イスラエル企業との間で株主間契約書を作成した事例
事案の概要
当事務所の顧問先が、イスラエルの会社に対して数億円の出資を行うことを検討していました。出資によりイスラエルの会社の株式の50%を保有することになります。イスラエルの会社は、情報セキュリティ分野における優れた技術を有しているものの、ベンチャー企業であり、必要な運転資金が不足することから、日本の会社からの出資は非常に貴重なものであり、是非とも実行してもらいたいとの希望を有していました。また、一方で、事業が軌道に乗った場合には、ニューヨークのナスダック証券市場への上場を果たしたいと考えており、日本企業にとっても大きな収益を得る機会となっていました。このように双方の当事者に対して非常に重要な出資ですが、日本とイスラエルという商慣習や法制度の全く異なる会社どうしの契約ですので、双方の理解に相違がないように、契約内容についてしっかり理解することが重要となっていました。
株主間契約書のポイント
日本企業が外国企業に出資を行う場合は、外国企業の株式の一部を所有することになります。出資先が大企業の場合は、投資家である株主については全て株主総会の決議に従うことになりますが、出資先がベンチャー企業など小規模の企業の場合は、会社の運営や配当政策、少数株主の権利などについて個別に定めておく必要があります。特に将来上場を考えている場合は、投資家は、確実に利益を得る必要がありますので、新株発行によるダイリューションが起こらないよう少数株主に配慮した資本政策がとられなければなりません。株主間契約書を作成する場合は、現地の証券取引に関する法令の内容を確認するとともに、少数株主が有する権利を書面などで明確化しておくことが有効です。
栗林総合法律当事務所の業務の結果
日本企業が海外進出を行う方法として、自ら直接海外の現地で事業を行う方法の他、現地企業の全部又は一部を買収(M&A)したり、現地企業に対して出資を行うことで、現地企業を通じて間接的に当該市場へのアクセスを行うこともあります。この場合、出資の内容、株主の権利・義務、上場規制について確認するだけでなく、出資後の会社の運営や管理が円滑に行われるよう契約書を作成していく必要があります。イスラエルの企業から提示された株式引受契約書、株主間契約書は大量のボリュームのもので、株主の権利義務や会社の運営方法について詳細に定められたものでした。また、将来、ニューヨークのナスダック証券市場に上場することを目的としていますので、アメリカの証券取引法についての言及箇所も多く、それらの内容を理解するのも時間がかかるものでした。当事務所は、株式引受契約書及び株主間契約書の要旨を作成し、条文ごとに出資者である日本企業にとって問題があるかどうかをコメントする形で報告書を作成しています。結局、これらの株式引受契約書及び株主間契約書はいずれも問題ないものとして調印に至り、無事に出資を終えています。当事務所では、海外への資金の拠出・出資に関する各種契約書についてのアドバイスを行っています。また、投資契約書やアライアンス契約書など、資本業務提携に関連する契約書の作成も多く行っています。今後は、国際取引が増加してくる一方で、日本国内での収益機会に限りがあることから、これらの資本業務提携や出資に関するニーズが増えてくるものと思われます。
栗林総合法律事務所のサービス内容
栗林総合法律事務所では、日本企業が海外進出を行う際の法的支援を行っています。このような支援の中には、営業拠点の探索、賃貸借契約の締結、人の採用など現地におけるコンサル的仕事や、現地法人の設立支援など、現地のプレゼンスがないと行えない業務もあります。一方で、日本から海外への輸出を行ったり、現地の販売代理店を指名して、販売代理店を通じて現地企業に対して商品を販売する場合など、日本国内にいながら海外での商品の販売やサービスの提供を行っていく方法もあります。これらの国際取引の枠組みの決定などは、相手方当事者との協議を行いながら契約書やLOIなどの文書に落とし込んでいくことができます。当事務所では、国際取引を行う場合の注意点や国際取引の始め方について、海外進出を始めて検討されているお客様から、既に多くの国際取引を行っているお客様にいたるまで、様々な企業様からのお問合せを頂いております。また、海外取引の協議内容については、LOIやMOUの形で文書に落とし込み、当事者の理解の齟齬がないようにしながら話をまとめていく支援を行っています。さらに、取引条件などについて基本的合意ができた場合には、商品取引基本契約書、動産売買契約書、サービス提供契約書、販売代理店契約書、エージェント契約書、ライセンス契約書等、依頼者の実情に応じた様々な種類の契約書を作成し、円滑な海外取引が実施できるよう支援しています。