• 2024.02.16
  • 訴訟・紛争解決

民事調停において和解を行った事例

事案の概要

N株式会社は戦後間もないころ、創業者Xが会社を設立し、以後40数年代表者として経営してきました。その間紆余曲折もありながら、年商10億円の会社に育て上げてきました。その後、Xの死亡により、Xの長男Aと次男Bが会社を承継し、兄弟で仲良く会社の経営に取り組んできましたが、AとBが死亡したことで、その後Aの家族とBの家族との間で会社の支配権について争いが生じることになりました。N株式会社では、長年株主総会や取締役会が開催されたことはなく、また、株主名簿も作成されていませんでした。株主の名前や所有割合が分かる資料としては、唯一税務申告書に添付される同族会社の判定基準に関する明細書のみとなります。Bの家族からは、Aの配偶者が会社の資金を勝手に自分の口座に移した行為は違法であり、移動した資金を会社の口座に戻すよう求めるとして民事調停の申し立てがなされました。その後、Aの配偶者から当事務所に対し、民事調停でAの家族を代理して活動し、Bの家族との間で調停案をまとめるよう依頼がありました。

民事調停による紛争解決のポイント

民事調停手続きは、裁判所において争いのある当事者間での話し合いを行う手続きです。当事者間で直接話し合いを行おうとする場合は、感情的なしこりから互いに相手方を非難することになり、実りのある話し合いは難しくなってしまうことも多くあります。民事調停の手続きを行うことで、裁判所を間に入れた話し合いを行うことができ、当事者間の感情的しこりを排除することができます。また、裁判所が積極的に和解を促進させようとしますので、和解が成立しやすくなるという効果もあります。

栗林総合法律事務所の業務の結果

N株式会社では、長期にわたり株主総会や取締役会が開催されたことはなく、株主名簿も存在しませんでした。そこで、まず誰がいくらの株式を有するのかを明確にすることが重要となりました。株主名簿が不存在であることから、税務申告書に添付された「同族会社の判定に関する明細書」のみが唯一の基準となりますが、その内容については双方の当事者からクレームが述べられており、必ずしも合意が得られているわけではありませんでした。当職からは、株主の確定については訴訟などで明確にしていく必要がありますが、Aの家族、Bの家族とも、N株式会社から支払われる給与を主な収入源としていたことから、双方の生活基盤を整えるためにも、会社にある現金をどのように分配していくかが当面の重要な問題となること、そのためにはA家族とB家族が了解し得る資金の分配ルールを定め、当面の間は、そのルールに従って給与や報酬の支払いをしていくことが重要であることを説明しました。その結果、A家族、B家族の双方から了解が得られ、会社の資金の中から、毎月100万円ずつをA家族、B家族に役員報酬として支払うことで合意がなされ、調停が成立することになりました。

栗林総合法律事務所のサービス内容

同族会社の経営権に関する紛争は多くの場合非常に激しい争いとなってきます。会社分割の方法により会社を分割し、それぞれの家族が別の会社を経営することになれば一つの好ましい解決策となりますが、事業の内容によっては会社の分割が難しいケースも多くあります。この場合、会社の持株数の多数を有する者が会社の支配権を獲得し、自分たちの長男や長女に経営を移していくことになります。その結果、少数派となった株主は、会社の経営から排除されることとなり、少数の持ち分は全く無価値となってしまう可能性もあります。上記の事案は突然会社からの収入を絶たれ、生活の基盤を失うことになったB家族からの申立てによるものであり、調停により、当面の現金の分配ルールが確立したことで、生活の安定を取り戻すことができた事案になります。しかしながら、持ち株比率を含め、会社の経営に関する根本的な問題は解決していないことになりますので、その後株主総会決議取消訴訟、取締役の違法行為差止請求訴訟、取締役に対する損害賠償請求訴訟などの、様々な訴訟が提起されてくることが予想されます。栗林総合法律事務所では、株式や資金の移動に伴う税務面を含めた様々な提案を行うことで、会社の分割や株式の譲渡等を通じて、支配権をめぐる紛争の根本的な解決が図れるよう当事者間の調整を行ってまいります。