• 2021.10.15
  • 一般企業法務

会社の種類

4つの会社の種類

会社法では、4つの会社の種類が規定されており、その種類として、株式会社、合同会社、合資会社、合名会社があります。
そのうち、合同会社、合資会社、合名会社の3つを持分会社といいます。会社法では、株式会社の出資者は、「株主」と言い、持分会社の出資者は「社員」と言います。社員と言っても会社に雇われている人の意味ではなく、会社に資金を拠出して、会社の持ち分を有する者(会社の所有者)という意味です。

有限会社の扱い

2006年に新会社法が施行される際に、有限会社法は廃止となりましたが、整備法の適用により、新会社法の施行までに設立された有限会社については、新会社法の施行後もそのまま有限会社の名称を使用することができることになりました。有限会社には、新会社法の株式会社に関する規定が適用になります。

無限責任か有限責任か

会社の種類を考える場合に重要なのが、出資者(株主や社員)が会社の債権者に対して債務の支払いを行う責任を負うかどうかによります。出資者が自分の出資額を超えて責任を負わない場合が有限責任になり、出資者が会社の債務について出資の範囲を超えて無限に責任を負う場合が無限責任になります。

機関設計

会社法の規定によりどのような機関設計を行うことができるかによっても、会社の種類は異なってきます。株式会社については、所有と経営が分離されていることから、株主総会を開催して出資者である株主が会社の経営をチェックする手続きが定められています。これに対し、持分会社である合同会社、合資会社、合名会社では、出資者が自ら経営を行い、所有と経営が分離されていませんので、株主総会や監査役会という経営をチェックする機関がありません。

株式会社のメリットとデメリット

メリット

株式会社は、株式を発行して資金を集める形態です。株式会社では、出資者(株主)は自分が出資した金銭以上に会社の債務について責任を負わないのが原則です(会社法104条)。これを株主有限責任と言います。株主有限責任によって出資者(株主)は、自分が被る責任の最大限度を決めることができますので、株主有限責任は株式会社を作る最大のメリットと言えます。

株式会社は、新株の発行、社債の発行によって出資者を集めて資金の調達を図ることができます。また、会社の有する社会的信用力をもとに、会社(法人)として銀行借入れを行うこともできます。株式会社には、資金調達の器としての機能があります。

デメリット

株式会社を作る場合のデメリットは、ある程度の費用支出を伴うことです。株式会社を設立する場合、登録免許税として15万円、定款認証費用として5万円、定款に貼る印紙代として4万円(電子認証の場合は不要)、会社の代表印の作成費用として4万円の費用を要します。そして、株式会社を設立した後は、取締役や監査役には任期がありますので、任期が来る毎に役員変更の登記をしなければならず、その登録免許税として3万円(資本金の額が1億円以下の会社の場合1万円)が役員の任期のたびに掛かります。

また、株式会社を設立した後は、法人税の均等割りとして、利益が出ていない場合であっても、最低限年間7万円の税金を支払う必要もあります。

また、株式会社については、株主総会の開催や決算書の開示など法令で定められた様々な手続きを行う必要がありますので、手続き的負担が大きいことがデメリットの一つとなります。

ポイント
株式会社の場合、規模の大小にかかわらず、貸借対照表を公告しなければならないのが原則です。但し、公告方法が官報による場合や日刊紙による場合は、貸借対照表の要旨で足りるとされています(会社法440条1項、2項)。多くの会社では、貸借対照表の要旨の公告(実際には官報などに掲載する)を怠っていることがあると思います。一方、公告方法として電子公告の方法を選択し、インターネット上で貸借対照表の公表を行っている場合は、官報や日刊紙による公告は必要ありません(会社法440条3項)。インターネットによる公告(電子公告)を選択した場合、組織再編において債権者への個別通知を行わなくてもよいなどのメリットがあります。

合同会社のメリットとデメリット

メリット

合同会社は、持分会社の一種で、出資者(社員)の全員が有限責任となりますので(会社法576条4項)、出資者(社員)は自分が出資した以上の債務について責任を負わないのが原則です。この点は、出資者が出資額以上の責任を負う可能性がある合資会社や合名会社と比較した場合のメリットになります。

合同会社は、持分会社として、出資者である社員が自ら経営に当たります。所有と経営が未分離ですので、株式会社のように経営を監督する機関としての株主総会のようなものは想定されておりません。

合同会社のメリットは、設立時のコストが株式会社より安い点です。合同会社の場合定款認証が必要ありませんので定款認証費用として公証人に支払う5万円を節約できます。また登録免許税も株式会社の場合が15万円であるのに対し6万円で済みます。

