• 2020.10.08
  • 海外進出支援

共同研究開発契約書(Joint Research and Development Agreement)

栗林 勉

執筆者情報

栗林 勉Tsutomu Kuribayashi

栗林総合法律事務所の代表であり、米国ニューヨーク州の弁護士資格を有する国際弁護士。国内企業法務の他、国際的紛争の解決や国際取引に関する契約書の作成、中小企業の海外進出支援などの業務を幅広く扱っている。

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共同研究開発契約書(Joint Research and Development Agreement)とは

共同研究開発契約とは、複数の会社が共同で研究開発を行う場合に、各当事者の役割、費用分担、研究開発による成果の帰属などについて確認する契約書です。複数の当事者が共同して研究開発を行うことで、各当事者の有する技術やノウハウのシナジーが生かされ、新しい製品や技術の作成が可能となります。

共同研究開発契約書(Joint Research and Development Agreement)のポイント

共同研究開発契約では、各当事者の役割、費用の分担、研究開発成果の帰属などについて明確に定めておく必要があります。特に、外国の企業と共同研究開発契約を締結する場合には、共同研究の対象を明確にしたり、成果物の帰属を明確に定めておく必要があります。

共同研究開発契約書(Joint Research and Development Agreement)における印紙税

国際間の契約書において、いずれの国の印紙税が適用になるかについては、その契約書がいずれの国で作成されたかが重要になります。通常複数の国の当事者が契約書に調印する場合には、後でサインした当事者の国で契約書が締結されたことになります。例えば日本と韓国で契約を締結する場合に、最初に韓国の当事者がサインしてPDFで日本に送付し、その後、日本の当事者がサインして韓国の当事者にeメールで返信する場合は、後でサインする当事者は日本ですので、この契約書については、日本で作成された契約書となり、この契約書に対して印紙税の納付(印紙の添付)が必要かどうかは、日本の印紙税法によって定められることになります。

日本の印紙税法

日本の印紙税法では、印紙税が課せられる契約書は課税文書として印紙税法に明確に規定されています。共同研究開発契約書は印紙税法に課税文書として規定されていませんので、非課税ということになり、印紙の添付は必要ないことになります。但し、共同開発契約の名称が付された契約書であっても、その内実が単なる業務請負契約とみなされる場合は、第2号文書(請負に関する契約書)として印紙税の添付が必要になります。

共同研究開発契約書の前文

共同研究開発契約書の前文では、当該契約書でどのような取引を行うかを簡潔に記載します。共同研究開発では、両当事者が共同して研究開発を行うことを記載しておけば十分です。Considerationというのは、「約因」と訳されますが、それぞれの当事者が提供する対価ないし譲歩を意味します。共同研究開発の場合は相互に協力して開発を行うわけですので、お互いにConsiderationを相手方に与えていると言えます。

共同研究開発契約書における定義規定

共同研究開発契約書においては、契約の対象となる研究開発が何を指すのかを明確にしておく必要があります。契約を締結することで、当事者は互いに対象となる研究開発について権利を有し、義務を負担することになるからです。研究開発の対象については、契約書の作成の最終段階まで協議が行われたり、将来にわたり研究対象が徐々に変化していくこともありますので、契約書本体に直接書き込むのではなく、別紙やスケジュールに記載し、将来の変化に柔軟に対処できるようにしておくことも考えられます。

Unless specifically set forth to the contrary herein, the following terms shall have the respective meanings set forth below:
本契約において別に定められた場合を除いて、以下の用語は以下に規定される意味を持つ。

“Agreement” shall have the meaning set forth in the preamble hereto.
「契約」とは、前文に記載された意味を持つものとする。

“Effective Date” shall mean the date first set forth above.
「発行日」とは、冒頭に記載された日付とする。

“Product” shall mean XXX as set forth in Exhibit A, or as amended from time to time by mutual written consent of the Parties.
「製品」とは、別紙Aに記載されている、または両当事者の書面による同意により随時修正されるXXXを意味するものとする。

“Project” shall mean the research project described in the attached schedule.
「プロジェクト」とは、添付の別紙に記載した研究プロジェクトをいう。

