外国人留学生を雇用する場合の注意点
留学生をアルバイト採用するときの在留資格(資格外活動許可申請)
留学生は、本来は、就労不能資格になりますので、アルバイトを含め、日本で報酬を得る活動をすることができないのが原則です(入管法19条1項)。但し、入管から資格外活動許可を得た場合には、一週間につき28時間以内であればアルバイトを行うことは可能です。就労許可の有無については、在留カードに記載がありますので、アルバイトとして採用する場合には、必ず在留カードで資格外活動許可を得ていることを確認してください。アルバイトの業種は制限がありませんので、レストランの配膳、飲食店の店員、清掃員、倉庫のピッキング作業等の単純労働に従事して頂くことでも問題ありません。この「資格外活動許可」の対象となるのは、アルバイト的な活動であって、留学活動(大学における授業への参加)を行わないで、他の活動(例えば仕事)を中心として行う場合には、資格外活動許可ではなく、入管法20条に定める在留資格の変更手続きが必要となります。
資格外活動許可申請を行う具体的手順
資格外活動許可申請は、法務省のサイトからダウンロードした資格外活動許可申請書に記入を行い、活動の内容を明らかにする書類(アルバイト先の会社情報や労働条件通知書)、在留カード、旅券、在留資格証明書等を持参し、出入国在留管理局に出向いて申請することになります。出入国在留管理局への提出書類を含め、資格外活動許可申請手続きについては、入管法規則第19条1項から3項までに規定されています。資格外活動許可申請書のダウンロードについては、法務省の下記のページを参照してください。
http://www.moj.go.jp/ONLINE/IMMIGRATION/16-8.html
資格外活動許可申請は、ほとんどの場合、外国人が自ら出入国在留管理局に出向いて行うことになると思いますが、必要な場合には、行政書士や、取次代理の認められた弁護士に代理してもらい申請することも可能です(入管法規則第19条3項3号)。栗林総合法律事務所の弁護士は、取次代理の届出を行っておりますので、申請代理を行うこともできます。
留学生をアルバイト採用するときの注意点
留学生のアルバイトについても、日本の労働関連法の適用がありますので、労働基準法を含めて労働関連法の規定の適用に注意してください。特に、最低賃金法については、外国人のアルバイト学生についても適用になります。また、時間外労働、深夜労働についての割増賃金の適用も日本人労働者と同じです。外国人を雇用した場合は、アルバイトであってもハローワークに、「外国人雇用状況届出書」を提出する必要があります(雇用対策法28条)。また、資格外活動許可によるアルバイトについては、週28時間以内に限定されていますので、この時間を超えないよう注意が必要です。留学生が複数のアルバイトを掛け持ちしている場合は、全てのアルバイト先での勤務時間の合計になりますので、他のアルバイト先でのアルバイトを行っていないかどうかを確認することも必要です。週28時間は、1週間のどこから数えても28時間以内であることが必要です。なお、大学、専門学校、日本語学校の長期休業期間中は1日8時間まで就労することができますが、週28時間の制限は依然としてかかってきます。また、パチンコ店やキャバクラなどの風俗関係の職務にはつくことができません。
就職活動中の留学生のアルバイト採用(特定活動)
大学や専門学校を卒業すると、留学生の在留資格を失ってしまうことになります。留学生が日本の大学や専門学校を卒業した後も、引き続き日本国内にとどまり就職活動を続けていきたい場合には、特定活動(入管法別表第一の五)の在留資格申請を行い、在留資格を取得しておく必要があります。特定活動による在留資格は6か月ですが、原則として1年まで更新が可能です(それ以上の更新もあります)。特定活動の在留資格により就職活動を行っている最中であっても資格外活動許可を得ることで、週28時間までであればアルバイトを行うことも可能です。なお、最近の法律改正により、専門学校の卒業生がアニメ、漫画、ゲーム、日本料理等クールジャパン関連産業に就職する場合に、「特定活動」の在留資格が認められるようになりました。
アルバイト学生を正社員に採用する場合(在留資格変更許可申請)
