• 2020.09.01
  • 国際取引

国際取引契約における基本契約と個別契約

基本契約と個別契約

外国から商品を購入する場合、取引基本契約書を作成し、商品の購入数量、品質、代金の支払い条件などについて合意するのが通常です。取引の開始に際して締結する基本的取決めを取引基本契約(Basic Agreement)といい、個々の取引に関する合意を個別契約(Individual Agreement)ということがあります。

契約の成立

国際取引においても契約の締結は、申入れ(Offer)と承諾(Acceptance)によって成立しますので、当事者の一方がいくらで、どの商品を購入したいという申入れを行い、他方当事者がその申入れを承諾した場合には契約が成立することになります。もちろん、契約の成立について争いがある場合で、裁判になった場合には、申入れとして、あるいは承諾として十分な要件を備えているかどうか(例えば商品の購入については記載があるが、その価格について合意がなされていない場合には、売買についての合意があったとはみなされません)が問題となることがあります。

個別契約の成立

取引基本契約が締結された後、購入者は注文書を用いて個別の注文を行うことになり、売主は当該注文を承諾するかどうかを決定することになります。売買の基本条件について売主と買主の意思の合致があった場合には契約(個別契約)が成立し、当事者は契約の内容に拘束されることになります。

基本契約と個別契約の優劣

もし、個別契約と基本契約の内容に齟齬がある場合には、原則として個別契約で定められた内容が優先すると考えられます。個別契約は基本契約よりも成立時期が後ですので、当事者の意思としては新しい個別契約の内容に拘束されると考えていたと推測されるからです。一方、基本契約に記載はあるが、個別契約に記載がない場合には、基本契約の内容が適用されることになります。

個別契約による特約の有効性

このように、基本契約で合意していたとしても、個別契約書によってその内容を変更することができますので、個別契約の記載内容には注意を払う必要があります。個別契約は通常契約書の体裁を取らずに、注文書の形で申し込みがなされることになりますので、その注文書に基本契約とは異なる記載(例えば、品質であるとか、納品日、代金の支払い方法、納品場所などについて記載がある場合)がある場合、注文書の内容に訂正を加えずに商品を納品した場合には、注文書の内容に同意したものとみなされてしまうことになります。

基本契約と反対の合意

反対に、基本契約は、当事者間で当初定めるものですので、取引が進行していくごとに当初の合意とは異なった扱いが必要になってくることもあります。このような場合であっても、必ずしも基本契約書の内容を訂正する必要はなく、取引の都度当事者が合意すれば(注文書に記載を行い、その記載内容を売主が合意すれば)、新しい合意の内容に従って契約が成立することになります。

基本契約と個別契約の関係についての条項

Buyer shall purchase from Seller and Seller shall sell to Buyer the Products. The specific sales transactions shall be performed through the execution of Individual Contracts as explained below.
買主は売り主から商品を購入し、売主は買主に商品を販売する。個別の売買契約については、下記のとおり個別契約の締結に基づいて行われるものとする。

From time to time, Buyer will place orders for Products to Seller by issuing a Purchase Order by facsimile or email, specifying the Product names, quantities, prices, requested delivery date, ship-to address, insurance etc. Seller will inform Buyer, by facsimile or email, whether or not it is able to accept each order within [three (3)] business days after its receipt of the order. Seller shall not unreasonably reject or delay acceptance of any order. If Seller accepts an order, it shall send Buyer an Order Acknowledgement that confirms all particulars of the order, including but not limited to Product names, quantities, prices, delivery date, ship-to address and insurance.
その都度、買主は売主に対して、製品名、数量、価格、希望納品日、郵送先、保険などについて定めた注文書をファックス又はeメールにより送付する。売主は注文書を受領してから3営業日以内に当該注文を受けるかどうかの返答をファックス又はeメールにより買主に対して知らせる。売主が注文を承諾した場合は、商品名、量、価格、配送日、配送場所、保険などを定めた注文請書を買主に送付する。

The Parties’ exchange of the Purchase Order and the Order Acknowledgement shall create a contract for the sale and purchase of the subject Product(s) in accordance with the agreed-upon order terms (an “Individual Contract”).
当事者間での注文書の発行と注文書の承諾により、注文書に記載した内容で、当該製品についての売買契約(「個別契約」)が成立する

The Parties intend for this Agreement to set forth terms and conditions applicable to all Individual Contracts. Therefore, the terms and conditions of this Agreement shall be deemed to be incorporated into each Individual Contract. For any given Individual Contract, if the Parties mutually desire to apply terms and conditions that are inconsistent with those in this Agreement, they shall state such terms and conditions in the Purchase Order and Order Acknowledgement for the subject Individual Contract, and such terms and conditions will supersede those in this Agreement as to the subject Individual Contract.
(訳文)
両当事者は、本契約書により、全ての個別契約に適用になる条件を定めた。従って、本契約書の条項は、各個別契約に組み込まれるものとする。もし両当事者が本契約書に反する内容の条項を個別契約に組み入れたい場合は、個別契約に係る個別の注文書及び注文請書に記載するものとし、この場合当該契約条項は当該個別契約に関しては本契約書の内容を書き換えるものとする。

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