共同研究開発の目的、業務分担

共同研究開発は複数の当事者が共同して研究開発を行うことで、各研究開発を実際にどのように進めるかについては、プロジェクトごとに定める必要があります。研究開発の内容やスケジュールが明確になっている場合は、別紙(Attachment)や契約書添付のスケジュールの中で具体的に記載することが必要です。下記の文案では、AAAと会社が共同して共同研究開発を行うという目的をかなり抽象的に記載しています。また、各自の役割や責任分担を明瞭化させることで、より円滑な開発活動を行うことができるようになります。
AAA and the Company shall use their commercially reasonable effort to collaborate in a mutually beneficial and cooperative fashion to conduct research and development of the Products.
AAAと本会社は、本製品の研究開発を行うために、相互に有益かつ協力的な方法で共同するため、商業的に合理的な努力を行う。

The Services to be rendered by each Party under this Agreement shall be as follows:
AAA:
Company:
本契約に基づき提供される各自の業務の内容は次の通りとする。
AAA:
本会社:

共同研究開発における費用負担(Cost)

費用の分担を詳細に定める場合もあります。一方当事者が研究開発費用を負担する場合は、その当事者としては自分の費用で開発した権利であるので、成果物についてはすべて自分に帰属すると考える可能性があります。費用の分担と研究開発の成果物の帰属の関係を明確にしておくことが重要です。

Each Party shall bear its own direct and indirect costs and expenses, including internal costs and expenses, incurred in connection with the Projects, the Development Process, and the performance of such Party’s obligations under the Agreement.
各当事者は、本プロジェクトに関連し、または共同開発の過程で発生し、または本契約書における義務の履行に関して発生する内部的な費用及び支出を含め、各自に生じた直接または間接の費用及び支出を負担する。

知的財産権の帰属(Intellectual Property Rights)

共同研究開発契約における成果物の帰属は、共同研究開発契約書の最も重要な部分になります。相互に技術やノウハウを提供しながら共同研究開発を行うわけですので、いずれの当事者もその研究成果については自己に帰属するとしたいと思われます。共同研究開発契約の成果がいずれの当事者に帰属するかについては、事例ごとに協議によって定められますので、必ずしもこうでなければならないという決まりがあるわけではありません。しかしながら当事者間の公平を守る観点から最も公平な方法として、①各当事者が提供した技術やノウハウは、それを提供した各当事者に帰属する、②共同研究開発の過程において単独で開発した技術やノウハウについては、その開発した当事者に帰属する、③共同で開発した技術やノウハウについては、当事者間の共有になると定めることができます。この場合であっても、実際の場面においては、各当事者が単独で開発したのか、共同で開発したのかが不明な場合もありますので、その規定についてはさらに詳細に定めておくことが必要になる場面もあります。なお、研究開発の費用を一方の当事者が全部負担する場合もあります。これは、費用を負担する当事者が自らの研究開発を自らの費用で行い、その過程で他方当事者に業務委託として研究開発を支援してもらう形です。このような場合は、複数の当事者が一緒に研究開発を行っていたとしても、その実質は費用を出す当事者の単独の活動と考えられますので、その成果物については、費用を出した当事者の単独に帰属すると定めるのが多いと思われます。

All intellectual property and related rights of either Party which is provided to the other party in the course of the development shall continue to belong to such providing party.
開発の過程で他方当事者に開示される知的財産権やそれに関する権利については、開示当事者に引き続き帰属するものとする。

All patents and other intellectual property rights in and to all inventions made and/or developed solely by either Party in the course of the development efforts hereunder shall belong exclusively to the Party developed.
本契約における開発努力の過程の中で、いずれかの当事者が単独で作成し又は開発した発明に関する全ての特許及びその他の知的財産権は、開発を行った当事者に単独で帰属する。

All patents and other intellectual property rights in and to all inventions made and/or developed jointly by both Parties in the course of the development efforts hereunder shall be jointly owned by both Parties.
本契約における開発努力の過程の中で、両当事者により共同で開発した発明に関するすべての特許及びその他の知的財産権は、両当事者に共同で帰属する。

権利の付与(Grant of Rights)

