日本の会社の株式をハンガリーの会社に売却した事例
事案の概要
当事務所の依頼者は、日本の会社(非上場会社)の株式の50%超を所有していましたが、株式の共同所有者からの紹介で、ハンガリーの会社に株式を譲渡することを検討することになりました。ハンガリーの会社としては、日本の会社の株式を取得することで、日本市場進出への足掛かりとし、ハンガリーで販売しているサービスを日本の市場で展開したいとの希望を有していたようです。既にハンガリーの会社は、対象会社のデューデリジェンスを終えており、買取価格についても提示がなされている段階でした。当事務所の依頼者としては、今後株式譲渡契約書の作成や契約交渉について経験のある弁護士に依頼したいとの希望を有しており、また、国際的なM&Aにおける資金決済の方法などクロージング手続きに関するアドバイスや、クロージングに必要な各種書類の作成についてもアドバイスを受けたいとの希望を有していました。当事務所の依頼者としては、これまで英文契約書の作成などについて当事務所のサービスを利用していた関係があり、栗林総合法律事務所に相談に来られました。
栗林総合法律事務所のサービス内容
本件のM&Aにおいては、クロスボーダーのM&Aではありましたが、買主と株式の共同所有者がお互いに知り合いであるという関係があり、対象会社の業務内容についてもある程度の知見があったことから、M&Aの仲介会社が入っておらず、直接契約当事者間での交渉がなされることになっていました。クロスボーダーの(国際的)M&Aにおいては、相互の認識の相違やコミュニケーションのミスなどから生じる誤解を防ぐ関係で、仲介会社なしで直接交渉するというケースは比較的少ないように思われます。一方で今回のM&Aでは、対象会社が小規模の会社であり、買取金額が比較的少額であることから、仲介会社に対する十分な手数料の支払ができないという事情もありました。そこで、売主と買主は、仲介会社の関与なしに、売買契約条項などについても直接交渉を行う方法をとることになりました。当事務所が本件に関与した段階では、すでに買主の側から株式譲渡契約書(Share Purchase Agreement、一般的には頭文字をとってSPAと言われます)のドラフトが送られてきており、株式の譲渡金額についても大枠の線で双方が了解されている段階でした。当事務所の役割は、株式譲渡契約書(SPA)の内容を確認し、通常の場合と比較して売主にとって不利となる記載がないかどうかを確認することと、当事務所の依頼者である売主の希望する契約条項を作成し、契約内容に反映することでした。そこで、当事務所では契約内容を確認するとともに、クロージングの手順や売主の表明保証条項に関するアドバイスを行い、いくつかの好ましい契約条項を提案しています。その後、買主の会社及びその代理人弁護士との間においてZoomによる会議が何度か開催され、双方から契約条項案が提示され、双方の折り合いの付く契約条項案をどのように作成するかについての協議が繰り返されることになりました。このようなZoom会議は、日本とハンガリーの間の時差を考慮し、日本時間の午後9時前後に開始することが多く、日本側の関係者にとってはかなりの負担でしたが、Zoomのおかげで日本側の担当者も各自のパソコンから参加することができるようになりましたので、一堂に会する必要性がなくなった点では非常に効率的に会議が開かれるようになっています。双方の当事者・代理人ともに英語がネイティブではありませんでしたが、会議は全て英語で行われました。株式譲渡契約書の内容についての協議と並行して、クロージング書類の準備作業も行っています。クロージングに際しては、買主の側としては株式譲渡代金を支払うことが主な作業となりますが、売主の側としては、株式移転手続きをきちんと完了させる必要がありますので、かなりの数の書類を作成することが必要になります。例えば、売主の会社が有効に存続していることについては、アメリカの会社の場合にはCertificate of Good Standingという公的証明書を取得して交付することが可能となりますが、日本の会社の場合は、法務局からこのような証明書を発行してもらうことはできません。そこで、Certificate of Good Standingに代わる書類としてどのような書類を準備すべきかについて売主と買主双方の代理人が協議して決定する必要があります。本件においては、法務局から商業登記簿を取得し、当事務所でその翻訳を作成します。