• 2024.01.31
  • 人事労務

外国企業の日本子会社における解雇・退職手続

近久憲太

執筆者情報

近久憲太Kenta Chikahisa

栗林総合法律事務所のアソシエイト弁護士。
国際取引に関する契約書の作成・リーガルチェック、クロスボーダーM&A、
国際紛争解決、国内外での訴訟、一般企業法務などの業務を取り扱っている。

はじめに

勤務態度が悪く指導を行っても一向に改善が図られない従業員や、会社内でトラブルを生じさせている従業員などについて、解雇や退職を図ることを検討されている会社も多いのではないかと思われます。しかしながら、日本の労働関係法規は複雑であり、不用意に解雇等の手続を行った結果、事後的に従業員から訴訟等を提起され、会社側が多大な負担を負うことになるケースも多く存在しております。また、日本に子会社を置く外国企業や、日本に所在する外国政府機関などにおいても、日本企業と同様に、日本人労働者や外国人労働者の解雇や退職に関する手続についてお悩みの場合もあると思われます。本コラムでは、外国企業の日本子会社における解雇手続、退職勧奨手続、退職手続について、各手続の要件や効果、問題点等をご説明させていただいております。

準拠法(適用される法令)

労働基準法、労働安全衛生法などの労働関連法規については、日本国内において営まれる事業に対して、日本法が強制的に適用されます(法の適用に関する通則法12条1項・2項)。

労働関連法規で規定されている事項以外に関する労働契約上の問題については、契約締結時に当事者が選択した国の法律がある場合(雇用契約書において準拠法を定めた場合)には、原則として、その国の法律が適用されます(法の適用に関する通則法7条)。

一方で、当事者による準拠法の選択がなされていない場合(雇用契約書において準拠法を定めていない場合)には、「当該法律行為と最も密接な関係がある地の法」が準拠法とされます。労働契約については、労務を供給すべき地の法が「最も密接な関係がある地の法」と推定されますので、日本で労務を供給している場合は、日本法が準拠法とされます(法の適用に関する通則法12条3項)。

外国企業の日本子会社において勤務している従業員については、日本の労働関連法規が強制的に適用されることになります。また、労働関連法規で規定されている事項以外に関する労働契約上の問題については、当該従業員の雇用契約書において日本以外の国の法律を準拠法として定めていない限り、同じく日本法が適用されると考えられます。

外国企業の日本子会社における解雇手続

解雇方法の種類

解雇には、普通解雇と懲戒解雇があります。普通解雇とは、やむを得ない事由があるときに、従業員の同意なく、会社側の一方的な通知により、従業員との雇用契約を終了させることをいいます(民法627条)。懲戒解雇とは、従業員が企業秩序を乱す行為を行ったときに、会社が一方的に労働契約を解約することをいいます。懲戒解雇は、就業規則または雇用契約書に懲戒解雇に関する規定がなければ一般的に有効とは認められません。

普通解雇手続

普通解雇の要件

普通解雇を行うためには、①解雇するだけの客観的かつ合理的な理由が存在すること、②解雇することが社会通念上相当であること、③懲戒解雇をするまでの手続が適正であること、という要件を満たす必要があります。

要件①:正当な解雇理由

要件①が認められる場合の具体例としては、従業員の勤務成績が著しく悪い場合(能力不足の場合)、従業員に業務命令違反がある場合、従業員の素行に問題がある場合など挙げられます。

正当な解雇理由のない解雇は、無効となります(労働契約法第16条)。日本の裁判所では、以下のとおり、「正当な解雇理由」が認められるハードルが高くなっておりますので、会社が不用意に従業員を解雇した場合、解雇無効とされてしまう可能性があります。

勤務成績が著しく悪いこと(能力不足)を理由とする普通解雇については、単に能力不足であるだけでは、正当な解雇理由があるとは通常認められません。会社が従業員に対して十分な指導をしたにもかかわらず、改善の見込みがないといえることを立証できない場合でない限り、正当な解雇理由があるとは認められないことが通常です。

業務命令違反を理由とする普通解雇についても、従業員が業務命令に違反しただけでは正当な解雇理由があるとは通常認められません。会社が従業員に対して業務命令の趣旨を十分従業員に説明した上で、それでも業務命令に従わない場合において、再三注意等を行い、従業員に改善の機会を与えたにもかかわらず、一向に改善されない場合に初めて正当な解雇理由が認められることが通常です。

