• 2020.09.01
  • 国際取引

国際取引契約における一般条項(General Provision)

一般条項(General Provisions)

英文契約書を作成する場合、契約の種類に拘わらず一般的に定められる条項があります(もちろん契約書の内容によってはそのような条項が一切ないものや、簡略化されて記載されるもの、一部の条項のみ記載されるものなど様々ですが)。このような規定は一般条項(General Provision)と言われています(契約書の中では雑則:Miscellaneousといわれることもあります)。一般条項としては次のような規定があります。

契約期間(Duration)

契約の始期と終期を定めます。期間満了後、自動更新がなされる場合には、そのような記載がなされることになります。

This Agreement shall be effective on the date of execution hereof, and shall remain in full force for a period of two (2) years from that date, unless sooner terminated in accordance with the terms hereof. Upon mutual agreement of the parties hereto, this Agreement shall be renewed or extended for successive two (2) years, pursuant to mutual agreed upon terms and conditions.
(訳文)
本契約は、本契約書の調印日から効力を生じ、本契約書の条項に基づき途中で解除される場合を除き、2年間効力を有する。その後本契約の当事者が合意した場合、本契約は、当事者の合意した契約条項に基づき、その後2年間更新されるものとする。

契約解除事由(Termination)

契約の途中解除事由を定めます。債務不履行や、破産などの信用棄損などの場合において、通知後何日以内に瑕疵の治癒されない場合には、契約が終了するという形で記載されます。一定の事由の発生によって契約が当然終了する場合や、解除予告通知を送付し一定期間の経過後に契約が終了する場合があります。

Termination by Due to Non-Performance(契約不履行による解除)
In the event any of the events listed below occurs to either Party (hereinafter “Defaulting Party”), the other Party (hereinafter “Notifying Party”) shall notify the Defaulting Party of such circumstance, and if such breach is not cured within thirty (30) days after such notice to cure the breach, Notifying Party may terminate this Agreement without prejudice to its right to claim for damages against the Defaulting Party:
(a) Improper or unfair conduct in the performance of this Agreement;
(b) Breach of obligations under this Agreement;
(c) Breach of any agreement entered into hereunder between Seller and Purchaser in relation to the Product.
(訳文)
当事者のいずれか(以下「債務不履行当事者」という。)に対して下記のいずれかの事項が生じた場合、他方当事者(以下「通知当事者」という。)は、債務不履行当事者に対して債務不履行の事実を通知し、瑕疵の治癒を求めるかかる通知から30日以内に瑕疵の治癒がなされない場合、通知当事者は債務不履行当事者に対する損害賠償請求権に影響を及ぼすことなく、本契約を解除することができる。
(a) 本契約の履行について不適切または不公平な行為があった場合
(b) 本契約書の条項に違反した場合
(c) 本件商品に関し、売主と買主の間で本契約に基づき締結した契約書に違反した場合

Termination without Notice(通知のない解除)
If either Party files a bankruptcy petition, commences corporate rehabilitation proceedings or civil rehabilitation proceedings, applies for or suffers the appointment of a receiver, custodian, trustee or liquidator for such Party or any of its property, makes assignments for the benefit of creditors, transfers a substantial portion of its business assets, becomes insolvent or is generally unable to pay its debts as they become due, or resolves to wind up its operations, then the other Party may forthwith terminate this Agreement without notice.
(訳文)
もし当事者のいずれかが破産申立てを行い、または会社更生若しくは民事再生が開始し、または当事者やその財産に対して財産管理人、後見人、管財人、清算人が選任され、債権者への事業譲渡がなされ、または重要な財産が第三者に譲渡され、支払期限が到来した債務を支払うことができなくなり、あるいは解散がなされた場合、他方当事者は通知なしに本契約を直ちに解除することができる。

譲渡禁止(Assignment)

契約上の権利や契約上の地位の移転を禁止する条項です。権利の譲渡とは、契約上発生した個別の権利を移転することを言い、契約上の地位の移転は契約に関する権利義務を包括して第三者に移転することをいいます。多くの契約書では、契約上の権利の移転、契約上の地位の移転はいずれも相手方の同意がない限り禁止されることになります。

