カリフォルニア州で会社を設立する手続き
- 1 カリフォルニア州で事業を行う場合の事業形態
- 2 C Corporationのメリットとデメリット
- 3 LLCのメリットとデメリット
- 4 会社設立の手続き
- 4.1 C Corporationの設立手続
- 4.1.1 (1)Article of Incorporation(定款)の作成
- 4.1.2 (2)Secretary of State office(SOS)に定款を登録
- 4.1.3 (3)発起人による取締役の選任
- 4.1.4 (4)取締役会の開催
- 4.1.5 (5)Federal Tax ID (EIN)の取得
- 4.1.6 (6)Statement of Information(年次報告申請)の提出
- 4.1.7 (7)実質的所有者報告書(BOI)の提出
- 4.1.8 (8)銀行口座の開設
- 4.1.9 (9)株式の発行
- 4.1.10 (10)Fictitious Business Name(通称名)の登録
- 4.1.11 (11)State Tax IDの取得
- 4.1.12 (12)米国商務省経済統計局へBE-13書類又はExemption Claimの提出
- 4.1.13 (13)ビジネスライセンスの取得
- 4.2 LLCの設立手続
- 4.2.1 (1)Articles of Organization(定款)の作成
- 4.2.2 (2)Secretary of State office (SOS) に定款を登録
- 4.2.3 (3)LLC Operating Agreement(運営契約書)を作成
- 4.2.4 (4)Federal Tax ID(EIN)の取得
- 4.2.5 (5)Statement of Information(年次報告申請)の提出
- 4.2.6 (6)実質的所有者報告書(BOI)の提出
- 4.2.7 (7)銀行口座の開設
- 4.2.8 (8)Fictitious Business Name(通称名)の登録
- 4.2.9 (9)State Tax IDの取得
- 4.2.10 (10)LLC fee(手数料)の支払い
- 4.1 C Corporationの設立手続
- 5 カリフォルニア州で事業を行う場合に必要なビザ
- 6 カリフォルニア州における会社設立する際の栗林総合法律事務所のサービス
カリフォルニア州で事業を行う場合の事業形態
カリフォルニア州で事業を行う場合、どのような事業形態によって事業を行うかを選択する必要があります。カリフォルニア州で行われる事業形態としては次のようなものがあります。そのうち、日本人がカリフォルニア州で事業を行う場合に選択される最も一般的な形態としては、C CorporationかLimited Liability Company(LLC)となります。
Sole Proprietorship(個人事業主)
Sole Proprietorshipとは、法人化を行わず、事業者が自分自身を事業主体として事業を行う形態を言います。個人事業主が法人などの登録手続きを行わずに事業を行っているということになります。事業によって生じた収益は全て事業主に帰属することになりますが、事業の中で生じた負債についても全て事業主の負担となります。事業主は事業から生じる債務について無限責任を負うことになります。個人事業主として事業を行う場合であっても税務署への届け出を行い、納税番号を取得する必要があります。
C Corporation(株式会社)
会社が株式を発行し、株主によって会社が所有される形態です。株主は事業におけるリスク(負債)について、出資の範囲で責任を負います。C Corporationは、日本人がカリフォルニア州で事業を行う場合に、最も一般的に用いられる事業形態です。
S Corporation(小規模株式会社)
株式会社の一種であり、C Corporationと似ていますが、特定の要件を満たすことで税金の点で有利な扱いを受けられる形態です。具体的には、株主の数が100名を超えることはできません。また株主の全員がアメリカ国民又は居住者でなくてはなりません。日本人がカリフォルニア州で事業を行う場合には、利用しにくいと思われます。
Partnership(パートナーシップ)
