• 2020.10.08
  • 海外進出支援

海外腐敗行為防止法(FCPA)

FCPA(Foreign Corrupt Practices Act、海外腐敗行為防止法)

FCPA(Foreign Corrupt Practices Act、海外腐敗行為防止法)は、反贈収賄規定及び会計規定から構成される米国連邦法です。米国連邦法ではあるものの、FCPAの反贈収賄規定は、規制対象となる行為、法人及び個人の範囲が非常に広く定められており、日本企業・日本人を含む外国法人・外国人に対する執行が積極的に行われています。

供与が禁止される賄賂の事例

例えば、FCPAで供与等が禁止される賄賂は、現金に限らず何らかの利益(Anything of Value)とされており、スポーツカー、毛皮のコート、その他の高価な物品等も広く禁止の対象となります。現金については、旅費、接待費等の名目であったとしてもFCPAが適用される可能性があり、下記のガイドラインでは1万ドルの飲食費及び交際費を使用したケースが不適切な例として挙げられています。

対象となる行為

①自社の商売獲得のため、外国公務員に対して賄賂の提供、約束する行為
②米国上場企業が自社の取引内容を正確に帳簿に記帳しないこと

適用対象者(域外適用)

反贈収賄規定の適用対象は、①証券発行者(Issuers)、②国内関係者(Domestic Concerns)、③米国内で行為の一部を行った者とされています(これに加えて、共犯関係にある者及び代理人も適用対象となります。)。例えば、日本企業が米国以外の第三国の現地販売代理店から当該国の外国公務員に対して賄賂を支払った場合であっても、現地販売代理店に対する支払いが日本企業から当該日本企業の米国子会社を通じて行われ、その際に米国子会社の従業員が電話、ファックス、電子メールを通じて日本企業との通信を行ったときは、国内関係者である米国子会社の共犯としてFCPAが適用される可能性がある上(②)、米国子会社との通信を通じて日本企業が米国内で行為をしたとしてFCPAが適用される可能性もあります(③)。

米国に管轄権のある事件

米国に管轄のある事件についてもFCPAが適用されることがあります。例えば、
①米国の銀行を通じて米ドルで賄賂の支払がなされた場合
②米国内で謀議(conspiracy)・実行行為の一部が行われた場合

共謀者による犯罪

日本企業自身が米国内で何らの行為も行っておらず、米国子会社も有していない場合であっても、日本企業の共謀者が米国内の銀行を介して第三国の銀行に賄賂の送金をした場合、米国内で行為の一部を行った者の共犯としてFCPAが適用される可能性があります(③)。したがって、日本企業は外国公務員に対して供与等をした物品が賄賂であると考えておらず、かつ、自身が米国内で一切行為をしていない場合であったとしても、当該日本企業の予想に反してFCPAの適用を受ける可能性があり、コンプライアンスの徹底等を含め、FCPAの適用を受ける可能性があることを前提とした適切な対応を行う必要があります。

FCPAガイドライン

FCPA については、2012年11月14日、米国司法省(Department of Justice)と米国証券取引委員会(Securities Exchange Commission)が共同でガイドライン<米国司法省のサイトより>を公表しており、FCPAに関する対応を検討する上で大変有意義なものとなっています。

日本企業及びその従業員に関するFCPAの適用事例

・日揮株式会社がナイジェリアの公務員に対する贈賄に関し2億1880万ドルの罰金を支払った事例<ナイジェリアLNG事件>

・丸紅株式会社がナイジェリアの公務員に対する贈賄に関し5460万ドルの罰金を支払った事例<ナイジェリアLNG事件>

・株式会社ブリヂストンがアルゼンチン、ブラジル等の公務員に対する贈賄に関し2800万ドルの罰金を支払い、同社の担当部長がこれに関連して8万ドルの罰金を支払うとともに24か月の禁固刑に服した事例<マリンホース事件>

不正競争防止法18条(外国公務員等に対する不正の利益の供与等の禁止)

「何人も、外国公務員等に対し、国際的な商取引に関して営業上の不正の利益を得るために、その外国公務員等にその職務に関する行為をさせ若しくはさせないこと、又はその地位を利用して他の外国公務員等にその職務に関する行為をさせ若しくはさせないようにあっせんをさせることを目的として、金銭その他の利益を供与し、又は申込み若しくは約束をしてはならない。」

