株主代表訴訟
株主代表訴訟とは
概要
株主代表訴訟とは、取締役が違法な行為をした、経営判断を誤ったなどの場合に、株主が役員の責任を追及する制度です。会社の取締役は、会社に対して善良な管理者の注意をもって委任事務を処理する義務(善管注意義務)、忠実にその職務を執行する義務(忠実義務)、法令・定款の順守義務など種々の義務を負い、これらの義務に違反して会社に損害を与えた場合に会社に対して損害を賠償する義務を負います。そして、監査役が設置されている会社では監査役が会社を代表してその責任を追及する立場にいます(会社法386条1項1号)。
会社法上、役員の任務懈怠責任やその他の責任は会社が追及するのが原則ですが(会社法423条1項)、会社(他の取締役)や監査役に任せると役員同士の仲間意識から損害賠償を請求しない可能性があると考えられます(これを提訴懈怠可能性と言います)。そこで、一定の要件のもとで、株主が会社や監査役に代わって役員に責任を追及する制度が株主代表訴訟です。
他の制度との比較
①最終完全親会社等の株主による特定責任追及の訴え
似たような概念として「多重代表訴訟」があります。親子会社の場合に、親会社の株主が子会社の役員に対して代表訴訟を提起することはできません。会社に代わって株主代表訴訟を提起できる株主は、当該会社の株主に限られるからです。その代わり、親会社の子会社に対する影響力をもって子会社自身に役員に対する損害賠償請求訴訟を提起させ、又は親会社が子会社の株主として代表訴訟を提起することが可能であり、親会社の株主の利益はこれらによって保護されると考えられるからです。しかし、現在の大企業などのようにホールディングスがあり実際の事業を行うのは子会社という形式では子会社の役員の責任を親会社が追及できないのは不都合です。そこで、100%親会社(最終完全親会社と言います)の株主に限り、重要な子会社の責任については一定の要件の下で親会社の株主に提訴請求が認められており、これが多重代表訴訟です(会社法847条の3)。
②旧株主による責任追及等の訴え
また、すでに会社の株主でなくなった者は代表訴訟を提起することはできません。しかし、当該会社が吸収合併などにより消滅した場合、当該会社の株主だった者が代表訴訟を提起することができなくなってしまう不都合です。そこで、一定の要件の下でこのような株主だった者(旧株主)の提訴請求を認める制度が旧株主の責任追及等の訴えです(会社法847条の2)。
具体的な事例
大和銀行事件(大阪地判平成12・9・20判時1721号3頁)
1984年から1995年にかけて、当時の大和銀行ニューヨーク支店の行員が自身の運用の失敗から生じた5万ドルの損害を隠すためにアメリカ財務省証券の薄外取引を行い、12年間にわたり合計11億ドルの損失をもたらしました。そして、当時のニューヨーク支店長であった取締役に対して、そのような不正行為を防止し、また不正行為を発見するための内部統制システムを構築する善管注意義務・忠実義務に違反し、その他の取締役や監査役に対しては監視義務に違反したために、総額14億5000万ドルの損害の賠償を求めて株主が代表訴訟を提起しました。
大阪地裁は、当時のニューヨーク支店長の取締役に対して5億3000万ドル、他の役員11名に対してもそれぞれ賠償を命じました。判決では、取締役は内部統制システムを構築・運用する義務を善管注意義務・忠実義務として負うとして、内部統制システム構築義務に違反したと認定しました。
ダスキン事件(大阪高判平18・6・9判時1979号115頁)
2000年10月から12月の2か月間にかけて、ダスキンのフランチャイズ事業であるミスタードーナツにおいて食品衛生法違反の添加物が含まれた肉まんが販売され、その事実が当時の取締役により隠蔽されたとして大きく報道されることになりました。そして、株主が取締役らに対して損害の賠償を求めて代表訴訟を提起しました。
大阪地裁は取締役らに合計53億円の賠償を命じました。
東京電力旧経営陣に対し巨額の賠償を命じた事例(東京地判令和4・7・13判時2580=2581号5頁)
福島第一原発事故の発生について、当時の東京電力の取締役4名に対し、同社で脱原発を訴えていた株主らが取締役の善管注意義務違反を理由として22兆円の損害賠償を請求した事件があります。
東京地裁は、取締役らに13兆3210億円の賠償を命じました。判決では、津波の規模や地震の発生についての長期評価の見解や明治三陸試計算結果に照らせば、原子炉から放射性物質が大量放出される過酷事故が発生する可能性を取締役は認識し得たことを前提として、取締役の善管注意義務に関しては、これらの結果の信頼性に対する評価・判断などに関して著しく不合理なものであったといえるかを検討する経営判断原則を適用しました。そして、津波対策をすることを怠ったとして善管注意義務を認めました。