Parties may not assign their rights or obligations under this Agreement whether in whole or in part to any third party, without obtaining prior written consent of the other party.
(訳文)
当事者は、本契約書の権利及び義務の全部または一部を、他方当事者の事前の文書による合意がある場合を除き、第三者に譲渡してはいけない。

不可抗力(Force Majeure)

不可抗力とは、両当事者のいずれの責任でもない事由の発生により契約上定められた義務の履行ができなくなる事態を言います。このような場合に、義務を履行しなかったとしても、債務不履行とはみなされないと定められます。不可抗力の事由としては、戦争や大規模の地震などがあります。通常不可抗力が問題となるケースはありませんが、今回発生した東日本大震災のような場合には、被災地については不可抗力事由が発生したとみなされるケースが多くあると思われます。

Neither party shall be liable for failure to perform its part of this Agreement if and to the extent such delay or failure in performance arises from any cause or causes beyond the reasonable control of the party affected (Force Majeure), including, but not limited to, act of God, acts of government or governmental authorities, compliance with law, regulation or orders, fire, storm, flood or earthquake, war, rebellion, revolution, or riots, strike or lock-out.
(訳文)
何れかの当事者の債務の遅滞又は不履行が、不可抗力、政府または政府機関の行為、法令・規則・命令の遵守、火災、嵐、洪水、地震、戦争、反乱、革命、暴動、ストライキ、ロックアウトを含むがこれに限らず、影響を受ける当事者の合理的なコントロールを超えた原因(以下「不可抗力」という)によって生じた場合には、その履行が出来なかった当事者については債務不履行の責任を負わない。

The failure of a Party to perform its obligations due to war, strikes, uprising, fire, flood, explosion, earthquake, government regulations, or other causes beyond control of a Party (“Force Majeure”), except for monetary liabilities, shall not constitute a breach of this Agreement, provided that all diligence is exercised to overcome such Force Majeure and resume performance, and the time for performance by such Party shall be extended by a period of any such delay. Labor disputes shall not be deemed as Force Majeure. In any event, the Party affected by Force Majeure shall notify the other Party of the occurrence of Force Majeure, the details of Force Majeure, the period the Force Majeure is anticipated to continue, and other information immediately after the occurrence of any Force Majeure.
(訳文)
金銭債務の支払いを除き、戦争、ストライキ、騒擾、火災、津波、爆発、地震、政府の規制、その他当事者のコントロールを超えた事情(以下「不可抗力」という。)により、当事者の債務の履行がなされなかった場合、本契約の債務の不履行を構成しない。但し、かかる事情を乗り越えられるよう注意を払うものとし、履行時期は延長されるものとする。労働争議は不可抗力とはみなさない。不可抗力事由の影響を受けた当事者は他方当事者に対して不可抗力事由の発生とその詳細、不可抗力事由が継続するとみなされる期間、その他の情報を、不可抗力事由の発生後ただちに通知するものとする。

秘密保持(Secrecy)

契約の履行の際に相手方当事者に対して開示する情報について、第三者への開示を禁止する条項です。契約の当事者は一定の取引の完成に向けてお互いに協力する立場にありますので、秘密情報を相手方に開示することも多くあります。このような場合に秘密保持条項を設けておかないと、当事者の秘密情報が思わぬ第三者に開示され、回復不可能な損害を被ることがあり得ます。

Confidentiality(秘密保持)

The Party agrees that the technical information and business information disclosed by either party (“Confidential Information”) is valuable, confidential and proprietary in nature and that the disclosure of the Confidential Information would result in immediate and irreparable harm to the disclosing party, and agrees that, at all times during the term of this Agreement and for five (5) years thereafter, it will hold in confidence all of the Confidential Information, and that it will not disclose the Confidential Information to any third party, except to its authorized employees, without the prior written consent of the disclosing party.
(訳文)
各当事者は、いずれかの当事者から開示された技術情報及びビジネス情報(「秘密情報」)が、本質的に価値がある秘密情報であることに合意し、秘密情報の開示が開示当事者に対して、切迫した回復不能の損害を生じさせるものであることに同意する。当事者は、本契約の期間中、及び本契約終了後5年間は全ての秘密情報を秘密に保持し、開示当事者の事前の書面による同意がある場合を除き、その許可された従業員を除いて如何なる第三者に対しても秘密情報を開示しないことに同意する。

