• 2024.08.28
  • 人事労務

セクシュアルハラスメントの申告があった場合の会社の対応

セクシュアルハラスメント防止措置

セクシュアルハラスメント防止措置の構築義務

男女雇用機会均等法11条1項は、「事業主は、職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。」と定めています。すなわち、事業主(会社)としては、従業員からセクシュアルハラスメントについての相談があった場合には、従業員からの苦情申し出に対してきちんと対応する必要があるとともに、常日頃から、セクシュアルハラスメントの生じないような体制を整備する義務を負っていることになります。

男女雇用機会均等法の令和元年改正の内容

令和元年の法改正により、会社へセクシュアルハラスメント被害の相談をしたり、その対応に協力した際に事実を述べたりしたことを理由とする不利益な取扱いが禁止され、また他社からセクシュアルハラスメントの事実確認等の協力を求められた場合にも、これに応じるべきことが明記されました(同条2項、3項)。これらの規定にかんがみれば、他社からセクシュアルハラスメントに関し雇用管理上の協力を求められたことを理由に、当該事業主との契約を解除するなど不利益に取り計らうことも許されないと考えるのが法の趣旨であると考えられます。

セクシュアルハラスメントとは

男女雇用機会均等法による定義

セクシュアルハラスメントは、日常の言葉になっていますので、その定義も一般的に用いられる言葉の意味から判断されることになります。しかし、職場におけるセクシュアルハラスメントについては、厚生労働省の告示が出されておりますので、その内容は告示の内容をもとに判断されることになります。厚生労働省の告示では、職場におけるセクシュアルハラスメントとは、職場において行われる性的な言動に対する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受けたり(以下「対価型セクシュアルハラスメント」という。)、当該性的な言動により労働者の就業環境が害されたりすること(以下「環境型セクシュアルハラスメント」という。)をいうとされています(令和2年厚生労働省告示第6号)。また、職場におけるセクシュアルハラスメントには、同性に対するものも含まれ、被害を受けた者(以下「被害者」という。)の性的指向又は性自認にも影響を受けないとされており、男女ともに行為者にも被害者にもなり得ます。

令和2年厚生労働省告示第6号については、下記を参照ください。
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000584516.pdf

「性的な言動」とは

厚生労働省の告示では、「性的な言動」とは、性的な内容の発言及び性的な行動を指します。
「性的な内容の発言」には、例えば以下のもの等が含まれるとされています。

  1. 性的な事実関係を尋ねること
  2. 性的な内容の情報を意図的に流布すること
  3. 食事やデートへ執拗に誘うこと

また、「性的な行動」には、例えば以下のもの等が含まれるとされています。

  1. 性的な関係を強要すること
  2. 必要なく身体に触ること
  3. わいせつな図画を配布すること

なお、事業主、上司、同僚に限らず取引先や顧客などもセクシュアルハラスメントの行為者になり得、また、同性の者に対して行う場合にも成立することがあります。例えば病院の女性患者が、女性看護師に何度も食事へ誘うような場合は、患者は当該看護師の職場の者ではありませんし、また、当事者はどちらも女性ですが、執拗に誘っていることからすれば、当該看護師に対するセクシュアルハラスメントに該当する場合があります。

「対価型セクシュアルハラスメント」とは

「対価型セクシュアルハラスメント」とは、職場において行われる労働者の意に反する性的な言動による労働者の対応により、その労働者が解雇、減給等の不利益を受けることを指し、例えば、以下のもの等が含まれるとされています。

  1. 事務所内で事業主が労働者に性的な関係を要求したが、断られたため、当該労働者を解雇すること
  2. 出張中の車内で、上司が労働者の下半身に触れたが、抵抗されたことの腹いせに、当該労働者について不利益な配置転換をすること
  3. 営業所内で、事業主が日頃から労働者の性的な事柄について公然と発言していることを抗議されたのを受け、当該労働者を降格すること