電気興業に対し提訴を請求している事例
2024年10月18日に電気興業の株主が同社の前代表取締役の責任を追及するため同社に対して提訴請求をしたことが同社のサイト上で公表されました。提訴請求については後程解説します。
株主代表訴訟の対象
役員等
株主代表訴訟の被告となるのは「発起人等」であり、発起人、設立時取締役、設立時監査役、役員等(会社法423条1項)、清算人が含まれます(役員等とは、取締役、会計参与、監査役、執行役又は会計監査人を言います)。その他にも以下の者の責任を追及する場合にも株主代表訴訟を利用することができます。
①利益供与の受益者(会社法120条3項)
②不公正な払込金額で株式・新株予約権を引き受けた者(会社法212条1項、285条1項)
③出資の履行が仮装された場合の株式の引受人(会社法102条の2第1項、213条の2第1項、286条の2第1項)
これらのうちメインとなるのは役員等として取締役に対する責任追及です。本記事でも取締役への責任追及を中心に解説します。
責任
代表訴訟により追及できる「責任」は、判例(最判平成21・3・10民集63巻3号361頁)によれば、取締役の地位に基づく責任のほか、取締役の会社に対する取引債務についての責任も含まれるとされます。すなわち、取締役の善管注意義務・忠実義務違反のほかにも、取締役が会社に対して負っている借金等についても、代表訴訟で支払いを求めることができるのです。
もっとも、取締役が退任してから会社に借金をした場合、取締役として負担した債務ではないので「責任」に含まれません。
提訴請求
次に、株主代表訴訟の流れを確認していきます。株主代表訴訟は、株主による提訴請求に始まり、会社が提訴しない場合に株主による代表訴訟の提起が認められます。
提訴請求
会社法は、善管注意義務に違反した役員に対しては会社が責任を追及するのが原則という建前をとっています。したがって、上記の役員の責任を追及するためであっても株主が常に訴えを提起できるわけではありません。会社法では、まず責任を追及したい株主が、会社に対して役員の責任を追及する訴えを提起することを請求し(これを提訴請求と言います)、それでも会社が提訴しない場合に株主自ら代表訴訟を提起するという構造になっています。以下では、提訴請求の要件として①提訴適格、②書面要件、さらに代表訴訟を提起する要件を解説します。
株式保有要件
提訴請求の1つ目の要件は、提訴適格としての株式保有要件です。会社法847条1項によれば、株主は提訴請求の6か月前(定款でそれより短い期間が定められていればそちらが優先されます)から継続して会社の株式を保有している必要があります。ただし、この要件は公開会社と非公開会社で異なり、下記のようにまとめられます(非公開会社はすべての株式について譲渡に会社の承認を求める会社を言います。これに対し、1株であっても株式の譲渡に会社の承認を求めない会社を公開会社と言います)。
公開会社 | 提訴請求の6か月前から継続して株式を有する |
---|---|
非公開会社 | 提訴請求の時点で株式を有する |
非公開会社では株式を継続的に保有していなくてもよいということになります。非公開会社では株式の譲渡に会社の承認を必要とするため、会社にとって好ましくない者が株式を取得し代表訴訟を提起することがもともと防止されているため、継続的な保有が必要ないためです。
もっとも、株式保有要件は提訴適格を基礎づけるものなので、代表訴訟が提起されたとしても原告株主が訴訟の途中で株式を失い株主でなくなってしまった場合、代表訴訟は却下されてしまうことになります。ただし、以下の場合には引き続き代表訴訟を継続することができます(会社法851条1項)。
①株式交換や株式移転によりその会社の完全親会社の株主となった場合
②合併によりその会社が消滅し、合併により新たに設立された会社、合併により存続した会社、またはその完全親会社の株主となった場合
そして、これらの完全親会社・新設会社・存続会社がさらに株式交換・株式移転・合併をした場合についても同様です(会社法851条2項・3項)。
法令で定める書面によること
提訴請求の2つ目の要件は、提訴請求が書面その他の法務省令で定める方法によることです。法務省令で定める方法とは、会社法施行規則217条によれば①被告となるべき者、②請求の趣旨及び請求を特定するのに必要な事実を記載した書面の提出又は電磁的方法による提供(メールやホームページでの告知)です。
提訴要件
