日本の会社の事業部門をアメリカの会社に事業譲渡した事例
事案の概要
ある日本企業はアメリカの競業会社から、製品の製造に関する事業部門を譲渡してくれないかとの提案を受けました。事業譲渡の場合は、買収者であるアメリカの会社が日本法人を設立し、日本法人を通じて事業の取得を行うことが通常ですが、本件ではアメリカの会社が直接買収者となり、日本の会社の事業を買い付けたいとの意向が示されました。当事務所に依頼があった時点では、すでにアメリカの会社によるDD(デューデリジェンス)が完了しており、事業譲渡価格についても18億円とすることで両者の合意が成立していました。当事務所では、日本の会社からの依頼により、当事者間の合意事項をもとに英語での事業譲渡契約書(Assets Transfer Agreement)を作成することになりました。
栗林総合法律事務所のサービス内容
クロスボーダーM&A案件の8割以上が株式譲渡契約の形で行われますので、事業譲渡契約(Assets Transfer Agreement)の形により事業が譲渡されるケースは極めて少数であると言えます。但し、株式譲渡契約の場合は、原則として会社が有する資産・負債を包括して承継することになるのに対し、事業譲渡契約の場合は、複数の事業部門のうち、一部の事業部門のみを承継することが可能となります。また、引き受ける事業部門の中でも、承継する資産や負債を特定して、限られた資産と負債のみの承継が可能となりますので、譲受人としては、想定外の負債を背負い込むリスクを排除することが可能となります。栗林総合法律事務所では、英文での事業譲渡契約書(Assets Transfer Agreement)を作成し、買手企業との間で契約内容の交渉を行い、契約の調印までサポートを行うことができました。本件では、譲受人が承継する資産と負債を明確に定義し、譲渡人と譲受人との間に認識の齟齬がないようにすることが極めて重要となります。また、株式譲渡契約と異なり、資産と負債ごとに権利移転の対抗要件を具備する必要がありますので、それぞれの対抗要件を確認し、クロージング手続きの中で漏れがなく登記登録ができるよう調整していく必要がありました。当事務所ではこれらの手続きの代行(クロージング関係書類の作成)も行っております。
栗林総合法律事務所による外国企業の支援
外国企業が日本企業の株式を譲渡したり取得したりする場合は、国境をまたいだ取引となるため、クロスボーダーM&Aと言われます。当事務所では、多くのクロスボーダーM&A案件において、売主または買主を代理してM&A案件のサポートをさせていただいております。当事務所では、日本企業が所有する日本の会社の株式をアメリカの会社に譲渡する際に、売主である日本企業をサポートした案件や、アメリカの企業が所有する日本の会社の株式を日本の会社に譲渡する際に、買主である日本企業をサポートした案件など、様々なクロスボーダーM&Aをサポートしてきた実績を有しております。上記の案件は、対象となる会社が日本企業ですが、売主が日本企業で買主が外国企業となりますので、一般的に内外案件と言われるものです。これらのクロスボーダーM&A案件における当事務所のサービスは大きく分けて3つのフェーズに分けられます。第1のフェーズが、契約締結前の入札やDDの段階であり、当事務所では、秘密保持契約書、レターオブインテントの作成支援、入札手続きが行われる場合のNon-Binding OfferやBinding Offerの作成支援を行います。当事務所では、コンサルタントとして活動する外国人の弁護士(アメリカでの弁護士資格を有する弁護士や中国の弁護士資格を有する中国人弁護士)を有していますので、ネイティブの弁護士がドキュメントの内容を確認しますので、クオリティの高い各種書類の作成が可能となります。また、日本企業が対象となる場合は、日本人弁護士による法務監査(デューデリジェンス)が必要となることが多くあります。当事務所では、買主の会社を代理して、対象となる日本企業の法務監査(デューデリジェンス)を行うことが多くあります。法務監査報告書(デューデリレポート)については、日本語だけでなく、英語で作成することも多くあります。第2のフェーズはM&Aの契約交渉の場面です。当事務所では、株式譲渡契約書(SPA)の作成や修正だけでなく、相手方となる外国企業(またはその代理人である弁護士)との協議交渉も代理して行ったり、依頼者をサポートして行ったりします。最近では、Zoomによる契約交渉が主流ですので、依頼者とともにZoom会議に参加し、事前に依頼者との打ち合わせの中で確認した事項を英語で説明したり、契約条項の修正を英語で提案したりすることになります。第3のフェーズは、クロージングの段階で、SPAが合意された後、コンディション・プレシーデント(Condition Precedent)の内容を確認し、取引の前提条件が満たされるように依頼者をサポートしておきます。また、クロージングの際には、クロージング・サーティフィケイト(Closing Certificate)やディスクロージャーレター(Disclosure Letter)の作成提出支援や、取引内容を承認する対象会社や当事者会社の取締役会議事録、株主総会議事録を英語と日本語で作成し、必要に応じて公証役場での認証を得たり、アポスティーユ(Apostille)の取得を行ったりします。また、M&Aが行われる場合には、増資が行われたり、役員変更が行われることも多くありますので、役員の変更登記や発行済株式総数の変更登記手続きを代理して行います。なお、最近では、独占禁止法や外為法に関する手続きの要否についても注意が必要となります。当事務所では、これらの手続きの要否についても検討し、その結果を依頼者に報告し、必要に応じて各種届け出書を作成・提出します。
費用(消費税別)
当事務所では、クロスボーダーM&A案件の業務については、通常タイムチャージで行わせていただいております。クロスボーダーM&A案件のサポートをご依頼いただいた段階で、事前に日本語または英語により委任契約書(Engagement Agreement)を締結し、当事務所の弁護士報酬について明確化させていただいております。パートナー弁護士の1時間当たりの弁護士費用は3万5000円となります。アソシエイト弁護士の1時間当たりの弁護士費用は2万5000円となります。毎月、弁護士が使用した時間に、各弁護士のビラブルレート(時間当たりの単価)を乗じた金額を明細書とともに請求させていただくことになります。毎月請求書とともに、請求明細書を日本語または英語で作成し、依頼者に対して提出いたしますので、依頼者は当事務所で行った業務内容や支払うべき弁護士費用の概算額について把握することが可能です。万一報酬について意見の相違がある場合には、依頼者からの意見をうかがい報酬金額について調整させていただくこともあります。なお、本件のようなクロスボーダーM&A案件(当事者の一方又は双方が外国企業であるため、国境をまたぐM&A案件)については、ほとんどの法律事務所がタイムチャージ制を提案されていると思いますが、万一固定報酬をご希望される場合は、ご相談させていただきますので、お問合せください。当事務所でも、グループ企業間の経営権の移転に関する案件において、費用を節約したいとの依頼者のご希望を配慮し、固定報酬の御提案をさせていただいたこともあります。