「環境型セクシュアルハラスメント」とは

「環境型セクシュアルハラスメント」とは、職場において行われる労働者の意に反する性的な言動により労働者の就業環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じる等当該労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じることであって、例えば、以下のもの等が含まれるとされています。

  1. 事務所内において上司が労働者の腰、胸等に度々触ったため、当該労働者が苦痛に感じてその就業意欲が低下していること
  2. 同僚が取引先において労働者に係る性的な内容の情報を意図的かつ継続的に流布したため、当該労働者が苦痛に感じて仕事が手につかないこと 
  3. 労働者が抗議をしているにもかかわらず、事務所内にヌードポスターを掲示しているため、当該労働者が苦痛に感じて業務に専念できないこと

セクシュアルハラスメントの状況は多様であり、当該行為がセクシュアルハラスメントに該当するか否かの判断は、個別の状況を斟酌する必要があります。特に、「労働者の意に反する性的な言動」や「就業環境を害される」かの判断については、労働者の主観を重視しつつも、上記のような会社に防止措置の構築義務を生じさせるものであるため、一定の客観性が求められます。そこで、その判断に当たっては、その行為等がもたらす苦痛の強弱、行為等の回数、心身への影響を及ぼしていることの明白性の度合い、被害を受けた者の性別等を総合的に考慮すべきです。
例えば、一般に女性が明確に拒絶する意思を表明しているにもかかわらず、上司から胸部を触られる行為は、平均的な女性労働者であれば強い精神的苦痛を感じると考えられ、たとえ行為が一回きりであったとしても、客観的に「労働者の意に反する性的な言動」として認められることになるでしょう。

事業主の取るべき措置

事業主はセクシュアルハラスメントに関する苦情申し出の有無にかかわらず、常日頃から次の体制を整備しておく必要があります。

事業主の方針を明確化し、労働者に周知・啓発を行うこと

労働省告示では、事業主(会社)は、セクシュアルハラスメント防止に関する会社の方針を明確化し、従業員に対して周知・啓発することが必要とされています。具体的には次のような方策を取ることが必要となります。

就業規則の規定の整備

就業規則における従業員の服務規律の中で、セクシュアルハラスメントを行ってはならないという事業主の指針を明確に記載し、セクシュアルハラスメントを行ったと認定された場合には、戒告、減給、出勤停止、懲戒解雇等の懲戒の対象となることを明確化しておくことが重要となります。会社は従業員に対して管理統率を行う一般的権限を有していますが、雇用契約書や就業規則の中で懲戒事由についての記載がなされていない場合には懲戒処分を行うことができません。どのような行為がセクシュアルハラスメントにあたり、それによりどのような懲戒処分が下される可能性があるのかを就業規則に明示しておくことが必要です。就業規則の内容が法律の要求する内容に適合するものであるかどうかを見直しておく必要があると言えます。
また、セクシュアルハラスメントは、「男らしさ」「女らしさ」といった性別による役割分担の意識に起因することが多くあり、このことを従業員にも併せて周知・徹底する必要があるでしょう。

セクシュアルハラスメント防止に対する企業指針の策定

会社としてセクシュアルハラスメントを放置しないという企業方針を書面で作成し、これを従業員に周知する必要があります。指針の具体的内容については、厚生労働省の「職場におけるハラスメント対策マニュアル」を参照ください。企業指針の策定においては、セクシュアルハラスメントの該当性を判断し得るよう、セクシュアルハラスメントに該当する場合の具体例などをできるだけ多く記載しておくことが重要となります。

厚生労働省の職場におけるハラスメント対策マニュアルについては、次のURLを参照ください。
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/0000181888.pdf

パンフレットやチラシの作成

セクシュアルハラスメント防止に対する企業指針を作成するだけでは、従業員に対する周知が不十分と思われる場合があります。このような場合には、社内報で告知をしたり、パンフレットやチラシなどを作成し、従業員に配布したりすることも検討する必要があります。セクシュアルハラスメントの問題点を漫画などにして従業員に配布する方法は、従業員が読みやすく、内容を容易に理解してもらえるという点でメリットがあります。