上記2つの要件を満たし、株主が提訴請求をしたにもかかわらず会社が訴えを提起しない場合は、株主が自ら代表訴訟を提起することができます。もっとも、会社にも提訴するかどうかを考える時間として60日が与えられ、60日を過ぎても会社が提訴しない場合に代表訴訟を提起できます(会社法847条3項)。
監査役設置会社や委員会設置会社の場合には、監査役等が提訴請求を受けることになります(会社法386条2項1号、399条の7第5項1号、408条5項1号)。
例外として、60日の期間を経過することにより会社に回復することができない損害が生じるおそれがある場合には、提訴請求をした株主は、直ちに代表訴訟を提起することができます(会社法847条5項)。
管轄
代表訴訟を提起する場合、会社の本店所在地を管轄する地方裁判所の専属管轄となります(会社法848条)。
訴訟費用
民事訴訟を提起する場合、原告は訴額に応じた手数料を支払う必要があります。裁判所ホームページに掲載されている別表に従えば、手数料は以下のようになります(手数料は収入印紙により収められることから印紙代と言われます)。
訴訟の目的の価額が100万円までの部分 | その価額10万円までごとに1000円 |
---|---|
訴訟の目的の価額が100万円を超え500万円までの部分 | その価額20万円までごとに1000円 |
訴訟の目的の価額が500万円を超え1000万円までの部分 | その価額50万円までごとに2000円 |
訴訟の目的の価額が1000万円を超え10億円までの部分 | その価額100万円までごとに3000円 |
訴訟の目的の価額が10億円を超え50億円までの部分 | その価額500万円までごとに1万円 |
訴訟の目的の価額が50億円を超える部分 | その価額1000万円までごとに1万円 |
これに従えば、例えば先述した東京電力の事例では、22兆円の損害賠償請求訴訟を提起するためには約220億円の印紙代が必要となります。訴訟を提起するだけでこれほどの金額が生ずるとなると提訴を躊躇することもあり得ます。
もっとも、会社法848条の4第1項により、代表訴訟は財産権上の請求でない請求に係る訴えとみなされます。すなわち、代表訴訟では、原告となる株主が勝訴しても損害の賠償は会社に対してされて原告株主は賠償金を得られない一方で株主から高額の手数料を取ると、代表訴訟を抑制してしまうことになることから、原告株主の手数料を少額に抑えています。代表訴訟を提起する原告株主の印紙代は、一律1万3000円となります(民事訴訟費用等に関する法律4条2項、別表第1)。
代表訴訟の濫用を防止する制度
訴え却下
代表訴訟は賠償額が巨額になることが多く、株式を保有していれば提起できることから、例えば少数のアクティビストによる制度の濫用が懸念事項となります。そのため、会社法478条1項但書は濫訴を防止するための要件を定めています。すなわち、①代表訴訟の提起が原告株主又は第三者の不正な利益を図り、又は②当該会社に損害を加えることを目的としている場合には、代表訴訟を提起することができません。
担保提供命令
また、代表訴訟が原告株主の悪意によるものであることを被告が疎明し、裁判所に申し立てたときには、裁判所は原告株主に相当の担保を立てることを命令することができるという制度があります(会社法847条の4第2項・3項)。代表訴訟が不当なものであり被告に対して不法行為を構成するようなときには、被告の原告株主に対する損害賠償請求権(民法709条)が発生するため、原告株主の賠償を確実にさせるというのが制度の目的です。また、総会屋が提訴した場合に悪意が認定された裁判例があります(東京地決平成8・6・26金法1458号40頁)。
担保の金額は、損害賠償請求が認容される場合の認容額が主要な基準となり、被告1人あたり300万円から1000万円程度の例が多いです(江頭憲治郎『株式会社法〔第8版〕』有斐閣・2021・521頁)。
株主代表訴訟への会社側の対応
事前の対応
被告となる役員は、代表訴訟を提起される以前に日ごろの業務を見直すことで訴訟リスクを低下させることができます。
①経営判断原則
会社の取締役は、会社の株主の利益を最大化させるため、善管注意義務・忠実義務を負います。もっとも、事業経営には必然的にリスクが伴うのに事後的に会社に生じた損害をすべて取締役の責任として追及することを認めてしまうと、経営を委縮させ、また取締役になる者もいなくなってしまうため、判例上、経営判断については取締役に広い裁量を認め、その判断の過程・内容に著しい不合理がない限り善管注意義務に違反しないとされています(これを経営判断原則と言います)。
