• 2024.02.16
  • 外資系企業の法務

フランスの上場会社の日本子会社を設立した事例

事案の概要

フランスの上場企業から、「日本の顧客からの注文が増えてきたので、日本におけるエンティティ(entity)を設立したい。」との提案を受けました。日本のエンティティの設立に関しては、子会社とするか、支店(ブランチ・オフィス)とするか、連絡事務所(リエゾン・オフィス)とするかを選択する必要があります。どのようなエンティティを設立するかによって、従業員の雇用や取引契約書の作成などのビジネス上のニーズのほか、税務上の扱いやビザの問題なども異なってきます。日本においてどのようなエンティティを設立するかをアドバイスするためには、依頼者のニーズを踏まえたうえで、これらの相違について正確に理解しておく必要があります。また、日本の会社法では、会社の種類として、株式会社、合同会社、合名会社、合資会社の4つの種類について定めがあります。仮に、日本の子会社を設立することが定まった場合であっても、どのような種類の会社を設立するかについて別途決定する必要があります。

外国会社の子会社設立のポイント

外国企業の日本子会社を設立する際には、資本金の払い込みを行う金融機関をどこにするかを検討する必要があります。最近ではマネーロンダリングの規制が厳しくなっている一方で、払込証明書の交付業務を行う金融機関が減ってきています。外国企業を発起人とする場合、会社の設立段階では日本における代表者が存在しない場合も多くありますので、資本金の振込口座をどのようにして開設するかを検討する必要があります。また、会社の状況によっては、当初の段階でオフィスを借りる余裕がないので、バーチャルオフィスを本店住所としたいという要望も増えています。当事務所では、海外の依頼者の状況に応じて払込金の支払を受ける銀行口座の開設についてアドバイスを行ったり、海外の依頼者からバーチャルオフィスの依頼がある場合は、いくつかのバーチャルオフィスを扱っている会社様を紹介するようにしています。

栗林総合法律事務所における作業の結果

栗林総合法律事務所ではフランス企業との間においてeメールによる連絡を繰返しながら、日本におけるエンティティの種類や会社の種類について説明を行い、依頼者の理解を得るように努めました。その上で、日本のエンティティとしては株式会社を設立することに決定しましたので、当事務所のチェックリストに基づき、設立しようとする会社の基本的事項を決定いただき、それを日本語と英語の定款の内容に落とし込んでいきました。本件では、日本の事業は始まったばかりであり、日本の子会社についてはできるだけシンプルな機関設計にして欲しいという依頼にこたえるために、株主総会は存在するものの、取締役会や監査役は置かない機関設計としました。その結果、取締役が1名だけの会社となり、取締役会の開催などの複雑な手続きを省略できるようにしました。一方で、取締役の任期を2年とし、株主総会における取締役の選解任の手続きを通じて、株主による取締役に対する監督機能を果たせるようにしました。会社の定款、その他設立に関連する書類については、全て英語と日本語の両方で作成しています。

栗林総合法律事務所のサービス内容

栗林総合法律事務所ではアメリカやヨーロッパの会社、中国やアセアン諸国の会社からの依頼により、日本におけるエンティティ(entity)の設立を多く依頼されています。日本におけるエンティティ(entity)の設立にあたっては、日本においてどのような事業活動を行う予定であるかによって、子会社(subsidiary)を設立するか、支店(ブランチ・オフィス)の開設を行うか、営業所(リエゾン・オフィス)の設置とするかについて決定を行う必要があります。当事務所では、これらのエンティティ(entity)の法律上の違いや税務面における違いを英語で説明し、海外の依頼者の意思決定が円滑に行われるよう支援しています。また、子会社を設立する際には、株式会社とするか合同会社とするか、合名会社、合資会社とするかを決定する必要があります。これらについて、出資者が有限責任を負うのか(株式会社・合同会社)、無限責任を負うのか(合名会社・合資会社)、取締役や株主総会などの機関設計をどのように行うのかなどにおいて違いが生じてきます。当事務所では、設立費用の相違、日本におけるリピュテーション、剰余金の分配、役員の権限などについて詳細に説明し、理解をいただいた上で会社の種類を選択いただくように心がけています。また、最近では、犯罪収益移転防止法に基づき、2018年11月から公証役場での定款認証の際に、新しく設立する会社の実質的支配者に関する申告書の提出が求められるようになりました。当事務所では、海外の依頼者との密接な連絡を通じて実質的支配者の確定についてのアドバイスを行うとともに、関係文書の翻訳、実質的支配者のIDや定款の翻訳などを行うことで、実質的支配者の報告を円滑に行えるよう支援いたします。また、外為法の改正により、セキュリティソフトの開発や日本の防衛や産業政策上有意な事業を行う会社を設立する場合には、日本銀行への事前届出や事後報告が義務付けられることがあります。当事務所では、これらの最新の法律に基づく各種の届出代理を含め、外国会社の日本子会社設立に関する手続きを代行しています。外国会社の子会社の設立に関する弁護士報酬は、株式会社の設立の場合40万円で、合同会社の設立の場合、30万円となっています。但し、外為法上の事前届出が必要な場合は、事前届出か、事後報告かに応じて追加報酬が必要となります。