その上で、栗林が翻訳証明書の原本に署名し、その署名を公証役場で認証してもらう(notarizeしてもらう)という手続きを行うことになりました。また、公証人の認証については、英文でのアポスティーユをつけることが要求されましたので、事前に当事務所から公証役場に連絡を取り、どのような形で認証をしてもらうかについて綿密な打ち合わせを行っています。また、売主の会社は、SPAとして株式を保有するために設立された会社ですので、対象会社の株式の売却は、重要な資産の処分に該当します。そこで、売主の会社においては資産の処分を承認する株主総会を開催し、その決議内容を議事録に記載する必要があります。このような議事録をMinutes of the resolution of general shareholders meetingと呼びます。この議事録については、通常日本語で作成されますが、適正な手続きが取られたことを買主においても確認することができるよう日本語と英語の併記で作成するようにしています。その上で、クロージング日において、売主の側で、公証役場で議事録の認証手続きを行い、Apostilleを付してそのコピーを買主に提出することになりました。当事務所では、買主の代理人と協議しながら、これらの関係書類の作成、提出業務を支援しています。
栗林総合法律事務所の国際取引サポート
栗林総合法律事務所では、これまで多くのクロスボーダーM&A(国際的M&A)の支援を行ってきました。クロスボーダーM&A(国際的M&A)の9割以上が株式譲渡の形で行われますが、事業譲渡のスキームを検討される場合も1割程度あります。株式譲渡と事業譲渡の場合は、契約書の体裁や検討すべき課題などにおいて大きな違いがありますので、どちらのスキームを取るかについては、よく検討しておく必要があります。また、クロスボーダーM&A(国際的M&A)の中では、買収の対象となる企業が日本企業の場合と、外国企業の場合の両方の場合がありますが、対象企業が日本企業であるか、外国企業であるかにより、手続きや検討すべき事項について大きな違いが生じてきます。
対象企業が日本企業である場合
クロスボーダーM&A(国際的M&A)において、売買の対象となる企業が日本企業の場合においても、依頼者の側で、日本企業の株式を外国企業に譲渡する場合と、日本企業の株式を外国企業から取得する場合の両方の場合があります。これらのM&A案件においては、株式の譲渡人または譲受人のどちらかが外国企業であり、日本企業としては、外国企業との間において契約交渉を行う必要があります。また、M&Aの手続きについては、国際的要素を含むと思われますので、一般的に認知されている国際的M&Aの手順に従って手続きを行う必要があります。但し、対象となっている会社が日本の会社であることから、日本の法律が準拠法となることが多く、また、対象企業の法務監査(デューデリジェンス)についても日本の法律に基づいて行われることになります。従って、日本の会社法についての理解が重要となり、日本の弁護士が中心となって案件を処理することになると思われます。なお、買収の対象となる企業が日本の会社である場合においても、売主と買主の双方が外国企業ということもあります。栗林総合法律事務所では、このように売主と買主の双方が外国企業であるM&A案件についても多く関与した経験があります。売主と買主の双方が外国企業であるいわゆる外々(そとそと)案件においても、日本の会社法に基づく手続きがきちんとなされているかどうかをチェックすることが重要である点では日本の弁護士の重要性は変わりません。
対象企業が外国企業である場合
栗林総合法律事務所では、M&Aの対象となる会社(Target Company)が外国企業である場合のM&A案件のサポートを求められることも多くあります。当事務所に相談に来られる場合は、対象企業が外国企業であっても、買主と売主のいずれかが日本企業である場合がほとんどです。買主が日本企業である場合は、当該日本企業は、外国企業を買収することで、海外進出の拠点を確保することが可能となります。売却する会社は、現地の会社のオーナーであったり、他の日本企業であったりします。いずれにしても買い付けを行う日本企業からすれば、海外進出の一つの方法として行われることになります。一方、売主である会社が日本企業の場合もあります。売主である会社からすれば、グループの再編の観点から対象企業をグループ外に放出する場合や、海外事業における事業目的を達成したことから、海外事業から撤退する一つの方法として対象企業の株式譲渡(M&A)が行われることになります。
