• 2024.09.20
  • 国際相続

カリフォルニア州の銀行にSmall Estate Affidavitを提出した事例

事案の概要

当事務所の依頼者Xのご主人が亡くなった後に、カリフォルニア州の銀行にご主人名義の銀行預金が8000ドルあることが判明しました。ご主人は日本国籍であり、日本に住んでいました。アメリカには8000ドルの銀行預金の他には一切財産はないようです。日本の相続税の申告書では、カリフォルニア州の銀行預金も相続財産として届け出を行いましたが、実際にカリフォルニア州の銀行預金をどのようにして解約すればいいのかが分からず、栗林総合法律事務所に相談に来られました。

少額の銀行預金解約のポイント

アメリカにある相続財産の額が一定金額を超える場合には、各州の法律によりプロベイト手続きを取ることが要求されます。プロベイト手続きは、アメリカの弁護士が裁判所に申し立てをして、裁判所の管理下で相続財産の分配を行う手続きです。非常に長い時間と高額の費用を必要とします。一方、相続財産が一定金額以下の場合(例えばカリフォルニア州では約16万ドル=2500万円以下の場合)には、高額の費用のかかるプロベイト手続きは必要ないとされています。プロベイト手続きが必要となる場合は、故人が有していた銀行預金を解約するためには、銀行からLetter of Administrationの提出を求められることになりますが、相続財産の金額が少なく、プロベイト手続きが必要ない場合には、Letter of Administrationの提出は必要なくなります。その代わりに、Small Estate Affidavit(少額の相続財産に関する宣誓供述書)という書面を金融機関に対して提出することが求められます。カリフォルニア州では、Affidavit For Collection of Personal Property(個人財産の回収のための宣誓供述書)と言われます。カリフォルニア州には、プロベイトコードと言われる法令があり、その法令の13100条から13210条に基づいて要求される書類です。Small Estate Affidavit(少額の相続財産に関する宣誓供述書)には、①被相続人の名前や死亡日時、②カリフォルニア州で財産管理手続きが取られていないこと、③カリフォルニア州にある相続財産の額が16万6250ドル以下であること、④相続される財産の内容、⑤宣誓供述を行う者が法定相続人であること、⑥相続財産については宣誓供述者に分配されるべきことなどを記載します。実際には、州ごとに一定のフォーマットがありますので、そのフォーマットを入手して記入することで対応可能です。Small Estate Affidavit(少額の相続財産に関する宣誓供述書)は、アメリカ大使館に持ち込み、アメリカ大使館のカウンセラーの面前で署名する必要があります。その後、アメリカ大使館のカウンセラーは、本人の署名によるものであることについての認証文書を添付してくれます。Small Estate Affidavit(少額の相続財産に関する宣誓供述書)には、このアメリカ大使館のカウンセラーによる認証文書が必要です。なお、アメリカの銀行預金の解約を行う場合には、各銀行が定めた様式による解約申請書(Letter of Instruction and Account Closure Request)も同時に提出することになります。解約申請書(Letter of Instruction and Account Closure Request)については、日本の公証役場で認証をしてもらい、アポスティーユを付すことが必要です。

栗林総合法律事務所による作業の結果

アメリカの銀行にある少額の相続預金を解約するためには、アメリカの銀行から、上記に記載したSmall Estate Affidavit(少額の相続財産に関する宣誓供述書)だけでなく、Federal Transfer Certificate(連邦移転証明書)と呼ばれる書類の提出を求められます。Federal Transfer Certificate(連邦移転証明書)は、金融機関にある預金や証券を解約して、払い戻しを行ってもよい(国外に送金してもよい)とIRS(内国歳入庁)が認める証明書です。Federal Transfer Certificate(連邦移転証明書)はIRS(内国歳入庁)から発行されますので、IRS(内国歳入庁)に対してFederal Transfer Certificate(連邦移転証明書)の発行を申請する必要があります。プロベイト手続きが取られる場合には、相続税の申告についても財産管理人(administrator)が行いますので、間違いなく税金が支払われるであろうということで、Federal Transfer Certificate(連邦移転証明書)の提出は要求されません。相続財産の額が一定金額以下の場合(Small Estate Affidavitの要求される場合)には、プロベイト手続きが取られませんので、Federal Transfer Certificate(連邦移転証明書)が必要となります。アメリカにある資産が6万ドルを超える場合には、IRSに対してForm706NEという書類を提出し、かつ日米租税条約によりアメリカ人と同等の相続税の基礎控除を得ることができることの説明書を提出することになります。これによりIRS(内国歳入庁)は未払の租税債務が存在しないことを確認し、Tax clearance certificate(未払税金がないことの証明書)を出してもらえます。 Federal Transfer Certificate(連邦移転証明書)を取得するためにはこのTax clearance certificate(未払税金がないことの証明書)が必要となります。Federal Transfer Certificate(連邦移転証明書)の発行には通常6か月以上の期間を要します。一方、相続人も、被相続人もアメリカ国民でなく、アメリカの市民権も有していない場合で、アメリカにある相続財産の額が6万ドル以下の場合は、Affidavit for Non-Resident Alien Estates(アメリカに住所を有しない外国人の相続財産のための宣誓供述書)を提出することで、Federal Transfer Certificateの提出を免除されることがあります。遺産の額が6万ドル以下の場合には、もともと外国人でもアメリカの遺産税の対象とはなりませんので、IRSから未納税金がないことの証明書を取得するまでもないという事ではないかと思います。もし、金融機関からFederal Transfer Certificate(連邦移転証明書)の提出を求められる場合であっても、アメリカにある相続財産の額が6万ドル以下の場合は、Affidavit for Non-Resident Alien Estates(アメリカに住所を有しない外国人の相続財産のための宣誓供述書)で代替できないかを確認されてみてはどうでしょうか。

栗林総合法律事務所のサービス内容

栗林総合法律事務所では、カリフォルニア州、ハワイ州、ニューヨーク州などにある銀行預金の解約手続きを多く取り扱っています。特に日本に居住する日本人が、アメリカ国内に相続財産を残したまま死亡した場合に、依頼者の依頼により、アメリカの銀行預金の解約手続きをサポートしています。今回説明したSmall Estate Affidavitは、銀行預金の額が少額の場合に、複雑で時間のかかるプロベイト手続きを回避しながら、銀行預金を解約できる制度です。しかし、Small Estate Affidavit(少額の相続財産に関する宣誓供述書)が使用される場合であっても、連邦移転証明書の取得を必要とするなど、大変な手続きを行う必要がある点では変わりません。日本人が亡くなって、日本人が相続人となる場合、アメリカ国内にある銀行預金の解約に要する手間暇や費用を考慮し、相続自体をあきらめてしまうケースも多くあります。栗林総合法律事務所では、本人でできるところはできるだけ本人に行っていただくなどして、弁護士費用を節約し、少額の相続財産(銀行預金)の場合であっても、きちんと相続人が相続できるよう最大限の努力を行っています。カリフォルニア州、ハワイ州、ニューヨーク州(アメリカ国内であればその他の州の場合も可能です)にある銀行預金の解約をお考えの方は是非栗林総合法律事務所にお問い合わせください。