パートナーシップは、2人以上の共同所有者によって事業の運営がなされる事業形態です。契約によって成立する関係であり、パートナーシップそれ自体には法人格はありません。パートナーシップには、General PartnershipとLimited Partnershipの2種類があります。General Partnershipは、General Partnerのみによって構成されるパートナーシップで、所有者(General Partner)の全員が平等に権利義務を負い、事業において発生した損失は全所有者が無限に責任を負います。Limited Partnershipは、一部の無限に責任を負う所有者(General Partner)と、その他の有限責任のみを負う所有者(Limited Partner)で構成される事業形態です。General Partnerは事業の管理運営を行い、事業から生じた債務について無限責任を負います。Limited Partnerは事業に対する投資のみを行い、収益があれば収益の分配に与ることになります。Limited Partnerは事業の結果生じた損失について出資の範囲を超えた責任を負いません。出資者のリスクを制限したい投資ファンドなどはパートナーシップの形態を用いることが多くあります。
Limited Liability Partnership(有限責任パートナーシップ)
LLPは専門的なサービスを提供することに特化した形態です。LLPを設立するには、弁護士、建築士または会計士の資格を有している必要があります。LLPでは、パートナーシップの形態を採ることで各パートナーは利益の分配にあずかることができながら、事業の結果生じる責任については、出資の範囲に限定することができます。
Limited Liability Company(LLC)
株式会社とパートナーシップの利点を併せ持つ事業形態です。日本における合同会社と同様の形態と言えます。但し、税制上パススルーのメリットを受けることができます。LLCの詳細については、下記を参照してください。
C Corporationのメリットとデメリット
C Corporationとは、株式を発行して、株主により会社が所有される形態の会社を意味します。出資者は、出資の範囲内でのみ責任を負いますので、有限責任会社となります。日本の株式会社と同様の事業形態と言えます。
C Corporationのメリット
資金調達の可能性
C Corporationは株式を発行することにより資金を調達することができ、また金融機関からの信用もLLC等と比較して高いため、融資を受けることのできる可能性が他の形態と比べ、高いといえます。
有限責任による個人資産の保護
パートナーシップ形態等をとる場合、事業主は事業によって生じた負債に関して無限に責任を負いますが、LLCやC Corporationの場合には個人資産と会社資産は分離されるため、事業主は会社が事業で負った負債につき無限に責任を負うことはなく、出資額の範囲でのみ責任を負います。
C Corporationのデメリット
法定された内部の組織構造
C Corporationは、アメリカの会社法の規定に従って設立されることになりますので、株式総会を開かなければならないことや取締役その他の役員を置かなくてはならないことなど、会社法の規定に従った組織運営を行う必要があります。その結果、他の事業形態と比べて会社運営における柔軟性を欠くといえます。
設立運営費用が高い
C Corporationを設立する際には、定款作成などを要するため、他の事業形態の場合と比較して高い費用がかかります。また、会社法の規定に従った組織運営を行う必要があるため、株主総会を開く必要があるなど、他の事業形態に比較して運営にかかる費用が高くなる傾向があります。
二重課税による税制上の負担
C Corporationでは、会社が得た利益については法人税が課税されることになります。その後、会社が株主に配当を行う場合には、株主に対してキャピタルゲイン課税がなされることになります。その結果、会社と株主のそれぞれが課税されることになり、二重課税となります。
LLCのメリットとデメリット
LLCは、株式会社とパートナーシップの両方のメリットを併せ持つ事業形態です。日本に置ける合同会社に近いものですが、二重課税を回避することができるなど、日本の合同会社とも異なる性質を有しています。
LLCのメリット
パススルー課税による税制上の優遇
一般的なC Corporationでは、会社が得た利益に対して法人税が課せられ、その後株主に対して配当を行う段階で今度は株主に対して税金が課せられます。例えば会社が1億円の利益を得た場合、4000万円の法人税が課せられます(実効税率40%の場合)。その後株主に対して6000万円の配当を行った場合、株主は1200万円の税金を支払う必要があります(実効税率20%の場合)。その結果、合計5200万円が税金となって、出資者である株主に対しては4800万円しか手元に残らないことになります。このように会社の段階で法人税が課せられ、株主に配当がなされた段階で株主に対して税金が課せられることから、C Corporationについては二重課税の問題があると言われています。一方、LLCの場合は、パススルー課税が適用になり、会社(事業主体)に対して法人税が課されず(パススルーして)、出資者が受け取った分配金に対してのみ課税されることになります。このように、LLCは二重課税にならず、税制上のメリットがあると言われています。
