• 2024.02.08
  • 人事労務

国際的労務紛争で和解を成立させた事例

事案の概要

当事務所の依頼者である外資系企業において、解雇された従業員から会社に対して解雇無効確認請求訴訟が提起されました。栗林総合法律事務所は会社からの依頼により被告である会社を代理して訴訟追行することとなりました。

国際的労務紛争におけるポイント

外資系企業においては、英文による雇用契約書が締結されており、準拠法をアメリカの特定の州の法律(例えばニューヨーク州法)とする旨を雇用契約書の中で明確に定めていることが多くあります。ニューヨーク州などアメリカの多くの州の法律では、日本のように解雇を制限する規定はありませんので、ニューヨーク州法の適用がある場合は、解雇の有効性自体が争われることもなくなります。そこで、会社側の立場からすれば、契約書に基づきアメリカの州の法律を適用してほしいということになります。しかしながら、法の適用に関する通則法では、当事者の合意により準拠法の選択ができるとしながらも(通則法7条)、労働者が当該労働契約に最も密接な関係がある地の法の中の特定の強行規定を適用すべき旨の意思を使用者に対して表示したときは、その強硬法規も適用になるとされています(通則法12条1項)。日本で労務の適用をする場合は、日本の法律がその労働契約に最も密接な関係がある地の法律とされますので(通則法12条2項)、結局日本での労務提供がなされている場合の労働契約の有効性についての解釈については、アメリカの特定の州の法律を準拠法とする旨の合意がある場合であっても、日本の労働法が適用になることになります。この裁判では、準拠法について争うことは辞め、日本の労働法に基づく解雇の有効性に絞って弁論を行うことにしました。

栗林総合法律事務所による業務の結果

解雇の有効性については、労働契約法16条において、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」と定められています。従って、①客観的に合理的であるかどうか、②社会通念上相当であるかどうかが、判断事由となることになります。また、懲戒解雇の場合であっても労働契約法15条に規定がありほぼ同等の条件で判断されることになります。当事務所では、日本法人の代表者(アメリカ人)へのヒアリングを行い、その内容を英語と日本語にまとめて陳述書としました。また、原告がIT企業であるにもかかわらず、ソフトウェアの開発についての能力が著しく劣ることや、会社内での協調を乱す行為の数々を多くの従業員の証言により陳述書にまとめて裁判所に提出することができました。陳述書はすべて関係者からの聞き取りを行ったうえで、当事務所で文章化していますので、陳述書作成について相当の労力を要することになりました。裁判では、裁判所から積極的に和解を行うよう勧告(和解の勧試)がなされましたので、会社としてはできるだけ裁判所の指示に従おうということになりました。しかし、原告の側としても長期の裁判に耐え抜く経済的精神的負担が大きいということで、最終的には、従前の平均月額給与の3か月程度の和解金を支払うことで和解が成立することになりました。会社にとっては、あまり大きな負担となることなく、早期に解決できましたので、勝訴的和解と判断いただいています。

栗林総合法律事務所によるサービス内容

栗林総合法律事務所では、国際的要素のある労務紛争を多く取り扱っています。退職や懲戒処分に関連する問題が多くあります。依頼者が外国法人の場合は、英語で対応いたします。また、雇用契約書や就業規則が英語で作成されている場合は、翻訳作業なども栗林総合法律事務所が提供する業務に含まれることになります。国際的労務紛争については、是非栗林総合法律事務所にお問い合わせください。