CBD製品に対する法律上の規制
大麻取締法による規制について
大麻取締法による「大麻」の定義
大麻取締法では、「大麻」とは、大麻草(カンナビス・サバティバ・エル)及びその製品を言うとされており、大麻草自体や、大麻草から作られる製品については、原則として「大麻」に該当することになります(大麻法1条)。
大麻取扱者の免許
都道府県知事の免許を受けた大麻取扱者以外の者は、大麻を所持し、栽培し、譲り受け、譲り渡しなどをしてはならないとされています(大麻法3条)。また、大麻取扱者は、大麻取扱者以外の者に大麻を譲り渡してはならないとされています(大麻法13条)。その結果、大麻については一般消費者に対して販売することはできません。
大麻の栽培、輸出入に関する罰則
大麻取締法では、大麻取扱者以外の者が、大麻の栽培や、輸出入を行った場合は、7年以下の懲役に処するとしています。また、営利の目的で大麻の栽培や、輸出入を行った場合は、10年以下の懲役及び300万円以下の罰金に処せられることになります(大麻法24条)。
大麻の所持、譲受、譲り渡し
大麻取締法では、大麻取扱者以外の者が、大麻の所持、譲り受け、譲り渡しを行った場合は、5年以下の懲役に処するとしています。また、営利の目的で大麻の所持や、譲り受け、譲り渡しを行った場合は、7年以下の懲役及び200万円以下の罰金に処せられることになります(大麻法24条の2)。
大麻に該当しない場合
大麻法1条では、「大麻とは、大麻草及びその製品を言う」としながら、但し書きにおいて、「ただし、大麻草の成熟した茎及びその製品(樹脂を除く)並びに大麻草の種子及びその製品を除く」としています。
CBD(カンナビジオール)とは
CBD(カンナビジオール)は、大麻草に含まれる成分の一つです。CBD(カンナビジオール)には、大麻と異なり、幻覚作用を示す成分が含まれていません。CBDは、沈静化作用、ストレスの緩和作用などがあるとされています。CBDを含むグミ、錠剤、オイルは、こうした作用を期待して購入されます。
CBD(カンナビジオール)の合法性
大麻には、幻覚作用を示す成分であるTHC(テトラヒドロカンナビノール)が含まれています。大麻の取引は大麻取締法により違法とされています。一方、CBD(カンナビジオール)は、「大麻草の成熟した茎及びその製品、並びに大麻草の種子及びその製品」で、幻覚作用を示す成分(THC)が含まれていません。そこで、CBD(カンナビジオール)製品については、「大麻」にはあたらないとされ(同法第1条)、適法に輸入し販売することができることになります。
CBD(カンナビジオール)が違法となる場合
ただし、CBD(カンナビジオール)の中にも、幻覚作用を示す成分(THC)が混入されている場合があります。この場合は、当該製品は大麻に該当することになりますので、輸入、販売、売買、所持などができないことになります。
CBD(カンナビジオール)製品の輸入
事前確認手続き
CBD(カンナビジオール)製品を輸入する場合は、大麻に該当しないことについて、厚生労働省の関東信越厚生局麻薬取締部(マトリ)に事前確認をしてもらう必要があります(関税法70条)。厚生労働省は、提出された資料を基に、輸入しようとしている製品が大麻に該当しないかどうかを確認することになります。
提出書類
事前確認の段階で厚生労働省の関東信越厚生局麻薬取締部(マトリ)に提出する書類は次の通りです。
1 証明書
大麻草の成熟した茎、または種子から抽出・製造されたCBD製品であることを証明する内容の文書
2 成分分析書
CBD(カンナビジオール)製品のロットごとに、検査結果が記載された分析書
3 写真
CBD(カンナビジオール)製品の原材料の写真、製造工程の写真
THC(テトラヒドロカンナビノール)が検出された場合
厚生労働省の関東信越厚生局麻薬取締部(マトリ)の事前審査の段階で、当該製品にTHC(テトラヒドロカンナビノール)の成分が含まれると考えられる場合は、輸入ができないことになります。また、厚生労働省の関東信越厚生局麻薬取締部(マトリ)の事前審査の段階で大麻に該当しないと判断された場合であっても、税関の検査の段階でTHC(テトラヒドロカンナビノール)の成分が検出された場合も、CBD(カンナビジオール)製品の輸入はできなくなります。但し、大麻法では、大麻にあたるかどうかは「大麻草の成熟した茎及び種子から製造された製品」かどうかで判断されることとなっており、THC(テトラヒドロカンナビノール)の成分を含むかどうかで判断するとはされていません。従って、ごく微量のTHC(テトラヒドロカンナビノール)の成分が含まれている場合の取り扱いについては、グレーな部分があるように思われます。
薬機法の規制
薬機法の規制対象
「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(薬機法)は、医薬品、医薬部外品、化粧品などを規制の対象としています。
医薬品、医薬部外品、化粧品について
「医薬品」は、病気の診断、治療、又は予防を目的とした薬のことで、厚生労働省により配合されている有効成分の効果が認められたものです。医師・歯科医師の処方箋に基づき、薬局で購入する医療用医薬品と、薬局やドラッグストアで薬剤師などの専門家の助言を得て購入される一般用医薬品があります。
