• 2024.02.07
  • クロスボーダーM&A

日本企業の株式をハンガリーの会社に売却した事例

事案の概要

当事務所の依頼者は、日本の会社(非上場会社)の株式の50%超を所有していましたが、株式の共同所有者からの紹介で、ハンガリーの会社に株式を譲渡することを検討することになりました。ハンガリーの会社としては、日本の会社の株式を取得することで、日本市場進出への足掛かりとし、ハンガリーで販売しているサービスを日本の市場で展開したいとの希望を有していたようです。既にハンガリーの会社は、対象会社(日本の会社)のデューデリジェンスを終えており、買取価格についても提示がなされている段階でした。当事務所の依頼者としては、今後株式譲渡契約書の作成や契約交渉について経験のある弁護士に依頼したいとの希望を有しており、また、国際的なM&Aにおける資金決済の方法などクロージング手続きに関するアドバイスや、クロージングに必要な各種書類の作成についてもアドバイスを受けたいとの希望を有していました。

クロスボーダーのM&Aのポイント

国際的要素を有するクロスボーダーM&Aにおいても行う手続きは日本のM&Aと異なりません。最初に、買付申込書を英語で作成し、M&Aの仲介会社に提出することになります。その後、対象会社の法務監査や株式譲渡契約書(SPA)の内容の精査を行い、依頼者の希望する条項案を株式譲渡契約書(SPA)のドラフトに反映して提出することになります。もちろん、売主の側からすれば、売主の責任を定める保証表明条項については、その範囲をできるだけ限定したいと考えます。反対に、買主の立場からすれば、対象企業の内容については十分な理解や検討がなされているわけではありませんので、例えばキーとなる従業員が退職するなど、想定と異なる事態が生じた場合は、売主の側で買収価格を減額するなどその負担をしてもらいたいと考えるのが通常です。そこで、契約条項をどのようにまとめるかについては、売主の側の代理人(弁護士)と買主の側の代理人(弁護士)との間で繰り返し協議を行い、その内容を確定させていく作業が必要となります。栗林総合法律事務所では、依頼者が希望する契約条項を英語で作成し、相手方の代理人弁護士とZoomなどでの協議を持ちながら、契約条項をまとめていく作業を支援しています。

栗林総合法律事務所の業務の結果

本件のM&Aにおいては、クロスボーダーのM&Aではありましたが、買主と株式の共同所有者がお互いに知り合いであるという関係があり、対象会社の業務内容についてもある程度の知見があったことから、M&Aの仲介会社が入っておらず、直接契約当事者間での交渉がなされることになっていました。クロスボーダーの(国際的)M&Aにおいては、相互の認識の相違やコミュニケーションのミスなどから生じる誤解を防ぐ関係で、仲介会社なしで直接交渉するというケースは比較的少ないように思われます。一方で今回のM&Aでは、対象会社が小規模の会社であり、買取金額が比較的少額であることから、仲介会社に対する十分な手数料の支払ができないという事情もありました。そこで、売主と買主は、仲介会社の関与なしに、売買契約条項などについても直接交渉を行う方法をとることになりました。当事務所が本件に関与した段階では、すでに買主の側から株式譲渡契約書(Share Purchase Agreement、一般的には頭文字をとってSPAと言われます)のドラフトが送られてきており、株式の譲渡金額についても大枠の線で双方が了解されている段階でした。当事務所の役割は、株式譲渡契約書(SPA)の内容を確認し、通常の場合と比較して売主にとって不利となる記載がないかどうかを確認することと、当事務所の依頼者である売主の希望する契約条項を作成し、契約内容に反映することでした。そこで、当事務所では契約内容を確認するとともに、クロージングの手順や売主の表明保証条項に関するアドバイスを行い、いくつかの好ましい契約条項を提案しています。

栗林総合法律事務所のサービス内容

栗林総合法律事務所では、これまで多くのクロスボーダーM&A(国際的M&A)の支援を行ってきました。クロスボーダーM&A(国際的M&A)の9割以上が株式譲渡の形で行われますが、事業譲渡のスキームを検討される場合も1割程度あります。株式譲渡と事業譲渡の場合は、契約書の体裁や検討すべき課題などにおいて大きな違いがありますので、どちらのスキームを取るかについては、よく検討しておく必要があります。また、クロスボーダーM&A(国際的M&A)の中では、買収の対象となる企業が日本企業の場合と、外国企業の場合の両方の場合がありますが、対象企業が日本企業であるか、外国企業であるかにより、手続きや検討すべき事項について大きな違いが生じてきます。クロスボーダーM&Aを検討されている場合は、是非栗林総合法律事務所にお声がけください。