日本の裁判所にアメリカの会社を訴えた事例

国際紛争事案の概要

当事務所の顧問先であるT社は、日本に居住しているコンサルタントの紹介で、アメリカの会社Y社を紹介してもらい、日本で制作する製品の部品を制作してもらうことになりました。アメリカの会社Y社では、製品の部品を自ら製造し、日本に輸出する必要があるため、代金(約800万円)については前払いを要求してきました。そこでT社はアメリカの会社との商品売買契約を作成し、前払い金として商品代金全額に相当する800万円の海外送金を行うことになりました。その後、3か月程度たって商品が日本に送られてきましたが、送られてきた商品はT社が考えていたものと全く別物で、製品の部品としては到底使用できる内容のものではありませんでした。そこで、T社としては、送られてきた製品は仕様書と全く異なるもので、売主の債務不履行に該当するので、送金した前払い金800万円全額を直ちに返還するよう請求しました。T社は自らの担当者を通じてアメリカの会社と前払い金の返還交渉を続けてきましたが、アメリカの会社は返還を拒否しており、このままでは債権の消滅時効にかかってしまう恐れがありました。そこで、T社の代表者が、今後の対応方針について、栗林総合法律事務所に相談に来られました。

栗林総合法律事務所による紛争解決

栗林総合法律事務所では、時効の中断を行うには訴訟提起が必要との判断を前提に、売買契約書などを参照し、訴訟提起の可能性について検討しました。その結果、商品の売買契約書には管轄に関する規定はなく、また履行地がある場合には履行地を管轄する裁判所に管轄権がある可能性もありますが、履行地の定めも不明確でしたので、民事訴訟の原則からは被告の所在地であるアメリカの裁判所に訴訟提起しなければならない可能性がありました。しかしながら当該取引を代理したコンサルタントが日本に居住していることが判明していましたし、当該コンサルタント自体きちんとした情報提供を怠っていたと考えられましたので、不法行為による請求を追加することで、コンサルタントとアメリカの法人の両方を被告として訴訟提起することにしました。この場合、日本に居住するコンサルタントとアメリカの法人を共同被告とすることで併合事件による管轄を取得することができます。当事務所では、この規定を適用することで、日本の裁判所に管轄を取得することができるとの判断のもと、日本の裁判所に訴訟提起をして時効を中断することができました。なお、この訴訟では、被告が裁判に応訴してこなかったため、原告全部勝訴の判決が下されました。

国際紛争解決のポイント

被告の普通裁判籍

訴訟においては、被告の普通裁判籍は、被告の住所地(民事訴訟法3条の2)になりますので、外国の当事者の場合、その本国が管轄裁判所となることが原則です。この場合、日本の裁判所は管轄権を有しませんので、日本の裁判所に訴訟を提起しても却下されることになります。但し、応訴管轄の適用はありますので、外国の当事者が管轄の不存在を争わずに応訴してきたときは、日本の裁判所に管轄が生じることになります。従って、ダメもとでもとりあえず日本の裁判所に訴訟を提起してみようという判断はあり得ます。

合意管轄

応訴管轄(民事訴訟法3条の8)の他、当事者が合意した場合の合意管轄(民事訴訟法3条の7)、併合請求における管轄(民事訴訟法3条の6)、契約上の訴えによる義務履行地の管轄(民事訴訟法3条の3第1号)などにより管轄が認められることもあります。外国の当事者に対する管轄権については、民事訴訟法3条の2から3条の12までに定めがありますので、これらを確認する必要があります。

海外の被告への送達

海外の被告に対する送達を行う場合には、訴状や証拠については、現地の言葉に翻訳しておくことが必要になります。また、証拠については、弁護士の翻訳証明書を付けます。なお、当事者目録については、カタカナ表記を付す必要がありますので、当事者の名称、住所などをどのように表記するかを決める必要があります。

領事館送達

外国企業に対する送達は多くの場合領事館送達の方法が取られると思われます。訴訟の係属した裁判所から、現地の日本の領事館や大使館に対して送達を依頼(嘱託)します。嘱託は、「送達嘱託書」という書面を渡して依頼することになります。これを受けた大使館や領事館は、通訳人が翻訳した①第1回口頭弁論期日呼出状、②答弁書催告状、③送達場所の届出のお願い、とともに訴状及び証拠等が郵便などによって送付されることになります。送達の結果については、送達結果報告書により、外務省領事局を通じて最高裁判所事務総局に伝えられることになります。

送達条約に基づく送達と中央当局送達

送達条約とは、1968年の「民事又は商事に関する裁判上及び裁判外の文書の外国における送達及び告知に関する条約」を指します。日本は1970年に批准しています。送達条約を批准している場合は、送達条約が民訴条約(1954年「民事訴訟手続きに関する条約」)に優先適用されます。中央当局送達とは、最高裁判所事務局から外国の中央当局(外務省や司法省)に要請して行う送達です。領事館送達で被告が任意に書面を受け取らないような場合には、中央当局送達を行う必要が出てきます。

欠席判決と公示送達

被告が送達された書面を受け取らなかったり、被告の所在場所が不明確で送達できなかった場合は、公示送達の方法により送達を行う必要があります。領事送達または中央当局送達による送達がなされたり、これらの方法による送達について被告が書面を受け取らなかったことで、日本での公示送達がなされた場合は、日本の裁判は適法に訴訟係属したことになります。従って、日本の裁判手続きにおいて外国企業が欠席したり、原告の請求を争わない場合は、日本の裁判所は原告の請求を認める判決を出してくれることになります。

外国企業に対する強制執行

外国企業に対する判決を取得した場合、外国企業の財産が日本国内にあれば、その財産を差押えることになります。もし外国企業の財産が日本国内に存在しない場合には、外国企業の本国に、判決の承認決定の申立を行い、外国での承認決定を得た上で、現地にある財産の差押え、換価を行うことになります。

栗林総合法律事務所のサービス

国際的な取引が増加するにつれて、外国企業と日本企業の間に紛争が生じることも多くなっています。ほとんどの事例は、商品代金の支払いに関するものであったり、商品の欠陥についての損害賠償に関するものであったりします。外国企業と日本企業との間において和解による話し合いでの解決ができれば一番いいですが、解決ができない場合は訴訟を提起せざるを得ないことになります。栗林総合法律事務所では、日本企業を代理して、日本の裁判所に、外国企業に対する訴訟を提起する事案を多く扱っています。日本企業が日本の裁判所に対して外国企業を訴える場合には、管轄の問題や国際送達の問題についての知識を必要とします。栗林総合法律事務所では、これまで多くの国際訴訟事件を扱った経験を有していますので、国際送達や管轄についてのアドバイスを行うことも可能です。日本の裁判所に対して訴訟提起を行う場合の弁護士報酬については、ケースごとに、日弁連の弁護士報酬規程(但し翻訳料が追加されます)によるか、タイムチャージによるかが定められることになります。但し、いずれの場合であっても顧問先企業については、通常の弁護士報酬の金額から2割のディスカウントを受けることができます。詳細については、栗林総合法律事務所のお問い合わせフォームからお問合せください。