「医薬部外品」は、厚生労働省が許可した効果・効能に有効な成分が、一定の濃度で配合されているものです。病気の治療などについて一定の効用作用が認められるものの、その効用作用が比較的弱いものを言います。病気の治療よりも、病気の防止や保健衛生を目的に作られています。医薬部外品は薬局やドラッグストア以外でも購入することができます。
「化粧品」は、美容目的で使用される製品を言います。美容を整え、皮膚若しくは毛髪を健やかに保つことを目的とするものであり、人体に対する作用効果は限られています。
CBD(カンナビジオール)製品に対する薬機法の適用
CBD(カンナビジオール)製品は、医薬品又は医薬部外品には該当しません。従って、CBD(カンナビジオール)製品の製造、販売、輸出入について、医薬品や医薬部外品の製造・販売・輸出入についての許可は必要ありません。但し、将来において、法律の規制が変わり、医薬品や医薬部外品に該当すると判断され、薬機法の規制対象となる可能性がないわけではありません。
CBD(カンナビジオール)製品が、薬機法で規定する「化粧品」に該当することはあります。この場合、CBD(カンナビジオール)製品の製造、販売、輸出入について、薬機法による許可が必要となります。
化粧品に関する製造販売業の許可
国内メーカーから仕入れる場合
国内製造の化粧品を国内のメーカー(製造販売業者)や国内の卸業者(問屋・ディーラー)から仕入れる場合は、許可は不要です。これらの化粧品については、許可を受けたメーカーが製造したり、輸入したりしているため、品質や安全性が担保されているからです。
OEM製造を行う場合
自社で企画した化粧品の製造を国内製造工場(製造業の許可を有する工場)に委託し、自社の名前で販売する場合、化粧品製造販売業の許可が必要です。但し、製造販売業の許可を得ている業者にOEM製造をしてもらう場合は、特別の許可は不要です。
海外製品を、国内の輸入元から仕入れる場合
海外製造の化粧品について、国内の輸入元(製造販売業者)や国内の卸業者(問屋・ディーラー)から仕入れる場合は、許可は不要です。国内の輸入元や国内の卸業者が許可を得ており、品質や安全性について担保されているからです。
海外の製造元から直接輸入する場合
海外で製造された化粧品について、直接海外から仕入れる場合は、化粧品製造販売業の許可が必要となります。海外で製造された化粧品を自分の会社で輸入し、自社の製品として日本国内で販売する場合は、「化粧品製造業」の許可と、「化粧品製造販売業」の許可の両方が必要となります。海外から化粧品を輸入する場合には、輸入であって、製造ではないとも思われますが、海外から化粧品を直接輸入する場合には、日本で成分検査を行ったり、成分表示を行う必要があることから、「製造業」に該当することになります。
医療的効果効用を記載することができないこと
医薬品的な効果や効用を記載することができないこと
「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(薬機法)では、病気の診断、治療、又は予防を目的とした薬を医薬品とし、事前に承認を得た場合にのみ販売することができることとしています。また、厚生労働省が許可した効果・効能に有効な成分が、一定の濃度で配合されている場合は、医薬部外品として承認されることになります。効能効果を記載することができるのは、この承認を受けた場合に限られます。
薬機法68条
疾病の治療や予防、身体機能の増強などの医薬品的な効能効果をアピールする場合、その成分や実際の効果に拘わらず、医薬品であると判断され、事前承認を得ていない限り販売できないことになります。その結果、医薬品や医薬部外品に該当しない製品(医薬品や医薬部外品として認証を受けていないもの)について、一定の効果や効用が期待されることを表示する場合には、薬機法に違反することになります(薬機法68条)。
CBD製品の広告について
健康食品、サプリメント、化粧品、嗜好品は、効能効果を有することの承認を受けずに販売されています。従って、医薬品的効果や、医薬品的効用を記載することができません。CBD製品については、現時点では、効能効果を有することの承認を受けることができません。従って、病気の治療や予防的効果を記載することができません。
ストレス・睡眠・集中などに関する記載
CBD成分は、ストレス緩和や睡眠改善の効果が期待されていると言われています。ただし、CBD(カンナビジオール)製品は、効能効果について承認を受けていないため、ストレス、睡眠、集中などの効果があることについての記載を行うことはできません。
化粧品に対する広告規制
CBD(カンナビジオール)製品が化粧品として販売される場合、化粧品の効能について記載することは可能です。「肌を整える」、「肌に優しい」、「皮膚に潤いを与える」などの表現は化粧品としての効能ですので、広告に記載することができます。
一方、「肌荒れを直す」、「にきびを治療する」という表現は、医学的な効果効用の記載になります。化粧品については、医学的な効果効用を記載することはできません(薬機法68条)。従って、CBD(カンナビジオール)製品が化粧品として販売される場合、医学的効果効用があることを示す記載を行うことはできません。
景品表示法との関係
景品表示法は、優良誤認や誇大広告を禁止しています。従って、理由なしに優良な製品であるとして広告したり、消費者が誤解するような誇大表現を用いることは、景品表示法に違反することになります。
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