• 2020.09.01
  • 外国企業の支援

外国法人の日本子会社設立

外国企業の子会社設立の特殊性

外国人や外国法人が日本で会社設立の手続きを進める場合であっても、基本的な設立までの流れは日本の会社や個人が株式会社や合同会社を設立する場合の手続きと同じです。ただし、親会社が外国人や外国法人の場合には、その外国人や外国法人の本国の会社法の制度が日本と異なるため、定款認証や登記申請の際に、日本人や日本の会社が発起人となる場合の子会社設立にはなかった書類の提出を求められることがあります。

代表取締役全員が非居住者の場合も設立が可能

会社の役員には、外国居住者(日本での非居住者)でも就任することができます。国籍は関係ありません。従来は代表取締役のうち最低1人は日本に住所を有していなければなりませんでしたが、現在は、代表取締役の全員が海外に居住している場合でも会社設立できるようになりました。したがって、外国居住者1名での会社の設立も可能です。

募集設立と金融商品取引法上の届出の要否

株式会社の設立には、発起設立と募集設立という2種類の方法があります。発起設立は、株式会社設立時に発行する株式を発起人がすべて引き受ける設立方法で、募集設立は、発起人以外にも株式を引き受けてもらう方法です。募集設立の場合には、株式の募集、株式の申し込み、割り当て、引き受け、創立総会の開催などの手続きが必要になるほか、株式引受人の保護の観点から、出資金の払込について、銀行に払込金保管証明書を作成してもらう必要があり、発起設立に比べて時間がかかることになります。また、有価証券の募集の際に多数の者(50名以上)に対して勧誘を行う場合には、有価証券の「募集」に該当し、金融商品届出法上の有価証券届出書の届出、または有価証券通知書の提出(有価証券の募集に該当する場合で、発行価格が1億円未満の場合)が必要となります(金融商品取引法4条1項、6項)。そこで、ほとんどのケースでは、募集設立ではなく、発起設立の方法で株式会社を設立することになります。発起設立にあたり、設立時に発行する株式を引き受けることになる発起人が必要です。発起人は、設立時の定款の作成や、子会社の基本的な事項の確定や、資本金の払込みなど、会社設立を行う者をいいます。発起人は、外国人でも外国法人でもなることができます。

新会社の基本的な事項の決定

会社設立の最初のステップとしてはまず子会社の基本的な事項を決定する必要があります。具体的には、子会社の商号、子会社の本店所在地、役員、事業目的、資本金の額、取締役および代表取締役、取締役会の設置の有無、取締役の任期、株式の発行価額、株式譲渡制限規定の設定などです。これらは、日本人や日本法人が会社を設立する場合と同様です。

バーチャルオフィスを活用する場合

外国法人の子会社を設立する場合、会社の設立時にはまだ法人の実態が存在しないので、オフィスを有していない場合も多くあります。この場合、住所をどこにするかが問題となります。日本の会社の住所については、現実にそこで事業を営んでいたり、人が常駐している必要はありませんが、税務署からの通知書を受け取る必要がありますので、郵便物が届く場所である必要があります。そこで、外国企業に対してバーチャルオフィスを提供している会社が複数存在します。バーチャルオフィスは、年間数万円の費用で郵便物の受領などを行ってくれます。バーチャルオフィスを住所とする登記も有効です。一方、外国法人や外国人から設立手続きを代行して行う日本の弁護士や行政書士に対して、その弁護士事務所や行政書士事務所を住所として使わせて欲しいとの依頼がなされることがありますが、新規に設立した会社が法人税の滞納をした場合などに問題とされる可能性がありますので、日本の弁護士や行政書士が住所を貸すことは好ましくありません。なお、バーチャルオフィスを住所とする場合、ビザの発行が認められない場合があります。その場合は、実質的に事業を行っている場所へ法人の住所を変更することが必要になります。同一の市町村や区以外の場所に住所を移転する場合は、本店所在場所としての登記事項が変更されることになりますので、株主総会を開催して定款変更(本店所在場所の変更)し、新しい住所についての登記を行う必要があります。

