• 2020.09.01
  • 人事労務

会社における不適切な経理処理について関係者の調査を行い、懲戒処分を行った事例

栗林 勉

執筆者情報

栗林 勉Tsutomu Kuribayashi

栗林総合法律事務所の代表であり、米国ニューヨーク州の弁護士資格を有する国際弁護士。国内企業法務の他、国際的紛争の解決や国際取引に関する契約書の作成、中小企業の海外進出支援などの業務を幅広く扱っている。

事案の概要

同族会社Xでは、創業者の個人資産と会社の財産が不明確なままとなっていました。経理を担当する役員は、20年間にわたり創業者の下で総務・経理業務を行ってきました。創業者が退任し、新しい経営者が経理を確認したところ、創業者との間での不適切な会計処理がなされていることが判明しました。

調査委員会の設置

会社では、会社の資産が理由なく創業者に流れているのではないかとの懸念のもとに、当事務所に会計処理が適切であったかどうかの調査を行うよう依頼がありました。当事務所では、今回の問題が重大な背任につながる可能性があるとの理解のもとに、調査への客観性をもとめるために、外部の会計事務所にも入ってもらい、調査に当たることになりました。

調査方法

当事務所では、元帳など会計帳簿を確認するとともに、会社の関係者数名からのヒアリングを行いました。そのうえで、最終的には経理を担当していた役員へのヒアリングを行うことになりました。その結果、調査結果のまとめとして、従前から行われていた会計処理が適切でなかった旨の報告書を作成し、経営者に提出することになりました。

懲戒

会社の経営者では、当職らの提出した調査報告書をもとに、関係者の処分(戒告処分及び減給処分)が行われることになりました。

事実認定の客観性

懲戒処分を行う場合には、事実認定が適切であったかどうかと、処分が相当であるかどうかを分けて考える必要があります。事実認定については、会社が独自の調査で行うことも可能ですが、客観性を持たせるためには、外部の専門家に調査委員会に入ってもらうことを検討するのが好ましいと思われます。事実関係について疑わしい事例も多く出てきますが、客観的証拠がないにもかかわらず、疑わしいというのみで懲戒処分を行うのは適切ではありません。

処分の相当性

また、当該従業員に対してどのような処分を行うかは、会社がその裁量で独自に判断せざるを得ないと考えられます。但し、弁護士に相談があった場合、他社における過去の懲戒事例や裁判例を調査し、同様の事例でどのような処置がなされたのかを確認することができますし、裁判例に基づく裁量権の逸脱の有無についての大方の方向性を理解することができます。