• 2020.09.01
  • 国際紛争

Settlement Agreement(和解契約書)

和解契約書の条項案の重要性

当事者間に、何らかの紛争が存在し、一定の金銭の支払い等を条件としてその紛争の終結がなされる場合に、その解決内容を記載した和解契約書が作成されることになります。特に、既に紛争関係にある当事者間での和解契約ですので、当該紛争をめぐって、後日再び紛争が蒸し返されることを防止するためにも、和解条件、紛争が解決されたこと等を和解契約書として書面として残しておくことは重要な意味を持つことになります。また、和解契約が締結される状況が、対立関係にある当事者の状況を前提とするものですので、和解契約の文言の解釈の違いから再び紛争が引き起こされることもあり得ます。従って、和解契約条項の作成においては、特に慎重に契約条項を吟味する必要があります。

和解契約書のタイトル

和解契約書の表題としては、Settlement Agreement、Settlement Agreement and Release、Release and Covenant Not to Sueなど様々なものがあります。

和解契約の対象となる紛争の範囲の特定

まず、紛争解決のための和解契約においては、その解決の対象たる紛争を特定する必要です。紛争の特定は、紛争の内容及び当事者を記載することによってなされることになります。通常この部分は、前文(Recitals)において記載されることが多いですが、どの程度詳細に記載すべきかについては、個別の事案ごとに検討することになります。例えば次のような記載が考えられます。

WHEREAS, there has arisen a dispute between A and B regarding certain products; and,
WHEREAS, A and B desire to resolve their dispute;
NOW THEREFORE, in consideration of the premises and mutual promises contained herein, the parties agree as follows:

特定の製品に関してAとBの間に論争が生じている。
AとBは彼らの紛争を解決したいと望んでいる。
本契約に記載する前文と相互の約束を約因として、当事者は次のとおり合意する。

和解についての対価、支払い条件、他の和解の条件

紛争解決の条件として、一定の金額の支払いや、その他の条件が合意された場合には、その合意を和解契約の内容として定めることになります。和解金の支払いについては、相手方の資力に応じて分割払いなど柔軟に支払方法を選択することが可能ですが、和解金の支払いを受ける側としては、より確実に和解金の回収を受けることができるようにすることが望ましく、場合によっては、長期間に渡る分割払いは支払い方法として適切ではない場合もあり得ます。

In full settlement of the Controversies, A shall pay to B a total of Six Thousand US Dollars (US $6,000).

Aは、和解金として総額6,000米ドルをBに支払うものとする。

分割払いの場合

和解金を分割払いにより支払う場合は、その支払い期限と各回の支払額を明確にする必要があります。
A shall pay to B the settlement amount in the above article in three time install payment as follows:

January 31, 2019 $2,000
February 28, 2019 $2,000
March 31, 2019 $2,000

AはBに対して上記の条項に基づく和解金を3分割により次の方法で支払う。
2019年1月31日 2000ドル
2019年2月28日 2000ドル
2019年3月31日 2000ドル

和解により責任を認めるものではないことの確認

和解契約書の作成において特に注意すべきことは、和解金を支払う側が、和解金の支払いの原因となった事柄について自己の責任を認めてはいけないということです。例えば、著作権侵害に関する紛争においては、著作権を侵害したことなど自己に責任があることを認めることには慎重でないといけません。もし、和解契約を締結したこと、または和解金の支払いを行ったことそのものが、自己に責任があることを認めるものであるという証拠となるとすると、和解契約の当事者間において、または関係者との関係において、本和解契約において責任を認めたことを根拠としてさらなる訴訟などが提起される恐れも考えられます。相手方が、謝罪文言を加えることを求めてくる場合もありますが、そのような条項を加えることについても慎重に検討する必要があります。

和解によりあらゆるクレームから免除されることの確認(Release)
和解契約の目的は、上述のように紛争を解決することですので、和解の対象となる紛争に関して、和解契約締結によりあらゆる責任が免除されることを規定する必要があります。ここで配慮すべきことは、和解契約の契約当事者だけでなく、対象となる紛争に関連して責任追及の対象となりうる者を特定して広く責任免除の対象として規定しておくことです。例えば、会社、代表者、従業員、代理人、親会社、子会社、取引先などになります。

和解金の支払い以外の条項

Settlement Agreementの中に和解金の支払い以外の条項を追加することも可能です。例えば買主の代金の支払いが遅延したことにより遅延した金額と損害金を分割払いで支払うことについて合意し、Settlement Agreementを締結する場合があります。その際、売主としては、売買契約書の中で責任の所在が不明確であった瑕疵担保責任や製造物責任について今後は売主が責任を負わない旨を追加してもらいたいと考えることがあります。和解契約書の中では、このような契約条項の明確化を行うことも可能となります。当事務所の依頼者からも、和解契約締結に際して契約内容をもう一度見直し、不明確な部分を明確化するよう求められることもあります。

