• 2022.12.29
  • 訴訟・紛争解決

経営支配権をめぐる紛争で、株式全部譲り受けにより和解した事例

事案の概要

複数の創業者がいる場合において、創業者間での争いが生じた場合や、同族企業の創業者が亡くなり、相続人である親族間でだれが会社を承継するかについての争いが生じることが多くあります。栗林総合法律事務所は、会社の支配権をめぐる争いに多く関与してきました。多くの事例では、当職らが仲立ちをすることで、話し合いによる解決がなされ、事業が再び円滑に進行することになります。しかしどうしても話し合いによる解決がなされない場合は、株主総会での委任状争奪戦(プロキシ―ファイト)や、訴訟による争いに進展してしまうことになります。

経営支配権をめぐる争い

会社支配権をめぐる争いが生じた場合、株主総会はどちらのグループが多数を形成するかを決定する場面となりますので極めて重要な意味を有します。最終的には過半数の議決権を有する株主の側が支配権を取得することになりますが、中間派の株主も存在する場合、どちらが多数派と一概にいうことはできません。しかしながら、実質上は役員の選任決議により、過半数の役員の選任がなされたほうが支配権を確保できる公算が大きくなります。過半数の取締役を選任できたグループは、代表取締役の選任を通じてその後の会社運営を支配することができるからです。また、同様に取締役会の過半の取締役を選任するグループは第三者割当増資により新株発行を引き受けたり、自分たちの運営する別会社との合併などを通じてより多くの支配権を獲得しようとしてくる可能性があります。現在取締役会の過半数を握っていない株主は、第三者割当ての差止め請求や、株主総会決議取消の訴えなどを提起しないと、いつの間にか少数株主に転落してしまうことにもなりかねません。栗林総合法律事務所は、支配権をめぐる争いについて多くの経験を有していますので、相手方グループに対抗する戦略の立案、相手方グループとの交渉代理、従業員や取引先への説明会の開催、株主総会委任状獲得合戦(プロキシ―ファイト)、株主総会の運営、株主総会決議取消の訴え、役員に対する損害賠償の訴えなど、裁判上及び裁判外の手続きを通じて会社支配権の獲得・維持についてのアドバイスを提供いたします。

株主間での協議交渉

経営支配権をめぐる争いが生じた場合、第一には主要株主間での協議交渉によりその後の会社運営について確認していくことが重要です。当事務所は、多くの会社において主要株主の代理人として相手方グループの株主との間で協議交渉を行い、会社の運営をどのように行っていくかを話し合ってきました。株主間で協議が整った場合は、株主間契約書や会社運営に関する覚書の締結などを行います。また、多くのケースでは両方のグループの経営者が一緒に経営していくことは困難であるとして、いずれかのグループの株主の有する株式の譲渡を受けることになります。創業者の一人が有する株式を譲り受ける場合は、株価の決定、創業者の退任、退職金の支払い、将来における会社との関係など様々な事項を合わせて決定する必要があります。当事務所では、株式譲渡契約書や、経営に関する覚書を作成することで、円滑な支配権の移転を支援していきます。

株主総会の開催

中小企業の場合、会社法にもとづく株主総会の開催を行っていないことが多く、いざ経営支配権をめぐる紛争が生じた場合に、混乱を招いてしまうことが多くあります。株主が一人しかいない場合、その株主が同意していた限り、実際の総会が開催されていなくても総会は有効となります。しかし、株主が複数いる場合で、すべての株主からの同意が得られていない場合には、株主総会を開催せずに議事録だけ作っても、その株主総会は無効となります。その結果、無効となった株主総会により選任された取締役も役員の地位を失うことになります。このような結果は、同族会社内部での支配権をめぐる争いが生じた場合や、遺産相続による争いが生じた場合などに、株主総会の決議の効力をめぐって争われることになります。当事務所では、過去の総会決議の有効性を判断し、追認決議を行うなどの対応を行います。

取締役の選任決議

支配権をめぐる争いが生じている場合、会社の提案する取締役の選任議案が可決されるかどうかは重要です。当事務所では、議決権の分配状況の確認、取締役選任議案の作成、委任状の獲得(プロキシ―ファイト)、従業員や取引先への説明文書の作成、株主総会の運営指導などを通じて、会社側提案が可決されるよう支援を行います。選任手続きに疑念が生じる場合には株主総会検査役選任の申立て、総会開催差止請求、取締役の職務執行停止の申立て、職務代行者選任の申立等を行い、不当な総会決議がなされることを差止ることもあります。