協調性の欠如を理由とする普通解雇については、単に協調性が欠如しているという範疇を超えて、その程度が著しく劣悪であり、会社が従業員に対して改善を促したにもかかわらず、一向に改善がなされず、会社の業務全体にとって相当な支障となっている場合に初めて正当な解雇理由が認められることが通常です。

また、近年よく問題になるケースとして、従業員が精神疾患を患っている場合があります。そのような場合については、精神疾患の状態にあること自体を理由として解雇を行うことはできません。ただし、精神疾患を患っていることにより、従業員が会社における業務に耐えられないときは、そのことを理由として解雇を行う余地があります。ただし、従業員が精神疾患になったことについて会社に原因があると判断される場合(長時間残業やパワハラなどが原因で精神疾患を発症したと判断される場合等)には、精神疾患で業務に耐えられないことを理由とする解雇は、不当解雇として無効とされる可能性が高くなります。

過去の裁判例(うつ病の女性従業員に1年8か月の休職を認めたが復職できなかったため解雇した事例)においても、裁判所は、うつ病の発症は長時間労働が原因であるとして、会社が長時間労働が原因となったうつ病で治療中の従業員を解雇することは不当解雇であると判断し、会社に対して約5200万円の支払いを命じています(東京高等裁判所平成28年8月31日判決)。

要件②:社会通念上の相当性

要件②については、他の従業員に対する処分内容と比較して当該従業員に対する普通解雇が処分として重すぎることはないかという点や、普通解雇を回避する他の手段は存在しないかという点などを考慮した上で、裁判所が相当性を欠くと判断した場合は要件該当性が否定されることになります。

要件③:解雇手続の適切性

普通解雇の上記要件を満たすことを前提として、普通解雇を行う場合には、(1)従業員に対して30日前までに解雇予告を行うこと(即日解雇の場合には、30日相当分の解雇予告手当を支払うこと)、及び、(2)解雇通知書(解雇理由証明書)を交付することが必要となります。解雇予告手当は、即時解雇の場合、解雇の申渡しまでに支払う必要があります。

懲戒解雇手続

懲戒解雇の要件

懲戒解雇を行うためには、以下の要件を満たす必要があります。

  1. 就業規則または雇用契約書に懲戒解雇事由が明文で規定されていること
  2. 従業員が在職中に、懲戒処分の対象となる行為をしたこと
  3. 懲戒解雇を行うことに相当性が認められること
  4. 懲戒解雇をするまでの手続が適正であること

要件①:懲戒解雇事由が明文で規定されていること

懲戒解雇を行う場合には、一般的に、就業規則において懲戒解雇事由を明確に規定した上で、就業規則上の解雇プロセスにしたがって解雇手続が行われることになります。就業規則において懲戒解雇事由を明確に規定していない会社が解雇を行った場合、当該懲戒解雇は、根拠および必要となる手続を踏んだか否かが不明確であるとして無効と判断される可能性が高くなります。

そこで、就業規則が作成されていない会社においては、解雇に先立って就業規則を作成し、懲戒解雇事由を明確に定めることも考えられますが、就業規則については遡及的に適用することが禁止されています。すなわち、新たに就業規則を作成し、懲戒解雇事由を明確に定めたとしても、就業規則の施行日前における従業員の言動に基づいて、会社が従業員に対し、懲戒解雇を言い渡すことはできないことになります。

要件②:従業員が在職中に懲戒処分の対象となる行為をしたこと

解雇を予定している従業員について、就業規則または雇用契約書で明記されている懲戒解雇事由に該当する事実があるか否かを検討する必要があります。通常の場合、以下のような事由が懲戒解雇事由として定められることになりますので、これらの事由に該当する事実の有無について検討することになります。

  1. 正当な理由なく無断欠勤が○○日以上に及ぶとき
  2. 正当な理由なくしばしば欠勤、遅刻、早退をしたとき
  3. 正当な理由なくしばしば業務上の指示・命令に従わなかったとき
  4. 故意又は重大な過失により会社に損害を与えたとき
  5. 会社内において刑法その他刑罰法規の各規定に違反する行為を行い、その犯罪事実が明らかとなったとき
  6. 相手方の望まない性的言勤により、円滑な職務遂行を妨げ、若しくは職場の環境を悪化させ、又はその性的言動に対する相手方の対応によって、一定の不利益を与えるような行為を行ったとき
  7. 素行不良で社内の秩序及び風紀を乱したとき
  8. 法令、就業規則、服務規定その他会社の諸規定に違反するとき
  9. 著しく風紀秩序を乱し、又は乱すおそれのあるとき

