• 2024.02.29
  • 個人の法律相談

アメリカ人の夫について公正証書遺言を作成した事例

事案の概要

当事務所の依頼者X(日本国籍の女性)はアメリカ人の夫Y(アメリカ国籍でカリフォルニア州に居住)と結婚して、夫婦でカリフォルニア州に居住しています。アメリカ人の夫には、前妻との間の連れ子AとBがいました。アメリカ人の夫は、アメリカに自宅と銀行預金、証券口座、退職年金(IRA口座)などを有していましたが、日本にもマンション(3000万円相当)と銀行預金(2000万円相当)を所有していました。アメリカ人の夫は、自分が亡くなった時には、アメリカにおける財産については、アメリカの法律による法定相続分に基づき各相続人に相続させるものとし、一方で、日本にある財産については、日本人である奥様に単独で相続させたいと考えていました。XとYの夫婦は、今回の遺産相続については、日米間での国際相続であり、円滑な承継ができるかどうか不安でしたので、国際相続に詳しい弁護士ということで栗林総合法律事務所の名前を見つけ、当事務所まで相談に来られました。

公正証書遺言作成のポイント

アメリカ人の夫の相続については、アメリカの法律(実際にはYが住んでいるカリフォルニア州の法律)が準拠法とされ、相続人がだれであるかという問題や、各相続人の相続分についての問題はカリフォルニア州の法律に従って決定されることになります。もしアメリカ人の夫であるYがアメリカで遺言書(Will)を作成した場合は、遺言条約の適用により、アメリカの遺言書は日本でも有効な遺言書として扱われることになります。従って、夫であるYがアメリカで遺言書を作成し、日本にある財産については、妻であるXに相続させるとした場合、Xは日本の財産を相続することができることになります。しかし、日本の銀行や法務局は、アメリカで作成された遺言書が有効なものであるかどうか分かりません。そこで、現実の問題としては、銀行預金の名義変更や、マンションの登記名義の変更を行おうとした場合は、法定相続人がだれであるかについての証拠を提出し、法定相続人全員の署名押印のある遺産分割協議書の提出を求めることになります。アメリカで作成された遺言書がアメリカの公証人の面前で作成されている場合であっても、日本の法務局からは、アメリカで作成された遺言書を日本国内の公正証書遺言と同様に扱ってもらうことはできません。従って、アメリカの公証人の面前で作成した遺言書のみでは、不動産名義の変更ができないことになります。もちろん、Yが亡くなった後に、Yの法定相続人であるAとBから、遺産分割協議書にサインをもらえる場合は、遺産分割協議書により登記名義の変更を行うことはできます。しかし、実際問題としては、Yが死亡した時点で、AやBがどこに住んでいるか分かりませんので、AやBの所在場所を確認し、両名からサインを取得しなければなりません。また、AとBがYの法定相続人であることをどのように証明するかの問題や、XとAとB以外に法定相続人がいないことをどのようにして証明するかということも問題となってきます。これに対し、日本で公正証書遺言を作成している場合は、公正証書遺言を提示するだけで登記名義の変更や銀行預金の解約などができることになります。Yの子供であるAやBのサインも必要ありません。従って、Yが死亡した後に、AやBの所在地を調査する手間も省かれることになります。

栗林総合法律事務所における作業の結果

栗林総合法律事務所では、今回のような国際相続案件については、日本で公正証書遺言を作成していない場合、日本国内にある銀行預金やマンションを奥様に相続させることが難しくなることを説明したところ、アメリカ人のご主人からも、日本で公正証書遺言を作成することの了解をいただけました。アメリカ人のご主人は日本語があまり上手に話せませんでしたので、栗林の方からは、日本国内における相続手続きについて英語で説明をしています。一方、日本の公正証書は日本語で作成され、英語で作成することはできません。Yはアメリカ人ですので日本語がほとんど話せず、まして日本語の読み書きは全くできない状態でした。そこで、栗林総合法律事務所で公正証書遺言の文案を作成した後、全て英訳してYに理解してもらうようにしました。また、当日、Yは当職らと一緒に公証役場に出向き、日本語の公正証書を作成しましたが、その内容については、当事務所が通訳として説明し、Yにも内容を確認してもらったうえでサインしてもらうようにしました。なお、公正証書遺言の作成には、大人2人の証人を必要としますが、栗林総合法律事務所の事務員が証人として立ち会っています。

栗林総合法律事務所のサービス内容

栗林総合法律事務所では、多くの国際相続案件を取り扱っています。遺産相続が発生した後の相続手続きも多くありますが、生前の相続対策としてどのような準備をすればいいかについての問い合わせも多く受けています。特に相続人や被相続人が国際結婚をしている場合や、相続財産の一部が外国にある場合などは、相続が発生した後の手続きがどうなるか分からないことも多いと思います。そこで、栗林総合法律事務所では、国際相続が実際に発生している場合の他、今後国際相続になりそうな案件についてもご相談をうけることが多くあります。栗林総合法律事務所では、アメリカにおける遺言書(Will)の作成や信託(Trust)の設定を行うなど、エステートプランニングについてのアドバイスを行います。また、日本にある財産については、公正証書遺言の作成を行うなどして、お亡くなりになった人の意思が実現できるようサポートしていきます。また、日本で公正証書遺言を作成する場合に、栗林総合法律事務所の弁護士が遺言執行者となり、万一の場合には、栗林総合法律事務所の弁護士により遺言の執行手続きも行っております。公正証書遺言の作成についてお知りになりたい方は是非栗林総合法律事務所までお問い合わせください。