そこで、取締役としては、経営判断の過程・内容をしっかりと確認しながら事業を進めることが求められます。
②内部統制システム
また、事業規模が拡大すれば取締役だけで事業の全体を見渡すことは難しくなってきます。そこで、内部統制システムを整備する必要が生じてきます。内部統制システムは、整備と運用により判断されます。通常想定される不正行為を防止し得る程度の管理体制を整備していたが、通常容易に想定しがたい巧妙な偽装工作が行われ、またリスク管理体制が機能していなかったとは言えないとして善管注意義務に違反しないとした判例もあります。もっとも、内部統制システムのレベルは会社ごとに異なり、例えば過去にも不祥事があった等の事情がある場合にはさらに厳しいレベルが要求されることになることもあります。-2の大和銀行事件、ダスキン事件、東京電力の事案も内部統制システムが問題になった事例です。
③責任限定契約
会社の業務に直接携わらない社外取締役や監査役などについては、会社と契約することで善管注意義務・忠実義務違反があってもその賠償額を一定の範囲に限定することができます。これを責任限定契約と言い、あらかじめ定款で定め、登記することにより、社外取締役や監査役(会計参与、会計監査人と合わせて非業務執行取締役等と言います)は、定款で定めた額の範囲内であらかじめ会社が定めた額と最低責任限度額(役員報酬の2年分)のいずれか高いほうを賠償額の限度とする契約を締結することができます(会社法427条1項、911条3項25号)。
④補償契約・D&O保険
補償契約は、役員が責任追及のために支出せざるを得なかった防御費用や損害賠償金、和解金を会社が補償する契約です(会社法430条の2)。他方で、会社と保険会社との契約により役員を被保険者として役員に対し損失を補償するのがD&O保険です(会社法430条の3。条文上は役員等賠償責任保険契約と言います)。不合理な契約がされることのないように、補償契約やD&O保険契約を締結するには株主総会(取締役会設置会社では取締役会)の承認が必要です(会社法430条の2第1項、430条の3第1項)。
もっとも、補償契約では、第三者に対する損害賠償金・和解金については取締役に悪意又は重大な過失がある場合に会社は補償することができません(会社法430条の2第2項3号)。多くの場合、取締役には悪意・重過失があることから会社の補償は行われません。上場会社の9割はD&O保険契約を締結しています(「会社法制(企業統治等関係)の見直しに関する中間試案の補足説明」第2部・第一3⑷)。
事後の対応
①弁護士との協議・証拠保存
まず、株主から提訴請求がされた場合、会社は請求を受けた日から60日以内に役員に提訴するか否かを決定する必要があります。したがって、会社及び責任追及の対象となる役員は自身のリスクを分析し、提訴の是非を決定します。そのために、速やかに弁護士と協議をする必要があります。会社や役員としては提訴の是非を判断するために証拠となる書類等を保存しておく必要があります。
②提訴する場合
提訴するという判断をした場合、会社は提訴請求を受けた日から60日以内に訴えを提起しなければなりません。
③提訴しない場合
提訴しないという判断をした場合、会社は代表訴訟が提起されることに備えなければなりません。それ以外に会社が自主的にしなければならないことはありませんが、提訴請求をした株主又は代表訴訟により責任を追及されるおそれのある発起人等の請求があれば、会社はその者に対し遅滞なく不提訴の理由を通知しなければなりません(会社法847条4項)。通知方法として法務省令に定める方法とは、①会社が行った調査の内容、②被告となるべき者の責任又は義務の有無についての判断及びその理由、③不提訴の理由を記載した書面を提出又は電磁的方法による提供です(会社法施行規則218条)。
代表訴訟が提起されると、株主は会社に対して訴訟告知をする必要があり(会社法849条4項)、訴訟告知を受けた会社は遅滞なくその旨を公告し、または株主に通知しなければなりません(会社法849条5項)。
④訴訟参加
