• 2020.09.01
  • 外資系企業の法務

Legal Opinion(法律意見書)

法律意見書の作成

外国との取引を行う中で、日本の弁護士による英語での法律意見書の作成を求められることが多くあります。訴訟の場合に専門家証人(Expert-Witness)として日本法の解釈について意見を求められることもありますが、取引の過程においては、当該委任状や契約書の署名が有効であるかどうか、署名者が正当な権限を有しているかどうかなどを確認するための手段として英語での法律意見書の作成を求められることが多くあります。

本人の同一性と公証人の認証

ある文書の署名者が本当に本人によるものであるか、サインが本人のものであるかどうかについては、公証人(Notary Public)の認証によって確認することができます。公証人はどこの国であっても、本人の署名であることを認証する手続きを行いますので、公証人が認証したサインについては本人のものであることが確認できます。また、公証人の認証文自体が本物であるかどうかを確認するためには、Apostille(アポスティーユ)という日本の外務大臣による認証を受けることが多くあります。また、文書によっては日本国の公的機関による認証では不十分であると判断される場合があり、その場合は領事館認証という手続きにより相手国の領事館で認証を得ることも可能です。例えば、アメリカの登記手続きに要する文書の認証は領事館認証が求められますので、日本に所在するアメリカ大使館において認証を行う必要があります。同様に香港の裁判所に提出する文書については、日本に所在する香港の領事館の認証を求められることが多くあります。

法律要件の確認と法律意見書

上記のような認証手続きは、本人の同一性に関するものであり、文書の内容の信憑性に関するものではありません。ところが日本企業と取引しようとしている相手国の当事者としては、仮にサインする人が本人(あるいは会社の代表者)であっても、その人自体が日本の法律上サインする権限を有しているのかどうか不明な場合があります。この場合は本人性の確認だけでは足りず、法的要件を充足しているかどうかが問題ですので、法律の専門家である弁護士からの証明書を求めることになります。

会社法上の手続確認と法律意見書

例えば、日本の会社が香港の不動産を所有している場合において、香港の弁護士や仲介人に権限を委任して、所有する不動産を売却してもらいたいと考えることがあるかもしれません。この場合、香港の買主からすれば、本当にその弁護士や仲介人が不動産の売却を行う権限を有しているかどうか(委任状が有効なものであるかどうか)不安になりますし、日本法上の正当な手続きを経たものであるかどうかも分かりません。そこで、このような場合、現地(上記の件では日本)の弁護士による意見書を作成してもらい、委任状が正当な権限者により作成されたもので、当該不動産の売却に際して必要な日本法上の手続(例えば取締役会決議や株主総会決議)を正当に踏んでいることを確認してもらえれば安心して取引をすることができます。また、日本の会社が破産や民事再生法を申請している場合は、監督委員の同意や裁判所の同意がないと不動産の売却はできませんので、日本の弁護士の意見書には、このような手続きが係属していないことも含まれることになります。会社が法律行為を行うに際してどのような手続きを経る必要があるかの判断は法律家に求められる事項であり、まさに弁護士が行うべき判断になります。弁護士は会社の定款、商業登記簿、取締役会規則、取締役会議事録などを参考にしながら適切な役員会決議がなされているかどうか、契約に署名する役員が会社を代表する権限を有しているかどうかを判断します。

新株発行手続きに関する法律意見書

同様に日本の会社が海外の投資家に対して新株発行を行う場合に、日本の会社が取締役会決議など新株発行手続きをきちんと踏んでいるかどうかを確認するためには、日本の弁護士から当該新株発行手続きは日本の会社法に従ったもので、問題ないことを確認してもらうことが必要になります。

法令の規制や法令違反の有無に関する法律意見書

当事務所で作成する意見書には、契約書の締結や第三者割当増資に関して会社法上の手続きを踏んでいることを確認する内容の他、法律の内容についての意見書を作成することもあります。ある商取引を行う場合、それが日本の法令に違反していないかどうかについての意見書などです。例えば、日本国内で人材派遣業を行う場合、政府の許認可が必要かどうか、仮に必要な場合はどのような基準を満たす必要があるのか、許可を得るための手続きはどのように行うかについての意見書を作成します。

法律の解釈に関する法律意見書

法律の解釈に関する意見書を求められることもあります。例えば、従業員との競業避止義務契約を締結したが、その契約の内容は法的効力を有するものであるかどうかを書いた意見書や、日本の知的財産権に関する法律の域外適用に関する意見書(例えば特許法では発明者に相当の報酬を支払うことが求められていますが、日本企業に就職したが海外で勤務している人にも適用になるかどうかなど)などが該当します。

裁判所に提出する法律意見書

裁判所に提出する意見書にも、日本の戸籍上親子関係が認められるかどうかについての意見書等定型的なものから、日本の法律の解釈に関する複雑な内容のものまであります。当事務所でニューヨークの裁判所に提出した意見書では、不法行為による損害賠償請求権の時効の開始時期について100個くらいの判例を調査分析し、その結果をまとめることで数十ページの意見書を作成したこともありました。

