• 2020.09.01
  • 外資系企業の法務

対内直接投資等にかかる事前届出

外為法による事前届け出又は事後報告

外国為替及び外国貿易法(以下、「外為法」)では、外国投資家が国内の会社の株式の取得などの対内直接投資に該当する行為を行う場合には、その行為が日本の安全保障を脅かす恐れがないかどうかを審査するために、事前届出または事後報告の提出を義務付けています。

外国投資家とは

外国人投資家とは、外為法で、①非居住者である個人、②外国法令に基づいて設立された法人その他の団体又は外国に主たる事務所を有する法人その他の団体、③①または②に掲げる者の子会社、④非居住者である個人が、役員または代表権限を有する役員のいずれかの過半数を占める日本の法人その他の団体と定義されています(外為法26条1項)。①の非居住者である個人や、②の外国法人が外国人投資家に該当することは比較的わかりやすいと思います。日本で設立された日本法人であっても、非居住者である個人や外国法人が議決権の50%以上を保有している場合は、③により外国人や外国法人の子会社になりますので、「外国人投資家」に該当します。また、非居住者が役員や代表取締役の過半数を占めている場合も、④により「外国人投資家」に該当することになります。従って、日本を設立準拠法として設立された会社であっても、③や④に該当する場合は、「外国人投資家」として外為法の届出や報告が必要となる場合がありますので、注意が必要です。一方で、たとえば日本に居住している外国人が会社を設立しようというときには、外為法の届け出は必要ありません。

対内直接投資とは

対内直接投資とは、外国人投資家が行う国内企業の経営に実質的に影響力を持つような投資のことをいいます。具体的には、下記のものが対内直接投資に該当します。(外為法26条2項)。
1 国内の上場会社の株式または議決権の取得で、出資比率または議決権比率が1%以上と なるもの。
2 国内の非上場会社の株式または持分を取得すること。ただし、発行済株式または持分を他の外国投資家からの譲り受けにより取得する場合は除かれます。
3 個人が居住者であるときに取得した国内の非上場の株式または持分を、非居住者となった後に外国投資家に譲渡すること。
4 外国投資家が①国内の会社の事業目的の実質的な変更(上場会社等の場合、外国投資家が総議決権の3分の1以上を保有している場合に限る。)、または、②取締役もしくは監査役の選任に係る議案、③事業の全部の譲渡等の議案(②③については、上場会社の場合には、外国投資家が総議決権の1%以上を保有している場合に限る)について同意すること。
5 非居住者個人または外国法人である外国投資家が、国内に支店、工場その他の駐在員事務所を除く事業所を設置、またはその種類や事業目的を実施的に変更すること。
6 国内法人に対する1年を超える金銭の貸付けであって、当該貸付け後における当該外国投資家から当該国内法人への金銭の貸付けの残高が1億円に相当する額を超えること、及び当該貸付け後における当該外国投資家から当該国内法人への金銭の貸付けの残高と、当該外国投資家が所有する当該国内法人が発行した社債との残高の合計額が、当該貸付け後における当該国内法人の負債の額として定める額の50%に相当する額を超える、というい ずれも条件も満たす貸付け。
