• 2023.09.13
  • 国際相続

連邦移転証明書(Transfer Certificate)(Form 5173)

フォーム5173とは

フォーム5173(Form 5173)は、アメリカ合衆国における遺産税に関してIRS(アメリカ合衆国内国歳入庁)から発行される書類です。アメリカの市民でなく、アメリカに居住もしていない外国人(日本人は外国人になります)が1976年12月31日以降に死亡した場合に要求されます。

フォーム5173を必要としない場合

アメリカ合衆国でプロベイト手続きが取られるなど、アメリカ国内で指名された相続財産管理人(administratorまたはexecutor)がいる場合にはフォーム5173は必要ありません。従って、プロベイト手続きの結果、裁判所の指名した相続財産管理人が、裁判所の分配許可決定に基づき日本に相続財産(現金)を送金する場合には、フォーム5173は必要ないことになります。

フォーム5173の記載内容

フォーム5173には、被相続人の氏名、死亡日、死亡場所が記載された後、「内国歳入庁長官の指示により、また内国歳入法及び規則の規定に従い、ここに、上記の相続財産に対する遺産税が免除または納付されたこと、及び以下に記載する資産が連邦遺産税法及び規則に基づく制約なしに移転することができることを証明します。」と記載されています。また、IRSの事務局長がサインし、サインの日付が記入されることになります。

連邦移転証明書(Transfer Certificate)

フォーム5173のタイトル(表題部)には、移転証明書(Transfer Certificate)と記載されています。フォーム5173は、外国人の遺産相続に関し、遺産税の支払いがあり、未納の税金がないことを確認するものです。外国人の遺産相続に関してフォーム5173を要求することにより、外国人の遺産相続については、アメリカ国内できちんと遺産税を支払わない限り、アメリカ国内の遺産を海外に持ち出してはいけないということになります。このようにフォーム5173は、アメリカ合衆国の徴税機関であるIRSが、アメリカでの遺産税の支払いがなされており、未納税金がないことを確認することにより、アメリカにある遺産を海外に持ち出すことを承認するものですので、連邦移転証明書(Transfer Certificate)と呼ばれます。

金融機関からの提出要求

アメリカ国内の遺産を海外(日本)に移転(送金)する際に、アメリカの金融機関から連邦移転証明書(Transfer Certificate)の提出を求められます。アメリカの証券会社は、海外への送金をする際に連邦移転証明書の提出を受けることを法律により求められていることから、連邦移転証明書の提出がない限り証券会社の口座にある金銭の送金を許可してくれません。証券会社が移転証明書の取得なしに証券口座にある遺産のリリースをした場合、その証券会社が未納の税金を納税者に代わって支払う義務を負うことになります。一方で、アメリカ国内にある遺産が銀行預金の場合、ほとんどのケースで銀行からプロベイト手続きを取ることが求められますので、連邦移転証明書の提出が求められるケースは少ないと思います。反対に、アメリカ国内にある遺産が株式や投資信託の場合には、プロベイト手続きが行われませんので、連邦移転証明書が必要となります。その結果、連邦移転証明書の提出は証券会社から求められることが多いと思われます。

ジョイントアカウントの場合

証券会社の証券口座がジョイントアカウントの場合、共有者の一人が死亡したときには、ジョイントアカウントにある死亡者の資産は自動的に残りの共有者に移動することになります。アメリカのジョイントアカウントは日本の共有の概念とは異なり、日本の法令における合有に近い性質を有しています。このような場合であっても、遺産を取得することには変わりありませんので、遺産税の申告(フォーム706NA)が必要となり、海外への送金に際しては連邦移転証明書の取得が求められることになります。

連邦移転証明書を取得する手続

連邦移転証明書を取得するためには、まずIRSに対して遺産税申告書であるフォーム706NA(United States Estate Tax Return)を提出する必要があります。フォーム706NAは、亡くなった個人の遺産を評価し、遺産税を計算するためのフォームです。

遺産の額が6万ドル以下の場合

フォーム706NAは、アメリカ合衆国における遺産の額が6万ドル以上の場合、及び海外に居住するアメリカ市民が亡くなった場合(この場合は遺産の額にかかわりません)に提出が必要とされています。反対に言えば、遺産の額が6万ドル以下で、かつ海外に居住するアメリカ市民でない人が亡くなった場合にはフォーム706NAの提出は必要ないことになります。アメリカ市民権を有していない日本人が死亡した場合で、遺産の額が6万ドル以下の場合はフォーム706NAの提出は必要ありません。

