Warning Letter(警告書)
事案の概要
アメリカの旅行への参加の申し込みを行い、旅行代金(40万円)を振り込んだ後、現地で生じた交通途絶の影響により当該旅行の開催自体が行われないことになりました。本人から、旅行代金の返還を求めたにも拘わらず、アメリカの旅行会社からは、担当者が不在であるなどと言ってたらいまわしにされ、旅行代金の返還を受けられないということで当事務所に相談に来られました。
Warning Letterによる支払金の返還請求
当事務所では、依頼者から従前の経緯について詳細な説明を受け、担当者の氏名やこれまでのeメールのやり取りなどを見せていただきました。当事務所からアメリカの担当者に英語でメールを書き、代金の返還を求めたところ、直ちに代金全額が返金されてきました。英語のメールでは、事案の内容を明瞭に記載し、即時の対応がない場合には、日本において訴訟提起を行うことになることを明確にしました。
Warning Letterの発送方法
Warning Letterは郵送により行うこともありますが、近年ではほとんどがeメールで行います。Eメールへの返信があった場合は、相手とのコミュニケーションはその後もeメールで行いますが、返信がない場合は郵送の方法も検討されることになります。eメールによる通知文書も裁判上通常の郵送文書と同等の法的効力を有します。
弁護士によるWarning Letterの効力
アメリカの旅行会社では、旅行者からの様々なクレームや相談事があり、全てのケースに迅速に対応できていなかったのではないかと推測されます。特に担当者の退職や交代が生じた場合に、十分な引継ができていないこともあります。日本の企業と異なり、セクションごとに独立して業務を行っているような場合には、他の社員が担当する案件については、誰も真剣に取り扱ってくれないということもあります。そのような中で、日本の旅行者から直接英語で手紙が到着しても、その事実確認や責任の所在の判定は後回しにされ、そのまま放置されてしまう可能性も高いと思われました。このケースでは、栗林が直接担当し、法律事務所のレターヘッドを用いて、ある程度フォーマリティのある文書で説明を行うことで、先方も放置していた場合には訴訟など大きな問題になることを認識し、早期に対応いただけたのだと思われます。最終警告文書をFinal Warning Letterと言います。依頼者の皆様が直接連絡しても真剣に対応してくれないケースで、弁護士から通知を行うことで紛争の解決に至ることはよくあります。アメリカに送付する文書の内容は日本語と英語の両方で作成し、事前に依頼者の皆様と検討の上で提出することになりますので、依頼者の皆様自身も協議の方法や内容について十分に理解・納得した上で手続きを進めることができます。
Reply LetterまたはRebuttal
Warning Letterに対する相手からの回答文をReply Letter(回答書)と言います。Reply Letterで一定の解決方法について方針が示されたり、妥当な解決を模索していると考えられる場合、解決の条件などの提示を行います。これに対し、Warning Letterに記載された内容を認めず、反論を行ってくる場合には、当事者間に意見の相違があることになりますので、相手の主張を確認しながらなぜそのような意見の相違が生じたのかを明確にする必要があります。このような過程を法律的には争点の明確化と言います。当職らとしては争点の明確化を図るために相手方との間でメールでのやり取りが繰り返されることもあります。相手方当事者から反論が記載された文書をRebuttal(反論書)やCounter argument(対抗的議論)と言います。
Rebuttal及びCounter Argumentの作成
当事務所では海外からの請求があった場合のRebuttalやCounter Argumentの作成を行うこともあります。担当者からのヒアリングを行い、関係する記録を確認させていただいたうえで、法律的に適切な反論がある場合は、英語での反論文(rebuttal)を作成します。反論文(Rebuttal)は依頼者名で提出されることもありますし、当職らが代理人として当職らの名前で提出することもあります。
Rebuttal及びCounter Argumentの作成上の注意点
RebuttalやCounter Argumentは相手方当事者の意見を反映したものですので、裁判上も重要な証拠として扱われます。RebuttalやCounter Argumentの中で相手方の主張や事実関係を認めた場合には、弁論主義の下で裁判官の心象形成に大きな影響を与え、その主張や事実関係がそのまま裁判で認定されることになる可能性が高くなります。当事者としては善意で主張していることも法律家の観点(構成要件事実の認定)からすれば、不適切な表現が含まれている可能性もあります。会社の担当者が自らRebuttalやCounter Argumentを作成する場合は、事前に法律専門家に相談ください。
栗林総合法律事務所による債権の回収代行
海外の取引先から商品代金の支払いを受けられない、海外の会社に貸したお金を支払ってもらえない、約束した金銭の支払いが滞っているなど、海外の取引先からの債権回収は困難になる場合が多く、結局放置しなければならないことも多いかと思います。当事務所では、当事務所の名前で催告文書・警告文書を発送することもありますし、依頼者からの要望により依頼者名で作成する催告文章を英語で作成することもあります。日本国内において弁護士がついていることを債務者に知らせることで、債務者に対する圧力をかけ、任意の支払いを促進させることになります。また、債務者からの任意の支払いが受けられない場合は、現地の弁護士との協力により催告文を出してもらい、支払いを行うよう要求します。多くの事案では、弁護士からの正式の催告を無視することは少なく、全額の一括払い、分割払い、和解などに応じてくると思われます。
Warning Letterのサンプル
I am a Japanese lawyer representing Kazuo Tanaka, our client. Our client asked us to contact to your company with regard to the disbursement of the fee at USD10,000 which has been paid to your company on December 30, 2019. According to our client, ………….
If you need more detail, please contact us so. We will send you additional information. Should you have any questions, please contact us at any time by e-mail. We very much appreciate your earliest response.
Warning Letterの翻訳文
私は私どもの依頼者である田中和夫の代理人である日本の弁護士です。私どもの依頼者から貴社に対して、2019年12月30日に支払われた1万ドルの報酬の返還に関して連絡を取るよう指示を受けています。当方の依頼者によれば、(事実関係について記載します)
もしより詳細が必要であれば私どもに連絡ください。必要な情報をお送りいたします。ご質問があればいつでもeメールでご連絡ください。できるだけ早いお返事をお待ちしております。
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