7 居住者(法人のみ)からの事業の譲受け、吸収分割および合併によって事業を承継すること。
8 国内会社が発行した社債で、取得日から元本の償還日までの期間が1年超であり、その募集が特定の外国投資家に対してされるものを取得する場合であって、①当該社債の取得後において当該外国投資家が所有する当該国内企業の社債の残高が1億円に相当する額を超える、②当該社債の取得後において当該外国投資家が所有する当該国内会社の社債の残高と、当該外国投資家から当該国内会社への金銭の貸付けの残高の合計額が、当該社債の取得後における当該国内会社の負債の額として定める額の50%に相当する額を超える、という両方を満たすもの。
9 日本銀行など特別な法律に基づいて設立された邦人の発行する出資証券の取得。
10 上場会社等の株式への一任運用で、実質株式ベースの出資比率または実質保有等議決権ベースの議決権比率が1%以上となるもの。(出資比率および議決権比率には、当該一任運用者の密接関係者である外国投資家が所有するものを含む)。
11 議決権代理行使受任(他の者が直接に保有する国内の会社の議決権の行使につき当該他のものを代理する権限を受任する)で、下記aまたはbに該当するもの。
 a 上場会社等の議決権に係る議決権代理行使受任であって、当該議決権代理行使受任の後における受任者の実質的保有等議決権ベースの議決権比率が10%以上となるもの。(当該受任者の密接関係者である外国投資家の実質保有等議決権を含む)
 b 非上場会社の議決権に係る議決権代理行使受任であって、他の外国投資家以外から受任するもの。(ア)(イ)(ウ)のいずれにも該当する。
 (ア)受任をする者が、当該会社またはその役員以外のものである場合。
 (イ)受任によって得た権限を用いて議決権行使を行おうとする議案が、次のいずれかに該当する場合。
    ア 取締役の選任または解任
    イ 取締役の任期の短縮
    ウ 定款の変更(目的の変更に係るもの)
    エ 定款の変更(拒否権付株式の発行に係るもの)
    オ 事業譲渡等
    カ 会社の解散
    キ 吸収合併契約等
    ク 新設合併契約等
 (ウ)受任する者が自己に議決権の行使を代理させることの勧誘を伴うもの。
12 議決権行使等権限の取得であって、当該取得後における取得者の実質的保有等議決権ベースの議決権比率が1%以上となるもの。(当該取得者の密接関係者である外国投資家の実質的保有等議決権を含む)
13 個人が居住者であるときに取得した国内の非上場会社の議決権を、非居住者となった後に外国投資家に当該議決権の行使につき代理する権限を委任すること(議決権代理行使受任)であって、上記(11)の(ア)(イ)のいずれにも該当するもの。
14 共同して上場会社等の実質保有等議決権を行使することにつき、当該上場会社等の実質保有等議決権を保有する他の非居住者である個人または法人等の同意の取得(共同議決権行使同意取得)であって、同意取得者が保有する実質保有等議決権の数と当該同意取得の相手方が保有する実質保有等議決権の数を足し合わせた実質保有等議決権ベースの議決権比率が10%以上となるもの。(当該同意取得者の密接関係者である外国投資家と当該同意取得の相手方の密接関係者である外国投資家の実質保有等議決権を含む。)