共同研究開発は、相互の知的財産権やノウハウを持ち寄り、共同で新たな開発を行う契約関係ですので、その過程において相互の権利やノウハウを開示することになりますし、各当事者は相手方から開示された知的財産権やノウハウを研究開発の目的に沿った形で利用することが必要になります。そこで、相手方の知的財産権やノウハウを研究開発のために利用することができることを明確にしておくことが考えられます。また、上記とは別に、共同研究開発の結果生じた知的財産権やノウハウをどのように活用できるのかを定めておくことも重要になってきます。特に、研究開発の過程で一方当事者が開発した権利について相手方当事者が利用できなくなってしまう場合、共同での研究開発であるにもかかわらず、契約当事者の一方が共同研究開発の成果を十分に活用できないことになってしまう事態も想定されます。そこで、共同研究開発の過程で開発された知的財産権やノウハウについては、互いに無償で利用できるよう定めておくことも多くあります。

Each Party shall grant to the other Party a right to use any technical information disclosed to the other Party hereunder, the Party’s inventions and any and all of its intellectual property rights with respect hereto, in order to commercially exploit the Projects.
各当事者は、本契約に基づき他方当事者に開示した技術情報、発明、本契約書に関連するその他の知的財産権を、プロジェクトの商業的活用のために使用する権利を他方当事者に付与する。

研究成果の発表(Press Release)

研究開発の成果を一方当事者が勝手に開示してしまうと、技術の進歩性が喪失したり、誰の発明であるかについての誤解を招いたりする恐れがあります。共同研究開発の成果についての公表を行う場合には、両当事者が共同して行うか、相手方当事者の了解を得たうえで行うことが重要と考えられます。

Neither Party shall release any press statement or any other public comment about the Project or the development hereunder without prior written consent of the other Party.
いずれの当事者も、他方当事者の文書による事前の同意がある場合を除き、本プロジェクトや本契約に基づく開発に関し、プレスリリースやその他の発表を行わない。

共同研究開発期間(Term and Termination)

共同研究開発契約を締結する場合には、共同研究開発の期間がいつから始まり、いつまで継続しているのかを明確にしておく必要があります。研究開発契約期間が不明瞭な場合には、研究開発契約が終了した後に独自に開発したものであるなどとして権利を主張される場合があるからです。研究開発契約の期間が明瞭になることで、契約終了後の当事者の権利関係を明確化したり、今後の研究開発をどのように進めていくかを明確化するなどの対応が可能となります。次の例は、研究開発契約の期間を1年間と定め、かついずれの当事者も契約期間中に共同研究開発契約の解除を申し出ることができる条項としています。共同研究開発は相互の信頼を基に行われますので、必ずしも契約期間に拘束されることなく、相手方との信頼関係がなくなったと思われる場合には双方とも契約の解除ができる場合が多いのではないかと考えられるからです。

This Agreement is effective on the date of this Agreement and continues to be effective for one year unless earlier terminated. Either Party may terminate this Agreement upon thirty days prior written notice to the other.
本契約は、事前に開示される場合を除き、本契約書の日付から1年間有効である。いずれの当事者も30日前までに文書により通知することでいつでも本契約を解除することができる。

秘密保持義務(Confidentiality)

共同研究開発においては、双方の当事者が互いに自社の技術やノウハウを持ち寄り新しい技術やノウハウの確立を求めて研究開発を行うものですので、当事者が開示した秘密情報の取り扱いは極めて重要となります。そのような情報の開示は研究開発契約の締結前の段階から開始されますので、共同研究開発契約書とは別に独自に秘密保持契約書の作成を行うことも多くあります。共同研究開発契約書の中に秘密保持条項を入れる場合は、秘密保持契約書と、共同研究開発契約書の中に含まれる秘密保持条項との関係を明確化しておく必要があります。また、秘密保持契約条項を入れることで、情報の開示や目的外利用が制限される場合であっても、実際上のブレーキとなるかどうかは必ずしも明確ではありません。共同研究開発にあたって会社のコアな情報を開示する場合には、その管理の方法や、情報の帰属をその都度明確にしておくなどの対策も重要になってきます。ここでは、一般的な秘密保持条項を記載していますが、個々の案件に応じてどのような工夫をすべきかを検討する必要があります。

