株式総会決議不存在の訴えで会社を代理した事例
事案の概要
X会社は創業者である先代が亡くなり、長男A、次男B、三男Cの3つの家系(グループ)がそれぞれ株式の3分の1ずつを相続しています。X会社は先代が亡くなった後はずっと長男Aが代表取締役として会社を経営していましたが、これまで株主総会を開催したこともなく、役員の選任を含め、会社に関する事項は全て長男が独断で決定していました。これに対してBから株主総会決議不存在の訴えが提起されました。BはこれまでX会社で株主総会が開催されたことがないことから、Aは取締役の地位を有しておらず、これまでもらった報酬をすべて会社に返還すべきことを求めています。
株主総会決議不存在の訴えのポイント
会社は決算期から3か月以内に株主総会を開催し、定款の規定に従って取締役の選任を行わなければなりません。ところが、多くの中小企業においては、実際には株主総会を開催したことがないにもかかわらず、役員選任登記に必要なことから、株主総会議事録のみを作成し、これを法務局に提出していることがあります。株主総会不存在確認を求められた会社の側からは、①株主総会議事録があるから株主総会の存在を推定すべきである、②会社の慣行としてこのような取り扱いがなされていたのであるから、株主は全員承認していた、③各株主から代表取締役が委任を受けて承認決議を行っていたのであるから、全員出席総会として有効である、などと反論がなされることになります。しかしながら、裁判の場では、実際に株主総会が開催されていなかった以上、会社によるこれらの主張は認められないことがほとんどだと思われます。株主総会の招集通知がなされていないが、みんなが集まったときに議論したはずであるというような主張も認められません。上記のような場合、裁判上、株主総会の不存在が認定されることが多いと思われます。
栗林総合法律事務所による業務の結果
取締役の任期は会社の定款において定められています。多くの場合、取締役の任期は1年か2年とされています。定款において取締役の任期の定めがない場合は、監査等委員会設置会社等を除き、取締役の任期は2年とされます(会社法332条1項)。株式会社では、取締役の任期が満了するごとに株主総会で取締役の選任を行わなければなりません。同じ取締役を再任することもできますが、その場合でも株主総会決議は必要であり、株主総会決議がない場合は再任となりません。そこで、取締役の任期が満了したにも関わらず取締役選任の株主総会が開催されていない場合、取締役を欠いた状態(取締役のいない状態)となってしまいます。役員に欠員が生じた場合の措置として、会社法では、任期の満了又は辞任により退任した役員は、新たに選任された役員が就任するまで、なお役員としての権利義務を有するとされています(会社法346条1項)。このような地位にある取締役を権利義務取締役と言います。従って、一番最近の取締役選任が無効となることで、定款に定められた取締役の人数を欠くことになった場合、その前の取締役選任決議により選任された取締役(一番最近に選任された取締役と同じ人の場合もあります)が権利義務取締役となります。その前の選任決議も無効の場合、さらにその前の選任決議で選任された取締役が権利義務取締役となります。栗林総合法律事務所では、仮に株主総会決議が不存在の場合であったとしても、現在の取締役は当初は正当な手続きにより選任されていたのであるから権利義務取締役としての地位を有していることを主張し、裁判所に認めてもらうことができました。また、瑕疵のある株主総会の決議内容については、その後に開催された株主総会において追認を行っています。
栗林総合法律事務所によるサービス内容
栗林総合法律事務所では、依頼者からの依頼に基づき、株主総会決議不存在確認請求訴訟を提起することがあります。また、株主総会不存在確認請求訴訟で被告側(会社側)の代理人となることも多くあります。株主総会決議不存在確認請求訴訟は、遺産相続や支配権をめぐる紛争を契機に行われることが多くあります。株主総会決議不存在確認請求訴訟についてお知りになりたい場合は、栗林総合法律事務所までお問い合わせください。