有限責任による個人資産の保護
パートナーシップ形態をとる場合、事業主は事業によって生じた負債に関して無限に責任を負うことになります。これに対し、LLCやC Corporationの場合には、個人資産と会社資産は分離されるため、事業主は会社が事業で負った負債につき出資の範囲内でのみ責任を負います。すなわち、出資分についてはゼロとなってしまう可能性がありますが、会社の債権者に対してそれ以上には個人的には責任を負わないことになります。
会社組織の柔軟性
会社内部の組織構造が厳格に法定されているC Corporationと異なり、LLCでは柔軟に内部の組織構造を決定することが出来ます。
LLCのデメリット
融資を得ることが困難
LLCは、会社にある資産しか債権者の債権の引当にはなりませんので、会社の資産がない場合には債権者は債権の回収ができなくなってしまう可能性があります。その結果、LLCは金融機関からみてリスクの高い会社形態であると言われています。また、C Corporationと比較して信用が乏しいことから、金融機関から融資を受けることに障害が生じる可能性があります。
会社形態としての新規性
LLCは、C Corporationと比較して新しい会社形態であり、裁判例の蓄積も乏しく、事業において何が法的問題となりうるかの判断が困難な場合があります。
会社設立の手続き
カリフォルニア州で会社の設立を行う場合には、会社の設立手続きを行うことが必要となります。以下では、代表的な事業形態であるC CorporationとLLCの設立手続きについて説明します。
C Corporationの設立手続
(1)Article of Incorporation(定款)の作成
会社を設立する場合、最初に会社の基本的なルールを定めた定款(Article of Incorporation)を作成することが必要となります。定款の作成は会社法の規定に従って行うことが必要です。定款の作成は素人では困難ですので、通常の場合は現地の弁護士に定款作成を依頼することになります。実際には、現地の弁護士からチェックリストを取得し、会社の基本的な事項を記入すると、あとは弁護士が全て書面にまとめてくれることになります。定款に記載する内容としては、次のようなものがあります。
- 発起人の氏名
- 会社名(カリフォルニア州に既に存在する会社名と同様の名前を用いることはできません。会社名の末尾には、C Corporationの場合、Corporation、Company、Incorporated、Incorporation、Corp、Co、Inc等を付す必要があります。)
- 会社の住所
- 登録代理人(州内で送達を行う代理人を置くことが必要です。裁判所からの送達文書など法律文書等を受領する役割を担います。州内に在住する者であれば良いですが、それがいない場合には民間の代理人会社に依頼することが出来ます。ほとんどの会社は代理人会社(この種の業務を行う専門の会社)に依頼しています。
- 事業目的
- 事業を行う地域
- 会計年度
- 役員
- 株式数
- 株式の種類
(2)Secretary of State office(SOS)に定款を登録
完成した定款をSecretary of State officeに登録する必要があります。申請は、オンラインで行うか、郵送や直接持参する方法でも行うことは可能です。登録費用として100ドルかかります。定款を登録することで法的な事業主体としての法人格を取得することができます。
(3)発起人による取締役の選任
発起人により取締役を選任します。選任された取締役は取締役就任届に署名し、発起人は辞任します。その後は取締役が会社を運営することになります。発起人と取締役が同一人物の場合も問題ありません。
(4)取締役会の開催
会社の設立ができたら、最初の取締役会を開催する必要があります。但し、取締役会を開催するには、実際にどこかに集まる必要があるわけではなく、書面決議でもよいとされています。最初の取締役会における主な決議事項としては、下記のようなものが考えられます。下記の事項を記載した書面決議書(Resolution of Board of Directors Meeting)を作成する必要があります。
- 定款登録の報告と承認
