• 2020.09.01
  • 人事労務

労働組合(ユニオン)との団体交渉において、会社を代理して交渉し、和解に至った事例

団体交渉の申し入れと不当労働行為

団体交渉は、労働者の代表が会社の経営者と労働者の地位や待遇について交渉することです。団体交渉の申し入れは、労働法により認められた従業員の権利です。会社が団体交渉の申し入れを拒否した場合、労働組合は、組合が有する団体交渉の権利が侵害されたものとして、労働委員会に対してあっせんの申立てを行います。この場合、会社による団体交渉拒否の事実は容易に判断し得ますので、会社に対しては労働委員会から不当労働行為を行ってはならないという決定書が届くことになります。労働委員会の決定は公的機関の決定になりまので、会社としてはこの内容を無視することはできなくなります。このことからすれば、団体交渉の申し入れがあった場合に、団体交渉を行うこと自体を拒否するのは適切な対応とは言えません。

労働組合の種類

団体交渉の申し入れを行う労働組合としては、会社内部の労働組合の場合と、会社外部の合同労組やユニオンと言われる団体の場合があります。会社に労働組合がない場合、労働者の側では労使交渉ができませんが、従業員の一人であっても、外部のユニオンに話を持ち込むことで団体交渉を行うことが可能となります。この場合、会社の従業員は外部の労働組合(ユニオン)の組合員になることになります。

団体交渉の申し込みがあった場合の対応

団体交渉の申し込みがあった場合、会社の側では、協議交渉を行う義務はありますが、話が妥結しない限り、労使協定書の締結などまでが必要となるわけではありません。労使協議が妥結しないまま協議が終了ということもあります。上記のように団体交渉を行うこと自体を拒否することはできませんが、団体交渉を行った以上、労働組合との間で合意が成立するかどうかまで法律が要求するものではありません。ただし、団体交渉を1回行えばいいというものではなく、会社としては誠実に対応する必要がありますので、繰り返し団体交渉を行うことを要求された場合には、もう話し合う内容がないというような場合でなければ複数回の団体交渉にも対応しなければならないというのが原則です。

労使協定書の締結についての注意点

労使協定書や労使協約を締結するかどうか、どのような内容の労使協定書を作成するかは、会社の経営の根幹にかかわるほど重要な問題です。労使協定書と労使協約はほとんど同じ意味になります。会社の経営者としては労使協定書や労使協約を締結する意味合いを十分に認識して労使協定書を締結するかどうかを判断する必要があります。すなわち、労使協定書を締結した場合は、その後の会社経営においても常に労使協定書の内容に拘束されるということです。会社においては、労働者との協力関係のもとに円滑な事業運営を行うことが重要と考えて、経営の中に従業員代表の意見が反映されるようになっている会社もあります。このような会社は民主的事業運営がなされており、従業員と経営者との一体感の中で、従業員の信頼を獲得しながら経営がなされているとも言えます。しかしながら、経営が困難に至った状況下では、労使協定書の存在が事業運営に対する大きな制約となることもあります。オーナーの独断先決で経営を引っ張っていくオーナー企業においては、企業風土にそぐわない可能性もあります。

団体交渉における議事録作成の問題点

団体交渉の中で、組合の側から議事録を作ったので、経営者がサインするようにと求められることがあります。しかし議事録というタイトルであっても、労働関係についての合意が記載されている場合は、有効な労働協約が成立したものとみなされ、法的に拘束力のある文書とみなされてしまうこともあります。そこで、会社の側としては、団体交渉の議事録にサインするように求められても、絶対のこれにサインしないことが重要です。団体交渉において議事録を作成することは法的に求められているわけではありません。また、労働組合から議事録にサインを求められてこれを拒否したとしても、不当労働行為に該当するわけではありません。

