• 2024.02.08
  • 人事労務

従業員の懲戒解雇を行った事例

事案の概要

当事務所の顧問先のA社(化学品メーカー)では、ある従業員Xのパワハラがひどく、対応に困っているとして当事務所に相談に来られました。A社によればXは、部下の女性従業員に対して大声で怒鳴るなどするため、部下の女性従業員が退職することになりました。その後Xに対しては新しい部下の女性をつけたのですが、新しい部下の女性もXの言動に対する恐怖感から精神疾患になり、会社に対して担当替えを行うよう依頼してくることになりました。A社社長によれば、最近はXの勤務態度も悪く、会社の情報漏洩の疑いもあるとのことでした。私どもでは、社長の主張する事実関係について調査するとともに、万一裁判になった場合でも十分に対応可能であるとの確証が得られたことから、A社の社長と相談の上、パワハラや就業規則違反を理由として、Xに対する懲戒解雇の通知を行いました。その後、XからA社に対し、解雇無効の確認と損害賠償を求める訴訟が提起されることになり、当事務所がA社を代理することになりました。

懲戒解雇を行う際のポイント

懲戒解雇が有効とされるためには、当該解雇について正当な理由があり、懲戒解雇を行うことが社会的に相当であると判断される必要があります。日本の判例では労働者保護の思想が強いですので、懲戒解雇が無効とされることも多くあります。また、懲戒解雇を行う際には、懲戒解雇事由の有無だけでなく、解雇の手続きについても十分検討する必要があります。第1に、就業規則に懲戒解雇についての規定がない場合は、懲戒解雇を行うことができません。就業規則を作成していない場合も同じになります。第2に、懲戒解雇については、就業規則に定められた手続きに従う必要があります。従業員の側に反論を行う機会を保証している場合は、そのような反論を述べる場を設ける必要があります。また、賞罰委員会を開催して、賞罰委員会の意見を聞く必要があるとされている場合は、このような委員会の開催も重要となります。

栗林総合法律事務所による業務の結果

栗林総合法律事務所では、部下の女性従業員を含め、数名の会社の従業員からのヒアリングを行い、陳述書にまとめて裁判所に提出しました。また、Xの日常の言動が就業規則で定めたパワーハラスメント規定に明確に違反すること、それにより女性従業員が精神疾患に陥ったこと、会社代表者からたびたび注意をしたり、配置換えをするも、効果がなかったこと、会社の秘密情報を個人のパソコンに移送するなど秘密情報の漏洩を行っていたことなどを主張しました。裁判所からは、原告・被告双方に対して和解の勧告がなされましたが、A社は小さな会社ですので、仮にXが職場に復帰したとしても混乱が生じるだけで、新たな配置場所を見つけることは困難と思われました。そこで、A社の側からは、Xが合意退職に合意するのであれば、懲戒解雇を取消し、Xに対する退職金を全額支給するとともに、裁判終結時までの未払い給与を全額支払うことの和解案を提案したところ、Xの側からもこれ以上訴訟を続けていくことの経済的負担も考慮し、A社の提案する和解案に合意することになりました。

栗林総合法律事務所のサービス内容

問題のある従業員について懲戒解雇を行うべきかどうかは、経営者として大変悩まれる問題です。当事務所では、過去の判例や、会社の状況、当該従業員の問題点などを検討し、懲戒解雇を行うべきか、その他の懲戒事由にとどめるべきか、仮に懲戒解雇を行うとしてその手続きをどのように行うかなどについてのアドバイスを行います。解雇のタイミングを逃してしまうと後で懲戒しようとしても難しくなってしまいます。また、懲戒解雇を行うには、就業規則に懲戒解雇事由が規定されており、その懲戒解雇事由に当てはまることが必要です。「その他会社の秩序を乱す行為」などの抽象的な規定では不十分です。また、懲戒解雇の通知には、具体的な懲戒解雇事由と、その行為が就業規則のどの条文に該当するかを具体的に記載する必要があります。裁判が始まった後に、解雇通知に記載していない懲戒解雇事由を後から追加することはできないのが原則です。当事務所では、会社を代理して、懲戒解雇を裏付ける資料の作成、懲戒解雇通知書の作成・送付、従業員からの問い合わせへの対応等を行います。問題社員への対応や、問題社員の懲戒解雇についてお悩みの方は是非栗林総合法律事務所にお問い合わせください。