フタバ産業元専務を逮捕 中国の公務員へ贈賄容疑

中国での事業をめぐり、便宜を図ってもらう目的で地方政府幹部に現金などを渡したとして、愛知県警捜査2課は11日、自動車マフラー大手「フタバ産業」元専務を不正競争防止法違反(外国公務員への贈賄)の疑いで逮捕した。●●容疑者は2003~09年、フタバ産業の中国での事務機器事業を担当する取締役で、現地法人の代表を務めていた。捜査2課によると、容疑を認めて「フタバに有利な取り計らいをしてもらいたいという思いで、現地通貨やバッグをあげた」などと供述しているという。逮捕容疑は2007年12月中旬ごろ、中国の広東省東莞市の中華料理店で、外国企業の違反行為を監督する地方政府幹部に対し、飲食接待をするとともに、数万香港ドルの現金や女性用バッグなどを渡した疑い。賄賂を渡す前、中国の税関がフタバ産業の現地法人の事業に違法行為があったと指摘していた。

パシフィックコンサルタンツインターナショナル事件

2008年8月、日本の円借款事業である「サイゴン東西ハイウェイ建設計画」に関連して、株式会社パシフィックコンサルタンツインターナショナル(以下「PCI社」)の前社長ら関係者4名が不正競争防止法違反(外国公務員贈賄)の容疑で逮捕され、同月、法人としてのPCI社とあわせて起訴された。同年11月11日には本件に関する初公判が行われ、2003年12月、ベトナム・ホーチミン市の東西ハイウェイ水環境業務管理局幹部に対し、PCI社が同業務管理局発注に係る本計画に関するコンサルタント業務を受注した謝礼等の趣旨で、現金60万米ドルを供与し、さらに2006年8月にも同様の趣旨で現金22万米ドルを供与したことを旨とする起訴事実をPCI側が認めた。日本におけるPCI事件の公判と並行して、ベトナムにおいても、ズン首相の指導の下で捜査が進められており、起訴状においてPCI事件における収賄を行ったとされているホーチミン市業務管理局の局長が2008年11月19日付けで職務停止とされている。そして同年12月9日、公安省は訴追手続き、すなわちベトナム法に基づいた正式な捜査を開始した。●被告は当時、東西幹線道路・水環境プロジェクト管理委員会(PMU)の委員長と市交通運輸局の副局長を兼務しており、事件の収賄側として、昨年2月に逮捕された。検察側の主張によれば、●被告はPCIから、設計コンサルティングと施工監理受注の見返りとして、2003年に26万2,000米ドルをわいろとして受け取った。わいろ額は、設計コンサルティングの受注額(90万米ドル)の10%および施工監理の受注額(170万米ドル)の11%に相当する金額だという。●氏はPCI社員と、食事やカラオケで親交を深め、PCI側から受注のための便宜を持ちかけられた後は、わいろの額を提案し、適当な額で折り合わせるなど、自ら収賄のために積極的な役割を果たしたとされた。今回の裁判で問われたわいろ26万2,000米ドルは、03年5月28日、PCIの●●元常務と東西ハイウエー案件担当の●●元ハノイ事務所長の2人が、●被告の執務室を訪れて、直接手渡したとされる。●●氏は現金を手渡すために、日本から訪越したという。検察は16日、「私利を図り、国の事業の信頼を失墜させ、信用を失わせた」と指弾。「●被告は、収賄罪の最高刑(死刑)に相当するが、社会への貢献も認められる」として、一等を減じて終身刑を求刑した。なお、●被告が、ホーチミン市3区の国有家屋をPCIに不正に賃貸したとして、職権乱用罪に問われた裁判では、今年3月に懲役6年の有罪判決が確定しており、今回の判決と合わせて終身刑とされた。同裁判では、東西幹線道路・水環境PMUの副委員長だった●氏も、懲役5年の判決が確定した。

賄賂を禁止する条項のサンプル

賄賂を禁止する条項が契約書の中に入れられることがあります。賄賂を禁止する標準的な契約条項のサンプルはOECDがいろいろなパターンを定めています。

(文例)
Each Party hereby undertakes that, at the date of the entering into force of the Contract, itself, its directors, officers or employees have not offered, promised, given, authorized, solicited or accepted any undue pecuniary or other advantage of any kind (or implied that they will or might do any such thing at any time in the future) in any way connected with the Contract and that it has taken reasonable measures to prevent subcontractors, agents or any other third parties, subject to its control or determining influence, from doing so.
(訳文)
本契約書の当事者は、本契約締結時点で、会社、その取締役、役員、従業員が本契約に関連して不正な金銭その他の経済的利益を提供し、約束し、供与し、授与し、勧誘し、承諾していないこと(または将来これらを行うこと)、及び下請、エージェント、又はその支配下にあり若しくは影響力を行使し得るその他の第三者がかかる行為を行わないよう合理的な手段を講じたことを確認する。

