エアハース・
インターナショナル株式会社
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木村 利惠 様
エアハース・インターナショナル株式会社
代表取締役社長 -
栗林 勉
栗林総合法律事務所
代表弁護士
国際的なご遺体送還の仕事
今日はエアハースインターナショナル株式会社 代表取締役社長の木村利惠様にインタビューをさせていただきます。よろしくお願いいたします。
こちらこそ、よろしくお願いいたします。
まず、御社の会社概要や業務内容について教えてください。
弊社は2003年に設立され、国際間のご遺体およびご遺骨の送還を専門としています。葬儀は行わず、海外から日本にご帰国されるご遺体を、ご遺族の方が受け入れやすいように整えて国際送還することが主な業務です。具体的には、ご遺体を防腐処理を行い、日本の火葬用の棺に納めてからご遺族のもとにお連れします。また、異国からのご遺体送還には特殊な大型特殊寝台車が必要で、弊社はそのためのラボ付きの特殊な大型車両を複数所有しています。
海外で亡くなった日本人のご遺体やご遺骨を、日本に戻してご家族に届けるということですね。
そうです。また最近では、円安の影響で外国人観光客が増えており、その中で日本で旅行中の高齢者の方が亡くなるケースも増えています。そのため、外国籍の方のご遺体を母国に送る業務も増えています。
どの国からの依頼が多いですか?
アジア圏の出稼ぎ労働者が多い国からの依頼もありますが、費用面の問題で送還が難しいことがあります。一方、比較的裕福な欧州やアメリカ、香港の方々からの依頼が多い印象です。また、最近はCOVID-19の収束に伴い、クルーズ船での世界旅行が流行しているため、旅行中に亡くなった高齢者のご遺体送還の依頼も増えています。
最近、ポーランドに行かれたとお聞きしましたが、現地での提携活動も活発に行っているのですか?
はい、昔から積極的に行ってきました。最近は経営方針の問題もあり、一時的に活動を控えていましたが、再び力を入れ始めています。ポーランドでは昔の仲間たちと再会し、彼らの歓迎を受けて、関係の深さを改めて実感しました。今後も国際的な絆を大切にし、活動を続けていきたいと思っています。
過去の経験で特に印象に残ったケースはありますか?
毎年様々なケースがありますが、特にここ数年は事件に巻き込まれて亡くなった日本人の方が多く、その対応が印象に残っています。
特に事件性のあるケースでは、必ず現地で司法解剖が行われます。ご遺族の方はどんな状況でも日本に連れ帰りたいという強い思いを持っていますが、場合によっては日本に到着してから再び司法解剖を受ける必要があることもあります。
ご遺族にとっては二度もご遺体を解剖されることは非常に辛いことです。ご遺族の方の悲しみは計り知れません。私はその悲しみを和らげるために粘り強く警察と交渉を重ねご遺族の心のケアを行っています。
今年はそういったケースが3~5件ほど続いたことが印象的でしたね。
国際的な送還には時間がかかることもあるのでしょうか?
はい、国によっては1か月半以上かかることもあります。気候や湿度の影響でご遺体の状況が悪化することもあるため、迅速な対応が求められます。
警察との交渉では、現地での司法解剖の結果をもとに、日本でのさらなる検査を必要最小限にとどめるために努力しています。
過去に扱ったケースの中で、特に大変だったものについて教えてください。
テロ事件や小さなお子さんが亡くなったケースは特に胸が痛むものでした。
ドラマ「エンジェルフライト」でも描かれたように、事件や事故に巻き込まれた方々の送還はより特別な意味を持ちます。赤ちゃんが突然亡くなってしまうケースもあり、そのご遺族にとっての悲しみは計り知れません。小さなお子様の死というのは私も未だに受け入れがたく感じますが、私たちは、ご遺体が無事にご家族の元に戻るまでの過程で、できる限りのサポートを行っています。
「エンジェルフライト」の
書籍化・ドラマ化
「エンジェルフライト」という作品についてもお話しください。
「エンジェルフライト」は弊社の商標登録で、ノンフィクション作品として書籍化(『エンジェルフライト 国際霊柩送還士』)され、ドラマ化(「エンジェルフライト」)にもされました。
実は、作者の佐々涼子さんが私をモデルにした本を書かせてほしいと弊社にいらっしゃったのですが、その時は一度お断りさせていただいた経緯があります。しかし、その後諦めきれなかった佐々涼子さんが業界のことを更に勉強なさった上で、どうか本を書かせてほしいともう一度弊社にいらっしゃいました。佐々涼子さんの熱意を感じた私は、本の執筆にあたり1か月半ほど彼女を弊社で預かりました。佐々涼子さんは何度も私の仕事を間近で見学し、私がどのようにご遺族と向き合い、どのように業務を遂行しているかを理解するために努力しました。
私も監修に深く携わり、言い回しや捉え方などを細かくチェックし修正しました。その結果、事実に基づいたリアルな作品に仕上がりました。2012年に第10回開高健ノンフィクション賞を受賞しましたが、私の手直しの功績もかなり大きかったのではないかなと思います(笑)
ドラマ化においても、米倉涼子さんが私をモデルにしたキャラクターである伊沢那美を演じ、彼女は、伊沢那美よりも木村利惠を演じたいと強く思ってくださり非常に感動的な仕上がりとなりました。
視聴者からの反響はいかがでしたか?