要件③:懲戒解雇を行うことに相当性が認められること

普通解雇の場合と同様に、他の従業員に対する処分内容と比較して当該従業員に対する懲戒解雇が処分として重すぎることはないかという点や、懲戒解雇を回避する他の手段は存在しないかという点などを考慮されることになります。裁判所が相当性を欠くと判断した場合は、要件該当性が否定されることになります。

要件④:懲戒解雇をするまでの手続が適正であること

即時解雇を行う場合には、通常、以下のような手続を経ることになります。

  1. 従業員に弁明の機会を与える。
  2. 解雇通知書を交付し、30日相当分の解雇予告手当を支払う。

弁明の機会とは、解雇前に従業員が問題行動の理由や動機、問題行動に対する現在の考えを説明する機会を与えることを意味します。弁明の機会を与えずに解雇を行うこともできますが、弁明の機会を与えなかった場合、解雇が無効と判断されるリスクが高まりますので、従業員に対しては解雇前に弁明の機会を与えることが適切です。

解雇の有効性が争われた場合

日本において解雇の有効性を争う方法

日本において解雇を争う場合、主に、示談交渉(当事者間での任意交渉)、労働審判手続、仮処分、裁判(本訴)等の方法が考えられます。

示談交渉(当事者間での交渉による解決を図る手続)

解雇された従業員としては、解雇の有効性について争うため、弁護士に依頼することが考えられます。依頼された弁護士としては、いきなり裁判所への訴訟提起を行わず、裁判外における任意の交渉による解決を図ることも考えられます。裁判外における任意の交渉が決裂した場合には、通常、以下に記載している法的手続に進むことになります。

労働審判

日本には、解雇などの従業員と使用者との間の労働関係のトラブルを、その実情に即し、迅速に解決するための手続として、「労働審判手続」という制度が存在しています。日本においては、解雇の有効性が争われた場合、裁判に先立って、まず労働審判手続が申し立てられることが多いです。

労働審判手続は、労働審判官(裁判官)1名と労働審判員2名で組織する労働審判委員会が行います。労働審判員は、雇用関係の実情や労使慣行等に関する詳しい知識と豊富な経験を持つ者の中から任命され、中立かつ公正な立場で、審理・判断を行います。労働審判委員会は、まず調停という話合いによる解決を試み、話合いがまとまらない場合には、審理の結果認められた当事者間の権利関係と手続の経過を踏まえ、労働審判(裁判における判決に相当する判断)を行います。

労働審判手続については、原則として3回以内の期日で審理を終えることになっています。平成18年から令和4年までに終了した労働審判手続の平均審理期間は81.2日であり、66.9%の事件が申立てから3か月以内に終了しています。

労働審判に不服のある当事者は、異議申立てをすることができます。適法な異議申立てがなされた場合は、労働審判は効力を失い、訴訟手続に移行することになります。労働審判手続の約70%については、調停が成立しています。また、労働審判に対して異議が申し立てられないケースや、手続外で和解が成立するなどして労働審判手続が取り下げられるケースも含めますと、約80%の事件については、裁判に移行せずに終了しています。

労働審判において調停となった場合、通常、会社は従業員に対して一定金額(以下「解決金」といいます。)を支払うことになります。会社が従業員に対して支払う解決金の額は、労働審判委員会が当該解雇を有効・無効のどちらが相当であると考えているかによって変わることになります。労働審判委員会が当該解雇は有効である場合との心証を抱いている場合、従業員としては、裁判まで争ったとしても解雇は有効であると判断される可能性がありますので、労働審判の調停においては比較的低額で合意することが可能と考えられます。

一方で、労働審判委員会が当該解雇は無効である場合との心証を抱いている場合、従業員としては、裁判まで争った場合、解雇は無効であるとの判決を得られる可能性が高いですので、会社に対して強気な交渉に出ることが可能となります。その場合、調停における解決金の額については、裁判まで争うことを想定した上で、解雇日から判決までの期間の賃金相当額が調停での解決金の額になる可能性があります。

裁判

労働審判に対して異議申立てが行われた場合や、解雇された従業員が労働審判を介さずに訴訟提起を行った場合、解雇の有効性については、裁判において争われることになります。