商号の制限について

商号については、以前存在していた類似商号規制は廃止されていますが、同一の所在場所における同一の商号の登記は禁止されているため、今後も念のため、同一の所在場所に新しく登記したい商号の会社が既に登記されていないかどうか、商号の調査をすることが必要になります。商号には、ローマ字やアラビア数字、「&」「’」「,」「-」「.」「・」を使うことが認められていますが、株式会社や合同会社といった文字を使用しなければならないため、たとえば「ABC123 Co., Ltd.」(「株式会社」の言葉の代わりに、Co., Ltd.を使う)のような表記をすることは認められておらず、「ABC123株式会社」と表記する必要があります。但し、会社名の英語表記としてCo., Ltd.を使うことは可能です。また、スペースはローマ字を用いて複数の単語を表記する場合に限り使用が認められており、カタカナの単語の間には使用することができません。スペースを設けることができるかどうかについては、次の例を参照ください。「Houritsu Japan株式会社」(ローマ字を用いて複数の単語の間にスペースを設けること)は可能です。「ホウリツ・ジャパン株式会社」(カタカナ表記で、中点をつけるが、スペースを設けないこと)とすることも可能です。「H ouritsu株式会社」(一つの単語の途中で区切りスペースを設けること)はできません。「Houritsu Japan 株式会社」(Japanと株式会社の言葉の間にスペースを設けること)はできません。「ホウリツ ジャパン株式会社」(カタカナ表記の単語の間にスペースを設けること)はできません。

外国人の役員の日本語表記

新会社の役員になる方に外国人がいる場合には、その外国人の名前はアルファベット表記のまま登記されるのではなく、カタカナ表記で登記されることになります。従って、その外国人の名前の読み方を正確に把握し、カタカナでどのように表記するかを明確にする必要があります。外国に居住し、日本に来たことのない人については、登記申請を行う代理人の方で電話による聞き取りを行い、聞き取られた発音に近い日本語(カタカナ)を当てはめるか、同一言語(例えば、フランス語やロシア語)を使用する日本在住の外国人に問い合わせることが必要になります。日本に住民票や印鑑登録している外国人が役員になる場合は、原則住民票の記載通りのカタカナ表記で登記をすることになります。ファーストネームとラストネームの順番を入れ替えてもいいかどうか、ミドルネームを省略できるかどうかは、添付書類の種類や法務局の取り扱いによって異なりますので、事前に確認しておくことが必要です。ときどき日本に在住する外国人について、日本の住民票や運転免許証に記載されているカタカナ表記と異なる表記で登記を行うよう依頼されることがあります。住民票や運転免許証の表記が正しい発音と異なり、違和感を持たれていることや、日常的に住民票や運転免許証と異なる表記を使用していることによるものと思われます。住民票や運転免許証に記載されているカタカナと異なる表記で登記を行う場合、法務局から、住民票や運転免許証に記載の者と登記申請を行う者(商業登記簿に登録される者)が同一人物であることの上申書の提出を求められることがあります。

外為法の事前届出該当業種であるかどうかの検討

外国投資家が1%以上出資して、外国企業の日本子会社を設立する場合、外為法上の「対内直接投資等」に該当し、ほとんどの場合で事後報告が必要となり、日本銀行を経由して新会社の日本での事業を所管する省庁に事後報告書を提出することになります。法律改正により、事前届出の必要な場合の出資比率が10%以上から1%以上に変更されています。発行済み株式数及び議決権ベースで計算されます。対内直接投資については安全保障の観点から、日本に設立する子会社が、外為法の対内直接投資の事前届出該当業種を行う場合には、事前届出が必要になることもあります。事前届出該当業種には、武器、航空機、宇宙分野をはじめ、サイバーセキュリティー業、電力業、情報通信業、ソフトウェアの製造業など155業種が該当します。日銀への届出受理日から30日間は、事業の所管省庁での審査が行われ、会社設立登記の申請が禁止されます。禁止期間中に、出資金の払込などの手続をすることは可能ですが、正式に届出が受理されてから登記申請を行うことになります。

許認可の検討

業種により、許認可を受けなければ日本で事業を行うことができない場合があります。許認可が必要な業種なのにこれを怠って営業を行うと営業停止や刑事罰を受ける可能性がありますので、注意が必要です。たとえば飲食業を行うためには、保健所に申請して食品営業許可をもらわなければなりませんし、人材派遣業を行うには、都道府県の労働局に申請して労働派遣業許可をもらう必要があります。実際に許認可を受けるのは、「会社設立後、事業を始める前」になりますが、許認可、届け出が必要な業種を行う場合には、定款に定められ登記されていなければなりませんので、事前に許認可が必要な業種かどうか確認することが大切です。また、許認可についての行政の審査に1週間から2カ月ほどの時間がかかることも予想されますので、会社設立のスケジュールにも注意が必要です。栗林総合法律事務所では、許認可の要否に関する法律意見書やメモランダムの作成を行っていますので許認可の要否や許認可の条件が不明な場合には、当事務所までお問合せください。