なお、上場会社の株式の取得については、従来株式数を基準に定義されていましたが、投資の形態の多様化に伴い、2019年9月の外為法改正で、議決権を基準に定義されることになりました。また、従来上場会社の株式や議決権の取得は、取得後に10%以上となる場合が外為法に基づく届出の対象であったところ、2020年5月の改正で、取得後に1%以上になるような取得が届出の対象となりました。

上記に該当する投資が対内直接投資と定義され、外為法に基づく事前届出または事後報告が必要になります。身近な例でいうと、外国人や外国法人が1%以上出資して会社を設立する場合も対内直接投資に該当します。事前届出が必要か事後報告でいいかは、投資先が営んでいる事業の種類によって異なります。非上場会社の株式の取得に関しては1株でも対内直接投資に当たるため、多くのケースに対内直接投資に該当することになります。

事前届出

事前届出か事後報告のどちらを提出するかは、投資先が営む業種によって決まり、投資先が営む事業に事前届出業種に該当する事業が含まれる場合には、事前届出書の提出が必要です。

2019年8月の改正

2019年の改正前の外為法では、事前届出が必要な業種は、国の安全に関連する「武器、航空機、原子力、宇宙関連、軍事転用可能な汎用品の製造業」、「電気・ガス、熱供給、通信事業、放送事業、水道、鉄道、旅客運送」、「生物学的製剤製造業、警備業」「農林水産、石油、皮革関連、航空運輸、海運」業などと定められていました。しかし、近年のサイバーセキュリティーの確保の必要性や安全保障上重要な技術の流出など我が国の安全保障に重大な影響を及ぼす事態を生じることを適切に防止する観点から、2019年8月には情報処理関連や情報通信の分野でも事前届出該当業種が拡大されました。具体的には、集積回路製造業、半導体メモリメディア製造業、光ディスク・磁気ディスク・磁気テープ製造業、電子回路実装基板製造業、有線通信機械器具製造業、携帯電話機・PHS電話機製造業、無線通信機械器具製造業、電子計算機製造業、パーソナルコンピュータ製造業、外部記憶装置製造業、受託開発ソフトウェア業、組込みソフトウェア業、パッケージソフトウェア業、有線放送電話業、情報処理サービス業が指定業種に追加され、地域電気通信業、長距離電気通信業、その他の固定電気通信業、移動電気通信業、インターネット利用サポート業については、対象業種の範囲が拡大されました。法律改正の趣旨は、半導体やIT技術の流出を防止することにあると考えられます。そのため、半導体メモリ、携帯電話、パソコンなどの業種が事前届出該当業種に指定されています。また、受託開発ソフトウェア業、組込みソフトウェア業、パッケージソフトウェア業(以上3つは、日本標準産業分類では、「ソフトウェア業」に該当します。)、情報処理サービス業(日本標準産業分類では、「情報処理提供サービス業」に該当します。)、インターネット利用サポート業(日本標準産業分類では、「インターネット付随サービス業」に該当します。)が事前届出該当業種に追加されています。IT業界以外の会社であっても、ソフトウェアの開発を行っている場合には該当する可能性がありますので、注意が必要です。具体的にどのような業種がこれらに該当するかについては、日本標準産業分類に記載された業種の説明などによって判断されることになります。

受託開発ソフトウェア業 顧客の委託により、電子計算機のプログラムの作成及びその作成に関して、調査、分析、助言など並びにこれらを一括して行う事業所をいう。
組込みソフトウェア業 情報通信機械器具、輸送用機械器具、家庭用電気製品等に組込まれ、機器の機能を実現するためのソフトウェアを作成する事業所をいう。
パッケージソフトウェア業 電子計算機のパッケージプログラムの作成及びその作成に関して、調査、分析、助言などを行う事業所をいう。
情報処理サービス業 電子計算機などを用いて委託された情報処理サービス(顧客が自ら運転する場合を含む)、データエントリーサービスなどを行う事業所をいう。
インターネット利用サポート業 主としてインターネットを通じて、インターネットを利用する上で必要なサポートサービスを提供する事業所をいう。

2020年5月の改正

2020年の5月には、事前届け出を要する業種の分類方法も変更されました。外為法の改正前に事前届出が必要な業種として指定されていた155の指定業種を、改正後は、①指定業種の中で国家の安全を損なう恐れが高い業種として重点審査が求められるコア業種、②155の指定業種からコア業種を除いた業種、③155の指定業種以外の業種に分類し、コア業種については、より厳格な事前審査がされることとなりました。コア業種には、武器、航空機、宇宙、原子力、軍事転用可能な汎用品の製造業の全分野と、サイバーセキュリティー関連、電力業、ガス業、通信業、上水道業、鉄道業、石油業のうち一部の分野が該当します。前述した対内直接投資に該当する投資のうち、対内直接投資等に該当する上場会社等の株式・議決権取得の数値の1%への引き下げ(従来は10%でした)、役員への就任および重要事業の譲渡・廃止に関する同意行為の対内直接投資等への追加、居住者からの事業の譲受け等の対内直接投資等への追加は、この時の改正で追加されたものになります。

2020年6月の改正

2020年6月には、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、国民の命・健康に関わる重要な医療産業の国内製造基盤を維持する目的で、感染症に対する医薬品に係る製造業(医薬品中間物を含む)と、高度管理医療機器に係る製造業(附属品・部分品を含む)もコア業種に追加されました。指定業種のうちコア業種以外の業種には、熱供給業、放送業、旅客運送業、生物学的製剤製造業、警備業、農林水産業、皮革関連、航空運輸、海運業などが含まれます。