従業員に対する研修の実施

セクシュアルハラスメントに対する企業指針を作成し、従業員に周知しただけでは、それがどのようにして発生するのか、どのような行為が問題となるかなどについて、従業員が十分に理解しえない可能性もあります。そこで、会社において定期的に研修を行い、従業員に理解してもらえるような対策を講じることも重要です。セクシュアルハラスメント研修については、外部の専門講師の他、弁護士などが務めることも多くあります。栗林総合法律事務所では、会社からの要望がある場合には、所属弁護士がセクシュアルハラスメント研修の講師を務めることもありますので、お気軽にお声がけください。

苦情相談窓口を設置し、対応マニュアルを作成すること

セクシュアルハラスメントに関する苦情の申し出を受け付ける相談窓口を設置し、その内容を従業員に周知する必要があります。苦情相談窓口は会社内部に設置することもあれば、弁護士事務所など会社の外部に苦情窓口を設置することもあります。また、従業員からの相談に円滑に対応するためには、相談窓口を設けるだけでなく、対応マニュアルを作成し、従業員からの相談に適切に対応できる体制を整備していくことも重要です。
また、セクシュアルハラスメントに該当するか不明な場合や現実にはまだ被害が発生していないような段階においても気軽に相談できるよう、そのような場合にも対応可能であることも周知すると良いでしょう。
セクシュアルハラスメントは、パワーハラスメントなど他のハラスメントと複合的に発生することがあります。相談窓口を作る際には、ハラスメントの被害を受けた従業員が相談しやすいよう、他のハラスメント対応の窓口と一元化して対応できるような体制を整えることが望ましいといえます。
なお、被害の申告等により被害者が降格される等、業務上不利益な取扱いをしてはならないことは当然ですし、男女雇用機会均等法の改正により明記されたものでもあります。

パワーハラスメントの申告があった場合の会社の対応については、次のURLを参照ください。
https://kslaw.jp/column/detail/7039/

法律事務所との連携体制の構築

セクシュアルハラスメントの苦情相談については、事実関係の有無の判断が難しいだけでなく、認定された事実がセクシュアルハラスメントの定義に該当するかどうかの認定や、セクシュアルハラスメントに該当すると判断された場合に、どのような処分を行うべきかについても難しい判断が求められます。会社の苦情相談窓口は、必ずしもこのような業務の専門家とは限りません。そこで、苦情相談窓口の担当者が外部の機関(専門家)に相談できるような体制の整備も重要となってきます。栗林総合法律事務所では、中小企業の苦情相談窓口業務を行っておりますので、会社外部に苦情相談窓口を設けることを検討されている皆様は是非栗林総合法律事務所にご相談ください。また、苦情相談窓口の対応マニュアルの作成についてもご相談にのらせていただいております。

苦情申し出があった場合

苦情申し出に対する適切な対応の重要性

従業員からセクシュアルハラスメントの苦情申し出があった場合には、これを放置しないで組織として対応する必要があります。従業員からセクシュアルハラスメントの申し出があったにもかかわらず、適切な調査や対応を行うことなく放置していた場合、会社として適切な対処を行わなかったことを理由に会社に対する損害賠償請求がなされる可能性があります。特に苦情申出人が、セクシュアルハラスメントによりPTSDになるなど精神的疾患に陥るような場合には、苦情申し出に対する適切な対処を行わないこと自体が、会社として従業員に対する安全配慮義務に違反したとみなされる可能性がありますので、注意が必要となります。
なお、セクシュアルハラスメントの行為者が必ずしも同じ職場内にいるとは限らないという実情にかんがみて、他社の労働者が自社の労働者にセクシュアルハラスメントを行った場合にも、適切に相談に対応すべき義務があります。また、男女雇用機会均等法の改正により、逆に自社の労働者が他社の労働者にセクシュアルハラスメントを行った場合には、他社の求めに応じて、セクシュアルハラスメントの調査や再発防止に協力するよう努めることとされています。

