• 2023.07.12
  • 人事労務

技能実習生の在留資格

技能実習制度の趣旨

技能実習については、入管法の特別法として、「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律」(「技能実習法」)が適用になります。従って、技能実習制度については、技能実習法と技能実習規則に従って解釈されることになります。技能実習は、東南アジアの発展途上国の若手に対して、技能実習を施すことで技術の習得、習熟を図り、本国に帰国後その技術を用いて母国の経済発展に貢献してもらうことを目的とする制度で、国際交流や国際支援を目的とするものです。従って、日本の労働力不足を埋め合わせるための手段として用いられることがないよう、「技能実習は、労働力の需給の調整の手段として行われてはならない。」(技能実習法3条2項)とされています。法務省から出されている技能実習生の数は次のとおりです。毎年順調に増加していましたが、コロナの影響があり2020年、2021年は減少しています。
研修生・技能実習生の在留状況

(法務省データ)

技能実習制度の種類

技能実習制度には、企業単独型技能実習と団体管理型技能実習がありますが、95%以上が団体管理型技能実習です。技能実習には、1号から3号までの制度があり、技能実習1号の在留期間は1年以内、技能実習2号の在留期間は2年以内、技能実習3号の在留期間は2年以内とされています。従って、技能実習1号のみの実習生は1年経過後に母国に帰らなければなりませんが、2号に移行できた場合には、1号の1年に加えて2号の2年間在留することが出来ますので、合計3年間日本に在留することができることになります。技能実習生はここで1か月以上一旦母国に帰国しなければなりませんが、優良な管理団体・実習実施者(外国人を使用する会社)については、3号技能実習生としてさらに2年間実習を行うことができます。従って、3号技能実習生については、合計5年間日本にいることができることになります。

技能実習の職種・作業内容

技能実習1号は、在留期間が1年と制限されており、しかも日本に入国した最初の1か月は講習を受けなければならないとされていますので、日本で働けるのは実質上11か月に限定されることになります。但し、技能実習1号については、職種や作業内容についての制限はありません。従って、倉庫におけるピッキング作業、レストランにおける調理など幅広い職種で活躍することができます。但し、いわゆる単純作業は対象外とされていますので、ピッキング作業についても商品の管理システムを学べる機会があるなど、技能の習得になるようなものでなければならないと考えられます。単純な労働のみに使用した場合は、実習生からの不満が噴出する可能性がありますし、技能実習計画の認定の取消がなされたり、虚偽の申請であるとされることもありますので、注意が必要です。技能実習制度移行対象職種・作業である80職種144作業については、技能実習1号から2号に移行することが可能となっています。技能実習1号から技能実習2号に移行するに際しては職種や作業内容を変更することは認められません。従って、技能実習2号に移行するためには、最初から80職種144作業のどれかに従事しておく必要があることになります。また、技能実習1号から技能実習2号に移行する際には、基礎2級の技能検定か、これに準ずる検定・試験に合格することが必要とされています。また、在留資格は、技能実習1号から技能実習2号に移ることになりますので、出入国在留管理局に対して在留資格の変更又は取得の申請を行う必要があります。技能実習生は、認定された技能実習計画に基づいて実習を行うものですので、原則として転籍や転職を行うことは認められていません。但し、実習実施者の倒産等やむを得ない場合や、2号から3号への移行時については転職が可能とされています。

技能実習の要件

技能実習を行おうとする技能実習実施者は、技能実習生ごとに技能実習計画を作成し、外国人技能実習機構(OTIT)の認定を得なければなりません。技能実習計画の作成については、管理団体の協力を得ることができますし、管理団体については、JITCO(公益財団法人国際研修協力機構)からの情報提供を受けることが可能となります。技能実習においては、悪質なブローカーを排除するために、実習希望者の送出機関は、日本政府との取り決めのある国の政府から認定された機関に限るとされています。従って、現地における研修や、送出しの条件などについても、送出し国政府の監督下にあることになります。技能実習については、実習生から高額の研修費などを支払わせ、借金漬けにして日本に送り込み、実習生が逃げられないようにしていた事件があったことから、現在では、送出機関、管理団体、実習実施機関等は実習生本人やその家族から保証金を徴収することはしてはいけないとされています。同様に、労働契約の不履行に係る違約金を定める契約を締結してはならないとされています。日本人の雇用の場合には、従業員の両親などに身元保証人になるよう要求することが慣行としてありますが、技能実習の外国人については保証人の徴求はできないことに注意が必要です。日本政府は、上記の方針のもとに、実習生送出し国として、アジア15か国を指定しています。技能実習生送出し国は次の通りです。
   ①インド、②インドネシア、③ウズベキスタン、④カンボジア、⑤スリランカ
   ⑥タイ、⑦中国、⑧ネパール、⑨バングラディッシュ、⑩フィリピン、⑪ベトナム
   ⑫ペルー、⑬ミャンマー、⑭モンゴル、⑮ラオス
上記のうち、中国以外の国とは、送出し国政府との間に二国間取決めが締結済みとなっています。技能実習生として送り出されてくる人数としては当初は中国人が一番多かったのですが、中国の経済発展に従い、日本に来るインセンティブが薄れ、中国人の技能実習生は徐々に少なくなっています。反対にベトナムの中で日本の技能実習が認知されてきたことから、ベトナム人の技能実習生が増えています。一方で、現在は、中国や韓国も含めた先進国による人材の奪い合いの時代ともいえ、ベトナム人についても将来的には中国や韓国に行く人も増え、日本に来る技能実習生の増加が見込まれるかどうかはっきりしないところがあります。そこで、最近では、カンボジアやラオス、ミャンマーなどが注目されているようです。

団体管理型技能実習の仕組み

団体管理型技能実習においては、管理団体の役割が極めて重要となります。実習実施者が外国人を技能実習生として採用しようとする場合は、協同組合等非営利の組織で、日本国政府から許可を受けた管理団体を通じて人の採用活動を行うことになります。管理団体は現地の取次送出機関と調整し、実習実施者(求人者)の希望に沿った人を紹介することになります。実習実施者は現地に赴き、面接を行うことができます。面接を通じて採用を決定した場合は、当該実習希望者(求職者)と実習実施者(求人者)との間で、雇用契約を締結します。
その後、実習実施者は、技能実習計画を作成し、外国人技能実習機構(OTIT)に認定をするよう申請します。また、実習実施者は、出入国在留管理局に対して在留資格認定証明書の交付申請を行い、取得した在留資格認定証明書を現地の実習生に送付します。現地の実習生は、現地の日本大使館又は日本領事館に在留資格認定証明書を持参し、VISA(査証)を発行してもらうことになります。なお、職業安定法では、有償又は無償での職業紹介業を行うに際しては許可を要するとされていますが(職業安定法30条、33条)、管理団体については、実習実施者のみに実習希望者のみを紹介する場合には、職業安定法上の許可を要せずに雇用契約のあっせんを行うことができるとされています(技能実習法27条1項)。すなわち管理団体は、技能実習の管理団体として許可を得た場合には、技能実習に関する範囲で、職業紹介業を実施することができることになります。

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