代表訴訟が提起された場合、会社及び株主は代表訴訟に訴訟参加することが認められています(会社法849条1項)。訴訟参加とは、訴訟の結果に対して何らかの利益を有する者が訴訟の当事者の一方に参加し、訴訟活動をすることをいいます。会社は本来役員に責任追及するべきだと考えられるため、原告株主側に共同訴訟参加(民事訴訟法52条)することになります。これに対し、会社が役員の身の潔白を証明するために責任を追及される役員側に補助参加(民事訴訟法42条)することが許されるかは一つの論点となります。民事訴訟法上、補助参加には訴訟の結果について法律上の利害関係(補助参加の利益)が認められる必要がありますが、判例(最判平成13・1・30民集55巻1号30頁)は、取締役会の意思決定が違法であることを理由に代表訴訟が提起されている場合には、当該訴訟が認容されると当該取締役会の意思決定を前提に形成された会社の私法上又は公法上の法的地位又は法的利益に影響を及ぼすおそれがあるから、補助参加の利益が認められるとしています。この後に改正された会社法849条1項は、「当事者の一方を補助するため」の訴訟参加を認めており立案担当者は会社の被告側への補助参加を明文で認めたものと説明していますが、学説の通説は依然として補助参加の利益が必要と解しています。同判決では、取締役個人の意思決定ではなく取締役会の意思決定の違法が理由とされる場合には、そのような取締役会の決定を前提に形成された会社の私法上又は公法上の法的地位又は法的利益に影響を及ぼすことを理由に、補助参加の利益が認められました。今後も、事例により補助参加の利益の有無が審理されることになると考えられます。
なお、監査役設置会社や委員会設置会社の場合、補助参加にあたり監査役等の同意が必要になります(会社法849条3項)。
株主代表訴訟の終結
判決
判決の効果は会社にも及びます(民事訴訟法115条1項)。これにより、会社は当該役員に責任がないという主張をすることができなくなります。
原告株主の勝訴となった場合、敗訴した役員は賠償額を支払う必要がありますが、さらに高等裁判所、最高裁判所に上訴する等して争うこともできます。また、勝訴が確定した場合、もはや会社は当該役員に対して責任追及の訴えを提起することはできません。もっとも、原告株主及び被告役員が共謀して会社の利益を害する目的をもって判決をさせたときは、会社は再審の訴えを提起することできます(853条1項1号)。さらに、会社は、原告株主が訴訟に要した費用や弁護士報酬のうち相当と認められる額を原告株主に支払う必要があります(会社法852条1項)。
原告株主が敗訴した場合、会社は、訴訟に要した費用や信用棄損による損害などを賠償させるため、原告株主に不法行為責任を追及することができるのが原則ですが(民法709条)、代表訴訟では原告株主に悪意があった場合を除き原告株主に対して損害賠償請求をすることはできません(会社法852条2項・3項)。代表訴訟の提起を委縮させないようにするためです。
和解
代表訴訟では、会社が当事者となっている場合や会社の承認がある場合であれば和解による解決が可能です(会社法850条1項、同項但書)。なお、原告と被告のみで和解がされた場合でも、裁判所が会社に和解の内容を通知し、会社がそれに対し2週間以内に書面による異議を申し立てない場合には同内容の和解について会社が承認したとみなされます(会社法850条2項・3項)。会社としては、裁判所の通知に対して迅速に対応することが求められます。
当事務所が提供できるサービス
栗林総合法律事務所では、株主代表訴訟の提起をお考えの株主様、代表訴訟を提起されるリスクのある会社の双方に対して充実したリーガルサービスを提供いたします。
会社のコンサル・アドバイスの提供
会社としては普段から任務懈怠となる原因を排除し、健全な会社運営に取り組む必要があります。当事務所では、先述した内部統制システムの構築などの取締役の義務の履行、コンプライアンスの遵守、その他会社運営に必要なアドバイスをご提供いたします。また、当事務所と顧問契約を締結していただくと、普段の会社運営に対するアドバイスから、代表訴訟などの紛争に巻き込まれた場合まで幅広くサポートいたします。
責任限定契約書作成・登記
会社の役員には、特にD&O保険契約などを締結していない場合、高額の賠償金を支払わなければならないリスクが伴うことから、会社運営に携わらない社外取締役の人材確保は難しいのが現状です。そこで、あらかじめ定款・登記により責任の限度額を定めることで社外取締役の不安を取り除くことができます。当事務所は、責任限定契約書の作成や、その登記をサポートいたします。
株主様の提訴請求・代表訴訟提起の代理
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被告会社・役員側の代理
提訴請求を受けた会社側としては提訴するか否か迅速な対応が求められます。また、提訴しない選択をした場合にも株主の代表訴訟の提起に備える必要があります。当事務所は会社側の代理人として、提訴請求を受けた場合の対応、代表訴訟を提起された場合の訴訟代理人として訴訟活動をサポートいたします。
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