定款の作成

定款は、決定した基本的事項に基づいて、日本の会社設立の場合と同様に日本語で作成し、公証人役場での認証を受けることが必要です。定款の内容について問題が生じる可能性もありますので、事前に公証役場に相談し、定款内容が問題ないことを確認しておくことが無難です。なお、会社の目的事項については、公証人役場では確認できませんので、法務局に確認する必要があります。親会社が外国会社の場合、定款に英語を併記するか、定款の英訳を作成することが必要になります。英語併記した定款も、認証可能です。定款には、発起人全員の実印で各ページ割り印するか、もしくは袋綴じして綴じ目に割印をしますが、外国人や外国法人が発起人の場合で印鑑がない場合には、割サイン、捨てサイン、袋とじにサインする、余白にサインする(またはイニシャルを記入する)方法をとることができます。日本の公証役場で代理人が定款認証する際には、定款認証のための委任状の原本を公証人役場に提出することも必要となります。受任者の資格は、「会社設立代理人」ではなく、「定款作成代理人」と記載します。名前の前に弁護士や司法書士の資格を記載するかどうかは任意です。弁護士の資格を記載する場合は、「定款作成代理人弁護士栗林勉」というような記載になります。委任状には発起人がサインした定款を添付します。委任状と定款のドラフトは一体の文書として公証役場に提出する必要があります。そこで、委任状と定款のドラフトを袋とじにして、割り印や割サインを行うことが必要となります。そのほかの方法としては、委任状と定款のドラフトの全ページにイニシャルサインをし、ページ番号を付す方法も考えられます。なお、委任状に添付する定款は日本語で作成する必要があります。英語を表記した定款も可能ですが、定款の全文が日本語で記載されていることは必須となります。委任状には、万一の場合に備えて、捨てサインや捨て印を押しておくことが重要です。

宣誓供述書の作成

日本の会社設立では、発起人が法人の場合には、定款認証の際に、発起人である法人の登記事項証明書、代表者の印鑑証明書の提出が必要です。外国法人が発起人となる場合にも、当該法人の登記事項証明書や印鑑証明書の提出を行うことが必要ですが、外国会社の場合、登記簿謄本や印鑑登録制度がないために、これらの書類を用意することができない場合が多くあります。その場合には、登記事項証明書に代わる宣誓供述書や、印鑑証明書に代わるサイン証明書を準備して公証人に提出します。宣誓供述書は、本国で用意することができる登記に関する証明書、定款、設立証明書などを元に、外国法人の商号、本店所在地、事業目的、株式数や資本金の額、役員の氏名や住所など日本の登記簿謄本に記載されている事項と同様の事項を記載して作成します。事前に定款認証を受ける公証役場に宣誓供述書のドラフトを送り、過不足がないかチェックしてもらうことが可能です。その際には、本国に日本の登記制度に類似する制度があれば登記簿を取得してもらい、翻訳文をつけて提出します。また、発起人が外国人であり、日本で印鑑登録しているときは、定款にその印鑑で押印し、印鑑登録証明書を添えて提出します。印鑑登録証明書に代わる書類として、外国会社の代表者のサイン証明書が必要です。宣誓供述書は、署名者(発起人が外国法人であればその代表者)に、当該外国会社の本国の公証人や在日大使館・領事館等に出向いてもらい、公証人や領事の面前で認証してもらいます。認証を受けた書類には、公証人や領事の面前で代表者が署名したことを示す内容の文書と公証人や領事のサインが記載されることになります。宣誓供述書が複数のページにわたる場合には、袋とじにして割り印(割サイン)を押すか、全ページに公証人や領事のサイン(又はスタンプ)をしてもらい、複数のページが一体の文書であることを明らかにする必要があります。公証人や領事の認証にアポスティーユをつけることは必要ありません。宣誓供述を行う人は会社の代表者になりますが、その人のタイトル(肩書)からその人が会社を代表する権限を有していることが明らかでないといけません。例えば肩書がCEOやChairmanとなっている場合が多くありますが、CEOやChairman自体からは会社の代表権が判明しないので、定款によってCEOやChairmanが会社を代表する権限を有していることを明らかにするよう公証人から求められることがあります。このリスクを考えた場合、Presidentを肩書とする場合は、代表権限は当然に推測される扱いになることが多いと思いますので、CEOやChairmanの記載に代えてPresidentとしてサインすることでいいかを事前に公証役場に確認をされることをお勧めします。

