• 2020.09.01
  • 外国企業の支援

日本支店の設置と閉鎖

日本における代表者の選任

外国会社は、日本において取引を継続してしようとする場合は、日本における代表者を定めなければならないとされています(会社法817条1項)。また、外国会社は外国会社の登記をするまでは、日本において継続して取引をすることができないとされ、これに違反して取引をした場合は、当該取引を行った者が外国会社と連帯して債務を弁済する責任を負うことになります(会社法818条1項、2項)。そこで、外国会社が日本で取引を行う場合は、日本における代表者を定めることと、日本で登記を行うことが必要となります。

日本支店の設置登記

外国会社が日本で支店の登記を行う場合、営業所を設置する場合と営業所を設置しない場合で登記が異なります。外国会社が営業所を設置したときは「外国会社の営業所設置」の登記がなされます。これに対し外国会社が営業所を設置しないときは「外国会社の日本における代表者選任」の登記を行うことになります。外国会社の支店を設置する場合、ほとんどの場合が営業所を置くことになると思われますので、外国会社の営業所設置の登記がなされることが一般的です。

日本における代表者

外国会社が営業所を設置する場合も設置しない場合も、いずれの場合であっても日本における代表者の選任は必要になります。日本における代表者は、外国人でもよく、複数置くこともできますが、そのうち少なくとも一人は日本に住所があることが必要です(会社法817条1項)。日本における代表者は裁判上及び裁判外の一切の権限を有することになります(会社法817条2項)。

支店設置の事前準備

外国会社の支店は、親会社である外国会社の形態と同種または最も類似する日本の会社の種類(株式会社や合同会社など)に従って登記を行うことが求められるため、外国会社の定款、登記簿謄本などから、登記する事項を確認する必要があります。アメリカにおけるパートナーシップの支店についても日本で登記可能です。パートナーシップは社員全員が無限責任を負いますので、日本の合名会社に該当すると考えられます。

外国会社の定款及び登記簿謄本の翻訳

外国会社の定款及び登記簿謄本の日本語訳を作成することが必要となります。外国会社の定款とその翻訳文は日本支店の登記申請の際に必要となります

宣誓供述書の作成

支店設置登記の際、「本店の存在を認めるに足りる書面」「日本における代表者の資格を証する書面」「外国会社の定款その他外国会社の性質を識別するに足りる書面」を添付する必要がありますが、多くの場合、これらの書面に記載する内容を一つにまとめた宣誓供述書を作成し提出します。外国会社の定款や登記事項証明書などを元に、登記が受理される内容になるように宣誓供述書を作成します。

宣誓供述書の認証

宣誓供述書は、外国会社の本国の公証人または日本にある大使館に出向いて認証を受ける必要があります。たとえば、アメリカの会社が日本に支店を設置する場合には、アメリカの公証人かアメリカ大使館での認証が必要です。宣誓供述書は、日本の法務局に提出する書類ですが、日本の公証人による公証では登記が受理されないので注意が必要です。宣誓供述書の署名者は、本国の外国会社の代表者が原則ですが、日本における代表者も可能です。日本における代表者が日本に住んでいる場合には、本国の在日大使館で認証を受けることができますが、たとえばイギリス大使館のようにこのような認証業務を行っていない大使館もありますので、注意が必要です。

外為法の事前届出

外国会社の国籍や事業目的によって、外為法の事前届出が必要な場合があります。なお、事後報告は不要です。外為法の事前届け出が必要な場合、日本銀行を経由して財務大臣及び管轄大臣に届出をしますが、審査期間である30日間は支店登記をすることはできません。

登記申請

日本支店の設置を行う場合、設置を予定している場所を管轄する法務局に登記申請書、宣誓供述書とその訳文、代理人に委任する場合には登記申請委任状を提出します。登録免許税は、営業所を設置する場合に9万円、営業所を設置しない場合には6万円となります。日本における代表者については、法務局に日本支店の実印を届け出る必要があります。印鑑届出書には、日本における代表者の実印と印鑑登録書を添付する必要があります。

営業所設置に関する登記事項

外国会社の登記事項は、日本で類似する株式会社や合同会社などの登記事項に加え、外国会社の設立準拠法、日本における代表者の住所・氏名、公告方法などです。
1 商号
2 本店住所
3 日本における営業所(支店)の所在地及び設置日
4 日本において公告する方法
5 会社設立における外国の準拠法
6 会社設立年月日
7 事業目的
8 発行済み株式総数
9 資本金の額
10 外国における役員の氏名
11 日本における代表者の氏名・住所