(文例)
The Parties agree that, at all times in connection with and throughout the course of the Contract and thereafter, they will comply with and that they will take reasonable measures to ensure that their subcontractors, agents or other third parties, subject to their control or determining influence, will comply with Part I of the ICC Rules on Combating Corruption 2011, which is hereby incorporated by reference into the Contract, as if written out in the Contract in full. 
(訳文)
当事者は、本契約の期間中、その下請け、エージェント、及び自己の管理下にあり又は影響力を行使し得るその他の第三者が、本契約書に記載されたのと同じように、本契約書に組み込まれる2011年度のICCの反収賄規則第1章に従い、それに従うよう合理的な手段を講じることに合意する。

Each Party agrees, on behalf of itself, its officers, directors and employees and on behalf of its Affiliates, agents, representatives, consultants and subcontractors hired in connection with the subject matter of this Agreement (together with such Party, the “Party Representatives”) that for the performance of its obligations hereunder, the Party Representatives shall not directly or indirectly pay, offer or promise to pay, or authorize the payment of any money, or give, offer or promise to give, or authorize the giving of anything else of value, to any Government Official in order to influence official action.
(訳文)
いずれの当事者も、それ自身、その役員、取締役、従業員、関連会社、エージェント、代表、コンンサルタント、本契約のために雇われた請負人(これらを合わせて「代表者」という。)が、直接または間接に、本契約の履行に際して、政府の行動に影響を与える公務員に、現金の支払の約束をし、又は経済的価値あるものの支払いを約束してはならない。

(文例)
Party Representatives shall not, directly or indirectly, solicit, receive or agree to accept any payment of money or anything else of value in violation of the U.S. Foreign Corrupt Practices Act, as amended, the UK Bribery Act 2010, as amended, or any other applicable anti-corruption laws and laws for the prevention of fraud, racketeering, money laundering or terrorism.
(訳文)
当事者の代表者は、直接または間接に、アメリカの収賄法、イギリスの2010年賄賂防止法、その他の詐欺、マネーロンダリング、テロリズムを防止するための法律に違反してお金やその他の経済的価値を要求し、受領し、支払を約束してはならない。

(文例)
None of the Company or any of its Subsidiaries or any of their respective directors, officers, employees or, to the Company’s Knowledge, agents or any other Person acting on their behalf has directly or indirectly made any bribes, rebates, payoffs, influence payments, kickbacks, illegal payments, illegal political contributions, or other payments, in the form of cash, gifts, or otherwise, or taken any other action, in violation of the Foreign Corrupt Practices Act of 1977, the UK Bribery Act of 2010 or any other anti-bribery or anti-corruption Law (collectively, the “Anti-Bribery Laws”). Neither the Company nor any of its Subsidiaries is or has been the subject of any investigation or inquiry by any Governmental Body with respect to potential violations of Anti-Bribery Laws.
(訳文)
いずれの当事者、その子会社、関連会社、取締役、役員、従業員も、会社の知る限り、エージェント、又は彼らのために行為するその他の第三者も、1977年の海外収益移転防止法(FCPA)、2010年の英国収賄防止法、その他の反収賄法に違反して、直接または間接的に、現金、寄付金、その他の行為による違法な賄賂やリベートの提供、支払、影響のある支払い、キックバック、寄付金、その他の支払いを行ってはいない。会社またはその子会社は、反収賄法違反を理由とした政府機関の調査の対象となっていない。

(文例)
Neither of the parties hereto or its directors, officers, employees, agents, consultants, subcontractors or outsources shall make any payment or give anything of value to any government official (including any officers or employees of any government department or agency) to influence his/her or its decision, or to gain any other advantage for the parties in connection with the performance of this Agreement.
(訳文)
本契約書の当事者、その取締役、役員、従業員、エージェント、コンサルタント、下請、外注企業は、外国政府の公務員(政府及び政府機関の役員及び従業員を含むものとする)に対して影響力を行使し、または本契約書の履行に関連して当事者への有利な取り計らいを得ようとして、金銭やその他の経済的価値のあるものを供与することをしてはならない。