Receiving party’s obligation under this Agreement with respect to Confidential Information shall not apply to information which i) is already in the possession of receiving party prior to disclosure by disclosing party and was not acquired by the receiving party directly or indirectly from disclosing party; ii) is part of the public domain at the time of disclosure by the disclosing party; or, thereafter becomes part of the public domain without fault on the part of receiving party; or iii) may be acquired hereafter by the receiving party from any third party without any obligation of secrecy.
(訳文)
本契約上の秘密情報に関する受領当事者の義務は、①開示当事者の開示以前に受領当事者が占有している情報で開示当事者から直接又は間接に取得したものでない情報、②開示当事者の開示の時点で既に公知である情報又は、受領当事者の過失無にその後公知となった情報、③受領当事者が、その後、秘密保持義務を負うことなく第三者から受領した情報については適用にならない。

通知(Notice)

外国の当事者への通知方法としては、ファックス、郵便、eメールなどがありますが、どの方法によって通知した場合に、有効な通知とみなされるかをあらかじめ定めておきます。また、通知の受取人を定めておかないと、相手方当事者に通知したつもりでも、相手方から通知を受領していないというクレームがなされることも考えられます。従って、通知の方法、受領権限者の名前、通知文書の送付先住所、通知の効力発生時期などをあらかじめ定めておくことが多くあります。

Any notice, consent or other communication required or permitted under this Agreement shall be written in English or Japanese and shall be deemed given when (a) delivered personally; (b) sent by confirmed facsimile transmission; or (c) sent by commercial courier with written verification of receipt returned to the sender. Notice, consent or other communications (but not service of process) may also be given by e-mail. Rejection or other refusal to accept or the inability to deliver because of changed address or facsimile number of which no notice was given shall be deemed to constitute receipt of the notice, consent or communication sent.
(訳文)
本契約書に基づく全ての通知、同意、コミュニケーションは、英語又は日本語で行い、(a)直接交付されたとき、(b)ファックスにより送付された場合、(c)送り主への配達証明付きクーリエで送られた場合に送付されたものとみなされる。通知、同意、その他のコミュニケーションは(但し、訴訟の送達を除く)eメールによってもおこなうことができる。受領拒絶、受領拒否、通知なしに住所、ファックス番号が変更されたことで配達ができなかった場合については、通知、同意、コミュニケーションがなされたものとみなす。

準拠法(Governing Law)

お互いに国籍を異にする当事者間の取引では、どちらの国の法律に準拠して契約書が解釈されるのかが重要になることがあります。一方の国では有効な契約条項が他方の国では無効と判断される可能性もあるためです。準拠法の定めは極めて一般的な条項といえます。

This Agreement shall be governed by, and construed in accordance with the laws of Japan, without regard to the conflicts of law rules thereof.
(訳文)
本契約書は、日本の抵触法の規則に関係なく、日本法に準拠し、日本法に従って解釈される。

管轄(Jurisdiction)

当事者間に紛争が生じた場合に、どこの国の裁判所により紛争の解決を行うかを定める規程です。Exclusive(独占的)な裁判管轄が定められる場合には、当該契約に関する紛争については、その裁判所のみが管轄を有し、他の裁判所は管轄を有しないことになります。他の裁判所に対して提起された訴えは裁判管轄を有しないことを理由として却下されることになります。Non-exclusiveな裁判管轄が定められた場合には、契約に定められた管轄裁判所が裁判管轄を有することになりますが、法律によってその他の裁判所も裁判管轄を有する場合には、他の裁判所に訴訟を提起することもできることになります。

Any and all disputes arising from this Agreement shall be amicably and promptly settled upon consultation between the parties hereto, but in case of failure, the matter shall be settled by arbitration in Tokyo, Japan in accordance with the rules of the Japan Commercial Arbitration Association and the award shall be final and binding upon the parties hereto.
(訳文)
本契約書に基づく発生する全ての紛争については、当事者間での協議により直ちに平和裏に解決されるものとする。解決ができなかった場合、当該紛争は、日本商事仲裁協会の定める規則に基づいて、日本国東京における仲裁によって解決される。仲裁裁定は最終的であり、本契約の当事者を拘束する。

企業法務の最新情報をお届けする無料メールマガジン

栗林総合法律事務所 ~企業法務レポート~

メルマガ登録する