調査委員会の設置

セクシュアルハラスメントについても申し出があった場合は、当該申し出に該当するような事実があったかどうかを調査することが必要となります。調査は、セクシュアルハラスメントの相談窓口が主となって行うこともあれば、あらかじめ定めた社内ルールによって調査委員会を設置し、調査委員会が主体となって調査を行うこともあります。調査委員会の中立性や公平性を図る観点からは、調査委員会の委員の中に、弁護士などの外部の専門家を入れることも重要です。特に弁護士は、当事者に対するヒアリングの仕方や事実認定を含めて、事実関係の調査について訓練を受けたプロフェッショナルと言えますので、調査委員会の委員としてふさわしいと言えます。栗林総合法律事務所では、会社からの依頼により、事務所の弁護士が調査委員会の委員に就任するサービスも行っています。調査委員の候補者を探している場合は是非ご検討ください。

セクシュアルハラスメントの有無についての事実調査

事実関係の調査については、メールや手帳などの客観的記録とともに、本人や関係者からヒアリングによって行うことになります。特に関係者からのヒアリングについては、事実確認のために非常に重要な手段になりますので、十分に準備してヒアリングに臨む必要があります。また、過去のメールのやりとりなどは、客観的証拠であって、セクシュアルハラスメントの事実を証明する重要な証拠となる可能性があります。既に消去されたメールや、デジタル化された大量の書類の中から関係する文書やメールを収集する方法をデジタルフォレンジックと言います。デジタルフォレンジックは、アメリカなどでの訴訟におけるディスカバリーの制度として有名ですが、日本でもデジタルフォレンジックのサービスを提供している会社がありますので、必要な場合にはその活用をご検討ください。

セクシュアルハラスメントの被害者からのヒアリング

セクシュアルハラスメントの苦情申し出があった場合には、被害者からのヒアリングはとても重要なものとなります。被害者からのヒアリングにおいては、苦情申出人の心情などについて十分に配慮をもって行う必要があります。また、外部に声が漏れないような閉鎖された会議室で行うなど、秘密についての十分な配慮をもってヒアリングを行う必要があります。ヒアリングの際には、「だれが」、「誰に対して」、「いつ」、「なぜ」、「何を」、「どうした」という5W1Hが重要となりますので、これらの情報を聞き漏らさないようにする必要があります。また、被害者も混乱しており、印象に残った事実をばらばらに説明することもありますが、整理して記録に残すという観点からは、時系列に従って聞き取りを行い、記録にとどめていく必要があります。特に、セクシュアルハラスメントに該当する行為の部分については、詳細にヒアリングを行う必要があります。ヒアリングの結果については、ヒアリングメモや調査報告書と言う形で文書にして残しておく必要があります。

セクシュアルハラスメントの加害者からのヒアリング

セクシュアルハラスメントの加害者と言われる人からもヒアリングを行うことが重要です。適正手続き(デュープロセス)の観点からは、加害者とされる人に反駁の機会を与えることが重要です。多くの事案において、苦情申出人と加害者とされる人との間において意見の相違がみられます。双方の言い分を、公平な観点から、先入観なしに聞き取ったうえで、各事実に有無について慎重に判断する必要があります。また、会社は、警察や検察官とは異なり、民間の会社であって、強制捜査を行う権限を有していない点については注意が必要です。あまり過度な聞き取りを行う場合には、会社のヒアリング自体が違法行為と判断されてしまう可能性がありますので、注意しましょう。ヒアリングに客観性を持たせるためには、弁護士など外部の専門家の立ち合いを求めることも有益です。

