香港の会社を代理して日本で訴訟を行った事例
国際紛争事案の概要
香港の会社が日本の会社に美容器具を輸出販売したところ、日本の会社は資金不足を理由に商品代金(日本円で約250万円)の支払いを行いませんでした。日本の会社からは、当初は支払い時期の延期の申し入れがなされていましたが、そのうち日本の弁護士からのアドバイスだと思われますが、商品に欠陥があったので商品代金を支払えないという主張を追加してくるようになりました。香港の会社としては、このまま放置しておくことができませんので、栗林総合法律事務所に対し、日本の会社に対する訴訟を提起するよう依頼がありました。当事務所が関係証拠を確認したところ、請求については何ら問題がなく、勝訴の見込みが高い事案であると判断されました。当事務所で委任契約(Engagement Agreement)を作成し、香港の会社を代理して内容証明郵便による支払い催告を行いましたが、日本企業からは定められた期限までに被告からの支払はありませんでした。そこで、栗林総合法律事務所は、香港の会社を代理して、東京地方裁判所に対して訴訟提起を行うことになりました。
栗林総合法律事務所による紛争解決
今回の訴訟における請求金額は250万円とあまり高額な裁判ではありませんでしたが、証拠資料もそろっており、請求原因について立証は容易な事案であると考えられました。そこで、受任当初から、日本企業に対して内容証明郵便による催告を行い、被告から真摯な提案がなされない限りは、回答期限を過ぎた段階で直ちに訴訟提起を行うとの対応方針を明確化しました。被告は、訴訟の最初の段階では、原告から納品された商品に欠陥があると主張していましたが、これまで何度も取引をしていた事実があることから、商品の欠陥の主張は困難であると判断したのか、訴訟の途中からは、商品の欠陥の主張はあきらめ、分割払いの提案をしてくるようになりました。原告の側としても、訴訟が長期にわたる場合や証人尋問を行う場合には、弁護士費用も高額にならざるを得ないとの判断があったことから、請求金額全額(250万円)の支払いを行うことを前提として、被告の提案する分割払いの和解案に応じることにしました。裁判所における和解が成立した後、被告の側では、和解で約束した通りの分割金の支払いを行ってきましたので、香港の会社としては250万円全額の回収を達成することができました。
国際紛争解決のポイント
日本の弁護士が外国企業を代理する場合には、英語と日本語で作成された委任状(Power of Attorney)を作成し、裁判所に提出することが必要となります。委任状については英語で作成し、日本語の翻訳文をつけて裁判所に提出することも可能ですが、英語の委任状のみでは不十分とされています。また、法人が当事者となる訴訟提起の際には、法人の代表者(委任状にサインした者)が代表権限を有していること証明するために、法人の資格証明書を添付する必要があります。法人登録制度があり、代表者の氏名も登録されている国(韓国など)の場合は、その国の登録証明書を添付し、翻訳と翻訳証明文書を添付することで足りることになりますが、アメリカやカナダなど、代表者の氏名の登録がなされていない国の場合は、Corporate Nationalityと称する書面を作成し、現地の公証人の認証(サイン証明)をつけて、翻訳文書と一緒に裁判所に提出する必要があります。また、外国企業が当事者となる場合は、注文書(Purchase Order)、納品書(delivery slip)、貨物運送状(Waybill)、請求書(Invoice)などの書類が全て英語で作成されていることが多くありますので、これらの書類を証拠として裁判所に提出する際には、日本語への翻訳が必要となります。このように外国企業が当事者となる訴訟においては、日本国内企業どうしの訴訟の場合と異なり、翻訳作業などでの負担が大きい点がありますが、訴訟手続き自体は日本の裁判所で行われ、日本の裁判官が判決を下しますので、通常の訴訟と異なるところはありません。
栗林総合法律事務所のサービス
国際的な取引が増加するにつれて、外国企業と日本企業の間に紛争が生じることも多くなっています。ほとんどの事例は、商品代金の支払いに関するものであったり、商品の欠陥についての損害賠償に関するものであったりします。外国企業と日本企業との間において和解による話し合いでの解決ができれば一番いいですが、解決ができない場合は訴訟を提起せざるを得ないことになります。栗林総合法律事務所では、日本企業を代理して、日本の裁判所に、外国企業に対する訴訟を提起する事案を多く扱っています。日本企業が外国企業を訴える場合には、管轄の問題や国際送達の問題についての知識を必要とします。また、栗林総合法律事務所では、外国企業を代理して日本の会社に対して債務の支払いを請求したり、日本企業から任意の支払いが受けられない場合には、外国企業を代理して、日本の裁判所に対して訴訟提起を行うことも多くあります。このような訴訟には、売掛代金支払い請求訴訟、損害賠償請求訴訟、貸金返還請求訴訟等が含まれています。上記事案では、当事務所と親しい事務所からの紹介事案であったということもあり、弁護士報酬として着手金30万円と翻訳料10万円を受領し、全額回収できた時点で成功報酬として40万円の支払いを受けることになりました。なお、外国企業を代理して訴訟提起を行う場合の弁護士報酬については、ケースごとに、日弁連の弁護士報酬規程(但し翻訳料が追加されます)によるか、タイムチャージによるかが定められることになります。但し、いずれの場合であっても顧問先企業については、通常の弁護士報酬の金額からいても通常の場合よりも2割のディスカウントを受けることができます。詳細については、栗林総合法律事務所のお問い合わせフォームからお問合せください。