第三者割当増資や組織再編

第三者割当増資は本来資金調達を目的とするものですが、主要目的ルールにより、主要な目的が資金調達である限り、副次的な目的の有無にかかわらず、第三者割当増資は有効とされています。そこで、資金調達の必要性がある場合は、第三者割当増資がなされることになりますが、株式の引き受けを行った株主については、株数が著しく増加することになりますので、第三者割当増資を行った結果として会社の経営支配権の変動を来すこともあります。株式の譲渡制限がない会社(上場会社など)については、第三者割当増資は、取締役会決議のみで行うことができます。一方、株式の譲渡制限のある会社の場合、第三者割当増資を行う場合、株主総会の特別決議を必要とします。これらと同様に、支配権の確保を目的に組織再編行為が行われることもあります。当事務所は、経営者側の立場に立ち、第三者割当増資の手続きについてのアドバイスを行います。また、支配権をめぐる紛争が生じている場合に、少数株主の側に立ち、第三者割当増資決議の差止請求、総会決議無効確認の訴えを行うこともあります。

取締役への辞任要求

取締役が不祥事を起こしたような場合であっても、いきなり取締役の解任を求めるのではなく、当該取締役による自発的な辞任を求めるのが最も穏当と思われます。会社と取締役の関係は委任関係になりますので、取締役はいつでも取締役を辞任することができます。取締役が自発的な辞任に応じない場合、取締役の退職金の不支給の可能性を説明したり、不祥事により生じた損害について取締役に対する損害賠償請求を行う可能性があることを説明するなどして、自発的な辞任を催促することになります。当事務所では、会社を代理して取締役との協議交渉を行い、退任に向けた合意書を作成することで円滑な取締役の退任を実現します。

取締役の解任決議

会社と取締役との関係は委任関係になりますので、会社はいつでもその取締役を解任することができます。但し、取締役は株主総会において選任されますので、解任についても株主総会決議を要します。取締役解任の株主総会決議については、定款に特別の定めがない限り、定足数を満たす株主総会における出席株主の有する議決権数の過半数を持って行います。解任は解任についての正当な理由のある場合だけでなく、過半数の議決権の要件を満たす限り、正当な理由がない場合であっても行うことができます。取締役の解任は任期の途中でいつでも行うことができますが、任期の途中で理由なしに取締役の解任を行った場合、当該取締役は、会社に対して、残りの任期の報酬相当額について損害賠償請求を行うことができます。取締役に不祥事があるなど、正当な理由に基づき取締役の解任を行った場合は、会社の当該取締役に対する損害賠償義務は生じません。

経営陣による金銭の不当支出と損害賠償請求訴訟

これらの訴訟にあわせて、従前は誰も特に問題としていなかった経営判断や金銭支出、取締役への金銭貸付等について株主代表訴訟が提起されることも珍しくありません。役員による金銭の不当支出は、会社に対する背信行為として善管注意義務や忠実義務に違反することになります。株主は、金銭の不当支出にかかわった役員に対して損害賠償請求訴訟を提起することができます。また、これらの訴訟の前段階として、株主から、会計帳簿や取締役会議事録の閲覧・謄写の請求がなされたりします。

栗林総合法律事務所で扱う会社関係訴訟

このように、経営支配権をめぐる紛争では、1つの紛争から多数の会社関係訴訟が同時並行的に生じるため、これに迅速かつ適切に対応するには、会社法および関連判例についての幅広く深い理解が求められます。それと同時に、かかる法律論を土台とした上で、紛争の根本的な解決策を練り、尽力していくことが必要となり、高度な専門的知識と経験が要求されます。当事務所では、次の各種手続きを行っています。

・株主総会決議取消訴訟
・株主権確認請求訴訟
・取締役報酬支払請求訴訟
・株主代表訴訟等の訴訟手続
・新株発行差止の仮処分申し立て
・株式譲渡禁止仮処分申し立て
・総会検査役選任請求
・会計帳簿閲覧請求
・株式売買価格決定申立