同僚などの関係者からのヒアリング

職場の同僚などはセクシュアルハラスメントの現場を見ていたりする可能性がありますので、同僚や上司などの関係者からのヒアリングも重要な判断要素となります。単なる印象ではなく、具体的な事実について見聞きしたことがあるかどうかを確認していく必要があります。「他の人から聞いた」と言う事実については、伝聞証拠になりますので、その事実の信ぴょう性については正確に判断する必要があります。そこで、他人から見聞きした事実については、できるだけ直接体験した(見聞きした)人に直接尋問し、その事実の有無を判断する必要があります。

セクシュアルハラスメントの有無についての判断

事実調査を行った後は、セクシュアルハラスメントの有無の判定を行う必要があります。セクシュアルハラスメントに該当するかどうかという問題は、具体的事実を前提とした法的評価の問題となります。従って、判定に迷うことがある場合には、調査委員会のメンバーに弁護士を加えておいたり、セカンドオピニオンとして外部の専門家の意見を参照したりすることも重要です。また、セクシュアルハラスメントに該当するかどうかの判断が場当たり的なものとならないようにするためには、どのような行為がセクシュアルハラスメントに該当するのかをあらかじめセクシュアルハラスメントに対する企業指針などにおいて書面化しておき、その行為類型に該当するかどうかを判定するという方法をとるのが好ましいと言えます。また、従業員に対する不意打ち防止の観点からは、どのような行為がセクシュアルハラスメントに当たるかを従業員にも周知しておくことも必要です。この意味で、セクシュアルハラスメントに対する企業指針は重要な役割を担っていると言えます。

調査報告書の作成

セクシュアルハラスメントの苦情申し出がなされているような場合には、後日訴訟に発展する可能性もないとは言えません。その際、調査委員会による調査の結果は訴訟の場においても非常に重要な意味を持つことになります。そこで、後日の訴訟備えるためにも、調査の経過やその結果について報告書を作成し、ヒアリングメモや関係資料と併せて一体として保管しておく必要があります。なお、調査報告書には、単にセクシュアルハラスメントの有無についての事実認定や、懲戒処分や配置転換などの対応措置について記載するだけでなく、セクシュアルハラスメントが生じることとなった企業風土や背景事情も考慮しながら、企業風土の改善策を含め、再発を防ぐための再発防止策の提案なども行っていく必要があります。

セクシュアルハラスメントに対する適切な措置

セクシュアルハラスメントの事実が認定できる場合には、事実の内容に応じた適切な措置を講じる必要があります。適切な措置の内容としては、セクシュアルハラスメントの加害者と被害者を引き離すための配置転換や、行為者の謝罪、反省文の作成、被害者の労働条件上の不利益の回復措置、管理監督者や産業医などによるメンタルヘルスケアなどがあります。また、認定されたセクシュアルハラスメントが、就業規則における懲戒処分の対象となり、職場環境に著しく不利益を与えている場合には、セクシュアルハラスメントの程度に応じた適切な懲戒処分を行うことも必要となってきます。懲戒処分の内容としては、戒告、減給、出勤停止、降格処分、懲戒解雇等の種類が考えられます。

再発防止策の策定

セクシュアルハラスメントの生じない企業風土を作るためには、個別のセクシュアルハラスメント事案についての処理を行って終了するのではなく、再発防止策についても検討し、同様の問題が生じない企業風土づくりを行うことが重要です。そのためには、就業規則の内容やセクシュアルハラスメント防止に関する企業指針が適切な内容となっており、従業員に周知されているかどうかを再度確認する必要があります。また、従業員に対する啓発活動として、あらためて全ての従業員を対象とする研修を行うことも重要と言えます。既に存在する施策についてもそれが十分なものであるかどうかを絶えず検証し、PDCAサイクルを回しながら常に改善を行っていくことが重要と言えます。一般にセクシュアルハラスメントは密行しやすく、被害者も被害を申告しにくい場合があります。経営者と従業員が密接なコミュニケーションを取りながら、事業主が主体となって、働きやすい環境の整備に努めていくことが重要となっています。