裁判の場合は、労働審判とは異なり、期日の回数に制限はありませんので、解決までの期間はどうしても長期化することが多くなります。裁判に要する期間については、ケースバイケースではありますが、一般的には、裁判が始まってから解決するまでに、少なくとも1~2年程度を要すると考えられます。

仮処分

●仮処分とは

裁判手続については、解決までの期間が長期化することが多くなります。そこで、解雇された従業員としては、裁判において解雇の有効性を争う場合、裁判所に対して、通常訴訟の提起とは別に、労働契約上の地位保全の仮処分および賃金仮払い仮処分を申し立てることができます。

●仮処分の要件

仮処分は、「保全の必要性」がある場合にのみ認められます(民事保全法第23条2項)。保全の必要性は、仮処分によって従業員が受ける利益と仮処分によって使用者が被る不利益とを比較考量して、仮処分を発令しなければ従業員が被る不利益が著しく大きいときに認められます。

具体的には、従業員について、資産の有無、他からの固定収入の有無、同居家族の収入の有無等を考慮して、給与の支払いがなくなることで生活が困窮し、判決が確定するのを待っていては回復しがたい損害を被るおそれがあるか否かを判断し、これと仮払いを認めることにより使用者が被る不利益とが比較衡量されます。すなわち、解雇によって、従業員の生活が困窮している場合には、賃金仮払い仮処分は認められる可能性があります。

●仮処分に関する事件の流れ

仮処分に関する事件(「保全命令事件」)については、従業員の申立てにより開始されます。従業員による申立て後、東京地裁の場合、通常、申立てから1~2週間程度で審尋期日が設定され、その後は10日から2週間くらいの間隔で審尋期日が開かれます。なお、保全命令事件の審尋期日は、原則として、従業員と使用者の双方が立ち会うことのできる期日で設定されます。

賃金仮払い仮処分の申立てについては、同申立てが従業員を生活困窮から保護するという趣旨のものであることから、従業員は、原則として、無担保で申立てを行うことができるとされています。

審尋期日では、当事者双方が、主張書面や疎明資料の提出を行います。一方で、裁判手続と異なり、当事者尋問や証人尋問は行われず、代わりに陳述書が提出されます。保全命令事件では、多くの場合、この審尋期日において、裁判所から和解の提案がなされます。この段階で和解が成立することも少なくありません。保全命令事件(賃金仮払い仮処分の申立てから終結まで)の期間は、平均約3か月となっております。

●仮処分が命じられる場合

賃金仮払い仮処分が命じられた場合、従業員としては、賃金保証を得た上で裁判手続に臨むことができますので、裁判が長期化する可能性が高くなることになります。

賃金仮払い仮処分によって支払いが命じられる金額については、同申立てが従業員を生活困窮から保護するという趣旨のものであり、従前の生活水準を保証するものではないことを踏まえて、裁判所によって支払いが命じられる場合、解雇当時の賃金額や解雇前3か月の平均賃金額から減額されることが一般的です。

また、賃金の仮払いが命じられる期間については、解雇日から1年間、裁判所の仮処分決定から1年間、または訴訟の第1審判決の言渡しまでとされることが一般的です。

なお、賃金仮払い仮処分が認められた場合には、特段の事情がない限り、労働契約上の地位保全の仮処分は認められないことが通常です。

解雇が無効と判断された場合

正当な解雇理由のない解雇は、無効となります(労働契約法第16条)。裁判所によって解雇が無効と判断された場合、会社は、従業員に対し、解雇日から裁判所の判断がなされるまでの期間における給与相当額を支払う義務を負うことになります。また、従業員に対して、不当解雇に伴う慰謝料の支払いを命じられる場合もあります。さらに、従業員が復職を望んだ場合、会社はこれを拒むことができないことになります。

解雇以外に取りうる方法

会社としては、従業員に対して、解雇ではなく、退職勧奨による自主的な退職を促すことも考えられます。具体的には、従業員に対して、弁護士立ち合いの下、退職勧奨を行い、従業員が退職することに応じた場合、従業員との間で、退職勧奨同意書を締結することになります。

退職勧奨手続

退職勧奨とは

退職勧奨とは、使用者から従業員に対して、自発的に退職するように促す行為のことをいいます。従業員が、使用者からの退職勧奨に応じた場合、退職届を提出するか、または使用者と従業員の間で退職勧奨合意書を締結することになります。退職届の提出または退職勧奨合意書の締結により、当該従業員は、書面に記載されている退職日において退職した扱いとなります。