The Parties acknowledge and agree that each Party may disclose and receive confidential information in relation to this Agreement (“Confidential Information”). The Party agrees to use the Confidential Information and data acquired from the other Party only to perform its services under this Agreement and not to disclose to any third party any such Confidential Information during and for a period of five years from the date of disclosure.
各当事者は、本契約に関連して相手方当事者の秘密情報(以下、「秘密情報」という)の開示や受領があることを確認し、同意する。当事者は、相手方当事者から受領した秘密情報とデータを本契約の業務の履行のためにのみ利用し、本契約の期間中及び情報開示の日から5年間は第三者に対して秘密情報を開示しない。

The obligation to protect Confidential Information shall not apply to any information that (1) is already in the possession of the receiving party prior to the disclosure to it; (2) is independently developed by the receiving party; (3) becomes publicly available other than through breach of this provision; (4) is received by the receiving party from a third party with authorization to make such disclosure; (5) in released with the disclosing party’s written consent; or (6) is required to be released by law or court order.
秘密情報に関する義務は次の情報には適用にならない。(1)開示の時にすでに受領当事者が有していた情報、(2)受領当事者が独自に開発した情報、(3)本条項に違反することなく公知となった情報、(4)開示する権限のある第三者から受領した情報、(5)開示当事者の了解のもとに開示された情報、(6)法律や裁判所の命令によって開示が強制される情報

一般条項(General Provision)

共同研究開発契約における一般条項については、ほかの契約と特に違いはありません。但し、共同研究開発契約では、相互に自己の有する秘密情報を開示して研究を行うわけですので、相手方を信頼して行う必要がありますし、自己の有する秘密情報が外部の第三者やライバル企業に漏れることを妨げることは極めて重要です。この点から、相手方当事者によって例えば契約上の地位の譲渡がなされたり、M&Aによって相手方当事者の支配権が移行してライバル企業が権利を取得してしまうことも考えなければなりません。この点からすれば、会社の支配権の移転が生じるような取引を禁止したり、万一会社の経営支配権が第三者に移転した場合には、直ちに契約を解除し、開示した権利を取り戻せるように規定しておくチェンジ・オブ・コントロール条項の内容が極めて重要とも言えます。また、経営支配権が移転しない場合であっても契約が終了する場合には当事者間の信頼関係がなくなっている可能性がありますので、すでに提供した秘密情報の扱いなど、契約解除における当事者間の権利義務についての定めも重要になってきます。一般条項を作成する場合には、このような点にも十分に注意して作成する必要があります。

譲渡禁止

This Agreement is not assignable, in whole or in part, by the Party without the prior written consent of the other Party. Any such attempt to assign any of the rights, duties or obligations of this Agreement without such consent shall be null and void.
本契約は、他方当事者の事前の書面による同意なしに、一方当事者が全体的または部分的に譲渡することはできない。かかる同意なしに本契約の権利または義務を譲渡する試みは、無効となる。

完全合意、放棄

This Agreement, including Exhibits attached hereto, as amended from time to time, reflects the entire understanding of the Parties. The provisions of this Agreement may not be waived or changed by the Party except by a writing consent of the other Party.
本契約は、随時修正される本書に添付された別紙を含め、両当事者の完全な了解を反映している。 本契約の条項は、他方当事者の書面による同意がある場合を除き、一方当事者が放棄または変更されることはできない。

通知

All notices or other written communications required in this Agreement shall be deemed to have been duly given if delivered personally, by certified mail return receipt requested to the address of the receiving Party set forth below in this Agreement. Notices personally delivered shall be deemed effective upon their receipt; notices sent by mail shall be deemed effective three (3) says after mailing.
本契約で必要とされるすべての通知または書面による意思表示は、直接の手渡しまたは、受取証明付き配達証明郵便によって、本契約において以下に記載する受領当事者の住所に送られるものとする。直接の手渡しによる通知は、受領時に効力を生じ、郵便で送付された通知は、郵送後3営業日後に効力を生じるものとする。

不可抗力

In the event of the circumstances that are beyond the control of the Parties, such as natural catastrophes, war or acts of God that prevent or materially limit a Party’s ability to perform the obligations required by this Agreement, it shall not be cause for termination of this Agreement. The Parties further agree that in the event a force majeure does occur, they will work cooperatively to develop solutions which are mutually beneficial to both Parties.
本契約で義務付けられている義務を遂行する当事者の能力を実質的に制限する自然災害、戦争、または天災などにより、当事者による制御が及ばない状況が発生した場合でも、本契約の終了原因にはならないものとする。両当事者は、不可抗力が発生した場合には、両当事者にとって相互に有益な解決策を見つけるために協力して取り組むことにさらに同意する。

