• 2020.09.01
  • 一般企業法務

株主名簿と株主名簿閲覧謄写請求

株主名簿の記載事項

株式会社は株主名簿を作成し、次の事項を記載しなければならないとされています(会社法121条)。
・株主の氏名又は名称及び住所
・株式の数
・株式を取得した日
・株券発行会社の場合は、株券の番号

名義書換請求

株式を取得したものは、会社に対して株主名簿の書き換え請求を行います。株券発行会社においては、株券を示して名義書換を請求します。株券の所持者は権利者であるとの推定が働きますので、会社は、原則として、株券を提示して名義書換を行うものの名義書換請求を拒むことはできません。株券発行会社で株券の発行がなされていない場合、株式を譲渡しようとする者は、会社に対して株券の発行を請求し、株式の譲受人に株券の交付を行います。譲受人は株券の交付を受けて名簿書換えの請求を行います。株券不発行会社の場合、名義書換請求に株券の交付は必要ありませんので、会社の定めた様式により、株式の譲渡人と譲受人が連名で記名押印し、名義書換を請求することになります。上場会社については、株式等振替制度により振替口座に名前が記載された時点で株主として扱われることになります。株式の移動については、証券取引所の会員である証券会社に開設された口座を通じて電子的に振替手続きが行われます。

相続の場合の名義書換

相続があった場合、被相続人と連名で名義書換を行うことができません。そこで相続人は、自己が相続によりその株式を取得したことを証拠上明らかにして名義書換の請求を行うことになります。相続による名義書換の請求を行うには次の各書類を提示することが必要になります。
・亡くなられた方の死亡証明書又は除籍謄本
・全ての相続人の戸籍謄本
・相続人関係図
・遺産分割協議書
・全相続人の印鑑証明書

株主名簿記載事項を記載した書面の交付

株式会社の株主は、会社に対して、自分が株主名簿に記載若しくは記録された株主名簿記載事項を記載した書面の交付を請求することができます(会社法122条)。この書面には株式会社の代表取締役が署名し又は記名押印しなければなりません。

株主名簿の備置き

株式会社は株主名簿を本店に備えおかなければなりません(会社法125条1項)。

株主名簿管理人

株式会社は、株主名簿管理人を置く旨を定款で定め、当該事務を行うことを委託することができます(会社法123条)。

株主名簿の閲覧謄写請求

株主及び債権者は、株式会社の営業時間内はいつでも、株主名簿の閲覧謄写請求を行うことができます(会社法125条2項)。

株主名簿閲覧謄写を拒否できる場合

株式会社は、株主名簿の閲覧謄写請求があった場合、次のいずれかに該当する場合を除き、株主名簿の閲覧謄写請求を拒否することはできません(会社法15条3項)。
・当該請求を行う株主又は債権者がその権利の確保又は行使に関する調査以外の目的で請求を行った場合
・請求者が当該株式会社の業務の遂行を妨げ、又は株主共同の利益を害する目的で請求を行ったとき
・請求者が株主名簿の閲覧又は謄写によって知り得た事実を利益を得て第三者に通報するため請求を行ったとき
・請求者が、過去2年間において、株主名簿の閲覧又は謄写によって知り得た事実を利益を得て第三者に通報したことがあるものであるとき

基準日

株式会社は一定の日(基準日)を定めて、基準日において株主名簿に記載され又は記録されている株主をその権利を行使することができる者と定めることができます(会社法124条1項)。基準日を定める場合には、株式会社は、基準日株主が行使することができる権利の内容を定めなければなりません(会社法124条2項)。株式会社は、基準日を定めたときは、定款に基準日についての定めがある場合を除き、当該基準日などを公告しなければなりません(会社法124条3項)。例えば、3月末決算で6月に定時株主総会を行う会社の場合、配当の基準日と、定時株主総会における議決権行使の基準日を3月31日と定めることが多いと思われます。この場合、会社は、定時株主総会開催日にだれが株主であるかに拘わらず、3月31日現在の株主名簿に記載のある株主を定時株主総会において議決権を行使することができる株主とし、また3月31日の株主名簿に記載の株主をもって配当を受けることのできる株主として扱うことができます。なお、株主総会の開催時期を延期するなどの理由で基準日を変更する場合、新たな基準日を定めて、当該基準日の2週間前までに基準日設定公告をする必要があります(会社法124条3項)。

基準日後の株主

基準日後に株式を取得した株主は、その基準日に関する権利の行使ができません。4月1日以降に株式を取得した株主はその年の期末配当を受けられません。このような株式を権利落ち株式といいます。但し、基準日はあくまで会社の便宜のためのものですので、会社は、基準日を定めた場合であっても、基準日に株主であった者の了解がある場合は、基準日以降に権利を取得した株主を議決権行使株主として取り扱うことができます(会社法124条4項)。

株主に対する通知

株式会社が株主に対してする通知又は催告については、株主名簿に記載・記録した株主の住所に充てて発すれば足りるとされています(会社法126条1項)。その通知又は催告は、その通知又は催告が通常到達すべきであったときに到達したものとみなされます(会社法126条2項)。

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