合同会社のその他のメリットとしては、①利益の配分を自由に決めることができる、②組織運営の自由が株式会社よりある、③決算書の公表義務がないなど法律上の制約が少ない点にあります。合同会社は、規模が小さな会社が想定されており、社員の数や債権者の数が比較的少ないため、社員や債権者の保護よりも、経営の自由度を優先していると言えます。

デメリット

合同会社のデメリットとしては、比較的新しい形態であり社会的知名度が低いこと、新株発行や株式上場ができないなど資金調達の方法が株式会社より少ないことがあります。

合資会社のメリットとデメリット

メリット

合資会社は、持分会社の一種で、無限責任社員と有限責任社員によって構成されています(会社法576条3項)。無限責任社員が他の出資者から資金を集め、事業を行う場合に適しています。自ら事業を行う無限責任社員は自己の責任で事業を行いますのでその結果について無限に責任を負います。一方、無限責任社員から出資を勧誘されて投資する有限責任社員は、投資による利益の分配にのみ関心がありますので、経営に直接関与しない一方で、出資の範囲においてのみ責任を負うとされています。合資会社には、無限責任社員と有限責任社員がいますので、少なくとも2名の出資者が必要ということになります。事業者と出資者がいる点で商法の匿名組合(商法535条以下)や投資事業有限責任組合法における投資事業有限責任組合に似ていますが、匿名組合や投資事業有限責任組合と異なり、合資会社は法人格を有しています。

合資会社を設立する場合の登録免許税は6万円ですが、定款認証は必要ありませんので、株式会社の場合と異なり、定款認証にかかる費用は必要ありません。

合資会社は自ら無限責任を負って事業を遂行しようとする事業家が、事業に要する資金を知り合いなどから調達する場合に適しています。無限責任を負う事業家としては、自分以外の投資家を有限責任とすることで、投資家のリスクを限定し、資金を集めやすくなります。資金を提供する投資家としては、自らの責任の限度額を限定しながら、投資による利益の分配を期待することができます。

合資会社のその他のメリットとしては、①利益の配分を自由に決めることができる、②組織運営の自由が株式会社よりある、③決算書の公表義務がないなど法律上の制約の少ない点にあります。

デメリット

合資会社のデメリットとしては、無限責任社員が会社の債務について無制限に責任を負う点にあります。また、無限責任社員の個人的信用に過度に依存していること、新株発行や株式上場ができないなど資金調達の方法が株式会社より少ないことがあります。

合名会社のメリットとデメリット

メリット

合名会社は、持分会社の一種で、その出資者(社員)の全員が無限責任社員によって構成されます(会社法576条2項)。出資者の全員が経営に関与しますので、所有と経営が未分離となります。出資者の全員が無限責任を負うことで、民法上の組合に近い性質がありますが、民法上の組合と異なり、合名会社自体に法人格があります。

合名会社を設立する場合の登録免許税は6万円ですが、定款認証は必要ありませんので、株式会社の場合と異なり、定款認証にかかる費用は必要ありません。

合名会社のその他のメリットとしては、①利益の配分を自由に決めることができる、②組織運営の自由が株式会社よりある、③決算書の公表義務がないなど法律上の制約の少ない点にあります。

デメリット

合名会社のデメリットとしては、全社員が無限責任社員として会社の債務について無制限に責任を負う点にあります。また、新株発行や株式上場ができないなど資金調達の方法が株式会社より少ないことがあります。

株式会社と合同会社の違い

会社の形態として最も多いのは株式会社であり、次に多いのが合同会社となります。そこで、株式会社と合同会社の違いをまとめてみました。

  株式会社 合同会社
出資者 株主 社員
出資者の責任 有限責任 有限責任
意思決定機関 株主総会 社員総会
業務執行者 取締役 業務執行社員
代表者 各取締役(代表取締役を選ぶことも可能) 各社員(代表社員を選ぶことも可能)
役員任期 取締役:1年から10年
監査役:1年から10年
期限なし
議決権 株式持分に応じた議決権割合 原則社員1人1議決権
決算公告 毎事業年度ごとに必要 不要
出資者への利益配分 株式割合に応じて配分 出資割合に関係なく社員の合意で自由に配分
株式(持分)譲渡 自由(譲渡制限も可能) 社員全員の同意が必要
知名度 高い 低い
資金調達 調達が容易 出資者=社員
株式上場 可能 不可能
設立費用 高い 安い

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