• 2024.09.20
  • 人事労務

外国人取締役の退任に関する交渉を行い、退職条件について合意した事例

事案の概要

当事務所の依頼者Xは、フランスの親会社が100%所有する外資系企業ですが、フランスから派遣された役員Aについては退任してもらい、その代わりに新しい取締役Bを選任したいと考えていました。但し、取締役Aは日本に居住するフランス人で、依頼者Xからの役員報酬で生計を立てていることから、自発的な退任に応じるかどうかは不明でした。そこで、依頼者Xは、当事務所に対して、依頼者Xを代理してフランス人Aと退職に関する条件について協議するよう依頼されました。

外国取締役の退任におけるポイント

外資系企業に勤務する外国人については、勤務条件が本国の親会社との契約書において詳細に定められていることがほとんどです。そこで、外国人との雇用契約を解除したり、取締役からの退任を求める場合には、当該外国人との間においてどのような契約がなされているのかを確認することが重要です。また、本国での雇用契約書や取締役就任に関する委任契約書においては、本国の法律が準拠法と定められている場合も多くあります。しかし、日本で勤務する労働者については日本法が強制適用されますので、労働者の解雇に関する要件については日本法に従って解釈される必要があります。同様に、日本の会社に勤務する外国人の取締役についても、会社と取締役に関する関係については、日本の会社法が強制適用される可能性が高いと言えます。日本の会社法では、取締役との間の委任契約については、いつでも解除することができるとされていますので、株主総会の決議により取締役を解任することは可能です。但し、正当な理由なしに期間の途中において解任した場合には、期間満了時までの役員報酬を支払わなければならないとされています。従って、日本の会社に勤務する役員を解任する場合には、日本法が強制適用されるとの前提に立ち、当該役員との話し合いにより、任意の方法で契約を解除する(当該取締役の側からの申出により辞任してもらう)ことが重要と言えます。

栗林総合法律事務所による業務の結果

栗林総合法律事務所では、取締役Aに対して、内容証明郵便を送付することで、当事務所が依頼者Xの代理人に就任したこと、及びXとしては早期に委任契約の解除を行い、役員の変更を行いたい旨を通知しました。取締役Aとしては、親会社の方針であれば従わざるを得ないということで、役員退任についてはさしたる抵抗もなく協力してもらえることになりましたが、契約解除の条件については詳細に協議したいとの申し入れがなされました。具体的には、未消化の有給休暇(Paid Leave)の買取、退任までの役員報酬(Remuneration)の支払い、Aが有している親会社株式の買取(Transfer of Shares)、補償金(Compensation)の支払いなどがテーマとなり、各テーマについて条件を詰めていく交渉が行われました。最終的にはAによる辞任の条件がすべて整い、退任合意書(Settlement Agreement)が締結されることになりました。

栗林総合法律事務所によるサービス内容

栗林総合法律事務所では、国際的要素のある労務問題について会社を代理して交渉を行う業務を多く取り扱っています。特に外国人の従業員や取締役の解任や辞任に関する法律問題について、依頼者を題して交渉を行い、合意書(Settlement Agreement)にまとめていく作業を行います。外国人の取締役の解任を求める場合には、当該外国人の帰属する社会の文化的背景についての理解をもとに協議・交渉する必要があります。また、英文契約書の内容をしっかり理解し、矛盾のない解決を導いていく必要があります。外国人の労働者や取締役の解雇、退任についての契約交渉については、栗林総合法律事務所にお問い合わせください。