実質支配者に関する申告書

2018年11月から公証役場での定款認証の際に、新しく設立する会社の実質的支配者に関する申告書の提出が求められるようになりました。犯罪収益移転防止法に基づいた措置の一つで、会社の設立に際して、法人の実質的支配者を把握することなどにより、法人の透明性を高め、暴力団員やテロリストによる法人の不正使用(マネーロンダリング、テロ資金供与等)を抑止する目的で提出が要求されるものです。具体的には、法人成立の時に実質的支配者となるべき者について、氏名、住居、生年月日等と、その者が暴力団員及び国際テロリストに該当するか否かについて定款認証を行う公証人に申告することになります。実質的支配者は、犯罪収益移転防止法施行規則に定義されていて、①設立する会社の議決権の総数の50%を超える議決権を直接又は間接に有する自然人となるべき者、②として、①に該当する者がいない場合は、設立する会社の議決権の総数の25%を超える議決権を直接又は間接に有する自然人となるべき者(この者が当該会社の事業経営を実質的に支配する意思又は能力がないことが明らかな場合又は他の者が設立する会社の議決権の総数の50%を超える議決権を直接又は間接に有する場合を除く。)、③として、①及び②のいずれにも該当する者がいない場合は、出資、融資、取引その他の関係を通じて、設立する会社の事業活動に支配的な影響力を有する自然人となるべき者、④として、①、②及び③のいずれにも該当する者がいない場合は、設立する会社を代表し、その業務を執行する自然人となるべき者、がそれぞれ該当します。外国会社が発起人となる場合には、発起人親会社の株主名簿などを元に発起人親会社の株主について調査し、発起人親会社の議決権の50%を超える株式を持っている個人が存在するかどうかについて調査する必要があります。50%を超えるかどうかは、議決権を持つ株式について保有割合が計算されますので、たとえば議決権のない自己株式については、全体の議決権からは引いて計算することになります。無議決権については、本国と日本の会社法で解釈が異なる可能性がありますので、本国法も確認する必要があります。ストックオプションが発行されているなど潜在株式が存在する場合に、潜在株式数を含めて計算するかどうかについては法令上明らかではありませんが、潜在株式については将来発行されるかどうかが不明確であること、実質的支配者を把握する法律の趣旨からは、ストックオプションなどの潜在株式数については実質的支配者を判断する際の議決権数からは除くことで問題ないと考えます。議決権を有する株式の50%超えの株式を持っている株主が法人であった場合には、さらにその法人の株主名簿を見ながら、50%を超える株式を持つ個人がいないか、調査していくことになります。調査の結果、50%を超える株主がいない場合には、その旨の上申書を作成することになります。

定款の認証

必要書類の原本が本国から送られてきたら、日本の公証役場で定款認証の手続を行います。発起人が外国法人の場合には、本国の代表者が日本の公証役場に行くことができないので、代理人が定款作成代理人として公証役場に行き、定款認証をすることになります。定款認証を行う代理人は弁護士や行政書士がなることが多いと思われます。その際、弁護士や行政書士の肩書は、「会社設立代理人」や「発起人代理人」ではなく、「定款作成者代理人」と記載します。この意味では、公証役場で定款認証事務を行うことについての委任状と法務局に対して登記の申請手続きを行う委任状は別になりますので、それぞれの委任状を取得する必要があります。

会社代表印の作成

子会社の設立の際には、設立登記と同時または事前に、新しい会社の代表印を印鑑登録する必要があります。また会社設立後に口座開設をするときのために、銀行印も必要です。会社の商号が確定したら、定款認証や登記申請のための書類を作成している間に、代表印や銀行印を作成します。代表印と銀行印の作成は両方合わせて2万6000円程度で作成できます。通常のはんこ屋さんに注文することで、注文から数日で作成可能となります。印鑑には「○○株式会社代表取締役印」、「○○株式会社銀行印」と表示されます。

