• 2021.11.11
  • 国際紛争

製品の品質保証について韓国のメーカーに責任を認めさせた事例

国際紛争事案の概要

当事務所の顧問先のY社(IT企業として商品やサービスの提供を行うベンダー企業)は、韓国のソフトウェア製作会社と、販売代理店契約(Distributorship Agreement)を締結し、韓国製ソフトウェアの日本における非独占的販売代理店をしていました。Y社は、自社の取引先である日本企業Xとの間において韓国製ソフトウェア(外部からの不正アクセスを探知するセキュリティ製品)の売買及び保守契約を獲得し、韓国のソフトウェア製作会社の日本子会社が日本企業Xに対して韓国製ソフトウェアのインストールを行うことになりました。ところが、韓国製ソフトウェアをX会社のサーバーにインストールしたところ、X会社のサーバーのOSとの相性が原因と思われる不具合が発生し、X会社のパソコンが全てダウンしてしまうことになりました。X会社からは、Y社に対して、直ちに原因を明らかにするとともに、パソコンの復旧を急ぐよう要求されました。このままパソコンの復旧ができない場合は、X会社の被害は数十億円になってしまう可能性があります。そこで、対応に苦慮したY社の代表取締役が、今後の方針について栗林総合法律事務所に相談に来られました。

栗林総合法律事務所による紛争解決

栗林総合法律事務所で、英文で作成された販売代理店契約(韓国のメーカーのひな型により作成されたもの)を確認したところ、韓国の製品については、納品から6カ月間の品質保証が定められており、製品に瑕疵や欠陥があった場合は、メーカーは代替品の提供、代金減額、損害賠償などの義務を負うことが明確にされていました。一方で、今回の不具合は、OSの相性によるものであって、韓国製ソフトウェア自体の品質の問題であるのかどうかは必ずしも明確ではありません。但し、お客様のサーバーが機能不全になるという緊急事態が生じたわけですので、責任のなすりあいをしている余地はありません。できるだけ早期にお客様対応を行い、パソコンの復旧作業を行うことが求められていました。そこで、栗林総合法律事務所としては、契約責任については後日に明確にするにしても、韓国から専門の技術者を日本に派遣してもらうなどして、X会社のサーバーの復旧作業を早急に行うよう韓国の会社の日本子会社と話し合うようにアドバイスを行いました。また、当事務所の顧問先は、韓国会社の販売代理店であり、必ずしも製品に対する知識が十分にあるわけではなく、また、今回のような事案については、本来はメーカーである韓国企業が一時的に責任をもって対応すべきであると考えられました。そこで、サーバーの復旧作業のみならず、サーバーのダウンによる損害賠償の交渉についても販売代理店である当事務所の顧問先ではなく、メーカーが主導となって協議交渉するようアドバイスを行いました。その結果、韓国のメーカー(実際にはその日本子会社)とX会社との間での直接のやり取りが始まるようになり、サーバーの修復や損害賠償についての協議も全て韓国企業の日本子会社が中心となって行うことになりました。当事務所の顧問先は、今回の事案については、お客様を紹介した責任はあるものの、製品自体は韓国の会社のものであり、賠償責任も全て韓国の会社が負担するということで解決を図ることができました。

国際紛争解決のポイント

外国のメーカーの製品やサービスを日本の販売代理店が販売している場合に、製品やサービスの瑕疵や欠陥に基づいて生じた損害の賠償責任をだれが負担するのかが問題となることがあります。今回の事案のようにソフトウェアの不具合の原因がOSの相性による場合など、製品やサービス自体の瑕疵や欠陥と言えるのかどうかについて争いが生じることもあります。しかし、ビジネスの現場では、どちらの責任であるのかを、時間をかけて協議している余裕はなく、目の前に生じた問題について即時に対応していく必要があります。法律家の行う契約書の解釈やアドバイスも現実の問題に則した対応でなければなりません。本件では、顧客のサーバーの復旧体制を如何に早急に構築できるかが重要なポイントになります。そこで、当事務所では、当事務所の顧問先が中心となって問題の解決にあたるのではなく、顧客との協議の初期段階から韓国のメーカーを巻き込み、できるだけ韓国のメーカーと日本の顧客との直接のやり取りの中で問題解決してもらう体制を構築するようアドバイスしました。その結果、韓国企業も自らの責任を認識し、顧客のサーバーの復旧作業や賠償責任の交渉については全て韓国企業が中心となって行動してもらうことができ、当事務所の顧問先であるY社は一銭も賠償金の支払いを行うことなく、本件の解決を導くことができました。ソフトウェアの開発や導入については、今回のような問題が生じることが多くあります。その場合、自分のところに非がないことを声高に主張するだけでなく、全体を大きく見回し、関係者全体にとってどのような解決方法が妥当かを検討する必要があります。また、今回のケースのように、サプライチェーンの中に外国企業が含まれ、外国企業を巻き込んだ紛争になる場合は、契約書の内容を確認し、契約書に基づき当該企業に対して紛争解決の役割分担などを依頼することが必要になります。英文で作成された販売代理店契約書(Distributorship Agreement)の内容を早期に確認し、その内容を紛争解決に反映したことがいい結果につながったものと考えています。

栗林総合法律事務所のサービス

栗林総合法律事務所では、国際取引を行う当事者間の意思疎通の齟齬や商慣習の違いによって生じる様々な問題について、日本企業の代理人として依頼者の立場を相手先企業に対して明確に伝え、取引条件の改善や明確化を求めていきます。また、取引の過程における紛争について双方の意見の対立がある場合には、双方の意見を聞きながら、当該環境下における好ましい妥協点はどこであるかを探っていき、当事者を説得しながら双方のビジネス上のメリットを最大化できる合意を導いていきます。単に、依頼者側の利益の立場からの一方的な意見の主張を行うのではなく、ビジネス上の観点から当事者双方に最も好ましい解決策を導き出し、それを両当事者に納得してもらうことが重要なポイントであると考えています。また、このような交渉を経て合意された内容については、法律上の権利義務であることを明確にするために、取引基本契約書の契約条項の改定や、メモランダム(Memorandum)やサイドレター(Side Letter)の形で書面化し、当事者双方の署名押印を取得していきます。これらの書面は全て英語で作成されます。また、場合によっては和解合意書(Settlement Agreement)として、双方の意見の相違がある中で、紛争解決がなされたことを明確にしておくこともあります。栗林総合法律事務所では、国際間の紛争における条件交渉の他、合意された内容を反映する各種書面のドラフトも行い、日本企業が巻き込まれる国際紛争について解決のためのサポートを提供しています。なお、国際紛争の解決に関する業務については、原則としてタイムチャージによる請求となりますが、顧問先企業については、国際紛争に関する法律相談料の他、和解交渉や書面作成に関する弁護士報酬についても通常の場合よりも2割のディスカウントを受けることができます。詳細については、栗林総合法律事務所のお問い合わせフォームからお問合せください。