労使協定により、会社の経営に支障を生じている事例

私どもの業務の中でも、労使協定を締結したことで業務に支障を生じているのではないかとみなされる会社を多く見ています。例えば、A社は、多くの労使協定を結んでいることから、経営陣の一定数は労働組合出身者により占められており、労働組合の了解なしに人事案件や従業員の給与などを決定できない状況になっていました。会社のオーナーも、会社の運営について管理することがほとんど不可能となり、従業員もオーナーの意見を全く聞かない状態になっていました。オーナーも相当な努力のうえ、会社の経営体制の改善に努力してきましたが、とうとう会社の経営をあきらめ、M&Aにより会社を売却することになりました。しかし、その会社の株式を購入した新しいオーナーもすぐに労働組合の力が強いことを認識し、最終的には再度会社の売却を試みています。このように労働組合との力のバランスが崩れた場合、会社の経営自体が成り立たなくなり、会社の支配権は実質上労働組合にあるという状況になってしまいます。その状態でも経営を行うことは可能ですが、会社が資金的に厳しい状態になった時に誰がお金を出して会社を維持していくのかについて極めて不透明な状態になってしまいます。また、会社の経営者は自分がオーナーなのに、立場が逆転し、経営者が労働者のために働かされるという状況にもなりかねません。

労働組合からの待遇改善の申し込み

労使協議がなされる場合であっても、例えばアルバイトなど非正規従業員の地位改善のために就業規則の改定を行ってほしいという提案がなされることがあります。また、法律の改正により労働者代表者の意見を聴取する必要があるような場合もあります。このような場合には、労働者代表の意見も参考にしながら、就業規則の改定や労働者の待遇改善について協議を図ればいいわけですので、上記の労使協定書や労働協約の締結とは意味合いを大きく異にします。特に最近では、少子化による労働力不足が顕著ですので、若い人たちの意見を聞き、経営に反映していく必要があります。労働者からの申し入れのかなりの部分は、会社の状況を改善して、働きやすい環境を整備しようという善意のものが見られます。このような場合は、組合からの協議交渉であると身構えるのではなく、その意図をしっかり理解し、会社の改善のために役立つヒントがあるのではないかという観点から考えることも重要です。

労働組合からの未払残業代の請求

労働組合の側から未払残業代の請求がなされた時は、会社としては真剣に対応する必要があります。会社の側としては、最初に本当に未払い残業代があるのかどうかを確認することが重要です。管理職の人については残業代の支払義務がないのではないか、歩合制社員についてはどうか、年棒制社員については残業代が含まれているのではないか、営業職や専門職の人についての時間管理はどのようにしているのかなどの論点を確認する必要があります。未払い残業代がある場合は、労働基準監督署などにも相談がなされている可能性があり、労働基準監督署から調査、指導、改善命令などがなされる可能性もありますし、改善報告書の提出を求められることもあります。会社の側としては、残業時間の計算をきちんと行う体制を作るとともに、全社員について過去3年分の未払い残業代を支払う必要がありますので、その金額だけでも数千万円から数億円になってしまうこともあります。従って、未払残業代の支払について労働組合からの申し入れがあった場合、会社の側としては、むしろ積極的に未払残業代の有無を調査し、時間管理についての改善策を提案するようにしていくのが好ましいと思われます。特に、最近の若い労働者の側には、残業代が支払われないことについては、著しい権利侵害であるとの認識を持っている人が多くいますので、職場環境の改善を考えた場合、労働組合からの指摘がなされる前に、残業時間管理についてしっかり検討しておくのが好ましいと言えます。

団体交渉において協議に応じるかどうかの判断

会社側の弁護士としては、労働組合からの申し入れの性質を個別に判断し、会社として協議交渉に応じていいものと、協定書や協約の締結を行うことがリスクを伴う可能性があるものを正確に区別して扱う必要があります。

ロイヤルティの消失

最近はコロナによる経営不振や、不良社員の問題から、どうしても従業員を解雇せざるを得ないことも生じてきます。特に近年では、教育費の増加や携帯電話料金の増加等により生活費が著しく増加するにもかかわらず、賃金が上昇せず、生活費のバランスを崩してしまったことなどから、経営者に対するロイヤルティが失われ、経営者に対する不満が経営者との軋轢の原因となっていることも多く見受けられます。労働者の側における権利意識の高まり、人の流動性が著しく大きくなったこと、労働市場における情報量が増えたことなどから転職が容易となったこともこれに拍車をかけていると思われます。

