合同会社の設立
日本の合同会社
会社設立時のコストが株式会社より安く、組織運営の自由度が株式会社よりあるという理由で、外国法人の日本子会社の形態として合同会社を選択することも少なくありません。株式会社と合同会社の違いについては、株式会社の設立手続きのところに記載しています。
機関設計の柔軟性
株式会社については、株主総会、取締役会、取締役、監査役などの機関があり、定款の変更など重要な事項については株主総会の決議で決められることになります。合同会社では、監視機関の設置が義務付けられておらず、会社の重要な事項については出資者が直接話し合って決めることができます。
利益分配の柔軟性
株式会社では、株主平等の原則が働き、利益の分配については全ての株主を等しく取り扱う必要があります。これに対して合同会社では、出資比率に関係なく利益の分配や損失の負担割合を定めることができます。
パススルー課税について
合同会社について、アメリカのSコーポレーションやCコーポレーションに対するLLCと同じだと理解される場合がありますが、アメリカのLLCと日本の合同会社では、課税について大きな違いがありますので、外国人や外国法人について説明を行う場合には誤解が生じないよう注意しておく必要があります。すなわち、LLCと合同会社では、投資家が有限責任であり、出資額を超えてLLCや合同会社に生じた責任を投資家が負わない点では同じですが、日本の合同会社にはLLCに認められるパススルー課税は認められていません。すなわち、アメリカのLLCの場合、パススルー課税により、LLCで生じた利益についてLLCに課税せず、直接構成員(社員)に対して課税されることになりますので、LLCと構成員が2回税金を支払う必要はありません。また当該年度のLLCの損益が直接構成員(社員)のバランスシートに反映されることになります。これに対し合同会社の場合、合同会社は構成員(社員)とは独立した法人格を有し、合同会社に生じた利益については、合同会社の収益として認識され、合同会社が一旦法人税を納付することになります。合同会社の収益が直接構成員(社員)のバランスシートに反映されるわけではありません。合同会社が構成員に対して剰余金の分配を行う場合は、合同会社の構成員(社員)に対してキャピタルゲイン課税がなされますので、合同会社の社員は合同会社のレベルで支払う法人税と配当のレベルで支払うキャピタルゲインの2段階で税金を支払うことになります。
合同会社の設立手続
合同会社の場合には、定款認証は必要ありません。また、合同会社においても出資にかかる金銭の全額を払い込むことが必要ですが(会社法578条)、株式会社の設立のように、出資金を銀行口座に払い込む必要はなく、会社に対して直接現金を交付することができ、払込みを証する書面として、社員が発行する領収書などを添付することで問題ありません。
合同会社における業務執行
合同会社においては、社員(出資者)は全員有限責任社員となります(会社法576条4項)。また、合同会社は所有と経営が未分離ですので、合同会社の社員は、定款に別段の定めがある場合を除いて、それぞれが合同会社の業務を執行することになります。但し、常に全社員(全出資者)が業務執行を行うのも不都合ですので、社員が複数いる場合は、定款で業務執行社員を定めることができます(会社法591条1項)。この場合、業務執行社員が会社を代表する権限を有し、業務執行社員以外の社員は会社を代表する権限を有しないことになります。会社の社員が1名しかいない場合は、必然的にその社員が会社の業務を執行することになります。
職務執行者の選任と登記
合同会社の設立に際しては、日本で設立する合同会社の目的、商号、本店所在地、社員の氏名・住所、代表社員の住所・氏名などを定める必要があります。合同会社の場合、法人が社員となり、かつ業務執行社員(合同会社の代表社員)となることができます。業務執行社員(合同会社の代表社員)は株式会社の代表取締役に相当するものです。しかしながら法人が直接会社を代表して行動することはできません。そこで会社法では、法人が業務執行社員である場合は、当該業務を執行する社員の職務を行うべき者(職務執行者)を選任し、職務執行者の氏名と住所を登記する必要があります(会社法912条1項7号)。職務執行者の選任については、取締役会の決定や代表者の宣誓供述書により定められることになります。職務執行者について特別の資格はありませんので、外国会社の役員や従業員がなることもできますし、外部の公認会計士やコンサルタントを職務執行者に指名することもできます。職務執行者の登記申請に際しては、職務執行者の選任に関する書面と職務執行者の就任承諾書が必要となります。
業務執行社員(代表社員)の登記事項証明書
法人が業務執行社員(代表社員)となる場合は、社員である法人の登記事項証明書が必要とされます。外国法人が業務執行社員(代表社員)となる場合は、その外国法人の登記事項証明書が要求されます。外国法人の登記事項証明書の入手ができない場合、宣誓供述書(Affidavit)を作成する必要があります。宣誓供述書には、本国の公証人の認証を受け、和訳を添付して提出する必要があります。その代表社員の職務執行者の選任についても、外国法人の場合は、上記宣誓供述書に選出した職務執行者の住所・氏名を記載することで足ります。
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