日本支店設置後の手続き

日本支店を設置した後、管轄税務署、都道府県税事務所、管轄市役所に対して開業届出を提出する必要があります。

在留資格(ビザ)申請

日本における代表者については、企業内転勤や技術・人文知識・国際業務のビザが考えられます。また、日本支店が設置されたのちは、日本支店で働く従業員に対するビザの申請も可能となります。

日本支店を設置した場合の課税

外国法人が日本支店を設置した場合、日本で税務申告を行うことが必要です。外国法人が日本の支店を通じて得た利益に対して日本での課税がなされることになります。外国法人は日本支店に関して生じた利益について日本で法人税、住民税、事業税を納めなければいけません。日本で納付した税金については、外国税額控除の制度により本国の法人税から差し引くことができます。

住民税均等割り

外国法人の日本支店が設置された場合、その支店の所在地で住民税の均等割を納付する必要があります。住民税の均等割りについては資本金に応じて金額が異なってきます。外国法人の支店については、本国の資本金を基準に判断されますので、日本の支店の規模が小さい場合であっても本国における外国法人の資本金が大きい場合は、その金額をもとに均等割りの額が計算されることになります。

消費税

外国法人の日本支店が日本で事業を行い売り上げが計上される場合、日本で消費税を納税する必要があります。

日本における代表者の退任登記と営業所廃止登記

外国会社が日本支店を閉鎖しようとする場合には、本国会社の決定に基づき、「日本にける代表者の退任の登記」をすることになります。日本における代表者の退任の登記と似たものとして「営業所廃止の登記」があります。平成14年の商法改正で、外国会社は営業所を設置しなくとも日本における代表者を置くことができるようになったため、仮に営業所を廃止しても、日本における代表者が残る場合には、日本支店を完全に閉鎖することにはならず、むしろ当該日本における代表者の住所地に日本における当該会社の営業所にあたるものの住所が移転したという形になってしまいます。したがって、外国会社が完全に日本における拠点をなくすためには、営業所廃止の登記ではなく、日本における代表者の全ての退任の登記が必要とされています。さらに、登記実務上は、日本における代表者全ての退任の登記及び営業所廃止の登記の申請を同時に行っても、支店を抹消したことを示す下線は引かれずに、自動的に登記が閉鎖登記簿に移されることになるので、営業所廃止の登記と日本における代表者退任の登記とを同時に行う必要はなく、日本における代表者の退任登記のみをすればよいとされています。一方で、日本における代表者退任の登記のみを行う場合には、退任の日付だけが記載され、営業所が廃止された日は登記簿に記載されません。営業所廃止の日も登記簿に記載したいという場合には、まず営業所廃止の登記をしてから、代表者の住所地を管轄する法務局で、日本における代表者退任の登記をする必要があります。

営業所廃止の登記と代表者退任の登記

具体的な流れとしては、まず本国で営業所廃止と日本における代表者の退任を決定し、日本における代表者の退任を証する書面を作成した上で、本国官憲又は在日領事による認証を受けることになります。通常は、日本における代表者の退任とその日付、後継者を選任しない旨を記載した宣誓供述書(Affidavit)を作成し、領事認証を受けます。宣誓供述書の認証は、本国の公証人や領事の前で認証を受けることが原則ですが、日本における代表者が日本の本国大使館や領事館で認証を受けることでも問題ありません。ただし、国によっては、このような宣誓供述書の認証業務を請け負っていない国もありますので、事前に大使館に確認することが必要です。

債権者保護手続き

日本における代表者全ての退任の登記には、支店閉鎖に伴う債権者保護の観点から、債権者保護手続として官報公告及び1か月の催告期間も必要となります。実質的に異議が出そうな債権者については、先に交渉して弁済してしまう等ということも想定されます。法務局によっては、催告期間と宣誓供述書の日付の前後については、特段決まりはないので、先に催告手続を進めてしまって、後で宣誓供述書を作成することでも問題ないとしています。登記申請の際には、債権者保護手続をした結果異議を述べた債権者はいなかったこと、または異議を述べた債権者があるときは、そのものに対し弁済し、もしくは担保を供しもしくは信託したことまたは退任をしてもそのものを害するおそれがないことを示す上申書を添付することになります。通常は、債権者保護手続の終了の日をもって日本における代表者の退任の日とすることが多いですので、官報公告期間が終了したら、法務局に日本における代表者退任の登記をすることになります。