その他の一般条項

和解契約においても、秘密保持義務、管轄裁判所などの紛争解決方法、準拠法選択に関する記載などのいわゆる一般条項が規定されることが多く見られます。

和解契約の形式によらない和解

 何らかの紛争が存在し、当事者が和解によって紛争の解決を行ったとしても、必ずしても和解契約締結の形式が採られるわけではありません。企業によっては、紛争に巻き込まれたことを秘密にしたいと考える場合もあるかもしれません。そのような場合には、実態は和解でありつつも、契約の形式としては、和解の条件としての何らかの利益供与を認めることのみを約束するものであることがあります。例えば知的財産権の侵害をめぐる紛争で、知的財産権の侵害であると主張された側が、当該知的財産権についてのライセンス契約を相手方と締結することによって紛争の終結を図るような場合です。

Settlement Agreementのサンプル1

Settlement Agreement

This Settlement Agreement is entered into on May 1, 2020, between AAA and BBB with regard to the dispute between the parties.
本和解契約書は、2020年5月1日、AAAとBBBの間の紛争に関連して、両当事者間で締結された。

1 In consideration of the payments set forth in Section 2, AAA hereby completely releases and forever discharges BBB from any and all past, present or future claims, demands, obligations, actions, causes of action, damages, costs, expenses and compensation of any nature whatsoever, whether based on a tort, contract or other theory of recovery.
第2条に定められた金銭の支払いの対価として、AAAは、不法行為責任、契約責任、その他の責任であるか否かを問わず、過去、現在、将来の全てのかつあらゆる種類の請求、要求、義務、裁判、裁判原因、損害賠償請求、損失補償請求、費用及び補償金から、BBBの責任を永久に免除する。

2 In consideration for this settlement and release, BBB agree to pay AAA the amount of $100,000 as full payment, subject to the terms and conditions of this Agreement.
AAAがBBBと和解し免責する代わりに、BBBはAAAに対して、本契約の条項に基づき10万ドルを支払う。

3 This release shall be a fully binding and complete settlement among the parties, and their heirs, assigns and successors.
本契約は当事者間の完全かつ拘束力のある和解であり、その承継人や譲受人を拘束する。

4 This agreement constitutes the entire agreement between the parties and supersedes any prior written or oral agreement between the parties concerning the subject matter. No modifications or amendment shall be effective unless confirmed in writing and agreed upon by both parties.
本契約は当事者間の完全な契約であり、従前の文書又は口頭による当事者間の合意に取り代わるものである。文書で確認され当事者が合意した場合を除き、本契約に対するいかなる修正や変更も効力を生じない。

5 The parties shall make any further assurances as may be necessary to implement and carry out this agreement.
当事者は、本契約の締結及び履行に必要なあらゆる行為を行う。

6 This agreement shall be governed by and construed in accordance with the law of Japan. The parties submit to the exclusive jurisdiction of the Tokyo District Court of Japan.
本契約は日本法に準拠し、東京地方裁判所が独占的裁判管轄権を有する。

7 This agreement shall become effective immediately following execution by each of the parties.
本契約は、両当事者の調印後直ちに効力を生じる。

Settlement Agreementのサンプル2

This Settlement Agreement is entered into this _______, 2020 by and between International Food Service Co., Ltd., (hereinafter “IFS”) and Yamada Sangyo Inc. (hereinafter “Yamada”) (collectively referred to as the “parties” or individually a “party”).
(訳文)
本和解契約書は、2020年○月○日、インターナショナル・フード・サービス会社(以下「IFS」という。)と山田産業株式会社(以下「山田」という。)との間で締結された。(IFSと山田をあわせて両当事者といい、個別に当事者という。)

WHEREAS, certain controversies have arisen regarding the products sold from IFS to Yamada (hereinafter the “Controversies”); and,
WHEREAS, IFS and Yamada desire to resolve their dispute;
NOW THEREFORE, in consideration of the premises and mutual promises contained herein, the parties agree as follows:
(訳文)
IFSから山田に対して販売された商品に関連して紛争(以下「本件紛争」という。)が生じた。
IFSと山田は、本件紛争の解決を望んでいる。
そこで、本契約書に含まれる相互の約束事項を約因として、両当事者は以下のとおり合意する。

1 Neither this Settlement Agreement nor anything contained within it shall be admissible in any proceeding as evidence of liability or wrongdoing on the part of either party. However, this Settlement Agreement may be introduced in any proceeding instituted to enforce its terms.