在留資格が留学から就労に変更になりますので、就労ビザへの在留資格変更が必要になります。在留資格変更許可申請書を作成し、出入国在留管理局に提出して、変更手続きを行います。就労ビザについては、様々な種類がありますが、9割以上のケースでは、「技術・人文知識・国際業務」の資格申請を行います。ビザの有効期限は、5年、3年、1年、3月等があります。会社の規模や業務内容、申請書類に添付する理由書等の記載方法によってビザの有効期間が長くなることがあります。ハローワークに外国人雇用状況届出書を提出すること(雇用対策法28条)、健康保険、厚生年金保険、雇用保険、労災保険に加入すること、労働基準法による時間外労働についての割増賃金や最低賃金法の適用があり、日本人と賃金・雇用条件などで差別的取り扱いをしてはいけないことなどについては、一般の外国人雇用の場合と同じです。出入国在留管理局が在留資格変更許可申請書を審査する場合の審査項目としては次のようなものがあります。「技術・人文知識・国際業務」の在留資格はある程度の専門性を有するものと考えられていますので、アルバイトの継続として単純作業につくことを予定している場合は、「技術・人文知識・国際業務」に関する在留資格は認められません。在留資格が認められた場合は、出入国在留管理局から在留カードが交付されます。
① 大学、専門学校等を卒業していること又は卒業見込みがあること
② 学校での専門科目と会社で従事する業務に関連性があること
③ 日本人と同等以上の給与を得ていること
④ 採用する会社についても業務内容が適正であり、会社の規模や業務内容からみて、事業の安定性・継続性に問題がないこと
在留資格変更許可申請の具体的手続き
在留資格が留学から就労に変更になる場合は、就労ビザへの在留資格変更が必要になります。在留資格変更申請書を作成し、出入国在留管理局に提出して、変更手続きを行います。ビザの申請から結果が出るまでの期間は1か月から2か月かかることが多くありますので、就業時期との関係を考えながら早期に申請を行うことは重要になってきます。在留資格変更許可申請の手続きについては、法務省のホームページにおいて具体的に記載されていますので、下記を参照ください。
http://www.moj.go.jp/ONLINE/IMMIGRATION/16-2.html
在留資格変更許可申請書に添付する必要書類については法務局で案内がなされています。例えば、留学の在留資格から、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格への変更の場合下記の書類が必要になります。
・在留資格変更許可申請書
・写真
・パスポート及び在留カード
・卒業証明書又は卒業見込み証明書
・就職する会社がどのカテゴリーに属するかを証する書類
*カテゴリー1の会社は、上場会社、保険相互会社、国または地方公共団体、独立行政法人等を指します。
カテゴリー2の会社は、前年度の給与所得の源泉徴収票合計表の源泉徴収税額が1500万円以上ある団体又は個人を指します。
*カテゴリー1及びカテゴリー2に属する会社(上場会社等)については、申請書の添付書類が簡略化され、会社の四季報(カテゴリー1の場合)や、前年度給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表(カテゴリー2の場合)を提出すればいいとされています。
これは、ある程度の規模の会社については、業務内容なども明らかであることから、会社の内容を証する書面の提出を免除し、手続きをできるだけ簡略化しようとするものです。
*カテゴリー1及びカテゴリー2に属する会社以外の会社に就職する場合については、上記の他、労働契約書、法人商業登記簿謄本、申請人の履歴書、事業内容を明らかにする書面等の提出が求められます。詳しくは法務省のホームページを参照ください。
海外にいる外国人を社員として採用する場合(日本への呼び寄せ)
海外に住む外国人を採用する場合は、日本にいる経営者や人事担当者が海外の日本語学校や紹介事業者の所に出向き、就職希望者の面接を行うのが通常だと思われます。面接により採用が決まった場合は、日本の会社経営者や人事責任者が海外に住む外国人との間で、雇用契約書を締結し、出入国在留管理局から、在留資格認定証明書(入管法7条の2)の発行を受けます。日本にいる人事担当者は、在留資格認定証明書を海外に住む外国人に郵送します。海外にいる外国人は、在留資格認定証明書を居住国の日本大使館又は日本領事館に持参し、日本に入国する際に必要な査証(VISA)の発給を受けます。海外にする外国人は、パスポートとVISAにより日本に入国し、入国時に在留カードの交付を受けます。無事に日本に入国できた外国人は、日本において居住する場所を定め、住所地の市区町村に新規上陸後の住所地届(入管法19条の7)という届出書を提出します。届け出のあった市区町村は、当該外国人に対してマイナンバーを付与し、マイナンバー通知カードを郵送します。
日本国内に住む外国人を社員として雇用する場合の手続き