外国人投資家の国政や所在地による届け出義務

投資先の事業目的が事前届出該当業種である場合の他にも、外国投資家の国籍又は所在地が日本及び対内直接投資等に関する命令別表第一に掲げられた約160の国と地域以外の国である場合や、イラン関係者によって行われる特定業種の株式取得等についても、事前届出が必要です。

事前届出の免除制度

一方で、外国投資の促進や外国投資家の負担軽減の観点から、事前届出の免除制度も導入されています。事前届出の免除制度は、2020年の改正によって新たに始まることとなりました。内容としては、例えば海外の金融機関が投資家の場合、一定の免除基準をクリアすれば包括的に事前届出が免除されます。外国の一般投資家のうち、過去に外為法に違反した者その他の政令で定める一定の者に該当しない外国投資家による株式または議決権の取得等一定の対内直接投資等の場合で、コア業種以外の指定業種の場合、免除基準をクリアすれば事前届出が免除され、コア業種の場合には、上乗せ基準も遵守すれば10%未満の株式の取得について事前届出が免除されます。免除を受ける投資家がクリアすべき免除基準は、①外国投資家自ら又はその密接関係者が役員に就任しない、②指定業種に属する事業の譲渡・廃止を株主総会に自ら提案しない、③指定業種に属する事業に係る非公開の技術情報にアクセスしない、というものです。コア業種が事前届出を免除されるための上乗せ基準は、①コア業種に属する事業に関し、重要な意思決定権限を有する委員会に自ら参加しない、②コア業種に属する事業に関し、取締役会等に期限を付して回答・行動を求めて書面で提案を行わない、というものになっています。

事前届出の作成

事前届出に該当する業種に対して投資する際には、当該取引を行う前6カ月以内に、日本銀行を通じて、財務大臣及び事業所管大臣に対し、事前届出書を提出します。届出は、別紙様式第一の「株式持分(及び議決権)の取得等に関する届出書」によって行われます。取得するものが株式である場合は、「持分」の文字の上に線を引いて消します。反対に取得するものが持分の場合は「株式」の文字の上に線を引いて消します。提出する部数は関係大臣の数に2通を追加したものです。届出書には、届出者の名称・住所・事業の内容・届出者となる法的根拠を記載します。また、株式や持分の発行会社の名称・本店所在地・定款上の事業目的・資本金・外資比率・事前届出業種に該当する理由などを記載します。また、取得または一任運用をしようとする株式のところに、株式の種類、数量、取得価格、時期、取得の相手方(株式を譲渡する者)、取得の目的などを記載する必要があります。

事前届出書の提出

事前届け出書が提出されると、受理日を明確にするために、受理日と「財務大臣及び事業所所管大臣受理」という記載がなされたスタンプを押してくれます。このスタンプには「JD第●●号」と記載された受理番号が記載されています。届出が受理された後の日本銀行国際局との連絡はこの受理番号をもとに行われることになります。事前届出の届出者は外国人投資家自身ですが、外国人投資家が非居住者である場合や外国法人である場合には、居住者である代理人が行わなければならないと規定されています。代理人の氏名、住所、連絡先については届出書に記載が必要ですが、委任状の添付は求められていません。事前届出書の提出先である事業所管省庁は、投資先の会社の登記簿や定款の事業目的に記載がある事業を管轄するすべての省庁ですが、事前届出該当業種は、定款や登記の記載に関わらず、実際に投資先の企業が行っている事業を調査して正確に記載する必要があります。例えば、定款の事業目的にソフトウェアの製造開発と記載されていたとしても、実際にこれらの事業を行っていない場合には、事前届出を提出する必要はありません。届出代理人としては、発行会社の担当者と連絡を取りながら、実際に行っている業務を確認していくことが重要になります。