問題ある従業員の懲戒解雇

問題ある従業員を解雇すべきかどうかの判断は極めて重要です。多くの場合、色々な問題がある場合であっても、解雇の合理性や相当性などが欠けるのではないか、また解雇を行うことで他の社員に対する悪影響があるのではないか、裁判所に訴えられるのではないかなどと考えて、なかなか解雇に踏み切れない事例も多くあります。しかし、私どもが見ている限り、ここまでひどい従業員でも解雇できないということで本当にいいのかと思えるような案件も多く出くわします。このような場合でも、解雇についての正当な理由がない限り、懲戒解雇を行うことはできませんが、懲戒解雇を行えると思える事業がある場合には、そのタイミングに合わせて解雇の処分をしないと永久に解雇できないという事態も生じてきます。多くの事例では、解雇事由が生じた場合、少なくとも1週間以内には解雇すべきかどうかを判断し、解雇すべきと判断する場合には直ちに解雇通知を発行する必要があります。私どもの経験からすれば、経営者はこの懲戒解雇すべきかどうかの判断を誤っている事例や懲戒解雇すべきかどうかを検討しないまま時間が経過して懲戒解雇のタイミングを逸している事例が多くあります。私どもの事務所では、過去に扱った多くの事例をもとに、解雇すべきかどうか、その後の手続きや、裁判になった場合の判決の見通しがどうなるのかなどについてのアドバイスを行っていますので、もし問題社員について懲戒解雇事由に相当する事実が発生し、解雇すべきかどうかについて悩まれている場合は、当事務所にご相談ください。

就業規則における懲戒解雇事由

問題ある社員を懲戒解雇する場合の注意点としては、懲戒解雇事由が就業規則に記載されており、当該事案が就業規則に定められた懲戒解雇事由にあたることが大前提となります。就業規則に記載がない場合には、懲戒解雇はできないというのが原則ですので、もし就業規則を作成していない場合や、懲戒解雇に関する規定が不十分と考えられる場合には、就業規則における懲戒解雇事由の再検討をお勧めします。特に懲戒解雇事由はできるだけ詳細に多くの場合を書いておくことが重要です。例えば、最近では、秘密情報の漏洩やデータの不必要な転送(データ管理)が重要になっていますので、会社の秘密情報を不当に流出させる場合や、競合他社に情報を提供するような行為については、明確に懲戒解雇事由にあたることを規定しておく必要があります。

懲戒解雇通知の記載内容

懲戒解雇を行う場合には、懲戒解雇通知を送付する必要があります。懲戒解雇通知は通常内容証明郵便の方法で発行します。懲戒解雇通知には具体的な懲戒解雇事由を記載する必要があります。裁判所では、懲戒解雇通知に記載のない事由を懲戒解雇事由として主張することはできないというのが原則とされていますので、懲戒解雇通知にはできるだけ多くの解雇事由を記載する必要があります。また、前述のように懲戒解雇事由は就業規則に記載がある事項に限られますので、懲戒解除通知の中でも、懲戒解雇事由を記載するとともに、それが就業規則のどの懲戒解雇事由に該当するのかについても具体的に記載するのが好ましいと言えます。なお、裁判になった場合に、懲戒解雇通知に記載のない新しい懲戒解雇事由を追加することはできませんが、その懲戒解雇とは別に新しい懲戒解雇事由がある場合には、予備的懲戒解雇や追加的懲戒解雇、場合によっては追加的に普通解雇を行って、これらの解雇についての主張も追加して行う事についても検討することが必要となります。

解雇の撤回を求める申し入れ

懲戒解雇がなされた場合、ユニオンを通じて従業員の解雇の撤回の申し入れがある場合があります。これは会社を解雇された従業員がインターネットなどで相談場所を探し、ユニオンに相談に行ったことから、ユニオンから会社への協議の申し入れがあったものと思われます。本来であれば解雇無効の確認については、団体交渉とは性質を異にし、当該個別の労働者の個別的事案の問題であって、労働専門の弁護士を通じて労働審判や労働関係訴訟で解決すべきであったのではないかとも思われます。しかし訴訟における手間暇や費用負担を考えた場合、従業員の側としては、ユニオン(労働組合)を通じて協議交渉を申し入れるのは経済的合理性にもかなっている可能性はあります。

