アメリカ企業が日本企業に対し、日本での仲裁を申し立てた事例
国際紛争事案の概要
日本で登録特許を有するアメリカの会社Xが、日本企業Yが販売する製品はアメリカの会社Xが有する特許を侵害していると主張して、内容証明郵便による製品の使用差し止めと損害賠償を求めました。日本の会社は、日本企業の製品はアメリカの会社Xが有する特許技術を使用しておらず特許侵害には当たらないこと、及びアメリカの会社Xの出願した特許は、特許出願以前に開示されていた公知情報(他社の特許公報)に類似するものであって、当該特許は無効であるとの主張を行ってきました。本件紛争の背景には、アメリカの会社Xに勤務していた従業員が、X社を退職した後、日本企業Yに入所したことから、当該従業員を通じてX社の有していた技術情報がY社に流失したのではないかとの懸念があることがありました。X社は日本で仲裁手続きの申立てを行うに際して、日本の弁護士に依頼を行う必要があることから、当事務所に代理するよう依頼してこられることになりました。
栗林総合法律事務所による紛争解決
栗林総合法律事務所は、本件仲裁手続きにおいてアメリカ企業を代理し、アメリカ人弁護士と一緒に仲裁手続きを追行していきました。日本における仲裁手続きについては、国際商事仲裁協会(JCAA)が商事仲裁規則に基づいて行う商事仲裁のほか、弁護士会の仲裁、金融分野における裁判外紛争解決制度(金融ADR)、建設工事紛争審査会の仲裁など様々な仲裁手続きがあります。国際的な商事紛争については、国際商事仲裁協会の仲裁が行われることが多いと思われますが、本件では、大手法律事務所の弁護士が仲裁人(arbitrator)となって手続きの進め方などを管理するいわゆるアドホック仲裁と言われる手続きで行われることになりました。仲裁手続きでは、最初の段階で仲裁人からスケジュールが提示され、各当事者が提出する書面の提出期限が定められました。この提出期限に基づき双方の代理人から主張書面が提出された段階で、仲裁人から、本件については話し合いによる解決が適切と思われるので調停手続きに付したいとの提案がなされました。そこで、日本にある有名私立大学の教授(カナダ人)が調停人(mediator)に選任され、双方の当事者は個別に調停人に対して意見を述べることになりました。その後、調停人からの調停案が示され、両当事者とも調停人の調停案に同意することになったことから、和解合意書が作成されて案件が終了することになりました。当事務所の依頼者は、調停人から示された一定額の和解金を受領することで、仲裁の取り下げに同意しています。
国際紛争解決のポイント
国際的な取引が増加するにつれて、外国企業と日本企業の間に紛争が生じることも多くなっています。ほとんどの事例は、商品代金の支払いに関するものであったり、商品の欠陥についての損害賠償に関するものであったりします。外国企業と日本企業との間において和解による話し合いでの解決ができれば一番いいですが、解決ができない場合は訴訟や仲裁を提起せざるを得ないことになります。栗林総合法律事務所は、日本における裁判手続きや仲裁手続きにおいて、日本企業または外国企業を代理して、活動を行っております。国際訴訟や国際仲裁においては、関係する証拠が外国語で作成されていることが多く、その翻訳作業に多額の費用を要することになります。また、仲裁手続きは裁判手続きと異なり控訴・上告の手続きがありませんので、早期に最終的な紛争解決を導ける可能性があります。また、裁判と異なり非公開での審理となりますので、企業秘密など秘密情報が外部に公開されることを避けることができます。一方で、仲裁手続きの場合は、専門の裁判官による判決ではありませんので、当事者が納得し得るような判断がなされるかどうか不安定なところがあります。また、裁判手続きと異なり仲裁人や調停人の報酬を当事者が支払わなければなりませんが、仲裁人や調停人は通常タイムチャージでの請求を行い、時間単価も7万円前後と極めて高額ですので、すぐに1000万円以上の報酬になってしまう可能性があります。国際間の紛争解決手段として仲裁手続きを選択される場合は、このような事情についても十分に認識したうえで手続きの選択を行う必要があります。
栗林総合法律事務所のサービス
栗林総合法律事務所では、日本における訴訟だけでなく、裁判外紛争解決手続き(ADR)として仲裁手続きについても代理しています。今後、国際間の紛争が増えてくる可能性が高いことから、仲裁手続きを選択される事案も多くなってくるのではないかと推測しております。外国企業との国際紛争に際して、仲裁手続きが選択された場合には、当事務所にご相談ください。なお、国際仲裁手続きに関する弁護士報酬については、ケースごとに、日弁連の弁護士報酬規程(但し翻訳料が追加されます)によるか、タイムチャージによるかが定められることになります。但し、いずれの場合であっても顧問先企業については、通常の弁護士報酬の金額から2割のディスカウントを受けることができます。詳細については、栗林総合法律事務所のお問い合わせフォームからお問合せください。