退職勧奨における注意点

退職勧奨においては、従業員に対して、あくまで自発的に退職するように促す必要があります。したがって、退職勧奨を行う場合、具体的には、以下のような点に注意する必要があります。

自主的に退職しない場合は解雇するという趣旨の発言をしないこと

使用者が従業員に対し、退職勧奨の際に、自主的に退職しない場合は解雇するという趣旨の発言をした場合、使用者と従業員の間で退職勧奨合意書が締結されていたとしても、裁判等によって争われた場合、退職の合意が無効とされるリスクがあります。

長時間多数回にわたる退職勧奨をしないこと

多人数による退職勧奨や、長時間多数回にわたる退職勧奨を行った場合には、退職合意の有効性が裁判等で争われた場合に、裁判所によって退職を強要されたと判断され、退職の合意が無効とされるリスクがあります。

退職を目的とした配置転換や仕事の取り上げをしないこと

従業員を退職に追い込むことを目的として、従業員の配置転換や仕事の取り上げをした場合、退職を強要したと判断され、退職の合意が無効とされるリスクがあります。

退職勧奨の方法

退職勧奨を行う場合、特別退職金として給与の3~6か月分程度を支払うこと等を条件として、弁護士等から従業員に対し、自発的に退職するように説得を行うことになります。従業員が退職に同意すれば、会社と従業員の間で退職勧奨合意書を締結することになります。退職勧奨合意書を締結することができた場合、解雇に比べて、事後的に紛争になるリスクを低減させることができます。

各手続の比較検討

退職勧奨手続

メリット

退職勧奨は、従業員自らの退職の意思表示、または、使用者と従業員との間の退職合意があることで、違法な退職勧奨として無効と判断されない限り、従業員との間の事後的な紛争を回避できることが、最大のメリットとなります。また、一方的な意思表示として行う解雇と異なり、退職勧奨合意書において、秘密保持条項や異議申立ての制限等の様々な取決めをすることができる点もメリットとなります。

デメリット

一方で、退職勧奨は、従業員に対して、あくまで自発的に退職するように促す手続ですので、退職するかどうかは従業員の意思に委ねられることになります。したがって、従業員が、退職勧奨に同意しなかった場合、従業員を強制的に退職させることはできない点についてはデメリットとなります。

解雇手続

メリット

解雇手続は、退職勧奨と異なり、即時かつ強制的に従業員を辞めさせることができる点がメリットとなります。また、従業員が解雇の有効性を争ってきた場合においても、労働審判、保全命令事件、または裁判手続において、従業員との間で和解を行うことができた場合には、和解費用および弁護士費用等の一定金額の支出と引き換えに、定年退職よりも比較的早期に、従業員を辞めさせることができる可能性があります。

デメリット

一方で、従業員が労働審判、保全命令事件、または裁判手続によって解雇の有効性を争った場合、少なくとも、和解費用および弁護士費用として、一定金額の支出を要することになります。また、従業員が調停や和解を拒み、裁判所の判決まで解雇の有効性を争った結果、裁判所によって解雇が無効と判断された場合には、会社は、従業員に対し、解雇日から裁判所の判断がなされるまでの期間における給与相当額を支払う義務を負うことになります。また、従業員に対して、不当解雇に伴う慰謝料の支払いを命じられる場合もあります。さらに、裁判所によって解雇が無効と判断され、かつ従業員が復職を望んだ場合、会社としては、従業員が退職を希望するか、または従業員に普通解雇事由または懲戒解雇事由が存在しない限り、従業員が満65歳に達するまでは、雇用を継続しなければならないことになります。

当事務所が提供できるサービス

当事務所は、日本企業のみならず、外国企業の日本子会社や、日本所在の外国政府機関などにおける日本人労働者や外国人労働者の解雇・退職勧奨手続、解雇に伴う任意交渉、労働審判、訴訟手続等に関するご相談に対応しております。従業員の解雇手続や退職手続等でお困りの際は、是非、当事務所にご相談ください。

当事務所にご相談いただく際は、TEL:03-5357-1750(受付時間9:00~18:00)にお電話いただくか、メールフォーム(「https://kslaw.jp/contact/」)にて、お気軽にお問い合わせ下さい。

企業法務の最新情報をお届けする無料メールマガジン

栗林総合法律事務所 ~企業法務レポート~

メルマガ登録する