(訳文)
本合意書やそこに含まれる条項は、いかなる訴訟手続きにおいても、いずれかの当事者の責任や不法行為のあったことの証拠として使用することはできない。

2 In full settlement of the Controversies, Yamada shall pay to IFS the sum of $10,000 (the “Installment Settlement Payments”) in four (4) equal installments of $2,500 which shall be payable, respectively, every month starting from the month of the execution of this Agreement.
(訳文)
本件紛争の完全な解決金として、山田はIFSに対して1万ドル(以下「分割和解金」という。)を本契約書の締結日の属する月から毎月4回にわたり2500ドルずつ支払う。

3 In consideration for their faithful performance of the terms of this Settlement Agreement, the parties, for themselves, their officers, directors, executives, managers, employees, agents, attorneys, divisions, related and subsidiary entities, affiliates, successors and assigns, do hereby relinquish, waive, release, acquit and forever discharge each other of and from any and all claims, disputes, actions, charges, contractual obligations, complaints, causes of action, rights, demands, debts, damages, or accountings of whatever nature, at law or in equity, known or unknown, asserted or not asserted, which they have now or may have in the future against one another, based on any actions or events which occurred prior to the date of this Settlement Agreement, including without limitation the aforesaid Controversies, any claims for delay, disruption and impact, any claims (including statutorily based claims) for attorneys’ fees and costs incurred in connection with them, and any claims for interest, except as provided for in Paragraph 2 of this Settlement Agreement.
(訳文)
本契約書の条項を誠実に実行することで、当事者、その役員、取締役、執行役、マネージャー、従業員、エージェント、弁護士、部署、関連する子会社、関連会社、承継人及び譲受人は、第2条に定めるものを除き、本件紛争、遅延による損害、その影響、及び債権(制定法による債権を含む)、弁護士報酬、弁護士に生じた費用、遅延損害金を含め、その性質を問わず、制定法によるか衡平法によるかに拘わらず、知っているか知らないか、すでに請求済みかそうでないかに拘わらず、本契約書の日より前に生じた事実をもとに現在または将来相手方に対して有するあらゆる種類のクレーム、紛争、訴訟、請求、契約上の義務、訴訟上の請求、請求原因、権利、要求、債務、損害、負債から、お互いに解放し、放棄し、免責し、免除し、永久に責任を免れさせる。

4 This Settlement Agreement shall be binding upon and inure to the benefit of the parties’ respective heirs, successors, assigns and personal representatives.
(訳文)
本契約書は両当事者、その相続人、承継人、譲受人、及び代表者に対して拘束力を有する。

5 A party’s rights under this Settlement Agreement may not be assigned without the express written consent of the other party, which consent may be given only in accordance with applicable law and regulation.
(訳文)
本契約に基づく当事者の権利は他方当事者の文書による明示の合意(かかる合意は適用法または適用のある規則にもとづくものである)がある場合を除き譲渡できない。

6 The parties agree to execute whatever modification(s) of the Contract, invoices, and any and all other additional documents as may be reasonably necessary to carry out the terms, conditions and obligations of this Settlement Agreement.
(訳文)
両当事者は、本契約書の条件及び義務を履行するために合理的に必要となるその他のあらゆる種類の契約書の修正、請求書、付属文書を作成することに了解する。

7 This Settlement Agreement is entered into by each of the parties without reliance upon any statement, representation, promise, inducement, or agreement not expressly contained herein. This Settlement Agreement constitutes the entire agreement between the parties concerning the aforesaid settlement and release of claims.
(訳文)
両当事者は、本契約書に明示的に含まれていない別の文書、説明、約束、誘因、合意を信頼して本契約書に調印したものではない。本契約書は、上記の紛争解決及び請求の放棄に関連する両当事者の完全な合意を構成するものである。

8 If any portions of this Settlement Agreement are held invalid and unenforceable, all remaining portions shall nevertheless remain valid and enforceable, to the extent they can be given effect without the invalid portions.
(訳文)
もし本契約書のいずれかの条項が無効または執行不能とされた場合、その他の条項については、無効とされた条項を除き、法令上許された範囲において、依然有効であり、強制執行可能である。

9 Each of the parties has participated in the drafting and negotiation of this Settlement Agreement. Accordingly, for all purposes, this Settlement Agreement shall be deemed to have been drafted jointly by the parties.
(訳文)
いずれの当事者も、本契約書の草稿及び協議に参加している。従って、本契約書は両当事者により共同して作成されたものとみなされる。

10 This Settlement Agreement may be executed in any number of copies, each of which shall be deemed to be a counterpart original.
(訳文)
本契約書は複数の副本によって作成され、各々が原本とみなされる。

11 Each person signing this Settlement Agreement hereby represents and warrants that he or she has the authority to bind the entity on behalf of which he or she has signed.
(訳文)
本契約書にサインする者は、本契約書に署名する当事者を拘束する権限を有することを表明し保証する。

IN WITNESS WHEREOF, the parties hereto have executed this Settlement Agreement on the date written above.
(訳文)
以上の証として、両当事者は、上記に記載した日にちにおいて本契約書に調印する。