• 2024.09.20
  • 国際相続

ニューヨーク州の裁判所に相続財産管理人選任決定を申立て、銀行預金の払戻を受けた事例

事案の概要

当事務所の依頼者Xの奥様は、ニューヨーク州のシティバンクにおよそ1500万円の銀行預金を有したままお亡くなりになりました。奥様は日本国籍で、日本に在住しており、シティバンクの銀行預金の他にはアメリカには財産は有りません。シティバンクから依頼者Xに対して遺産相続に関して必要となる書類の一覧が送られてきましたが、依頼者の方ではその内容を理解することができませんでした。そこで、依頼者Xは、栗林総合法律事務所にシティバンクにある奥様名義の銀行預金の解約手続きを依頼されることになりました。

ニューヨーク州所在の相続預金解約のポイント

ニューヨーク州の銀行に預金を有したまま日本人が亡くなった場合には、ニューヨーク州の銀行預金の解約手続きについて検討する必要があります。ニューヨーク州の銀行からは、Foreign Letters of Administrationがある場合は、それによって払い戻しが可能となる可能性があるので、Foreign Letters of Administrationを提出するよう要求されることがあります。Letter of Administrationは、相続財産の管理清算主義が取られる国(イギリス、香港、シンガポール、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドなど)において、被相続人が死亡した場合に、裁判所が相続財産管理人を選任する決定書のことを言います。シティバンクとしては、外国の裁判所が既にLetter of Administrationを発行しているのであれば、それを利用したほうが簡単なので、親切心から、その写しを提出してくれと言っているものです。しかし、日本は管理清算主義を取る国ではありませんので、アメリカの銀行が指定するLetter of Administrationの制度はありません。日本でも、相続人がいない場合に、相続財産管理人選任申し立てを行う手続きはありますが、日本の裁判所が発行する相続財産管理人選任決定書と、Letter of Administrationは別物です。また、遺言執行者もLetter of Administrationで言われる財産管理人とは異なります。このようにLetter of Administrationを日本で取得することはできませんので、アメリカで財産管理人選任決定を申し立てる必要があります。

栗林総合法律事務所による作業の結果

栗林総合法律事務所では、ニューヨーク州の法律事務所の協力を得ながら、New York State Surrogate’s Court(サロゲイト・コートと言われますが、日本の家庭裁判所に相当します)に対してPetition for Letters of Administrationの申立てを行いました。申立人は、当事務所の依頼者Xになります。また、依頼者Xと申立手続きを行ってもらったニューヨーク州の弁護士が財産管理人(administrator)に選任されるよう求めています。その結果、ニューヨーク州のSurrogate Courtから、当事務所の依頼者Xと申し立てを行ったニューヨーク州の弁護士の2名を被相続人の財産管理人に選任する選任決定書(Certificate of Appointment of Administrators)を頂くことができました。その後、ニューヨーク州の弁護士は、シティバンクのニューヨーク支店から銀行預金の払戻を受け、無事に日本に送金してくることができました。

栗林総合法律事務所のサービス内容

ニューヨーク州にある銀行の相続預金の払戻を行うためには、ニューヨーク州の裁判所(サロゲイト・コート)からAdministratorの選任決定書を出してもらい、Administratorが銀行に対して払い戻し請求を行う必要があります。ニューヨーク州の弁護士に財産管理人選任申立てを依頼する際には、ニューヨーク州の弁護士との間において委任契約(Engagement Agreement)を締結する必要があります。ニューヨーク州の弁護士は通常タイムチャージにより報酬の請求をしてきますので、日本のような着手金・成功報酬制度とは異なります。また、日本の依頼者はニューヨーク州の弁護士に直接会う必要はなく、ニューヨークに行く必要もありません。しかし、ニューヨークの弁護士としては、依頼者から確実に報酬の支払いが得られる保証が必要となりますので、100万円程度のデポジット(預け金)を送金するよう求められることもあります。ニューヨーク州の銀行預金の解約手続きは、長時間を要する複雑な手続きとなりますので、信頼のおける弁護士を選任する必要があります。依頼先するニューヨーク州の弁護士がどのような弁護士かを知らないまま契約を締結した場合には、高額の弁護士報酬の請求を受けることで、ニューヨーク州の弁護士との間で争いになってしまう可能性もあります。栗林総合法律事務所では、依頼者の希望に沿った金額で適切に手続きを進めてくれる弁護士を紹介させてもらいます。また、ニューヨークに所在する銀行預金の解約に際しては、日本サイドで必要となる様々な手続きを行うだけでなく、ニューヨーク州の弁護士とこまめに連絡を取りながら、手続きが円滑に進行するようサポートしていきます。ニューヨーク州の銀行預金の解約をお考えの方は是非栗林総合法律事務所にお問い合わせください。