在留資格の分類
外国人労働者の推移
日本の労働者の著しい減少により、働き手不足は極めて深刻な状況となっています。また、現時点で労働者の確保がなされている企業であっても、労働者の高齢化により、今後退職者の補充をどうするか、若手社員不足による技術の承継をどうするかなど、人手不足に伴う労務問題は深刻さを増していると言えます。政府は、高齢者の雇用、女性の雇用、IT化の促進による技術革新等で人手不足に対処することを考えています。しかしながら、各産業分野における人手不足の状況はこれらの対策だけで乗り越えられるものではなく、どうしても足りない人員については、外国人労働者の雇用を認めることで補填することを考えています。日本で働く外国人労働者の推移については、厚生労働省から統計が出されています。外国人雇用状況報告書の提出されている外国人労働者の数は毎年10万人以上増えており、2020年、2021年についてはコロナの影響で人数が足踏み状態にありますがコロナが終息した2023年以降はふたたび増加の傾向に転じるものと思われます。
2019年4月1日に施行された出入国管理及び難民認定法(「入管法」)により、新しい在留資格である特定技能の制度が認められることになりました。現在の所、特定技能により入国が認められる外国人の数は34万5000人と言われています。これまで通りの人数の増加も考えた場合、外国人労働者200万人時代もすぐ目の前にあると言えます。厚生労働省の資料では、外国人労働者の分類がなされています。大きくは、①資格外活動、②技能実習、③専門的・技術的分野の在留資格、④身分に基づく在留資格に分けられます。これに今回の入管法改正により35万人の特定技能の在留資格が追加されることになったものです。在留資格を有する外国人労働者数の推移は次の通りです。
(法務省データ)
在留資格の分類
外国人が日本で働いたり、日本に住んだりするためには、在留資格を有している必要があります。在留資格は、入管法別表に記載がありますが、大枠は次の通りです。
入管法別表第一の一
外交、公用、教授、芸術、宗教、報道の在留資格で、業務限定就労可能在留資格と言われています。在留資格において認められた業務についてのみ、収入を伴う活動を行うことができるとされています。
入管法別表第一の二
入管法別表第一の二に規定される在留資格には、高度専門職、経営・管理、法律・会計業務、医療、研究、教育、技術・人文知識・国際業務、企業内転勤、介護、興行、技能、特定技能、技能実習があります。これらは、業務限定就労可能資格と言われ、指定された業務についてのみ就労することが可能となります。これらのうち最も多いのが、技術・人文知識・国際業務の在留資格(約25万人)、技能実習の在留資格(約26万人)、特定技能の在留資格(今後約35万人を想定)等になります。
入管法別表第一の三
文化活動、短期滞在の在留資格です。文化活動とは、日本文化の研究者などに与えられる在留資格であり、短期滞在は、観光客や会議参加者等短期間日本に滞在することを目的とする在留資格です。就労不能在留資格になりますので、これらのビザで入国した人は日本で収入を得る職務について働くことはできません。
入管法別表第一の四
留学、研修、家族滞在の在留資格です。留学は、日本の大学や専門学校、日本語の語学学校の生徒などが対象となります。研修は研修目的で来日している外国人です。家族滞在は、家族の1人が家族を伴うことができる在留資格を有する場合に、その在留資格を有する人の家族として入国する外国人になります。留学、研修、家族滞在の在留資格は、本来就労不能在留資格であり、これらのビザを有する外国人は日本で報酬をもらえる仕事をすることは禁じられていますが、資格外活動許可を得た場合には、その許可の範囲内において報酬を得る活動に従事することができます。留学生をアルバイトとして使用する場合は、この資格外活動許可に基づき、就労することになります。
入管法別表第一の五
特定活動の在留資格は、外交官等の家事使用人、ワーキングホリデー、報酬をもらえるインターン、クールジャパンによるすし職人、漫画家等が該当します。業務限定就労可能資格であり、指定された活動についてのみ就労が可能となります。日本の大学や専門学校を卒業して就職活動を行っている留学生も特定活動の在留資格を得ることで、合法的に就職活動を行えることになります。
入管法別表第二
身分・地位に基づく在留資格で、永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者の4つがあります。身分・地位に基づく在留資格は、無制限就労可能資格であり、この在留資格を有する人は職種の制限なしに自由に働いて収入を得ることができます。働ける職務の制限や労働時間の制限はありません。日本人の労働者と全く同様に働くことが可能となります。ハローワークに掲載したり、リクナビなど採用マッチングサイトにより採用するなど、採用活動も日本人の採用と異なりません。
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