遺産の額が6万ドル以下の場合の宣誓供述書(Affidavit)

アメリカの市民でない人が亡くなった場合で、遺産の額が6万ドル以下の場合は、フォーム706NAの提出は必要ありませんが、この場合であっても連邦移転証明書の提出を求められる場合があります。この場合は、相続人は、遺言書の写し及びその翻訳文、日本における相続税申告書及びその翻訳文、死亡証明書及びその翻訳文、公証人役場で作成する宣誓供述書(Affidavit for Non-Resident Alien Estates)をIRSに提出することで連邦移転証明書を取得することができます。宣誓供述書(Affidavit for Non-Resident Alien Estates)には、被相続人の出生地及び生年月日、被相続人がアメリカ市民でないこと(アメリカ市民権を取得している場合は市民権の取得日)、死亡日において被相続人がアメリカ国内で有していた全ての財産及びその評価額、死亡日における被相続人の国籍及び住所、アメリカの預金がアメリカ国内での事業に使用されていたかどうかについての説明などが含まれます。

フォーム706NAの正確な記入

フォーム706NAを正確に記入し、IRSに対して必要な情報を提供します。これには、亡くなった個人の財産や資産の評価、贈与、債務、控除、遺産の分配に関する情報などが含まれます。誤った情報や不足情報があると、連邦移転証明書の取得が遅れる可能性があります。

適切な書類の提出

フォーム706NAを作成する際には、適切な書類や証拠を添付することが必要です。これらの書類としては、財産の評価に関連する書類、評価の根拠となる文書、遺言書、信託契約書、日本における相続税申告書の写しなどが含まれます。これらの書類をIRSに提出し、正確な評価情報を裏付けることが重要です。フォーム706NAは、被相続人が死亡した後9か月以内に提出することが必要です。フォーム4768を提出することで申告期限を6か月間延長することもできます。期限を遅延した場合、科料(ペナルティ)が課せられることがあります。但し、日本人の場合、日米租税条約が適用になり、ほとんどのケースで遺産税を支払う必要がありませんので、フォーム706NAの提出遅延を理由に科料の制裁が科されることはほとんどないと思われます。

未納税金の有無についての調査

IRSはフォーム706NAにより提出された書類を審査し、必要に応じて質問や調査を行います。IRSは、提出された情報が正確であり、アメリカ国内での未納税金がないことを確認した後、代理人の弁護士(税理士)に対してクロージングレター(closing letter)を交付します。クロージングレターのタイトルはEstate Tax Closing Documentsとなっています。IRSから交付されるクロージングレターにおいてNet Estate Taxの数字がゼロとなっていれば、未納税金がないことを意味することになります。反対にNet Estate Taxの欄に数字の記載がある場合は、納税義務があるか、IRSが間違っている可能性がありますので、その原因を確認する必要があります。日本人の場合、日米租税条約の適用により、ほとんどのケースで遺産税の支払いは必要ないと思われます。日本人がアメリカ人と同様の控除を受けられる点についてはIRSの審査官も気が付かないことがありますので、被相続人が日本人の場合には日米租税条約の適用があり、アメリカ人と同額の控除が受けられることを説明する必要があります。

連邦移転証明書の申請

IRSからクロージングレターが交付されたらフォーム5173により連邦移転証明書(Transfer Certificate)の交付申請を行います。提出先はInternal Revenue Service Centerとなります。IRSにフォーム706NAを提出してから連邦移転証明書を取得するまでには、通常6か月から9か月の期間を要します。

専門家によるアドバイスの必要性

連邦移転証明書の取得手続きについては、IRSからガイドラインが公開されていますので、だれでもインターネットでその内容を確認することができます。しかし実際に移転証明書を取得しようとする場合には、多くの提出書類を必要とし、複雑なプロセスを経る必要があります。専門的な税務アドバイスを受け、正確で適切な手続きを行うことが重要です。

栗林総合法律事務所におけるサポート

栗林総合法律事務所では、日本人の皆様がアメリカ合衆国で遺産税の申告を行う際の手続きをサポートしています。また、アメリカ国内の資産を日本に移転する際に必要となる移転証明書(Transfer Certificate)の取得手続きをサポートしています。移転証明書(Transfer Certificate)の取得についてお知りになりたい方は栗林総合法律事務所までお問い合わせください。

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