• 2024.09.20
  • 個人の法律相談

家主から建物を退去するよう要求された事例で、賃借人を代理し、引越費用等として500万円の支払いを受ける内容の合意を成立させた事例

事案の概要

栗林総合法律事務所の依頼者であるXは、東京都世田谷区の一軒家を賃借し家族とともに居住していましたが、建物が老朽化したため立て直しが必要であるとして、家主から建物から退去するよう求められました。家主からは、引越し費用や、預かり敷金の返金分として150万円を支払う旨の提案がありました。依頼者Xとしては、引越しに伴う様々な費用を考量した場合、とても150万円では足りないとして、引越し費用の増額を要求したいと考えていましたが、自分で直接家主と交渉するのは難しいとして栗林総合法律事務所に相談に来られました。

建物から退去を求められた場合のポイント

民法及び借地借家法では、建物の賃借人を保護する規定がありますので、一般の普通借家契約においては、契約期間について契約書に記載がある場合であっても、正当理由がない限り、家主から、賃借人に対して賃貸借契約の終了を通知したり、建物からの明け渡しを要求することができないのが原則です。一方、建物の所有者(家主)の側としても、建物が老朽化したり、耐震基準に沿っていなかったりする場合には、建物の建て替えが必要となる場合があります。この場合、建物の所有者(家主)としては賃借人に対して建物から退去するよう要求せざるを得ませんが、賃借人の都合も考慮した場合、ある程度の金銭的補償を行わないといけないことになります。裁判所は、建物からの退去を求める建物所有者(家主)からの請求を認めるかどうかを判断する際に、建物所有者(家主)から賃借人に対してどれだけの補償金の支払いがなされるのかを重要な考慮要素として明け渡しの要否を判断することになります。建物の所有者(家主)が賃借人に対していくらの金銭を払うべきかの具体的な基準については法律に記載がありませんので、当事者間での交渉によって決定することになります。賃借人としては、本来は退去が必要でないにもかかわらず、建物所有者(家主)の都合により退去しなければならないことを考えると、引越しに伴い生じる全ての費用について補償を必要とするとともに、引越しに伴う精神的・肉体的負担についても負担してもらいたいと考えると思います。そこで、賃借人としては、新規物件の探索に要する費用、新規契約書の作成に要する費用(弁護士費用を含む)、引越し費用、住居移転に伴う諸費用(役場への届け出や知り合いへの案内状の発送費)、敷金・保証金の返還、明け渡し交渉に伴う弁護士費用、迷惑料などを請求することになります。

栗林総合法律事務所による作業の結果

栗林総合法律事務所では、依頼者からの相談を受けた後、賃貸借契約書の精査、土地建物の登記簿謄本の取得、近傍の不動産取引価格に関する情報の収集、公示価格の調査、近傍の賃借料などを確認する作業を行いました。その上で、依頼者Xとの協議を行い、費用の積み上げ方式により、建物所有者(家主)に対して請求すべき金額について検討しました。依頼者Xとしては、敷金の返還金(120万円)と併せて600万円の支払いを受けたいとの希望でしたので、当事務所が依頼者Xの代理人として建物所有者(家主)に対して内容証明郵便を発送する方法により、明渡費用の請求を行いました。その後、家主とも何度か対面での協議も行いましたが、建物所有者(家主)の支払い能力も考慮し、500万円の支払いを受けることで合意に達しました。但し、新規の借家の探索や建物からの引っ越しなどに要する期間を4か月とみて、賃借人は建物明け渡しに関する合意書締結日から4か月以内に建物を明け渡すものとし、その間の家賃については免除してもらうことになりました。なお、原状回復工事の免除や、残置物の取り扱いなどについても合意書の中に記載されています。本件の建物賃貸借契約では、月額の家賃は25万円とされていますので、敷金の返還分が込みではありますが、20か月相当分の補償金の返還を受けられることになりました。また最大4か月分の賃料が免除されることになりましたので、賃借人としては引越しに要する費用を考慮しても十分な補償を受けられることになります。

栗林総合法律事務所のサービス内容

栗林総合法律事務所では、企業や個人の依頼者からの依頼により、建物賃貸借契約の解除に伴う様々な契約交渉を代理しています。最も多いのが明渡に関する交渉です。栗林総合法律事務所では、建物の所有者(賃貸人)や賃借人からの求めにより、契約解除の条件について当事者を代理して協議を行います。もし協議により合意に達することが難しい場合は、民事調停の申し立てを行ったり、建物明け渡し請求訴訟を行うことで、裁判所に間に立ってもらい、当事者間の合意に達すっることができるよう努力しています。賃貸建物の明け渡しに関する紛争がある場合は、栗林総合法律事務所までお問い合わせください。