ユニオン(労働組合)からの労働交渉の申し入れがあった場合の対応

懲戒解雇の撤回を求める労働組合からの団体交渉の申し入れがあった場合、会社の経営者としてはこれを無視するのは得策ではありません。ユニオンは労働交渉の専門家ですので、労働者や組合においてどのような権利があり、その権利が侵害された場合にどのような手続きを取るべきかについてきちんと理解しています。経営者が団体交渉の申し入れを無視した場合は、不当労働行為として労働委員会へのあっせんの申立てをなされ、労働委員会で不当労働行為の判定がなされることになります。不当労働行為はあくまで組合の団体交渉権を侵害したとの判断であり、懲戒解雇の正当性の判断とは異なりますが、交渉の最初の段階で、公的機関から不当労働行為があったとの認定を受けることはその後の交渉に著しい悪影響を受けることになります。

ユニオン(組合)との団体交渉の日時

ユニオン(労働組合)からの団体交渉の申し入れがあった場合は、まず団体交渉の日時と場所を決定する必要があります。団体交渉の日時や場所を連絡する際に、電話で連絡を取るとどうしても感情的なやり取りとなってしまうことがありますので、できるだけFAXやeメールで連絡を取ることをお勧めします。団体交渉の時間については、午前中とすることもありますが、多くの場合では、会社の就業時間が終了した午後5時か午後6時に開始し、団体交渉の時間を最大2時間と限定しておくのがいいかと思います。団体交渉の日程については、ユニオン側からも日時が指定されてくることがありますが、会社の側としては、ユニオンからの申し入れに拘束されるわけではありません。特に準備が不十分なまま団体交渉に臨んで、あたふたしてしまう可能性があることを考えると、ユニオン側から提案された日にちまでに十分な準備ができないと考えられるような場合には、ユニオン側からの協議申し入れから2週間程度後の期日を会社の側で指定するのは問題ないと考えます。但し、1カ月以上先の日にちを指定するのは、不当に交渉を引き延ばしていると見なされる可能性がないわけではありませんので、慎重に判断する必要があります。

ユニオン(組合)との団体交渉の場所

団体交渉の場所については、会社の内部ではなく、外部の貸会議室やホテルの会場などを借りるのが好ましいです。特に、団体交渉の途中で感情的になってしまい、暴力事件などになってしまうといけませんので、できるだけ外部の目の届くところで行うのが好ましいと言えます。また、会議室に監禁されて外に出ることを禁じられるといけませんので、外部の会議室など、使用時間の制限のある場所が好ましいと考えられます。

ユニオン(組合)との団体交渉の人数

団体交渉の席に出席できる人数については制限がありません。会社の側では弁護士の同席を求めることができますので、会社の担当者と弁護士が出席するのが一般的かと思います。会社の代表者が出席する場合、その場で判断を求められる可能性があり好ましくないとの意見もありますが、小さな企業であれば代表者以外に交渉に立ち会える人や問題の内容を把握している人がいないという事態もありますので、代表者が出席することが必ずしも不都合とは言えません。なお、労働組合の側から多数の出席者の予定が通知された場合は、労働組合側からの出席者についても3名程度に限定するよう申し入れすべきと考えます。この点からすれば、団体交渉を行う会議室は小さめの部屋にして、万一労働組合の側から多数の組合員が押し掛けてくるような場合であっても、部屋に入れる人数を限定するという事も考えられます。但し、会社の従業員で構成する労働組合などについては、多数の参加者の参加が正当と考えられる場合もありますので、この場合には、全員が入れるだけの大きめの部屋を予約し、労働組合が求める全ての労働者の出席を認めるのが好ましいと言えます。