日本国内に住む外国人については、既に留学ビザや技術・人文知識・国際業務に関する就労ビザを有していることが多いと思われます。既に日本に住んで働いている外国人を雇用する場合には、現在の在留資格がどのようなものであるかを確認する必要があります。現在の在留資格が「留学」の場合には、「技術・人文知識・国際業務」等の在留資格への変更が必要になります。当該外国人から、出入国在留管理局に対して在留資格変更許可申請書を提出してもらうことになります。転職によって仕事の内容が変更になり、在留資格が変更になる場合にも、在留資格変更許可申請書の提出が必要になります。例えば、技術の資格で、ソフトウェアの開発を行っていた外国人が、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格に変更する場合には、在留資格変更許可申請書の提出が必要になります。これに対して従前の業務と同じ種類の業務に就く場合は、在留資格の変更は生じないことになります。しかしながら、職場で働く資格を有していることを確認するために、就労資格証明書(入管法19条の2)を取得しておいた方がいい場合もあります。就労資格証明書を取得することで、その外国人が日本で働けることについて出入国在留管理局のお墨付きがもらえることになります。なお、転職により職場の変更が生じた場合は、当該外国人は、所属機関等に関する届出書(入管法19条の16)を転職後14日以内に提出することが必要とされています。
入管法違反に対する処罰
会社としては、違法に外国人労働者を使用した場合、法令違反として処罰の対象となる場合があります。コンプライアンスの厳しい状況ですので、日本の会社としては不注意に下記のような処罰を受けることがないよう十分注意をすることが必要となります。
不法就労助長罪(入管法73条の2第1項)
入管法73条の2第1項では、事業活動に関し、外国人に不法就労活動をさせた者については、不法就労助長罪にあたるとして、3年以下の懲役若しくは3百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科するものと定められています。不法就労(就労が認められた在留資格を有することなく報酬を受ける活動を行ったこと)を行った外国人については、不法就労罪(入管法70条4項)により刑事罰が科せられますが、労働者だけでなく、雇用主の側も刑事罰の対象となることになっています。従って、雇用主の側では、外国人留学生を正社員として採用する場合の他、アルバイトとして採用する場合においても、在留カードや資格外活動許可証を確認することによって、当該外国人が就労可能な在留資格を有しているかをきちんと確認することが必要となります。また、当該外国人が、退学処分によって留学の在留資格を失ったり、資格外活動許可を取り消されていたりすることもありますので、採用時点において一旦在留資格の確認を行っただけではなく、雇用期間中継続して、定期的に、当該外国人の在留資格について確認しておく必要があると言えます。なお、入管法73条の2第2項では、不法就労助長罪に該当する会社については、①当該外国人の活動が資格外活動でないことを知らなかったこと、②当該外国人が有効な資格外活動許可を得ていないことを知らなかったこと、③当該外国人が不正に在留資格を取得した者であることを知らなかったことを理由として不法就労助長罪の罪を免れることができないとしています。このように、外国人労働者による違法就労があった場合の雇用主に対する処罰は極めて厳格である(ほとんど罪を免れる方法がない)と考えざるを得ません。
資格外活動幇助罪(入管法70条1項4号、刑法62条1項)
外国人留学生が、資格外活動許可を得ないでアルバイトを行うことは、入管法19条1項の規定に違反することになり、当該外国人に対しては、資格外活動罪として3年以下の懲役若しくは禁固若しくは3百万円以下の罰金に処するとされています。刑法では、違法行為をほう助(助けた)者については、幇助罪が成立するとされていますので、外国人留学生が違法に資格外活動を行った場合は、雇用主である会社に対しても資格外活動幇助罪が成立する可能性があります。
外国人雇用状況届出規定違反罪
平成19年10月1日から、全ての事業主について、外国人労働者(特別永住者及び在留資格「外交」・「公用」の者を除く)の雇入れ又は離職の際に、当該外国人労働者の氏名、在留資格、在留期間等について確認し、厚生労働大臣(ハローワーク)へ届け出ることが必要とされています。届出を怠ったり、虚偽の届出を行った場合には、30万円以下の罰金の対象となります。
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