法律意見書の作成方法

このような場合に求められるのが弁護士の意見書です。弁護士は、委任状、商業登記簿謄本、取締役会議事録、定款等の基本的書類を確認し、それらの書類が偽造でないことを前提として、本人による署名がなされているかどうか、当該署名者が当該取引を行うについての正当な権限を有しているかどうかなどを証明する意見書を作成します。

法律意見書のフォーマット

意見書のフォーマットについては、特に制約はありませんが、場合によっては公証人による認証を求められることもあります。この場合、弁護士は公証役場に赴き、公証人の面前で当該書面に署名することになります。また、公証人の認証自体が正当なものであることを確認するためにアポスティーユという手続きを取ることもあります。

英語による法律意見書のサービス

栗林総合法律事務所は、これまでいろいろな会社や個人からの依頼に基づき、様々な意見書を作成してきました。法律意見書は日本語で作成される場合もありますが、英語で作成される場合もあります(大部分は英語での作成となります)。栗林総合法律事務所は、日本企業が海外の会社との取引を行う過程で必要となる法律意見書を作成いたします。

法律意見書作成に関する弁護士報酬(基本報酬額)

当事務所の法律意見書の作成に関する弁護士報酬額の標準額は次の通りです。個別案件については、お問合せください。事前に見積書を作成いたします。見積書作成費用は無料です。

法律意見書作成(日本語) 30万円から150万円
法律意見書作成(英語) 40万円から200万円

Re: ●● COMPANY LIMITED (“the Company”)
●●株式会社に関し

Legal Opinion
法律意見書

I am a lawyer duly qualified to practice law in Japan and well familiar and conversant with the laws of Japan.

私は日本で実務を行う正当な資格を有する弁護士であり、日本の法律に精通している。

At the request of the Company, I have agreed to render this legal opinion in relating to the validity in accordance with the laws of Japan on a Power of Attorney dated ● made by the Company in favor of Chan Davis (“the Power of Attorney”).

私は、●年●月●日、会社からチェン・デイビス氏に対して与えられた委任状の日本法上の有効性について、会社の依頼により、法律意見書を提出することに同意した。

For the purpose of giving this legal opinion, I have examined copies of the following documents:
法律意見書を作成するために、以下の書面の写しを確認した。

(1) The Power of Attorney;
(1) 委任状

(2) Resolutions of the Company dated;
(2) 2020年1月1日付の会社決議書

(3) Articles of Incorporation of the Company.
(3) 会社の定款

I have also conducted such searches and made such enquiries as I think necessary for the purpose of giving this legal opinion.

私は、本法律意見書を作成するために必要と思われる調査を行い、照会を行った。

This legal opinion is restricted to the laws of Japan only. I have not investigated, nor do I seek to express any opinion on, the laws of any other jurisdiction.

本法律意見書は、日本法についてのみ述べられるものである。私は、他国の法律について調査しておらず、他国の法律について意見を表明しようとするものでもない。
Based on the foregoing, I am of the opinion that:
以上に基づき、私の意見は下記の通りである;

The Company is duly incorporated under the laws of Japan and is in good standing under the laws of Japan.
会社は日本法に準拠し、正当に設立されており、日本法の下で正当に存続している。

The Company has legal capacity to hold and dispose of interest in land in any country, provided that the laws of that country permit the Company to do so.
会社は、該当国の法律により会社が行うことができる限りにおいて、如何なる国に存在する不動産であってもこれを保有しまたは処分する法的権限を有している。

The Company has power and authority to make the Power of Attorney and has taken all necessary actions to authorize the execution of the Power of Attorney.
会社は委任状を作成する権能と権限を有しており、委任状を作成するための全ての必要な手続を行っている。

Under the laws of Japan, there is no need for a company incorporated in Japan to have any common seal, which as I understand is a metallic seal used by companies incorporated under the British common law system. The Company does not have a common seal.
日本法の下では、日本法により設立された会社は、私の理解では英国の衡平法のシステムに基づき設立された会社で使用される金属製の印鑑に該当するコモンシール(印鑑届出をした印鑑)を保有しておく必要はない。会社はコモンシールを有していない。

The Power of Attorney has been validly executed by the Company and constitutes legally valid and binding powers and obligations of the Company enforceable against the Company in accordance with its terms.
本委任状は、会社によって有効に作成され、会社に対する法的に有効かつ拘束力のある権限と義務を構成しており、その内容に従って会社に対して執行することができる。

There is no need for the Company to obtain approval from any Japanese governmental authority in connection with the Power of Attorney.
会社は、本委任状に関して、日本政府から承認を得る必要はない。

No stamp duty or other tax is payable by the Company in connection with the Power of Attorney.
会社は、本委任状に関して、印紙税その他のいかなる税金も支払う必要はない。

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