• 2024.03.04
  • M&A・事業承継

株式譲渡契約書のレビューを行った事例

事案の概要

株式会社A社は、従業員8名程度の小規模の会社ですが、海外から医療機器を輸入し、日本国内の企業に販売する専門商社としての機能を有していました。株式会社A社の代表者に対して、海外から医療機器を購入している別の専門商社Bから、株式会社A社の株式を譲渡して欲しいとの申し入れがありました。専門商社Bから提示された買い付け金額は2000万円と少額ではありますが、株式会社Aの代表者としては、会社の将来性に限界を感じていたため、株式譲渡に応じることにしました。株式会社A社の代表者としては、会社の売却というM&A案件ではあるものの、売却金額が非常に小さいことから、売却手続きについてはできるだけ経費を抑えて、少しでも手元にお金が残る形にしたいと考えています。一方で、M&Aに含まれるいろいろなリスクもありますので、法律家からのアドバイスを求めたいということで、栗林総合法律事務所に相談に来られました。

株式譲渡契約書のレビューのポイント

M&Aにおける株式譲渡契約書のレビューにおいて重要な点は、株式譲渡の手続きが法令にのっとり適正に行われているかどうかを確認することと、不当な保証表明条項の存在などにより、当事者が一方的に不利益を被るような事態が生じないかどうかを確認することにあります。契約金額が小さいM&Aの場合、依頼者としてはできるだけ費用を節約するために、弁護士による関与を制限したいと考えがちとなります。しかし、M&Aは非常に多くのリスクを内在する取引です。例え買収金額が小さい取引であっても、保証表明違反により、その数十倍、数百倍の損害賠償請求がなされてしまう可能性もないとは言えません。M&Aの取引を行う場合には、弁護士による関与を得て、問題ない手続きとなっているかどうかを確認してもらうことが重要と言えます。弁護士による最小限の関与は株式譲渡契約書を確認することにあります。従って他の手続きについて弁護士の関与を必要としない場合であっても、株式譲渡契約書のレビューだけは弁護士に行ってもらうことをお勧めしています。

栗林総合法律事務所における作業の結果

本件で株式譲渡契約書(SPA)については、買主の代理人弁護士の方で作成され、売主に提案されていましたので、売主の側では、そのドラフトの内容が適切であるかどうかを確認することが必要となっていました。依頼者からは、できるだけ費用を節約するために株式譲渡契約書のレビューのみを行うよう依頼されました。栗林総合法律事務所で内容を確認したところ、譲渡対象株式数、売却金額、クロージングの日時などについてきちんと定めがなされており、問題のない株式譲渡契約書であると判断しました。但し、保証表明条項に、「取引先との紛争が存在しないこと」という条項が記載されていましたが、「取引先との間で紛争がない」かどうかについては、必ずしも明確でない(株式会社Aとしても知りえない場合があること)から、この条項については削除するか、「売主の知る限り」という契約条項を追加するようアドバイスを行いました。もし、将来において、取引先から会社に対して損害賠償請求がなされた場合、買主としては保証表明条項違反を理由に、売主に対して損害賠償請求をしてくることができることになります。しかし、「売主の知る限り」という文言が入っている場合、万一仮に、取引先から損害賠償請求がなされた場合であっても、売主が知らなかった原因で生じた損害賠償請求であるから、売主の保証表明の対象外であるとの抗弁を出すことができることになります。本件では、保証表明条項の修正について了解が得られ、保証表明条項の全てについて「売主の知る限り」という文言が追加されることになりました。

栗林総合法律事務所のサービス内容

栗林総合法律事務所では、多くのM&A案件を扱っています。栗林総合法律事務所では、M&Aにおけるスキームの立案、株価の算定、価格交渉、インフォーメーションパッケージの作成、デューデリジェンスのサポート、スケジュール表の作成、会社法上求められる各種の手続きのサポートを行います。買収金額が大きくない事案においては、依頼者の費用を節約するために、デューデリジェンスのみを行ったり、株式譲渡契約書(SPA)の作成やレビューのみを行うことも多くあります。株式譲渡契約書では、株式譲渡が会社法の規定に基づき適切に行われているかどうかを確認する必要がありますし、特殊な保証表明条項の存在により依頼者が不利益を被る可能性がないかどうかを確認することも必要となります。栗林総合法律事務所では、大企業のM&Aだけでなく、中堅・中小規模の会社のM&A案件も多く扱っています。事業価格が数百万円から数千万円というM&A案件も多くあります。栗林総合法律事務所がこれまで培った経験をもとに皆様の企業をサポートさせていただきます。M&Aを検討されている皆様は是非栗林総合法律事務所にご相談ください。