• 2024.09.20
  • 国際相続

カリフォルニア州に所在する小さな金額の不動産を相続した場合に少額不動産についての宣誓供述書を作成した事例

事案の概要

当事務所の依頼者Xのお父様(日本国籍の日本人)はカリフォルニア州に金額の小さな不動産(砂漠地帯にあるために価値が少ない土地)を所有していましたが、癌のためにお亡くなりになりました。遺言書はありません。唯一の相続人が息子さん(当事務所の依頼者X)であるところ、カリフォルニア州に所在する不動産の相続及び処分をどのようにしていいのか分からず、栗林総合法律事務所に相談に来られました。

少額の不動産の遺産相続のポイント

アメリカは管理清算主義が取られていますので、アメリカにある相続財産については、プロベイト手続きという手続きにより相続財産の分配がなされることになります。但し、プロベイト手続きには多額の費用と長い時間を要することが多くあります。そこで、金額の小さな不動産を相続する場合については、相続人が少額の不動産に関する宣誓供述書(Affidavit regarding Real Property of Small Value)のみで遺産相続ができるという例外が設けられています。少額の不動産に関する宣誓供述書(Affidavit regarding Real Property of Small Value)は州の高等裁判所(Superior Court)に提出することになります。少額の不動産に関する宣誓供述書(Affidavit regarding Real Property of Small Value)には、①被相続人の氏名、死亡日、死亡場所、②不動産の価格が6万1500ドルを超えないこと(2022年4月1日以降に死亡した場合)、③不動産の所在場所、④検認審判官による鑑定書、⑤葬儀費用や病院の治療費が全て支払い済みであること等を記載することになります。少額の不動産に関する宣誓供述書(Affidavit regarding Real Property of Small Value)を日本で作成する場合は、公証役場において公証人の面前で作成し、公証人の認証文言とアポスティーユをつけてもらう必要があります。金額の小さな不動産については、固定資産税の発生を避けるため、相続放棄をしたいとの依頼がなされることがありますが、アメリカでは相続放棄の制度はありませんので、相続を放棄することはできません。一方、不動産を近傍の土地所有者に購入してもらうという事は可能ですので、もし不動産の処分を検討している場合は、近傍の土地所有者に購入してもらえるかどうかを働きかけてみることも重要と言えます。

栗林総合法律事務所による作業の結果

アメリカに所在する金額の小さな不動産を相続することになった場合は、プロベイト手続きの対象外になっているかどうかを確認する必要があります。プロベイト手続きの対象となっている場合は、裁判所に対してプロベイト手続きの申し立てを行います。裁判所はLetter of Administratorを出し、裁判所が指定したAdministrator(財産管理人)が不動産を処分し、代金を引き渡してくれることになります。これに対し、金額が小さい不動産を相続した場合は、少額の不動産に関する宣誓供述書(Affidavit regarding Real Property of Small Value)により不動産を相続人名義に変更する必要があります。また、金額が小さな不動産については管理が大変で、固定資産税も発生することから、相続人としてはできるだけ早期に売却処分したいと考えます。当事務所では、現地の法律事務所を通じて近隣の所有者に声がけし、購入希望者が現れた段階で売却処分するようにしています。不動産の売却時には、Quitclaim Deed(権利譲渡証書)と言われる証書を作成します。日本人は、Quitclaim Deedを日本の公証役場で作成し、公証人の認証文言にアポスティーユを付すことで、現地に行かなくてもDeed(証書)の作成を行うことができます。Deedを作成することで、権利移転の証明を行うことができることになります。なお、アメリカに居住していない外国人(日本人を含む)について銀行の利子が生じた場合や不動産の売却益が生じた場合、金融機関や不動産の買主は、支払利子や譲渡代金の中から源泉徴収を行い、IRSに対して源泉徴収税額を納税する義務を負います。その場合に利用される書面が、Form1042-S(Foreign Person’s U.S. Source Income Subject to Withholding)と言われる書面です。Form1042-Sは、外国の居住者がアメリカ国内で所得を得た場合に作成される課税調書です。日本の居住者は、アメリカで生じた所得(譲渡、利子、配当所得)に対して、アメリカで源泉徴収されるだけでなく、日本でも課税されますので、二重課税となります。日本の居住者は、源泉徴収義務者に対してForm W-8BENを渡すことで、Form1042の写しを受領することができます。日本の納税者は、日本の税務署に対してForm1042の写しを提出することで外国税額控除を受けることができ、最終的に二重課税を回避することができることになります。

栗林総合法律事務所のサービス内容

栗林総合法律事務所では、カリフォルニア州、ハワイ州、ニューヨーク州などにある遺産の相続手続きを多く取り扱っています。特に日本に居住する日本人が、アメリカ国内に相続財産を残したまま死亡した場合には、相続人も日本人のことが多くあります。この場合、相続人としてはアメリカ国内の不動産に対する思い入れもそれほど強くなく、固定資産税の支払いを考慮してできるだけ早く売却して欲しいと望まれることも多くあります。栗林総合法律事務所では、依頼者の依頼により、アメリカに所在する不動産の相続手続きだけでなく、不動産を売却処分し、日本に代金を送金する手続きを代行して行っています。アメリカに所在する不動産を相続した場合の相続手続きや、不動産の処分についてお聞きになりたい場合は、是非栗林総合法律事務所にお問い合わせください。