- Bylaws(細則)の採択
- President、Secretary、Treasurer等の選任
- 銀行口座開設権限を持つ執行役員の決定
- 株式発行
- 設立費用負担の承認
(5)Federal Tax ID (EIN)の取得
カリフォルニア州で事業を行う場合、カリフォルニア州税事務所(FTB)に州税を納めなければなりません。また、労働者を雇用したり、事業用の銀行口座を開設する必要が生じたりすることが考えられますが、その際に必要となるのがEIN(雇用者識別番号)です。EINの取得のために内国歳入庁(IRS)に申請書(Form SS-4)を提出します。オンラインによる申請が可能です。EINの取得は無料となります。
(6)Statement of Information(年次報告申請)の提出
カリフォルニア州で事業を行う場合、会社の住所、役員・送達代理人の氏名および住所等を毎年Secretary of State office (SOS) に届け出る必要があります。オンラインによる申請が可能です。届出を行うには、費用として25ドルかかります。定款登録後90日以内に初回の提出を行う必要があります。その後は毎年1回の提出が必要となります。
(7)実質的所有者報告書(BOI)の提出
2024 年1月1日から、カリフォルニア州で登録する会社については、財務省金融犯罪取締ネットワーク(FinCEN)に、実質的所有者報告書(BOI)を提出する必要があります。2024年以降に設立される会社は、設立日から 90日以内に実質的所有者報告書(BOI)を提出する必要があります。2025年1月1日以降に設立される会社は、登録日から30日以内に実質的所有者報告書(BOI)を提出する必要があります。実質的所有者報告書(BOI)の提出には料金はかかりません。事業体によっては報告義務が免除されることがあります。実質的所有者報告書(BOI)には以下の詳細情報を記載する必要があります。
- 会社名
- 管轄
- 事業所の現在の住所
- 納税者番号
- 会社を実質的に所有している者の氏名、生年月日、パスポートその他の身分証明書の番号、その発行州又は管轄区域の名前、およびその画像
(8)銀行口座の開設
会社が設立できたら新しい会社名での銀行口座の開設をします。アメリカの銀行では、マネーロンダリングの防止やテロ対策等の観点から、KYC(Know Your Customer)と呼ばれる確認手続きが行われます。その結果、この確認手続きに相当な期間を要し、口座開設に長期間かかることがあります。
(9)株式の発行
会社についての株式の発行を行います。原則として連邦の証券法と州の証券法に従う必要がありますが、申請により例外的に免除となる場合があります。オンラインによる申請が可能です。費用は25ドルから300ドル程度かかります。
(10)Fictitious Business Name(通称名)の登録
Fictitious Business Nameとは、登録された正式の会社名とは異なる通称名のことを言います。Fictitious Business Name(通称名)を用いる場合には州に登録する必要があります。また、Fictitious Business Name(通称名)は、商標やサービスマークとして使われることもあります。この場合は、連邦の機関であるPatent and Trademark Office(特許商標事務所)に登録する必要があります。
(11)State Tax IDの取得
四半期に100ドルを超える賃金を支払った場合、給与税の課税対象となり、カリフォルニア州雇用開発局(Employment Development Department)に給与税の支払いを行う必要があります。この登録をするためにState Tax IDが必要となります。State Tax IDを取得するためには、オンラインによる申請が可能です。
(12)米国商務省経済統計局へBE-13書類又はExemption Claimの提出
米国商務省の経済統計のために、米国法人の10%以上の議決権を外国人が取得する場合、その会社は毎年財務状況を経済分析局へ届け出る必要があります。オンラインでの申請が可能です。設立費用が300万ドル以下の場合、免除申請(Exemption Claim)を行うことで届け出の免除を受けることができます。
(13)ビジネスライセンスの取得
事業を予定している市当局に届け出をしてライセンスを取得することが必要な場合があります。事業を予定している自治体に問い合わせ、ライセンスの要否を確認し、必要な場合は申請する必要があります。カリフォルニア州で要請されるライセンスに関してはオンラインで確認できます。(https://www.dir.ca.gov/dlse/dlse-databases.htm)