資本金払込みのタイミング

定款認証後、資本金の払込みと役員の選任の手続に進みます。資本金の払込みのタイミングは、原則定款の認証後がいいですが、定款の認証前であっても、定款で出資に係る払込み額について定めている場合にはその定款の作成日、又は発起人全員の同意により発起人が割当てを受ける設立時発行株式数を決定する場合にはその同意書の日付の後であれば法務局は受理する取扱いになっています。定款作成日より前の日付でなされた資本金の払込みでは、払い込まれた金額が会社設立のための資金なのか、それとも違う資金なのかはっきりしないため、法務局で受理されませんので注意が必要です。

資本金払込口座

発起人は、出資金全額を、日本国内銀行の日本国内本支店、日本国内銀行の海外支店、海外銀行の日本国内支店にある発起人名義の預金口座に振込する必要があります。従前、金融機関が保管する特定口座への払い込みを行い、金融機関から払込金振込証明書の発行を行ってもらうことがありましたが、現在は金融機関ではこのようなサービスを行っておりません。そこで、払い込みを行う銀行口座については、発起人のほうで準備をする必要があることになります。このように発起人名義の銀行口座に対して資本金の払い込みを行うのが原則ですが、発起人が外国法人の場合、ほとんどの場合で日本に口座を持っていません。この場合、設立時取締役が日本に居住するなどして日本の金融機関に設立時取締役の名義の銀行口座を持っている場合は、例外的に、設立時取締役の個人名義の預金口座に払い込むことが可能です。この場合、発起人から第三者(設立時取締役)に対して、株式払込金の受領の権限を委任した旨の委任状が必要となります。また、設立時取締役の全員が日本に居住していないために、日本国内に振込できる個人口座がない場合には、発起人・設立時取締役の全員が日本国内に住所を有していない場合のみ、発起人・設立時取締役以外の第三者(例えば設立手続きを代行する弁護士や司法書士)の預金口座に払込みすることができます。この場合にも、発起人から第三者に対する委任状を添付する必要があります。この委任状は定款認証の委任状や会社設立登記申請手続きの委任状とは別のものになります。第三者の口座を使うことができる特例は、設立時取締役の全員が日本に口座を持っていない場合にのみ適用されるもので、設立時取締役が日本在住の外国人で銀行口座を持っている場合には、この特例は適用されません。以上の扱いについては、法務省平成29年3月17日民商第41号通達を参照ください。

資本金の払い込みと外為法の事前審査

新しく設立される子会社が外為法に基づく事前届出該当業種に当たる事業を行っているために、事前届出書を日銀に提出し、管轄の省庁の審査を受けている場合、審査が終了するまでは会社の設立登記をすることができないことになります。外為法の届出制度では、事前審査が終了するまでは会社の設立登記の申請ができないということですので、審査期間中に出資金の払込みを行うことは可能です。

法務局への払込証明書の提出

資本金については、払込証明書を登記申請の添付書類と一緒に法務局に提出する必要があります。払込みをうけた通帳の表紙、表紙を開けた次のページ、払込みが記帳されたページのコピーを取り、証明書にホチキス止めして、会社印で各ページ割り印します。資本金については、実際に払い込みがなされることが必要ですので、会社の設立準備の前から、銀行口座に資本金に相当する金額以上の預金があったということを証明するだけでは不十分です。実際に資本金が振り込まれたこと(資金の移動があったこと)を銀行預金通帳で判別できなければなりません。外国から送金がなされた場合、金融機関から被仕向送金の通知がなされますが、銀行預金通帳自体には振込人の名称が記載されません(「外国為替」や「被仕向送金」と記載されることはあります)。但し、資本金が誰から振り込まれたかは審査の対象となっていませんので、振り込みの事実が確認されれば誰から振り込まれたかを法務局に対して証明する必要はありません。設立手続きを行う弁護士や司法書士が事前に払込資金を預かっておき、発起人を代行して払い込み口座に振り込むことも問題ありません。

払い込まれた資本金の額が不足する場合

資本金については、1円でも不足すると登記ができませんので、海外から送金を行う発起人は、着金される金額が日本円で資本金に相当する金額であることを送金時に金融機関に確認する必要があります。海外からの払い込みの場合、銀行送金手数料がかかったり、為替レートが適用されることで、入金された金額が資本金の額に欠けることがあります。この場合、資本金全額の払い込みがあったことにはなりませんので、海外の発起人は不足分の金銭を追加で払い込む必要があります。資本金を超える金額が払い込まれている場合は問題ありません。但し、払込金であることを特定できる必要がありますので、資本金100万円に対して500万円の入金があった場合、それが果たして資本金の払い込みかどうかが判別しかねることはあります。