分離可能性

In the event that any provision of this Agreement shall be held by a proper court of law to be invalid, such invalidity shall not affect the enforceability of the remaining provisions of this Agreement.
本契約のいずれかの規定が無効とされた場合でも、そのことにより本契約の残りの規定の強制可能性は影響を受けない。

見出し

The headings, subheadings, and other captions in this Agreement are for convenience and reference only and shall not be used in interpreting, construing, or enforcing any of the provisions of this Agreement.
本契約の見出し小見出し、およびその他の見出しは、便宜上および参照のみを目的としており、本契約の条項の解釈、または実施のために使用されない。

言語

This Agreement is in the English language only, which language shall be controlling in all respects, and all versions hereof in any other language shall be for accommodation only and shall not be binding upon the Parties. All communications and notices to be made or given pursuant to this Agreement shall be in the English language.
本契約は英語のみによって記載され、英語があらゆる点で支配的であり、他の言語のすべてのバージョンは便宜的に作成されるだけであり、当事者を拘束するものではない。本契約に基づいて作成または提供されるすべての意思表示および通知は、英語で行われるものとする。

共同研究開発契約書の準拠法と管轄

共同研究開発契約においても、当事者間の争いが生じる可能性はありますので、契約書の解釈の基準となる準拠法と、管轄(紛争解決方法)について定めておくことが必要になります。特に共同研究開発契約のように国が異なる双方の当事者が平等な立場で契約に関与する場合は、当事者間の平等の観点からいずれの国の法律に準拠し、いずれの国において紛争を解決するのか、紛争を解決する手段としては訴訟によるべきか仲裁によるべきかなど検討すべき事項は多くあります。ここでは、日本の法律に準拠して解釈されるべきこと、紛争解決地としては、日本の商事仲裁規則に基づく仲裁によることを定めています。

裁判と仲裁を両方記載している場合には、どちらにするかが分かりませんので、紛争解決条項を決めた意味がなくなります。紛争解決地としては、最密接関係地を選択するのが好ましいですが、当事者のいずれかの地を紛争解決地として定めることができない場合には、第三国を紛争解決地とすることもあります。例えば日本と中国との争いの紛争解決地(裁判所ないし仲裁廷)をシンガポールとすることなどです。紛争解決条項を定める場合には、当該紛争解決方法にかかる費用や、裁判所の判決や仲裁決定が相手国において強制執行可能かどうかも検討しておく必要があります。

紛争解決

All disputes controversies or differences that may arise between the Parties hereto arising out of or relating to or in connection with the terms and conditions of this Agreement or for any alleged breach thereof, shall be settled by arbitration to be conducted in Tokyo, Japan under the Rules of the Japan Commercial Arbitration Association. The Parties hereby agree that any award rendered by the arbitrator shall be final and binding upon the Parties and shall be enforceable in the courts of the countries where each Party maintains its principal office. In the event either Party is required to initiate arbitration or legal action to enforce this Agreement, the prevailing Party shall be entitled to recover its reasonable attorney’s fees and other expenses. In this regard, the normal hourly rate charged by the prevailing Party’s attorney shall be deemed reasonable by the parties.
(訳文)
この契約の条項からまたはこの契約の条項に関連して、または契約違反の主張に対して、当事者の間に生ずることがあるすべての紛争、論争または意見の相違は、一般社団法人日本商事仲裁協会の商事仲裁規則に従って、日本国東京において仲裁により解決されるものとする。両当事者は、仲裁人による裁定は最終的なものであり、両当事者を拘束するものであり、各当事者が主たる事務所を置く国の裁判所で執行可能であることに同意する。いずれかの当事者が本契約を履行するために仲裁または法的措置をとる必要がある場合、勝訴当事者は合理的な金額の弁護士費用およびその他の費用を回収する権利を有するものとする。この点に関して、勝訴当事者の弁護士が請求する通常の時間給は、両当事者によって合理的であるとみなされるものとする。

準拠法

This Agreement shall be governed by and construed in accordance with the laws of Japan.
本契約は、日本法に準拠し、解釈されるものとする。

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