ユニオン(組合)との団体交渉における録音

最近は、携帯電話の録音機能が進化したことから、従業員の側で団体交渉の内容を録音テープで隠し撮りされることが非常に多くあります。一方で会社の側で、録音テープによる隠し撮りをした場合には、ユニオン(組合)の側から激しく非難されることがあります。そこで、団体交渉の場では、双方とも録音できることを確認し、机の上に録音テープを置いて堂々と録音するほうが好ましいと思います。なお、録音テープのテープ起こしは、専門の業者に行ってもらうのが通常ですが、費用もかかりますので、裁判になる場合に始めてテープ起こしをするという事でいいのではないかと思います。

ユニオン(組合)からの職場への復帰要求

従業員の側から不当解雇の主張がなされている場合は、多くの事例においてユニオン(労働組合)の側からも職場への復帰要求がなされることがあります。もちろん、他社への就職が非常に困難と思われるような場合には、どうしても職場に復帰したいという希望もあるかもしれませんが、従業員が懲戒解雇される事例では、何度も問題行動が指摘されており、どうしても職場へ復帰させることは難しいと判断されるような場合もあります。このような場合に、仮に裁判になっても職場に復帰することを従業員が期待しているのか、あるいは金銭的交渉である程度の妥協点が見いだせるのかを判断する必要があります。

労働訴訟や労働審判における正当事由の判断

もしユニオン(組合)との団体交渉において双方の主張の妥協点が図られず、裁判になる場合は、会社の側では、懲戒解雇の手続きが適切であったかどうかに加えて、懲戒解雇の正当性があるかどうかについての主張立証責任を負うことになります。会社の側の弁護士からすれば、当然正当事由が認められると判断されるような事例であっても、裁判所は正当事由を認めるのに非常に厳格な判断を行いますので、かなり従業員の行為に問題があると思われるような事例であっても、裁判の中では、なかなか正当事由を認めてくれないことが多くあります。しかし、一方で、会社の側が仮に何年もの間、訴訟が係属し、多額の訴訟費用をかけることとなったとしても、徹底的に争う覚悟を持っている場合には、最終的判断がでるまでに相当の期間を要することになります。従って、従業員の側でも本当に多額の弁護士費用をかけても訴訟で争っていくのか、団体交渉や労働審判の過程で何らかの決着をつけるのかを判断せざるを得ないという実情もあります。なお、労働審判は3回の期日で判断が出ることになりますが、労働審判の結果について不服がある当事者は正式の訴訟を提起することができますので、当事者が徹底的に争う場合には、最終的解決までにはやはり数年の期間を要することになります。

ユニオン(組合)との団体交渉における解決の有効性

このように、労働審判や労働関係訴訟は時間や費用・労力を要しますので、ユニオンとの協議により、例えば3か月分の給料相当額を支払うので、解雇無効は撤回し示談するということも行えますので、より迅速な解決が図れる可能性があるとも言えます。会社側の弁護士としても、このような個別の事案についてはその背景を理解し、うまく解決に持っていけるよう協議交渉の場を活用するという考え方もあると思います。

ユニオン(組合)側の考え

ユニオン(労働組合)は、団体交渉において団体交渉権の侵害の有無について自己の権利を主張するとともに、組合員となった労働者の権利が侵害されていると主張してその回復を要求してきます。このようにユニオン(労働組合)は、弁護士でなくとも労働者を代理して会社と交渉する権限を有しています。また、ユニオン(労働組合)は労働委員会のあっせん手続きなどにおいても従業員を代理することができます。一方、団体交渉や労働委員会のあっせん手続きを通じて紛争の解決に至らなかった場合は、訴訟や労働審判において解決せざるを得ないことになります。この場合は、裁判所における手続きですので、ユニオン(労働組合)が従業員を代理することはできず、かならず弁護士が代理人にならざるを得ません。すなわち、ユニオン(労働組合)としては、裁判所の手続きが始まった段階でその案件について代理をすることができなくなってしまうことになります。ユニオン(労働組合)も、時間をかけて交渉をしているわけですので、できるだけ自分の手の中で紛争の解決をしたいと希望しています。そこで、会社側の弁護士としては、このようなユニオン(労働組合)の事情を推察し、できるだけ話し合いよる解決を勧めることで、早期に円満な解決に至る可能性はあります。