LLCの設立手続
(1)Articles of Organization(定款)の作成
LLCを設立する場合には、まず定款(Articles of Organization)を作成する必要があります。定款(Articles of Organization)には、LLCに関する基本的な情報であるメンバーの名前と住所、登録代理人の名前、及び事業の目的などを記載します。LLCの会社名の末尾には、Limited Liability Company、LLC、Ltd, Co等をつける必要があります。反対に、Trust、Trustee、Bank、Corporated、inc.,、Corporation、Corp、Insurance company等の文言をLLCの名称の末尾につけることは禁止されています。LLCの性質をあいまいにし、取引相手に混乱を生じさせるためです。また、定款(Articles of Organization)の中で、訴状等の法律文書を受け取るための登録代理人を指定する必要があります。登録代理人の資格としては、18歳以上、カリフォルニア州に居住していることが必要となります。民間の代理サービスを利用することもできます。ほとんどの会社は代理人会社(この種の業務を行う専門の会社)に依頼しています。
(2)Secretary of State office (SOS) に定款を登録
定款を作成した場合、Secretary of State office (SOS) に定款の登録を行う必要があります。オンラインで申請することもできます。申請用紙についてはインターネットで取得することができます。LLCの場合、オンラインでの定款の登録には費用70ドルがかかります。
(3)LLC Operating Agreement(運営契約書)を作成
運営契約書を作成します。運営契約書で定められていない事項は、一般法であるカリフォルニア州法の規定に従うことになります。但し、カリフォルニア州法の規定に従った場合、実際の会社運営において支障が生じる可能性もあります。そこで、実態に即した事業運営ができるよう詳細な契約書を作成することが求められます。Operating Agreementの記載内容としては、次のようなものがあります。
- LLCの事業内容
- 議決権と意思決定者
- 各メンバーの会社に対する所有権
- メンバーの持分の譲渡方法
- 設立時の出資
- 利益、損失、分配の処理方法
- 経営方法、構造
- LLCメンバーの報酬方法
- 記帳方法
- 解散手続き
- 運営契約の修正方法と条件
(4)Federal Tax ID(EIN)の取得
カリフォルニア州で事業を行う場合、カリフォルニア州税事務所(FTB)に州税を納めなければなりません。また、労働者を雇用したり、事業用の銀行口座を開設する必要が生じたりすることが考えられますが、その際に必要となるのがEIN(雇用者識別番号)です。EINの取得のために内国歳入庁(IRS)に申請書(Form SS-4)を提出します。オンラインによる申請が可能です。EINの取得は無料となっています。
(5)Statement of Information(年次報告申請)の提出
カリフォルニア州で事業を行う場合、会社の住所、役員・送達代理人の氏名および住所等を毎年Secretary of State office (SOS) に届け出なければなりません。オンラインで申請することができます。届出の費用として25ドルかかります。定款登録後90日以内に初回の提出を行う必要があります。その後は2年ごとの提出が必要となります。提出しない場合には250ドルの罰金が課されます。
(6)実質的所有者報告書(BOI)の提出
2024 年1月1日より、LLCは財務省金融犯罪取締ネットワーク(FinCEN)に実質的所有者情報(BOI)報告書を提出する必要があります。2024年に設立されたLLCは、設立日から 90日以内に実質的所有者報告書(BOI)を提出する必要があります。2025年1月1日以降、新規に設立されたLLCについては、登録日から30日以内に実質的所有者報告書(BOI)を提出しなければなりません。実質的所有者報告書(BOI)の提出には料金はかかりません。実質的所有者報告書(BOI)には以下の詳細情報を記載する必要があります。
- 会社名
- 管轄
- 事業所の現在の住所
- 納税者番号
- LLCを実質的に所有している者の氏名、生年月日、パスポートその他の身分証明書の番号、その発行州又は管轄区域の名前、およびその画像
(7)銀行口座の開設
