• 2021.11.11
  • 国際紛争

ドイツ企業と品質保証の確認を行った事例

国際紛争事案の概要

当事務所の顧問先のM社は、ドイツの会社から炭酸飲料を輸入し、日本国内で全国展開する大手コンビニエンスストアに販売していました。ところが、コンビニエンスストアからは、納品されたケースに破袋があり、炭酸飲料が外部に染み出ているとか、製品を梱包する段ボール箱がひしゃげているなどのクレームがたびたびなされることになりました。コンビニエンスストアからは、今後同様の欠陥が生じた場合には取引を中止するとの厳しい指導を受けることになりました。M社の社長は、納品前検査を慎重に行い、納品前の段階でできるだけ欠陥品の除去を行うとともに、ドイツの会社に対しては、品質改善をお願いしたいと考えていましたが、どのように対応すればいいかが全く分かりませんでした。そこで、ドイツの会社(炭酸飲料の輸出元)に対してどのような申し入れをすべきかを相談するため、栗林総合法律事務所に相談にこられることになりました。

栗林総合法律事務所による紛争解決

当事務所の顧問先とヨーロッパの輸入元との間には、英文による売買基本契約書(Basic Sale and Purchase Agreement)が作成されていました。その中では、品質保証についての記載もなされており、欠陥品については売主の責任であることが明示されています。ところがドイツの会社では、パウチの強度不足により一定頻度で起こるパウチの破損や、箱詰めされた段ボールの損傷については、製品そのものの欠陥とは違うとして、これを債務不履行であるとの認識を有していませんでした。また、販売先であるコンビニエンスストアのクレームについての対応は輸入元である日本の会社の責任であるとの認識を有しており、当事務所の顧問先からのクレームに対しても真剣に対応してくれていませんでした。そこで、当事務所では、顧問先会社の代理人として、輸出元企業に対して、日本の品質保証基準に従えば、パウチの破損や製品を梱包する段ボール箱の破損は債務不履行であり、顧客からのクレーム品は全て回収し、回収に要した費用の実額をドイツの会社に対して全て請求することになる旨をメールで伝えました。その後、ドイツの会社とメールによるやり取りを何度か行うなかで、日本の商習慣について理解を頂くとともに、当事務所の顧問先にとって大手コンビニエンスストアが販売先としていかに重要な存在であるかを認識してもらうことができ、梱包作業の品質改善に取り組んでもらえることになりました。栗林総合法律事務所では、ドイツの輸出元との協議をさらに続け、顧問先企業の了解を得て、これまで発生した回収費用については日本企業が負担することに合意する一方で、現在ある売買取引基本契約書(Basic Sale and Purchase Agreement)のサイドレターとして、品質保証の具体的内容として、問題となりうる項目をできるだけ箇条書きで羅列し、その中に、パウチの破袋や、梱包する段ボールの破損も債務不履行であることを明確にしました。サイドレターは1枚の書面にまとめたものですが、双方の代表者がPDFによる署名を行い、売買取引基本契約書の一部であることを確認しています。

国際紛争解決のポイント

外国企業との輸出入取引に関しては、異なる商慣習や認識の相違により、思わぬ意思の齟齬が生じてしまうことがあります。本件のように日本の商慣習からすれば、当然に販売者の責任であると考えられる事案についても、外国の当事者からはなぜそれが重要な問題になるのかを認識してもらえないこともあります。また、商品を梱包する段ボールのひしゃげなどを問題とするかどうかも、取引当事者の意識によって大きく異なってくることがあると思われます。栗林総合法律事務所では、このように異なる商慣習の取引事業者どうしの取引の中で、日本の商慣習上どのような扱いが求められているのかを十分に説得し、取引当事者にしっかりと納得していただくことが重要であると考えています。これにより状況に応じた適切な対応を自発的に行っていただけるようになります。また、弁護士の立場からは、当事者の権利義務を書面にまとめてサインをしてもらうことにより、取引にまつわる様々な行為内容が単なる商慣習ではなく、取引条件の一つである当事者の法的権利義務であって、その違反については、損害賠償責任を負わざるを得ないことを明確にしていきます。

栗林総合法律事務所のサービス

栗林総合法律事務所では、国際取引を行う当事者間の意思疎通の齟齬や商慣習の違いによって生じる様々な問題について、日本企業の代理人として依頼者の立場を相手先企業に対して明確に伝え、取引条件の改善や明確化を求めていきます。また、取引の過程における紛争について双方の意見の対立がある場合には、双方の意見を聞きながら、当該環境下における好ましい妥協点はどこであるかを探っていき、当事者を説得しながら双方のビジネス上のメリットを最大化できる合意を導いていきます。単に、依頼者側の利益の立場からの一方的な意見の主張を行うのではなく、ビジネス上の観点から当事者双方に最も好ましい解決策を導き出し、それを両当事者に納得してもらうことが重要なポイントであると考えています。また、このような交渉を経て合意された内容については、法律上の権利義務であることを明確にするために、取引基本契約書の契約条項の改定や、メモランダム(Memorandum)やサイドレター(Side Letter)の形で書面化し、当事者双方の署名押印を取得していきます。これらの書面は全て英語で作成されます。また、場合によっては和解合意書(Settlement Agreement)として、双方の意見の相違がある中で、紛争解決がなされたことを明確にしておくこともあります。栗林総合法律事務所では、国際間の紛争における条件交渉の他、合意された内容を反映する各種書面のドラフトも行い、日本企業が巻き込まれる国際紛争について解決のためのサポートを提供しています。なお、国際紛争の解決に関する業務については、原則としてタイムチャージによる請求となりますが、顧問先企業については、国際紛争に関する法律相談料の他、和解交渉や書面作成に関する弁護士報酬についても通常の場合よりも2割のディスカウントを受けることができます。詳細については、栗林総合法律事務所のお問い合わせフォームからお問合せください。