審査手続き

日本銀行に事前届出書を提出後、事業所管省庁での審査が開始されます。審査内容は多岐にわたり、申請人である投資家の事業内容や主要な取引先、売上規模、従業員数、株主構成、投資先の発行会社との関係性、投資先への投資の目的、発行会社の事業規模や内容などについて、所轄省庁からの質問票に回答することもあります。申請人の株主構成がどのようになっているかをチェックされることが多く、申請人の主要株主が法人である場合は、さらにその法人の株主が誰であるかを聞かれたり、申請人の主要株主の属性について聞かれることも多くあります。また、安全保障上の確認として、発行会社の情報処理サービス業の製品・サービスが政府調達(IT調達に係る国の物品等又は役務の調達方針及び調達手続に関する申し合わせ(平成30年関係省庁申合せ)に関するものに限る)されているか、発行会社の情報処理サービス業の製品・サービスは、安全保障上重要な製品に関する事業(業種告示別表第一中の業種、業種告示別表第二の電気業(原子力発電所を所有するものに限る)、情報通信サービス関連業種)を行う会社に納品されているかどうかの確認がなされることがあります。さらに発行会社の情報管理体制として、発行会社がバックドア・不正プログラムへの対策として、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)適合性評価制度の認証を受けているかどうか、バックドア・不正プログラムへの対策としてISO9001の取得をしているかどうかが確認されます。

30日間の取引禁止と期間短縮

届出受理日から原則30日間は、外国人投資家は当該取引を行うことが禁止されますが、通常禁止期間は2週間に短縮されます(外為法27条2項参照)。期間の短縮は自動的に行われますので、2週間に短縮するために期間短縮の上申書のようなものを提出する必要はありません。禁止期間を経て当該取引を行うことが許可されると、実際に株式の取得などをすることができるようになります。また、グリーンフィールド投資案件(届出者が100%出資して日本に設立した完全子会社の新規設立に関するもの)、ロールオーバー案件(過去に届出をした案件で、届出書に記載した株式等の取得時期の経過後も引き続き同じ取得目的・経営関与の方法の下、同じ発行会社の株式等を取得する予定があり、過去の届出日から6ヵ月以内にその届出と同様の届出を行うもの。)、パッシブ・インベストメント案件(外為法27条1項に基づく届出内容の一部として、当該投資が重要提案行為等の実施を伴わないことを明記する案件)については、禁止期間を届出の受理日から5営業日とするように努めることとされています。

審査結果

審査が完了したら、日本銀行国際局長名で、「本届出に係る行為は●年●月●日から行うことができる。」と書いた書類が交付されます。株式や持分の取得は、届出書受理日から6か月以内に行われる必要があります。

実行報告書

外国投資家が実際に株式を取得するなどした場合には、45日以内に日本銀行を経由して財務大臣及び事業所轄大臣に実行報告書を提出する必要があります

事前届出のスケジュール管理

事前届出業種に該当するかどうかの確認や、届出書の作成に実務上時間を要することや禁止期間中には投資を実行できないことから、迅速な資金調達ができないといった問題が起こることも考えられます。したがって、投資やデューデリジェンスの初期の段階から、事前届出の準備について考慮することが重要です。