栗林総合法律事務所のサービス内容
国際的要素を有するクロスボーダーM&Aにおいても、行う手続きは日本のM&Aと異なりません。最初に、買付申込書(LOIの形をとることもあれば、Non-Binding Offerとしてレター形式で提出されることもあります)を英語で作成し、M&Aの仲介会社に提出することになります。その後、対象会社の法務監査や株式譲渡契約書(SPA)の内容の精査を行い、依頼者の希望する条項案を株式譲渡契約書(SPA)のドラフトに反映して提出することになります。もちろん、売主の側からすれば、売主の責任を定める保証表明条項については、その範囲をできるだけ限定したいと考えますし、買主の立場からすれば、対象企業の内容については十分な理解や検討がなされているわけではありませんので、例えばキーとなる従業員が退職するなど、想定と異なる事態が生じた場合は、売主の側で買収価格を減額するなどその負担をしてもらいたいと考えるのが通常です。そこで、契約条項をどのようにまとめるかについては、売主の側の代理人(弁護士)と買主の側の代理人(弁護士)との間で繰り返し協議を行い、その内容を確定させていく作業が必要となります。栗林総合法律事務所では、依頼者が希望する契約条項を英語で作成し、相手方の代理人弁護士とZoomなどでの協議を持ちながら、契約条項をまとめていく作業を支援いたします。なお、契約条項に関する交渉については、ニューヨーク州の弁護士資格を有する栗林自身が直接行うことになりますが、事案によっては、栗林総合法律事務所と契約いただいているコンサルタント(アメリカの弁護士資格を有するネイティブの弁護士)と一緒に会議に参加し、また契約条項についてはネイティブチェックを受けながら契約条項を作成していきます。また、栗林総合法律事務所では、対象となる企業が日本企業である場合には、対象となる企業の法務監査を行い、法務監査報告書を日本語または英語で提出します。日本企業を対象とするM&Aについては、栗林総合法律事務所の弁護士及びスタッフが、対象企業の法務監査を行い、監査報告書を作成します。対象となる企業が外国企業の場合は、現地の法律事務所に依頼し、対象企業の法務監査を行ってもらい、その結果について日本語または英語により依頼者に報告書を提出することになります。なお、対象会社が外国企業である場合には、栗林総合法律事務所が現地の法律事務所を選定し、依頼者に対して推薦するだけでなく、手続きの全ての過程を通じて現地の法律事務所を監督し、依頼者の希望が反映されるようアドバイスを行ってまいります。また、栗林総合法律事務所では、クロージングにおけるサポート業務として、クロージング時に提出する各種書類を作成したり、認証を行うことで、必要な書類を漏れがないような形で相手方に提出できるよう書類の準備を整えます。クロージング時には、クロージング時に交付する書面のチェックリストを作成し、それぞれの書類が契約書通りに作成されているかどうかを事前に双方の代理人間で確認するとともに、提出書類については受領書を作成してもらうなどして、貴社が契約条項を満たしたことの証拠を作成していきます。
企業買収案件に関する弁護士費用(例)
クロスボーダーM&A案件における栗林総合法律事務所の弁護士報酬については、タイムチャージ制で行うのが一般的です。パートナー弁護士の1時間当たりの弁護士報酬(ビラブルレート)は5万5000円(消費税込)であり、アソシエイト弁護士の1時間当たりの弁護士報酬(ビラブルレート)は2万7500円(消費税込)となります。栗林総合法律事務所では、毎月弁護士報酬に関する明細書(ディスクリプション)を作成し、弁護士報酬の金額と一緒に明細書を送付することで、弁護士報酬の金額が明確に理解できるように努めています。また、依頼者からの求めがある場合は、事前に弁護士報酬の見積書を提出し、概算額をお示しすることも多くあります。例えば、ノンバインディングオファーに関する作成業務として50万円、対象企業の監査報告書の作成として200万円、SPAの契約条項の作成支援及び相手方当事者との契約交渉について200万円、クロージング手続きのサポート・支援について100万円などとなります。但し、対象会社の規模などによって報酬の金額は異なってきますので、具体的な金額については、当事務所まで個別にお問合せください。