銀行口座の開設をします。現地の銀行はマネーロンダリングの防止やテロ対策等の観点から、KYC(Know Your Customer)と呼ばれる確認を相当な期間行うため、口座開設に長期間かかることがあります。
(8)Fictitious Business Name(通称名)の登録
Fictitious Business Nameとは、登録された正式の会社名とは異なる通称名のことを言います。Fictitious Business Name(通称名)を用いる場合には州に登録する必要があります。また、Fictitious Business Name(通称名)は、商標やサービスマークとして使われることもあります。この場合は、連邦の機関であるPatent and Trademark Office(特許商標事務所)に登録する必要があります。
(9)State Tax IDの取得
四半期に100ドルを超える賃金を支払った場合、給与税の課税対象となり、カリフォルニア州雇用開発局(Employment Development Department)に給与税の支払いを行う必要があります。この登録をするためにState Tax IDが必要となります。State Tax IDを取得するためには、オンラインによる申請が可能です。
(10)LLC fee(手数料)の支払い
LLCの収益が年間25万ドルを超える場合には、手数料を支払う必要があります。例えば、LLCの年間収益が25万ドルから49万9999ドルの間の場合、900ドルを納付する必要があります。同様に、年間収益が50万ドルから99万9999ドルの間の場合、2500ドルを納付する必要があります。この手数料を支払うには、課税される年度の6か月目の15日までに見積もりを申請し、確定した額を送金します。
カリフォルニア州で事業を行う場合に必要なビザ
日本法人がアメリカの子会社に出向者を派遣する場合、申請するビザとしては、Eビザ、Lビザ、Jビザ、またはHビザが一般的です。ビザの申請を行う場合には、ビザの種類や大使館の混雑状況に応じて、数か月の期間を要する可能性があります。カリフォルニア州で事業を行う場合には、事業主体となる会社の設立だけでなく、ビザの申請に要する期間も考慮しておく必要があります。会社設立した後、当面の間はESTAによる短期出張を行い、会議に参加するなど限定的な活動にとどめておき、ビザ申請が承認されてから、カリフォルニア州の会社における積極的な事業活動を行うことになると思います。
日本法人がアメリカに子会社を設立するのではなく、日本人がカリフォルニア州で会社を設立して現地で働くためには、E-2ビザを取得するのが一般的です。E-2ビザを取得するためには、次の要件を満たす必要があります。
1 E-2ビザ条約締結国の国籍を有すること。日本はE-2ビザ条約締結国であるため、日本国籍を有していればこの要件を満たすことになります。
2 起業するにあたり、その会社に相当な額の投資をしたこと、または積極的に投資中であること。相当額の出資がいくらであるかについての明確な基準はありません。2024年現在、30万ドルが一つの基準であると言われています。ビザが承認されるかどうかについては、アメリカ合衆国の政策(移民を積極的に受け入れる大統領であるかどうか)や景気の状況などによっても影響を受けることになります。
3 起業した会社の開発と管理のみを目的としてアメリカに入国することを求めていること。特に、事業の少なくとも50%の所有権、または管理職またはその他の手段による運営管理権を有していること。
4 起業した会社が5年以内に投資家とその家族を支え、従業員を雇用し、アメリカ経済に貢献するのに十分な利益をあげる見込みであること。E-2ビザの申請時に、5年間のビジネスプランを提出する必要があります。
5 E-2ステータスが終了したら米国を出国する意思があること。
カリフォルニア州における会社設立する際の栗林総合法律事務所のサービス
栗林総合法律事務所では、日本人や日本法人がカリフォルニア州やアメリカのその他の州において会社を設立する手続きをサポートしています。カリフォルニア州において会社を設立する手続きに関する弁護士報酬の基本化学は3000ドルとなります。この費用の中で定款を作成し、Secretary of Stateへの登録手続きと役員選任手続きなどを行います。銀行預金の解説やState Tax IDの取得などについては別途費用が掛かる場合があります。カリフォルニア州やアメリカのその他の州において会社を設立する場合の手続き及び費用の詳細については栗林総合法律事務所にお問い合わせください。
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