ドラマは非常に多くの視聴者の方々に支持されました。特に「エンジェルフライト」は一度だけでなく何度も見直されることが多く、Amazon Prime Videoで配信されて以来、トップの人気を誇っています。
脚本は私の経験を元にしており、リアルな描写が多く含まれています。古沢良太さん・香坂隆史さんが脚本を手がけてくれて、フィクションとして多少の脚色はありますが、ほぼ私の実体験に基づいています。私の経験や弊社の技術スタッフの力添えがドラマの軸となって、リアルな仕上がりのドラマになりました。
主演の米倉涼子さんも「伊沢那美を演じるのではなく、木村利惠自身を演じたい。利惠さんがやっている全力をかけてご遺体、ご遺族のサポートを行うという尊い行為を私も全力をかけて100%以上の力で演じたい」とおっしゃってくださったからこそ、みんなの熱意や力がこもったドラマが完成したのだと思います。
米倉涼子さんも御社にいらっしゃったのでしょうか。
はい、米倉涼子さんも弊社に来て私と一緒に仕事をしたりしました。そういった現場での経験も相まって、米倉涼子さん自身にもだんだん私の気性や性格が憑依していったような部分があり、私と米倉涼子さんの雰囲気がとても似てきたと言われたこともありました(笑)
業界の今後
ドラマのこれからの展望が楽しみですね。
ところでこの国際的なご遺体送還の業界について、今後はどのようにお考えですか?
「エンジェルフライト」の書籍やドラマが放送されたことで、この業界に関心を持つ方が増えました。私もテレビ出演などを通じて業界の実情を伝える機会がありました。しかし、その一方で、似たような業務を行っているという業者が増え、法令順守が不十分なところも多いです。
国際霊柩送還の業務は本当に奥が深く、私たちは警視庁や外務省、国土交通省などの所管庁と密接に連携し、コンプライアンスを重視した業務を行っています。しかしそうでない業者が非常に多いのが現状です。そのため、正しい業務を行うためのルール整備が急務だと感じています。
法令遵守を徹底するための取り組みを進めているのですね。
そうです。例えば、国際的な送還業務の協会と連携しながら、業界全体のルールづくりを進めています。ポーランドで再会した仲間たちとも自国の法令を守りながら業務を行っており、私たちも日本で同様の取り組みを強化していきたいと強く思っています。
栗林総合法律事務所のサポート
栗林総合法律事務所と長年にわたって顧問契約を結んでいただいていますが、その経緯や感想を教えていただけますか。
当初、依頼していた弁護士に問題があり、信頼できる法律事務所を探していました。いくつかの候補の中から栗林先生にお願いすることにしたのですが、それ以降、国際的な問題に対応する際にも非常に助けていただきました。
栗林先生は、法務面でのサポートだけでなく、多方面にわたる問題にも迅速に対応してくださり、グローバルに活躍されている方なので安心して任せられます。相談後の回答が早く、時間を有さない我々には大変ありがたく思っております。
また、私のような直情的な性格の人間にも寄り添って、冷静かつ的確なアドバイスをしてくれるのが本当にありがたいです。
ありがとうございます。今後もぜひ長いお付き合いを続けさせていただければと思います。
もちろんです。これからもよろしくお願いいたします。
今日はお忙しい中、インタビューにお答えいただきありがとうございました。
こちらこそ、ありがとうございました。
会社概要
社名 | エアハース・インターナショナル株式会社(Airhearse International Inc.) |
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URL | https://www.airhearse.com/ |
設立 | 2003年(平成15年)12月 |
代表 | 代表取締役社長 木村 利惠 |
資本金 | 300万円 |
事業内容 | 外国で逝去された邦人、並びに日本で逝去された外国人の遺体の国際霊柩送還とこれに関わる火葬代行業務、書類作成・諸官庁申代行及び受理・並びに各種代行及び受理、ご遺体処置並びに一般貨物自動車運送事業(霊きゅう)及び利用運送事業、左記に付随する葬祭用具販売、左記に付随するコンサルティング並びに各種手配 |