役員選任、発起人決定書の作成

定款認証が終わったら、取締役、代表取締役及び監査役等の役員を選任し、発起人決定書や就任承諾書を作成します。また、出資に当たり、金銭だけでなく現物出資がある場合には、取締役及び監査役による設立手続の適法性の調査を行い、その報告書を作成する必要があります。不動産を現物出資する場合は、不動産鑑定士に鑑定評価書を作成してもらい、弁護士や税理士がその鑑定評価書が適切に作成されたことを確認する意見書を添付することになります。

登記申請

定款認証と資本金の払込みが終わったら、新会社の本店を管轄する法務局に登記申請を行います。登記の申請日(法務局が受理した日)が会社の設立日になります。登記申請の必要書類は、登記申請書、認証を受けた定款、役員の就任承諾書、役員の印鑑証明書、資本金の払込を証明する書面などがあります。外国人が役員に就任する場合に、その外国人が日本に印鑑登録していない場合には、印鑑証明書に代えてサイン証明書を添付することになります。定款で本店所在地を地番まで記載しなかった場合や、定款に発起人が割当てを受ける株式数や払い込むべき金額、資本金や資本準備金の額が定められていない場合には、これらを定めるための発起人決定書が必要になります。また、現物出資がある場合には、現物出資を行う発起人による現物出資財産引継書、設立時取締役による調査報告書、資本金の額の計上に関する証明書の提出も必要です。登記の申請から登記の完了までに通常2週間ほどの期間を要します。登記申請と同時に、法務局に届け出る新会社の代表印についての印鑑届出書を提出します。代理人に委任する場合には、登記申請の委任状とは別に、印鑑届出についての委任状が必要になります。

外為法に基づく事後報告書の提出

外為法に基づく事前報告が必要ない場合には、会社設立後に、日本銀行に事後報告書を提出する必要がありますが、事後報告書に該当する業種は多岐にわたりますので、外国法人が出資してする会社設立の場合には、ほぼすべてのケースについてこの報告書を提出する必要があります。新会社が営む事業が事前届出該当業種に当たり、事前届出を提出している場合には、会社設立後45日以内に、当該設立に関する実行報告書を提出する必要があります。

募集設立の場合

募集設立で会社を設立する場合、発起人による定款の作成、公証人による定款認証、発起人による株式の引き受け、発起人による出資の履行までは、発起設立と同じです。募集設立の場合、発起人は少なくとも1株以上の引き受けをして出資しますが、発起人全員の同意で募集条件を決めたあと、発起人が募集を行い、これに応じて株式を引き受けたい者が申込し、申込を受けた発起人が申込人に株式を割り当てます。その後、株式引受人は、払込金額全額の払込みを行います。全額の払込みが完了したら、発起人は金融機関に、払込金保管証明書を発行してもらいます。このほか、設立時募集株式の通知や株式申込証の発行などの必要書類を追加で準備します。募集設立の場合には、設立時募集株式の払込完了後に創立総会を開催し、設立時取締役によって、会社の設立に関する事項を決議する必要があります。

発起設立以外の会社設立の方法

募集設立の方法で、日本人が1株だけ株式を引き受け、外国会社は株式申込人として残りの株式を引き受けて会社を設立し、会社設立後に日本人が持つ1株を外国会社が買い受けるという方法もあります。ただし、募集設立の場合に、金融機関が払込金保管証明書を出してくれるかどうかを確認することが必要です。これ以外の方法としては、資本金が少額の株式会社を発起設立の方法で日本人(例えば弁護士や司法書士)に設立させ、会社設立後に日本人から外国法人に株式を譲渡させた上で外国法人が増資するという方法も取ることが出来ます。

株式会社設立に関する費用

株式会社の設立に関する費用は次の通りとなります。

定款認証のための公証人手数料 5万円
印紙税 4万円
登録免許税 15万円
印鑑作成費用(消費税別) 3万円
交通費・雑費(消費税別) 1万円
弁護士費用(消費税別) 50万円
合計 78万円