上場会社の株式取得についての検討項目

1 上場会社の株式の取得の場合、まず検討することは、1%以上の株式を取得するかどうかです。1%以上の株式を取得しない場合には、事前届出は必要ありません。事後報告も不要です。
2 一方、1%以上の株式を取得する場合に、次に検討することは投資先の会社が事前届出該当業種を営んでいるかどうかです。投資先の事業に事前届出該当業種が無い場合には、事前届出は必要ありません。事後報告については、10%以上の株式を取得する場合には必要で、10%未満の場合には、必要ありません。
3 投資先が事前届出該当業種を営んでいる場合には、次に事前届出免除の遵守基準(①外国投資家⾃ら⼜はその密接関係者が役員に就任しない、②指定業種に属する事業の譲渡・廃⽌を株主総会に⾃ら提案しない、③指定業種に属する事業に係る⾮公開の技術情報にアクセスしない)を遵守するかどうかを検討します。この基準を遵守しない場合には、事前届出が必要です。また、実際に取引を実行した後には、実行報告を提出する必要があります。
4 一方、この基準を遵守する場合には、次に外国投資家が外国金融機関であるかどうかを検討することになります。外国金融機関である場合には、事前届出は不要です。また、10%以上の株式を取得する場合には、事後報告の提出が必要になりますが、10%未満の場合には、事後報告は不要です。
5 外国投資家が外国金融機関ではない場合には、次にコア業種への投資であるか否かを検討します。コア業種への投資ではない場合には、事前届出は不要ですが、事後報告をする必要があります。
6 一方コア業種への投資である場合には、上乗せ基準(①コア業種に属する事業に関し、重要な意思決定権限を有する委員会に⾃ら参加しない、②コア業種に属する事業に関し、取締役会等に期限を付して回答・⾏動を求めて書⾯で提案を⾏わない)を遵守するかどうかを検討します。上乗せ基準を遵守しない場合には、事前届出が必要です。この場合、取引の実行後に実行報告もする必要があります。
7 上乗せ基準を遵守する場合には、10%以上の株式の取得の場合には事前届出と取引後の実行報告が必要となります。10%未満の場合には、事前届出は免除され、取引後に事後報告を行えばよいということになります。

非上場会社の株式取得についての検討項目

1 非上場会社の株式の取得の場合には、まず投資先の会社が指定業種の事業を営んでいるかを検討します。投資先が指定業種の事業を営んでいない場合には、事前届出は不要です。また取得する株式の割合が10%未満の場合には、事後報告も不要ですが、10%以上となる場合には、指定業種以外の株式取得に係る事後報告を提出する必要があります。
2 投資先の会社が指定業種の事業を営んでいる場合には、次にコア業種への投資であるかどうかを検討します。コア業種への投資である場合には、事前届出が必要です。また取引後の実行報告も必要です。
3 コア業種への投資ではない場合には、事前届出免除の遵守基準(①外国投資家⾃ら⼜はその密接関係者が役員に就任しない、②指定業種に属する事業の譲渡・廃⽌を株主総会に⾃ら提案しない、③指定業種に属する事業に係る⾮公開の技術情報にアクセスしない)を遵守するかどうかを検討します。事前届出免除の基準を遵守する場合には、事前届出が免除されますが、事後届出をする必要があります。
4 事前届出免除の基準を遵守しない場合には、事前届出が必要となり、取引後に実行報告もする必要があります。

事後報告

(1)外国投資家の国籍および所在国が日本または別表掲載国である場合である、(2)投資先が営む事業に指定業種に属する事業が含まれない、または事前届出免除制度を利用している、(3)イラン関係者により行われる行為以外であるという全ての条件も満たす場合で、かつ外国投資家が株式引受けを行った翌日に当該外国投資家の実質株式ベースの出資比率または実質保有等議決権ベースの議決権比率が密接関係者と合わせて10%以上となった場合などには、事後報告書の提出が必要です。事後報告が必要となる業種は多岐にわたるため、外国人投資家による投資や外国人や外国法人が出資した会社設立などについては、多くの場合事後報告書の提出が義務付けられることになります。事後報告は、行為を行った日から45日以内に日本銀行を経由して財務大臣及び事業所管大臣に対して行う必要があります。

届出が必要ない場合

対内直接投資であっても事前または事後届出が必要ない取引もあります。たとえば、相続・遺贈・株式無償割当て・取得条項付株式の取得事由の発生による株式等の取得、非上場会社の株式又は持分を所有する法人の合併により合併後存続する法人又は新たに設立される法人が当該株式若しくは持分又は当該株式若しくは持分に係る議決権を取得する場合における当該取得、株式の分割又は併合により発行される新株若しくは当該新株に係る議決権の取得又は当該新株に係る株式への一任運用などがあります。

企業法務の最新情報をお届けする無料メールマガジン

栗林総合法律事務所 ~企業法務レポート~

メルマガ登録する