団体交渉における合意書(和解書)の作成の注意点

団体交渉で協議がまとまり和解が成立した場合は合意書(和解書)を作成し、合意された金銭の支払いを行う必要があります。合意書(和解書)の当事者として、会社の側は会社の代表者となりますが、会社の代理人弁護士が代理人としてサインすることでも問題ありません。一方労働者の側では、ユニオン(労働組合)が合意書(和解書)の当事者として記載されることがありますが、これはユニオン(労働組合)も、組合の団体交渉権限が侵害されたかどうかについて利害関係があるためです。そこで、ユニオン(労働組合)に関しては、不当労働行為が存在しないということを確認する必要があります。また、ユニオン(労働組合)は、団体交渉において労働者を代理する権限がありますので、労働者の代理人として合意書(和解書)にサインすることもあります。しかしながら、ユニオン(労働組合)が示談に応じたとしても労働者の権利についてきちんと合意できているかどうかは別の問題ですので、後で労働者との間で紛争が生じないようにするためには、できるだけ労働者自身に当事者としてサインしてもらうのが好ましいと考えます。

源泉徴収義務の有無と税率の違い

和解金の支払いについては、源泉徴収義務があるのかどうかを検討する必要があります。従業員の給与として支払われる場合は、源泉徴収義務がありますので、会社の側と従業員の側で源泉徴収がなされることについてきちんと認識があっているかを確認しておく必要があります。退職金についても源泉徴収義務はあります。なお、和解金の場合一時所得として場合により高い税金が課税される可能性があります。退職金の場合は、退職所得の受給に関する申告書を提出することで、低い税率での課税で済むことがあります。会社としては必ず従業員から退職所得の受給に関する申告書を提出してもらう必要があります。このように和解金であるか退職金であるかによって源泉徴収義務の有無及び支払う税金の額が異なってきますので、和解書の中では支払う金銭の性質を明確にしておく必要があります。

住民税の控除を忘れないこと

なお、退職時に住民税については必ず源泉されることになります。会社としては、住民税の源泉をしないままに、和解書に記載された金額全部を支払ってしまった場合、後で従業員から回収するのが難しくなってしまうという問題がありますので、注意が必要です。

労働法制についての理解の重要性

最近は労働関係の法律が毎年のように変更になっており、新しい法令や規則が次々と成立しています。このようなものには、同一労働同一賃金、セクハラ・パワハラ規定、育児休業・介護休業、非正規社員の扱い、派遣業法の改正等様々なものがあります。労使協議は昔のように一方的に賃金の引き上げを求めるものだけではなく、法令の改正に応じて会社としてできるだけ法令に合わせた体制をとるよう求めてくるものも多くあります。会社の側の弁護士としては、これらの法律や規則の改正内容を理解し、従業員の求めるものの合理性や妥当性を判断し、会社の運営に生かしていくという考えで臨む必要があると思われます。その一方で、会社の運営に大きな制約となる労使協定などについては、そのリスクを十分に理解し、その意味合いについて経営者に正しく伝える役割があると思われます。

栗林総合法律事務所の役割

栗林総合法律事務所は団体交渉の申し入れがあった会社を代理して、団体交渉に臨みます。また、会社の代表者が団体交渉に出席する際に、法律の専門家として代表者に同席することもあります。従業員からの話をよく聞き、経営に活かしていけるものについては、会社代表者と協議しながら会社の経営に反映していけるようにします。一方、会社の経営の支障になり、会社にとって不利益となる可能性のある提案については、その意味合いを十分に理解し、経営者にアドバイスしていきます。栗林総合法律事務所は、団体交渉の代理、労働審判、労働訴訟を多く扱った経験があります。過去の経験をもとに、会社にとって最も好ましい対応策を検討していきます。労働組合から団体交渉の申し込みがあった場合は、当事務所にご相談ください。