国内にあれば、その財産を差押えることになります。もし外国企業の財産が日本国内に存在しない場合には、外国企業の本国に、判決の承認決定の申立を行い、外国での承認決定を得た上で、現地にある財産の差押え、換価を行うことになります。

口頭弁論期日呼出状及び答弁書催告状

海外への送達を行う場合は、口頭弁論期日呼出状及び答弁書催告状の翻訳(被告の所在する国の言語への翻訳)が必要となります。これらの書類の翻訳は裁判所が指定した通訳人が行ってくれます。下記は口頭弁論期日呼出状及び答弁書催告状の英語訳のサンプルになります。

Case Number (Wa)Case Number 179 of year 2020
Plaintiff ○○ Co., Ltd.
Defendant XX Co., Ltd.

Summons for Date of Oral Proceeding and notification of Submission of Written Reply

May 1, 2020
Defendant XX Co., Ltd.
Representative Director Mr. Tom Smith

Second Civil Affairs Division
Tokyo District Court
Court Clerk Kazuo Tanaka

A written Complaint has been submitted by the Plaintiff regarding the case mentioned above. The date and place for your appearance before this Court have been decided as shown below. Please appear before the Court accordingly. A duplicate copy of the Written Complaint is being sent to you. Please submit your written reply to this by the deadline of its submission as stated below:
Date and Time June 30, 2020 10:00 AM
July 25, 2020 10:30 AM
September 3, 2020 10:00 AM
Room of Appearance Court room 803
Deadline of Submission of Written Reply June 10, 2020
(Kindly show this Summons at the above-mentioned place during appearance)