調停及び紛争解決機関の活用

男女雇用機会均等法17条では、セクシュアルハラスメントの有無や対策について事業主(会社)と労働者との間に紛争が生じた場合には、一方又は双方からの申し出により、都道府県労働局長は、紛争解決のために必要な援助、助言、指導、勧告を行うことができるとされています。また、同法18条では、紛争調整委員会による調停についての定めがなされています。会社と従業員との間においてどうしても解決しえない紛争については、紛争調整委員会の調停の手続きを活用することも検討し得ます。

栗林総合法律事務所のサービス内容

栗林総合法律事務所による支援業務

セクシュアルハラスメントについても申し出があった場合には、セクシュアルハラスメントの事案に強い弁護士に相談することが重要です。栗林総合法律事務所ではこれまで当事務所の顧問先からの相談や、ご紹介を頂いた会社様からの依頼により、セクシュアルハラスメントについてのアドバイスを行ってきました。また、実際の苦情申し出が存在しない場合においても、厚生労働省の指針に沿った適切な社内体制の整備を行うことが重要と言えます。セクシュアルハラスメントについての苦情申し出があった場合や、セクシュアルハラスメントに対応する社内体制の整備をお考えの皆様は、是非栗林総合法律事務所にご相談ください。

法律顧問契約締結のご紹介

栗林総合法律事務所では、セクシュアルハラスメントに関する顧問先の企業様から相談を受けることが多くあります。栗林総合法律事務所の顧問になっていただく場合には、会社の業務内容について精通し、担当者との人間関係を構築することでより適切な法的アドバイスを行うことが可能となります。また。栗林総合法律事務所の顧問先の皆様については、調査委員会による調査、報告書の作成、対応方針の策定、再発防止策の策定などの様々な場面においてアドバイスを行うことになりますが、いずれの場合においても弁護士報酬については通常の価格から2割のディスカウントを受けることが可能となっています。また、セクシュアルハラスメントに限らず、日常の法律相談については、顧問料金の中に含まれていますので、日常の事業運営において弁護士のアドバイスが必要となる場合にはいつでも、電話、Zoom、面談などの方法により法律相談を受けることができます。顧問契約を締結いただいている企業様については、日常の法律相談については、原則として追加の弁護士報酬を頂きません。是非栗林総合法律事務所の法律顧問契約についてご検討ください。

セクシュアルハラスメントの調査対象者に対してアドバイスを行った事例

ある会社の社員は、懇親会の後、同僚の女性にキスをしようとしたとして内部通報されることになりました。会社では、セクシャルハラスメントに該当する可能性があるとして、事実関係を調査するための調査委員会を開催し、加害者、被害者、同僚などからの聞き取り調査を行うことになりました。当事務所では、加害者とされている男性からの相談を受け、聞き取り調査に向けて注意すべき点などについてのアドバイスを行いました。調査の結果、加害者とされる人は、当該女性との二人だけでタクシーにのるなど軽率な行動が認められるが、キスを強要しようとしていたとの事実関係までは認定することはできず、今回は注意処分のみで終わらすとの判断になりました。会社としては、セクシャルハラスメントについての通報があった場合は、事実関係の調査を行い、対象者からの聞き取り(ヒアリング)を行う必要があります。栗林総合法律事務所では、事実調査に関する調査委員会の立ち上げ、運営や、調査対象者へのアドバイス等を行っております。

就業規則を修正してセクシュアルハラスメントに関する規定を挿入した事例

当事務所の顧問先からの依頼により、就業規則の中にセクシャルハラスメントに関する規定を挿入することになりました。就業規則の中では、どのような行為がセクシャルハラスメントに該当するかを明確にするとともに、セクシャルハラスメントに該当する行為に該当した場合に、戒告や解雇などの懲戒処分の対象となることを明確にしました。また、セクシャルハラスメントに関する申告があった場合の会社による調査の進め方についても記載するようにしました。

企業法務の最新情報をお届けする無料メールマガジン

栗林総合法律事務所 ~企業法務レポート~

メルマガ登録する